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「…それではヘリオポリス崩壊と、それに伴うオーブの銀連への極秘軍事協力及び帝国の関与について臨時最高評議会を始めるものとする」
プラントを構成する百を超す星系を14に分ける各市の代表者である14名の評議員が集ったその議場で、最高評議会議長シーゲル・クラインの重い言葉でその会議は始まった。
「…やはりオーブは銀連軍と結託していたのだ…」
「だが、アスハ代表は…」
「天川に住んでいるものなど信を置けるものか」
「帝国はオーブに激しく抗議していると聞くが、真偽次第では向こうへの対策も考えねば…」
「ところでここまで大きな事態を起こしたその銀連軍の新型MS、それほどまでのものなのか?」
会議は開幕当初よりこわばりが強いものとなっており、現場からの報告要員として来ていたクルーゼ達にもすぐお鉢が回った。
「その点につきましては、その銀連軍MSの一機に搭乗し、なおかつ向こう側に留まったその機体と交戦経験のある、我が隊のアスラン・ザラとガルマ・ザビからご報告させようと思います」
「は、ご失礼ながらご報告させていただきます。まずはー…」
そして、評議会はアスランとガルマの報告も燃料にして更にその火を増していくことになる。
〇銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 銀連軍宇宙戦艦アークエンジェル MS格納庫○
「おーし、嬢ちゃん今度はこのパーツの複製をお願いできるかー?」
「はいはーい、どうもオセちゃん」
「あ、どうもー」
プラントの中枢で新たな動きが出てから数分後、アークエンジェルは到着したダミッド星系のデブリベルトで、壊れた軍艦などから利用できる物資を探すための準備に追われており、その中でセレーナは眼鏡を掛けた狸の縫いぐるみを思わせる生物と一緒に作業をしていた。
「いやー、まさかセレーナさんも悪魔と協力契約を結んでいたなんて…」
「ですがあのオセって子のあの“模倣”って能力、あの子達の技術や知識と合わさってうちにはめっちゃ助かっていますよ」
周囲から感謝を向けられているその狸の縫いぐるみのような生物の名はケンタロウ・オセ。
セレーナ・フレイズと契約している上位悪魔
今現在、物資不足に悩んでいるアークエンジェルは、技術者としてハイレベルなリュール達と彼に大きく助けられている状況になっていた。
「はウア!?」
「え、ど、どうしたの?」
「な、何かこれから行く先があれなためか、また無念そうな人の霊体が近くを通ってきた感覚が…や、やっぱりやめませんかぁ? これって死んだ人にもすごく失礼ですし…」
「こいつ本当に悪魔なのかよ…?」
但し、今現在のオセは悪魔とは思えない気弱且つ真面目な存在と認識されており、地球時代地球唯一神宗教を起源に持つレヒリオン教圏出身者が多いアークエンジェル正規クルーには戸惑いと困惑を抱かれていた。
「いやねえ、悪魔や神だなんて言い方は結局人間とかこっち側の都合で付いた勝手な分類だし―――」
「え…ちょっと…何であいつらがここに!?」
「―――い…!?」
それにリュールがメタ臭さの混じる小言を口にしたその時、彼らにとって嫌な意味でここ最近記憶で目立っている女の声が割り込んできた。
「あ!? あいつたしかE.Uのアルテミスの嫌み口女!? 何であいつがここに…?」
整備作業に加わっていたネーナが嫌そうな声を上げたのは、アルテミスでリュールとキラに非難をぶつけた後、ネーナと神楽によってボコボコにされて一度アークエンジェルから叩きだされたものの、その後のアルテミス要塞崩壊に伴って脱出艇に乗らされて脱出させられたところをリュールが駆るバルバトスに保護されて、アークエンジェルに救助された黒く長い三つ編みの少女であった。
「…人手が不足してるからあのアルテミスで保護した連中にも働いてもらうことになったんだよ。監視はつけるがな…っておい! 牢から出しはするけどまだアルテミスでうちの船と機体を拿捕しようとしやがったのは忘れてねぇからお前さん達はこっちには来るんじゃねえ!」
「!? そんなのコーディネイターやアーヴを加えている時点で言える台詞じゃな…アアァ!?」
その少女が外に出られている理由をマードックが説明しつつ怒鳴りつけて彼女をMS格納庫から追い返そうとした直後、それに文句を付けようとした少女は背後からその腕を締め上げられて引きずり出され始めた。
「申し訳ございません。こちらキュルケ・シュタインホフ少尉にはこちらでよく言い聞かせておきますので、この場はとりあえずお収めを…」
「あ、あんた何を…ああ!?」
黒い三つ編みの少女の腕関節を締め上げて引きずり始めたのは、同じくアルテミスから脱出させられた後に、リュールに保護されてアークエンジェルに行きついたE.U系列銀連軍所属のレイラ・マルカル少佐であった。
「え!? 何あの薄い金髪をした綺麗な子!?」
「あー、あのアルテミスでリュールが助けた子の一人でレイラって人。亡命アーヴの子孫だって…!?」
そのレイラの登場に色めき立ったトールにミリアリアがジト目を浮かべつつ紹介しようとした時、アークエンジェルが大きく揺れた。
「何事やぁ!?」
「人工重力制御が掛けられている状況でもここまで揺れるなどただ事ではありませんよぉ!?」
この辺りの宙域の磁場の影響で悪魔が暮らす魔界に戻れなくなってアークエンジェルに留めさせられ、先の覗き事件への関与のペネルティもあって艦内作業に従事させられていたアザゼルとベルゼバブも驚いたところでステラが格納庫に血相を変えた表情で飛び込んできた。
「皆! 展望ブロックに来て!」
「な、何々!? 何が起きたのぉ…!?」
その叫びに釣られて大勢が展望ブロックに集まるが、そこでステラが声を荒げた原因を目の当たりにして多くが声を失う。
「…こ…れは…」
一方、艦橋にいるスメラギ達もこのダミッド星系に入ってから必ず視界に入るようになった大小さまざまなスペースデブリに混ざるが、それらを圧倒する存在感と悲痛さを持つその存在に言葉を失ってしまっていた。
○プラント小銀河 アプリリウス市 首都星系アプリリウス・ワン 最高評議会ビル○
「…こんなものを作り上げるとは、ナチュラル共めぇ…!」
「しかし試作機段階でまだ脅威には…」
「だがここまで進めば量産化ももう直に済むだろう。座視して良い状態ではない」
「これはナチュラル達の意思の表れです! 彼らはこの状況を悪化させる意思はあっても講和など…!」
「ですがオーブは…!」
「これでは帝国の現政権も…!」
「静粛に! 議員の皆様方! 静粛に!」
アークエンジェルがダミッド・デブリベルトで驚愕に襲われてから数分後、プラントの最高評議会はアスランやガルマの報告もあって更に声を荒げており、議長のシーゲルはそれを鎮めようとしているが効果はいま一つであった。
「…家族を戦場へ送りたがる者がいるならば、見せてもらいたい」
「「「「「…!!??」」」」」
それを中断させたのは、この場では一番若手であるはずのギレン・ザビの言葉であった。
「…ただ、平和に、穏やかに…人らしく生きたい…我らの願いは今も昔もただそれだけだ…」
「「「「「………………」」」」」
ギレンの言葉に他の評議員達は派閥を問わず惹き込まれていく。
「…だが、そのささやかな願いすらも踏みにじったのは誰か!? 自分達の都合で生みだしておきながら我らを何千年も鎖につなぎ続け使い潰さんとしてきたのは!?」
「「「「「………………」」」」」
「我々は忘れない。あの血のバレンタイン…ユニウスセブンで我々と強欲な者達を和するべく刺し伸ばされた手すらも無情に滅し、クリュセにも死のオーロラを降り注がせた…あのアーヴ達が受けた惨劇を!!」
ギレンが引き出したその惨劇の名は改めて評議員達の脳裏にあの時の光景を重くのしかからせた。
〇銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 銀連軍宇宙戦艦アークエンジェル○
「…こ、これって…」
プラントでもギレンが別時間軸でも見せたような驚異的な演説スキルを見せていた頃、アークエンジェルの展望ブロックを始めとして宇宙空間を見られる各所では悲鳴が上がっていっており、あのキュルケも別時間軸で東側の同民族に対して見せていた厭味ったらしいマウント取り気質を失っていた。
「キャアアア!?」
その真横より、彼女と共に脱出艇より救助された少女の一人リィズ・ホーエンシュタインが悲鳴を上げた。
彼女の前には窓越しだが、青い髪と額に付いている白い宝石状の
「…ゼミー…シュル…!? ユニウスセブンで消滅したあれが…どうしてここに…!?」
(…ユニウスセブンにて威力最優先で未完成だったG弾を使用して起きた時空間異常で、ほとんど消滅したというのが通説だったが…デブリベルトにその残骸の大半が疑似ゲート暴走現象で流れ着いたという噂が本当だったなんてな…)
艦橋の面々はそれらを流してきた、ボロボロとなった傘を思わせる破壊された星系間移動可能軌道都市ゼミーシュルの姿に絶句しており、マリューは只々愕然とした問いを口に、ムウは血のバレンタイン以降に流れた都市伝説の一つが真実だった光景を目の当たりにして沈痛な表情を浮かべる。
「大変です! さっき展望ブロックでリュール君が激しく嘔吐して倒れたって…」
「何ですって!?」
そこで、アークエンジェルの現最高戦力が倒れたという報せはスメラギの顔を更に強張らせた。
○プラント小銀河 アプリリウス市 首都星系アプリリウス・ワン 最高評議会ビル○
「…24万3721名の同胞と587万1779名の理解者たる隣人を我々は一瞬で失った。それでも我々は必要最低限の要求で同士討ちを終わらせるべく尽力してきました! だが! 厚顔無恥極まる銀連はその努力を悉く無にしてきました!」
アークエンジェルクルーの多くが惨劇の場に絶句して言葉を失っているのと反比例しているかのように、同時刻で行われているギレンの演説は声量と共感性を上げていっている。
「我らは我ら自身を! 我らの家族を! 故郷を! 隣人を! 未来を守るために戦う! これはそのための避けられない戦いなのです!!」
「「「「「……‥………」」」」」
「…うむ…」
「…はぁ…」
ギレンが拳を高く振り上げて締めくくった頃には、穏健派議員は反論できぬ雰囲気で、強硬派議員は共感を示した様子で沈黙し、パトリック・ザラが当然という様子で喉を鳴らしているのに対してシーゲル・クラインはため息を漏らしていた。
〇銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 銀連軍宇宙戦艦アークエンジェル 艦橋○
「あそこの水を!? 本気なんですか!?」
プラント中枢が穏便とは言えない方向で纏まろうとしていた頃、そこも取り上げたゼミーシュルを見据えた位置で止まったアークエンジェルの艦橋でキラが声を荒げていた。
「…あそこには、望遠カメラで確認した分だけでも最低十億トンを超す水が凍り付いた状態である」
「でもナタルさんも見たでしょう!? あのゼミーシュルはユニウスセブンを訪れていた時に何百万人という人が無くなった場所で…!」
それに対し上官達は苦渋の色を見せつつもあそこから補給を得るのは決定事項だという態度を見せ、キラはさらに憤ると共に、今は倒れてこの場には来られない友人の心を気遣うと共に知ったらどうなるかという恐れで食い下がる。
「こっちだって“水が見つかったぁ!”って喜んでいるわけじゃないし俺もあそこには踏み入りたくねえよ。だが! 俺達は生きてる以上は生きなくちゃいけないんだよ! あそこを漂ってる亡くなった人達みたいになりたくなければなぁ!」
「…だけど…!?」
一方、ムウも眉間に皺を寄せつつも補給を押し通そうとして来てキラはなおも食い下がるが、そこで彼女は腕から引き止められる。
「…あなたが心配している彼は私たちの方で説得します…」
「……‥……」
自身を腕から引き止めた日光のその深い悲しげな瞳に、キラは言葉を返す手段を持たず、結局あのゼミーシュルから物資を調達する方向でアークエンジェルは固まった。
次回、あの種のピンクのお姫様を含めて色々と軽率には扱えない子達が登場します。