星界の輪廻   作:oosima

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今回は、この世界のユニウス・セブンに相当するゼミーシュルで色々起きるのが中心になります。



066 縁が集いゆく墓所

 〇C.E(コズミック・イラ)71年1月29日昼(帝国暦952年1月29日昼) 銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 アーヴ帝国所属半宇宙船型軌道都市ゼミーシュル○

 

 プラント最高評議会でギレン・ザビが熱弁を振るってアークエンジェルの艦橋でキラが墓荒らし同然の行為に抗議を上げてから数十分後、後者に属する者達は今の大戦が始まる切っ掛けとなった、宇宙の巨大な残骸にして墓場と化しているゼミーシュルで補給活動を始めていた。

 

「…こ、ここの水ー本当に使うんすかぁ?」

「嫌ならその青い身は乾いてスポンジのように穴だらけになるしかないぞ」

「う、ウゥ…それは嫌です…」

 

 そうして作業している何十もの小型宇宙作業用ポッドの中で天の助が気味悪そうな顔を浮かべ、ナタルの叱責を受けていた。

 二人はゼミーシュルに存在する大量の氷から水を回収する作業に加わっており、そちらの方は上手く行っていた。

 

「…ここも民間人居住区、武器弾薬は無さそうか…」

 

 一方、傘の幕の内側に相当する幾つもの長い居住ブロックに分かれた区域では、兵器などを探しているグループもいたが、中々に目当ての品は見つからずにいた。

 

「…どうしてここまで民間人ばかり…? ゼミーシュルは帝国の秘密軍事施設のはずじゃ…?」

 

 その中のメンバーにアルテミスから脱出させられた後に、監視付きながらアークエンジェルの補給作業に加わっていたキュルケが恐れと困惑を示していた。

 

『はあ? 何をどっかの赤い国みたいに政府の言い訳鵜吞みにしてるのが丸見えな低能ぶり見せてるわけ? 選挙がある時期に自爆するような真似するわけないでしょうが。というか赤い国の住民も闇市とかならもっとましなこと愚痴ってるわよ』

「…っ…あんた…」

 

 小型宇宙作業用ポッドの中で暗い顔を浮かべているキュルケの視界に、ウィンダムでその警護をしているネーナの呆れた表情が通信映像で映し出される。

 

「…そもそも…そもそもあんた達がプラントの連中に軍事支援なんかするから…!」

『あら? プラント建造の時に帝国へこの国際協力すべき時に自国優先の技術独占政策を進めてるってヒス起こして、向こうの中小企業とかに特別待遇ちらつかせて引き抜きしてたのは何処のお国だっけ? たしか西ゲルマニクスだっけか―――』

「ウェスタニアよ! それとザフトなんかテロ組織に軍事支援しろだなんて言ってないわ!」

『それだったら最初から自分らでプラント防衛もまじめにやってればいいじゃん。地元で無茶苦茶されていた技術者大勢送ってるくせして元から辺境だから多くいる怪獣なんかに加えてBETAまで出てきたのに、ろくに防衛政策取らないくせして本国や企業が施設を守れって無茶ぶりもしてきたから現地の作業員たちで自衛や警備のために武装を固めたら、後付けで軍艦送り付けてそれを抑えたら結局怪獣とかへの警備が出来なくなって被害が増えた分に収益減らすなんて何を考えてるわけ? そもそもこの船の警備だってあんたの国のお偉いさんが帝国に仲介を依頼したくせして会場の下見と言って他国の軍事施設を自由に調査させろだなんて無茶ぶり押し通して結局はいちゃもんも付けられずにあっちまで通したくせにさぁ』

「それは…帝国の連中がまだ見つかってないだけで隠してザフトの連中に渡すつもりでー…」

『へー? 会場まで着く何十日もの間にずっと船の中で調査していたくせして見つけられなかったんだー? G弾なんてあのミイラ取りがミイラになった典型な汚物消毒だー連鎖国に渡しちゃうなんて兵器管理がアレな挙句に調査能力もそんなんじゃー、技術ももう前みたいな特別扱いなんて向こうも出来ないわねー』

「…あんた…ねぇ! 亡命アーヴのくせして何を連中よりなことばっか…!?」

 

 そのネーナの冷やかしにキュルケは非難で返すが、悉く理詰めで潰されて眉間の皺を増やしていくが、それに比例して急増した苛立ちは次の瞬間には一気に霧散した。

 

『ここみたいに馬鹿ばっかされて帝国に居れなくなったんだから当たり前でしょうが』

「…っ…あ、あんた……」

 

 画面越しでもわかる、死の気配を感じて泣き叫ぶ家畜を見下ろす屠殺業者の感情がこもっていない冷たい眼差しを向けてきたニーナに、キュルケはせいぜい俯いて血の気が引いた顔でジト目を向けるしかできなかった。

 

『おい! お前ら無駄口を叩いてる暇があるならさっさよ武器弾薬や修理に使えそうな部品を探せぇ!』

『あーはいはい、懐かしい場所だったので感傷に耽っていたというかー…』

「…っ…了解しました…」

 

 それを遮るように割り込んできたマードックの怒号に、ネーナは即座にいつもの調子へ戻ったが、キュルケは別時間軸で見せたような気丈に毒を吐く素振りを見せなかった。

 

 

 

 

 

 〇C.E(コズミック・イラ)71年1月29日夕刻(帝国暦952年1月29日夕刻) プラント小銀河 アプリリウス市 首都星系アプリリウス・ワン 第一プラント 最高評議会ビル○

 

「…今日の分の会議は終わったか…」

「だが、今回も穏便には終われなかった…。主に兄上が後押ししたせいで…」

「いや、君が悩むことじゃない。むしろ今の状況では君の兄う…ザビ古代文明研究委員長の言うことはもっともだろう。ところで今回の休暇はどうするんだ?」

「ああ、私も墓参りを兼ねてクリュセの方に行こうと思う。それと、復興がどれだけ進んだのか…友人がどうしてるかも見てみたいし―――」

「アスラン、ガルマ、何をしている?」

 

 アークエンジェルのゼミーシュルにおける補給活動でそのような口論が起きてから数時間後、本日の最高評議会が終わった後でガルマとアスランは会話していたが、そこでギレンに呼び止められた。

 

「―――いぃ、お声をかけていただき光栄ですギレン・ザビ古代文明研究委員長。何の御用で?」

「私とザラ国防委員長もムンゾ・サーディーンへ行く途中でユニウス・セブンの惑星クリュセに寄らねばならないからな。二人とも、そちらへ行くのなら一緒に乗ったらどうかね? 第76便だから出発は2時間後だ」

「ご厚意ありがとうございます。それでは準備に取り掛かります」

 

 それにガルマとアスランは驚きつつも厚意を恭しく受け取り、直ちにその場を離れた。

 

「ギレン、あの二人が持ち帰った例の情報は?」

「ええ、ご安心をザラ先生。向こうの新型MSのパイロットがアーヴ…それもご子息と私の弟が懇意を結べていたが昨年に亡くなられたはずの帝国の王子というのは伏せています。まだ確証は得られていないのもありますから」

「それでいい。あの場で公表しても穏健派の時間稼ぎに使われるだけだ。これからの調べで確証を得たならば帝国への仲介の依頼に…今はそれよりもムンゾ・サーディーンで発見された()()()()()()の状況だ」

「それにつきましても順調ですよ。血のバレンタイン以降も続くナチュラル共の援護射撃のおかげで、帝国から我々の理想に賛同してくれた増え続ける移住者には有望な科学者や技術者、魔術師も多いので…」

「何だね? また二人して扇動の下準備かね?」

 

 少年二人の背が小さくなったところでパトリックとギレンは皮肉も交えて自分達で進めているある計画の現状について話し合うが、そこでシーゲルが苦虫を噛んだ表情で割り込む。

 

「こんな戦争を長続きさせられんのは我々も同じだ。それなのに戦火を煽る算段ばかりしてどうする?」

「…だからこそ見過ごすわけには行きません。我々が切り開く銀河世界の新たな道…それを潰さんとする者達を…!」

 

 そのシーゲルの苦言に、ギレンは憤りを隠さない眼差しを添えてそう言い返した。

 

 

 

 

 

 〇C.E(コズミック・イラ)71年1月29日夜(帝国暦952年1月29日夜) 銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 アーヴ帝国所属半宇宙船型軌道都市ゼミーシュル○

 

「…やっと武器弾薬の保管庫区域も見つかった。まー規格の違いで主にエネルギーや部品の調達が限度だが…」

「それでもまーあのネーナ嬢ちゃんが見つけてよかったですよ。見つかるまで、酸欠で死んだ仏さん達が大勢いる部屋や、そうなる前に集団で自決して血があちこちについている部屋とかえぐいところばっかだったんですからー…」

 

 プラントでお偉方三名の間で穏当ではない空気が流れて数時間後、アークエンジェルのゼミーシュルにおける補給作業は進み始めていた。

 

「…早くこんな作業…終わらないかな…!?」

 

 そうした作業を進めているメンバーを、キラはストライクガンダムで警備していたが、そこで最近破壊されたと思わしい民間船らしき宇宙船を望遠カメラで発見する。

 

「…まるで白い鮫みたいで綺麗な形…この壊れ方は戦闘かな…。あ、名前が船体に書かれているな…アーヴ語で…理想郷(フェールヴ)…どうしてこんな所に…!?」

 

 キラはそれを不思議に思うが、船体の影より強硬偵察用ウィザードを装備したザクが姿を現すと表情を引き締める。

 

「…!? ザフトのザクが…!? どうしてこんな所に…!? アークエンジェルかこっちの作業船が見つかったら…!?」

 

 キラが機体をスペースデブリに隠してビームライフルを構えると、そのザクのパイロットと思わしい人物が出てきて、その顔も望遠カメラで見てしまってあることに気付いた。

 

(…青い髪に…額まで伸びた耳飾り…? アーヴ系…? 見た目と感じからして…まだ私くらい…!?)

 

 その姿を注視していくにつれて、キラの脳裏に今まで撃墜してきたザフトのMSの姿が思い浮かぶ。

 

(…そうだ…私が…今まで落としてきたMSにもあの子みたいに…人が乗ってたんだ…。お願い…撃ちたくないから…こっちに気付かないで…早く行って…!)

 

 第三者から見れば何をいまさらという苦悩だが、当事者であるキラにとって避けきれない罪の意識と葛藤がその願いを後押しするかのように、それがかなったのかザクはパイロットを収納すると彼女に気付いたそぶりを見せないまま別の方角を見やってスラスターを吹かし始めた。

 

(…よかった。そのまま行って…!?)

 

 だが、キラがその安堵を浮かべた直後にザクは何かに気付いた様子で方向を急に変え、その方角にある瓦礫からアークエンジェル側の宇宙作業用ポッドが出てきた。

 

「!? そんな!? 何で気付いたの!?」

『キャアアアア!?』

 

 それにキラが運命を呪いだすも、それに構わずザクはビームライフルを放って、それで爆発したデブリの破片が当たった衝撃で揺れる宇宙作業用ポッドからキュルケの悲鳴が響く。

 

「…っ…! 馬鹿…!」

 

 キラはもはや見てみぬふりをすることが出来ず、がら明きの背からザクを撃ちぬいて火の玉に変えた。

 

『…よ、よくやったなキラ! こっちもやられるかと思ったぜ!』

「…あ、ぁ…アアアァ……っ?」

 

 その事にキラが高まる罪悪感で俯いて、近くで別のポッドにて作業していたマードックからの感謝が届かなくなりそうになるが、彼女の鼓膜を救命信号が振るわせてきて現実へ引き戻した。

 

「…帝国の文字? あの船の…?」

 

 その信号を発している救命ポッドに、キラは何故か今は倒れてこの場にはいない友人に近しい気配を何故か感じた。

 

「…全く、拾い物が好きなのは彼だけではないらしい」

 

 数十分後、アークエンジェルのMS格納庫にキラがストライクで回収した救命ポッドの姿があり、それを取り囲む兵士に混じるナタル・バジルール大尉が嫌みを口にしていた。

 

「…どうだ嬢ちゃん、開けられるか?」

「待ってください。リュールほどのものはそうそうないけど…アーヴの人達の電子防衛プログラムは難解で固いからー…あ、いけそうかな…あ、開いた…」

 

 その救命ポッドにキラは電脳を有線で繋いで四苦八苦していたが、ようやく解除できたようでポッドのドアが開き始め、兵士達は一斉に銃口を向けた。

 

『ハロ! ハロ! 元気!? 元気カ!?』

「「「「「????」」」」」

 

 だが、開いたドアの中から出てきたのは二枚の小さな羽らしきパーツをパタパタさせて、整備の都合で無重力状態を維持されているMS格納庫に飛び込んできたピンク色で球体をしたペットロボットで、目にしたスメラギら銀連兵は拍子抜けした表情を浮かべてしまう。

 

「こんばんわ、お疲れ様です」

「「「「「!!!???」」」」」

 

 そのペットロボットを追う形で、桃色のウェーブロングヘア―と水色の大きな瞳で朗らかさと優美さが調和した十代半ばの美少女が白基調のSF風ロングスカートドレスの格好で現れ、アークエンジェル側のクルーを驚かせた。

 

「ちょっとラクス、無暗に出るのは危ないよ」

「「「「「!!!???」」」」」

 

 続けて、桃色の髪の少女と同年代と思わしいが、アメジストの瞳を中心に女神の彫像が命を得たような美貌を持ち、青黒い夜空の星々に照らされつつもそれを映し出した水面のような流れる長髪から時おり見える横に伸びた長い耳が似合う、青紫基調の長衣(ダウシュ)の上からでも調和のとれたスタイルをわからせる少女が出て、その面貌は人々に感嘆と震撼を同時に起こさせた。

 

「ちょっと二人ともー、何処の船かもわからないのに無防備過ぎよー」

「いやジョセさん、さっき急に船の横へ付けてきて船内へ無造作に乗り込んできたオルムスの人達相手に大暴れした身で言われても…」

「「「「「………………」」」」」

 

 続けて、今度は金糸で出来たような輝く金髪と青い瞳で古代地球のヴァルキュリアを思わせる元気さと明瞭さを見せる美少女、黒水晶を加工したような黒髪と一級の人形が人間に転生したかのような東洋系の美少女も登場し、周囲は只々圧倒されて驚きと憂鬱を滲ませた無言の表情を浮かべ続けるしかなかった。

 

「…う…ウゥ…? あ、あれ…何で…僕…ベッドに魔術封じ術式仕込みの鎖で縛られて…え? な、何でジョセ…僕の上に跨って…? え…!? どうしてそこで服を脱ぎだして…目も怖いし…!? あ! 深雪にルルいいところに! た、助け…え!? 何でそんな変質者を…み、見たみたいな顔で後ずさるように逃げー…!? ジョ、ジョセ!? 何か後ろから桜色の髪が揺らめいて瞳が深海に繋がってるような水面みたいな子が迫ってきてるんだけど…!? だ、誰でもい、良いから助けてぇぇぇぇぇ……」

「ど、どんな夢を見ているのかしら…妙に現実味のある声音してるけど??」

 

 一方その頃の医務室では、診療ベッドの上で意識を失っているままのリュールが大量の脂汗を滲ませた苦悶の寝顔を浮かべて身を捻じらせながら色々意味不明なことが混じる寝言をつぶやき、それを診ているフレイは怖さと同時に怖いもの見たさの野次馬根性が働いて羞恥から薄朱色に染まった顔で目を離せなくなっていた。




次回は、今回登場したあの種ガンのピンクの歌姫含めた美少女達が齎す各所での影響が描かれます。
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