星界の輪廻   作:oosima

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今回は、あのピンクのお姫様に本作における半オリジナルアブリアルな王女様によって痛むアークエンジェルの胃の様子が中心になります。


067 敵軍の歌姫と帝国の王女

 〇C.E(コズミック・イラ)71年1月29日夜(帝国暦952年1月29日夜) 銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 アーヴ帝国所属半宇宙船型軌道都市ゼミーシュル付近 銀連軍宇宙戦艦アークエンジェル 取調室○

 

「…救命ポッドを発見して救出してくださり、まずは百の感謝を。私はアブリアル・ネイ=ラムサール・アリエス子爵(ペール・アルィエシュ)・ラムレルーシュと言う」

「「「「……………(はあぁぁ)」」」」

 

 ゼミーシュルでのザフトMSとの交戦、その直後に発見された救命ポッドから救出されたラムレルーシュの名乗りに、アークエンジェル側の指揮官であるスメラギ・李・ノリエガ中佐、艦長マリュー・ラミアス少佐、MS・戦闘機隊指揮官ムウ・ラ・フラガ少佐、火器管制指揮官ナタル・バジルール大尉は内心で酷く疲れたため息を吐いていた。

 

「私はラクス・クラインです。こちらはお友達のハロです」

『ホナナー』

 

 ラムレルーシュの隣に座る桃色の髪が似合うラクスが、スメラギ達の心配など関係なしにほんわかとした様子で自己紹介する。

 

「ノルド連合王国のジョセフィーヌ・G・ニュートンです。ニュートン家本家現当主です」

「司波深雪です。日本皇国関東魔法科高校に入学予定だったのですが…」

「あ、お前さん確か儂が中川と共に会いに行った十師族である四葉家現当主真夜さんの姪っ子のか。それとピンクの嬢ちゃんはプラント建造の時に儂が知り合って今は議長をやっているシーゲルのおっさんの嬢ちゃんか」

「まあ、父のシーゲル・クラインをご存じで?」

「え、叔母上をご存じでー…あ…」

「「「「…………はあ…」」」」

 

 残りの二名の名乗りと身元も、先の二名ほどではないが十分すぎるほどにストレスをスメラギ達に及ぼし、とうとう堪えきれずため息を吐いてしまう。

 

「…ラムサール…確かー、儂も中川の伝手で会ったことのある帝国の皇太子の名前にもそれが混じっていたようなー…」

「ああ、皇太子ドゥサーニュは私の父だ。もしかして父が言われた眉毛が繋がるほど濃い皇国の侠気のある警察官の知り合いというのは貴方か?」

「え、儂のことを聞いたことがあるのかあいつから?」

「…はぁ…」

 

 取調室の隅にいた両津が何となく口にして行く言葉にラムレルーシュは普通に意外そうな反応を見せ、両津もそれに知人の身内に対する何気ない興味を返すが、それら和やかな感じに相反するムウの疲れたため息が吐かれる。

 

「…それでは王女殿下、なぜそのような御身があのような所を漂流して…?」

 

 スメラギの問いに、ここアークエンジェルに連れられてからずっと平静を保っていたラムレルーシュの表情に始めて少しだけだが翳が生じる。

 

「私達はゼミ―シュルの追悼慰霊の下見のために来ていた。昨年のあの事件が起きてから我が国も手を尽くして探してきたあれが、この星系を保有する流星系の政府より発見されたという連絡が来たんだ。それで両国政府の交渉で調査の許可が下りて、帝国から官民共同で調査隊が送り出されることになって、私は技術者及び追悼式における皇族代表候補として参加させてもらえた。彼女達は追悼式における関係国の青少年代表として下見に加わっていた身だ」

「それでー、なぜ貴方達は救命ポッドに…?」

 

 ラムレルーシュのここへ来ていた理由の説明を受けて今度はマリューが問いかけるが、次にジョセットが口を開く。

 

「私達の船は流星系の調査船の随行を受けてゼミーシュルの周囲を周回していたのですが、そこでサマリアの民間船と接触したのです。それで彼らは我々に向けて目的を問いかけてきて船を強引に横へ着けてきて、詰問の口調を強め続けてきたのです。そこで我々はやむなく通路を繋げて交渉に臨んだのですが、我々の身元と目的を知ると機嫌を悪くしたのか、船を臨検するとして強引に乗り込もうとしたので制止を掛けようとしたら実力行使を図ってきたので、やむなく防衛行為をしながら並行して我々は流星系の許可を得ていることを説明したのです。ですがその弾みで向こう側はどうやら無許可でこの宙域へ来訪していたことが発覚したので、我々は報告義務に従って近隣の政府機関に向けて信号を発しました。ですが彼らはそれを知るや武装を持ち出して船内への侵入を図ってきて酷いもめ事になり、私達も防衛行為に加わっていたのですが周囲に押されて共に救命ポッドへと移動させられたのです。あの後で何とか場は沈静化して収まっていればよいのですが…」

「「「「「………………」」」」」

 

 そのジョセの詳細な説明と最後に付けられた願いに対し、アークエンジェル側は言葉を返せなかった。

 何故なら、彼女達が乗っていたアーヴの民間調査船理想郷(フェールヴ)と、その随行船と思わしい流星系ナンバーの船、その二隻に武力行使に出たサマリアのものと思わしい民間船らしき残骸が発見されていたためである。

 

「…なんでこの船にこうも立て続けに…?」

 

 そう愚痴を漏らしながらマリューが見やった窓の向こうに映しだされるゼミーシュルに重なる形で、キラ達が死者への弔いのために紙で作った花や折り鶴が漂って来たが、それは今現在の彼女達の苦境を皮肉っているように見えた。

 

「…補給の問題がもうすぐ解決しそうになるのにこうなるとはなー。後で中川と麗子に色々動いてもらわんとなー…」

 

 十数分後、4人を監視と警備が付いた部屋へ移動させた後、艦橋で事態の重さを幾分か認識した両津の面倒くさそうな声が上がっていたが、周囲はそれ以上に頭を抱えていた。

 

「…とりあえず、あの子達もこのまま行く先のアラスカ星系の銀河中心領域艦隊本部に連れていくしかないでしょうね…」

「ですがノリエガ中佐、そのようなことをすればー…」

「そりゃまー4人とも、特にピンクとブルーのお姫様二名は大歓迎されるでしょうなー司令殿に艦長殿、今現在交戦中のザフト議長クラインの娘と、絶賛非好意的中立国化帝国の皇太子の娘だぜ。俺らの所のお偉いさん達からすりゃー政治的利用価値はめっちゃ高いだろー」

「そうですがフラガ少佐、あのような民間人の少女達を巻き込みたくはー…」

 

 艦橋内部での話し合いはこれからあの急且つ重すぎる来訪者4名のこれからの処遇に対する予想で重さを増していき、メンバーの多くが苦渋の表情を強めていく。

 

「それを言われるならば、今現在艦内で軍務作業に従事しているあの学生達もまだ子供に民間人ですが?」

 

 ただ一人だけナタル・バジルールはその空気が含む矛盾を冷静に指摘する。

 

「…バジルール大尉、それは…」

「彼女達はプラントを不法占拠する反逆勢力トップ、帝国の皇太子、ニュートン家、四葉家それぞれの娘です。その時点ですでにただの民間人ではありません」

「「「「…………」」」」

 

 彼女が指摘するその事実に、4人は表情の険しさを強めこそすれども言い返すことは出来なかった。

 

 

 

 

 

 〇C.E(コズミック・イラ)71年1月31日朝(帝国暦952年1月31日朝) プラント小銀河 ユニウス市 ユニウス・セブン 第二惑星クリュセ 第一大陸○

 

「…ここに来るのは、当時防衛専門士学部…今は士官学校になったあそこを卒業した後に行った時以来か…」

 

 アークエンジェルが別時間軸よりも漂流者達の扱いで頭を悩ませ始めたその時より二日後、高速宇宙船に乗って血のバレンタインの現場の片割れである惑星クリュセにあるその地を、実質休暇中のガルマとアスランは訪れていた。

 

「…見た感じは、この土地の復興は大分進んでいるが…」

「ああ、だが、あの時にG弾をゼミーシュルに撃ち込まれて発生した疑似ゲート暴走現象による高エネルギー放射で生じた…“業火の極光(オーロラ)”による汚染の浄化が住んでいない土地がまだ…」

 

 二人が車を走らせているその地域の農地は平穏そのもののように青々とした農作物で埋め尽くされているが、内海を挟んで見える向こう側の土地は焼け焦げたばかりのようで、まばらに雑草が何処かしら異常を生じさせている状態で生えているだけであった。

 昨年に起きた血のバレンタインで、ゼミーシュルの動力源である超大型粒子炉と銀連のG弾爆発が接触した結果、そこで生じた疑似ゲート暴走現象の高エネルギー放射はクリュセの地表上に緋色のオーロラを思わせる閃光となって降り注ぎ、多くの人々を土地ごと焼き払って放射能など重度の汚染を残した。

 今現在、魔術や科学を複合的に合わせた放射能除去ナノマシンも用いた土地除染で復興は進められているが、未だに被害を受けた領域の半分近い土地には汚染が残されていて立ち入りも制限が加えられている。

 

「あ、着いた」

「ありがとう、付き添ってくれて…」

 

 アスランとガルマの二人がたどり着いたのは、その地のバレンタイン及びその後の復興作業で亡くなった人々が埋葬された集団墓地であった。

 

「…ただいま、父さん、母さん、兄さん、マリル義姉さん…」

 

 その一角にあるザビ家の弧状列島式墓に墓参りした。

 中には彼の母でこのクリュセの開発に貢献した地質学者あるナスル・ザビと亡兄サスロの遺骨を納めた骨壺以外は、誰の遺体も眠ってはいなかった。

 他の二人はあの血のバレンタインで遺体すら残せないままこの世を去らされたためだ。

 同行しているアスランはそれを沈痛とした表情で見守るしかできなかったが、そこである変化に気付く。

 

「…これは帝国のハイド伯国にある青薔薇の技術提供品を栽培したもの…ということは…」

 

 アスランがその手向けとして植えられたと思わしい花に触れようとすると、新たな客がその場に現れた。

 

「あら、アスランにガルマ君、あなた達も墓参りに来ていたの」

「…母上」

「レノア先生」

 

 この墓に埋葬されているデギンの妻であったナスル・ザビがまだ帝国に属するアーヴであった頃からの友人であり、アスラン・ザラの母にしてパトリック・ザラの妻であるレノア・ザラが、青い薔薇の花束と墓参り道具を入れた木桶を手にした姿で現れた。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 銀連軍宇宙戦艦アークエンジェル○

 

「………………」

 

 アスランとガルマがクリュセでの墓参りにてレノアと久方ぶりに再会してから数分後、キラとリュールはアークエンジェル艦内の廊下をそれぞれ二人分ずつの朝食を乗せたトレイを手に進んでいた。

 

「…あ、リュース…じゃなくてリュール…」

「どうしたのキラ?」

「…あのとき、ゼミーシュルであの子達が乗っていた救命カプセルを見つける前に…ザクを見つけたよね?」

「うん、まーね。けれどそれがー…あ」

「…うん、もしかしてあの子達を探していたんじゃ…!?」

 

 その途中でキラが浮かべたある推測にリュールも少し気まずそうな表情を浮かべたその時、二人が進む先から喧騒が響いてきた。

 

「…え、な、何だろ―――!?」

「おい! そこを退けよ!」

「俺らが取り調べてやるって言ってんだよ!」

「我が艦内では民間人による警察権行使は認められていません!」

「―――ぉ…え?」

 

 それにキラが戸惑いながら目を凝らすと、廊下の先にある目的地の部屋の少し前で、アークエンジェルの警備兵と民間人達が揉めていた。

 

「…え…ちょ、何をしているのあの人達…!?」

 

 キラがそれに危うい空気を感じつつも近づこうとした時、彼女は後ろ髪から引っ張られてそれを止められた。

 

「ストップ! 今はあそこへ近づいたら駄目よ」

「フ、フレイ? どうして?」

「説明するから来て!」

「あー、その通りにした方が良さそうだねー…」

 

 二人はフレイに促されるままその場を離れていく。

 

「艦内自警団?」

「そ、但し本人達が自称しているだけで非公認のがね」

 

 数分後、フレイの部屋に彼女とキラにリュールを含めた若人が何人も集まってそれについて話し合っていた。

 

「どうしてそんなのが? それに何でそんな人達があの子達に会おうとしているの?」

 

 その話に対して当然の問いをミリアリアがすると、リュールが何かに気付いた表情になって口を開く。

 

「…そう言えばあの人たち…見た目はサルース系かユーロ系の人が混じっていたけど…確か話してる言語や訛りからして…オルムス人かそれ系のサマリア人か?」

「え、どうしてその人達があの子達の所へ怖そうな顔で集まって…?」

「キラ、オーブには名義はどうあれ難民の人は大勢移り住んでいたでしょ。ヘリオポリスにだって」

「そうだけどー、フレイそれが…?」

 

 話が進んでもキラはまだ何か今一つ掴み切れない表情で、代わりにリュールが話の深堀を始める。

 

「…今現在は銀河のあちこちでBETAのせいで多くの星が更地にされて大勢難民が出ているのは知ってるだろう。それにザフトが銀連圏の多くにNジャマーをたくさん撒いてエネルギー不足とそれによる経済大不況が拍車をかけているのは知ってるよね」

「それはそうだけどー…それが?」

「そうして出てきた難民の中には、サマリア以外にも銀河中に散って暮らしているオルムス人達もいるんだ。彼らの多くは第4次星界大戦がはじまるまでは、サマリアかその最大同盟国の大星洋連邦に難民として来てたんだ。特に今の大星洋連邦大統領は歴代で最も親サマリア的大統領として知られてて、サマリアの銀連圏条約違反の入植活動の容認や首都星モーシェで首都のレスレクシオン移転を認めるなどしてて、前からサルース人とかの反オルムス感情を燻ぶらせていたんだけどー。その火に油を注いで両国まで大損させる事態が去年に起きただろ?」

「去年にー…あ」

「そ、ブルーコスモス過激派繋がりで、サマリア軍が大星洋連邦開発のG弾を入手して、それをユニウス・セブンに来ていたゼミーシュルで使っちゃってその全貌が発覚しちゃった血のバレンタイン」

 

 そのリュールの説明で扱いが悪くなっている国の出自であるフレイが、疲れた表情で説明へ再度加わる。

 

「…元からサマリア星域に住んでいたサルース教徒のカナン人を弾圧とかしていたけど昔のジェノサイド被害者の歴史で押し通して不満を抑え込んでいたのに、ついにあの血のバレンタインに対するエイプリルフール・クライシスや帝国の経済制裁で銀連圏全体が大損害を受け、それで今まで黙認やら小さめの非難しかしてこなかった大星洋連邦やE.Uの人達の間でもオルムス非難が爆発、更にBETA戦の戦況悪化でサマリア本国も危なくなりそうで今までほど庇われることもなくなって、オーブにはオルムス人も大勢逃げ込むようになっていたから…。でも、逃げた先は比較的安全でも非難ややっかみは止むわけじゃないし…」

「その人達でヘリオポリスに移りすんで、今はこの船に逃げ込んでいる人達が、あの子達にー…」

「そ、不幸の元凶が目の前に来たら文句をぶつけたくなるのが人情っていうものでしょ」

「…で、でもフレイ…そんなことしたらー…まさかとは思うけど…」

 

 ようやく現状の危うさに気付いたキラだが、同時にその危険度の高さにも気付いて顔を引きつらせ始め、弱々しい視線をこの場にいる幼馴染に向け始める。

 

(…こっちに来るよなぁ、そもそもゼミーシュルでやらかされた時点で、開戦にいたってない方が奇跡だし…。戦力だって帝国は異夷(ゼビーシュ)戦初期で戦線を早々且つ大幅に整理して余裕があるから…、()()ならとっくに大星洋連邦とサマリアに宣戦布告して潰しに行っている頃合いだ…あれ? ()()って僕は何を言って…!?)

 

 キラが抱く恐れをリュールは当然の懸念とし感じるも、その弾みでまだ戻っていない記憶の琴線にも触れられたのか表情に戸惑いの色が浮かぶが、そこで今その懸念の材料となっている存在の気配を覚えた。

 

「すみません。食堂が何処にあるのかお聞きしたいのですけどー?」

「………………」

 

 リュール達がいるフレイの部屋のドアを開いて、ほんわかとしている様子のラクスと何とも言えない表情のラムレルーシュが姿を現したのだ。




最近に知ったのですけど、原作のラクスってあの食堂には天然じゃなくてそうした方が良いって感じで出向いたようですね。
あの頃から神経が凄いというか…。
次回は、種でのあの場面に相当する今回の最後の場面での再登場の続きと、彼女達が及ぼす影響を受ける各方面の様子が中心になります。
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