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「すみません。食堂が何処にあるのかお聞きしたいのですけどー?」
「………………」
「「「「「……………」」」」」
アークエンジェル艦内の兵舎区画の一角にあるリュール達がいるフレイの部屋のドアを開いて、ほんわかとしている様子のラクスと何とも言えない表情のラムレルーシュが姿を現れ、それを目にしたリュール達は初め何が起きているのか脳が追い付けない表情をしていた。
「…ちょ!? 何でこの子達がここにいるわ…ぐほぉ!?」
「誰かその子達を入れて! ドアも閉めて!」
「は、はい!」
「イ、 イエッサー!」
まず初めにカズイが驚いた大きな声を上げようとするも、フレイに腹パンされて黙らされ、彼女の要請を受けて日光がラクスとラムレルーシュを室内に引き入れ、リュールがドアを閉めた。
「な、何であなた達がここにいるわけ?」
「…実は私達、先ほど起きたばかりで恥ずかしながらお腹が空いていて喉も乾いていましたので、外の方に食堂へ通してもらおうと尋ねたのですが、兵士の方々は他の人達と口論をなさっていてとても聞ける状態ではなくて、他の通りかかった黄色いアフロをしている方に場所をお聞きしまして向かったのですが、途中で場所がわからなくなりましてここに…」
「私は先に起きて顔を洗いに場所を教えてもらって出て済ませて戻ったところで、彼女が出ているのを見てとりあえず他の人々を驚かせそうだと思って魔術で姿を消して、一旦こちらに来て…」
「…はぁぁ…」
この場にいる理由をフレイは問い詰めるが、その返された内容とラクスののんびりとした口調に今度は呆れてしまう。
「…ま、まー取り合えず…ここに食事がありますんで一緒にお持ちしていきますから元々居た部屋に戻りましょ…!?」
続けて言葉を取り戻したリュールが朝食を乗せたトレイを持ちつつ、二人をこれ以上面倒事に巻き込まれる前にその部屋へ戻そうとドアを開けるが、急ぎ過ぎていたことからくる警戒心の欠如でその前を通りかかっていたある人物と出くわしてしまう。
「…え…ぁ…あ…アーヴゥ!?」
その通りかかった人物である眼鏡を変えた少女シャアラの悲鳴を交えた大きな声は、廊下を伝ってすぐに周囲の部屋へ広まった。
「…ん? この声は…!?」
「おい! あっちにあの救命ポッドに乗っていたアーヴの娘がいるぞぉ!」
それはすぐに艦内自警団を自称していた一部の避難民にすぐ見つかり、彼らは棒を手にずかずかと乱暴な足取りで、リュール達のいる部屋を目指いて進みだした。
「ま、まずい―――!?」
「あ! 警備兵さん! こっちです!」
「―――い…あ、助かった…!?」
自称自警団の姿を見たリュールが顔をひきつらせた直後、フレイがとっさの判断で近くを通りかかった正規兵に呼びかけて仲裁を図ってもらおうとしたものの、それにリュールが安堵の念を浮かべた直後に自称自警団の一人が拳銃を持ち出してラクス達に向けてきた。
「ちょ!? MS強奪と言い銀連のチェック体制ってどうなってるの…!?」
それにリュールが再び顔を引きつらせつつも阻止すべく動こうとした時、自身の頬の真横を短くも濃密な冷気を宿した水気が超高速で擦り抜けるのを覚え、その直後に銃声が鳴り響いた。
「キャアアアア!?」
銃声が鳴り響いた瞬間にそれを招く理由になったシャアラだが、その彼女が次に目にしたものは、銃弾が自身の目と鼻の先で甲高い音と水面に走る波紋のようなものを広げながら宙で停止した姿であった。
「…え!? な、何が起きたの…!?」
シャアラが上げた悲鳴を聞いて駆けつけてきたルナがそれに驚きと戸惑いを露わにしていると、彼女はいつの間にか片手を自警団に向けて上げて、周囲に水で出来たような薄い膜を張った状態で人口重力下にも関わらず浮かぶラムレルーシュが光を失った深い紫色の瞳を浮かべている姿を目にした。
「そこの者達、どうして銃を向ける?」
「「「「「!!???」」」」」
そして その底が知れない深水の奥底より覗き見てくる得体の知れない人外の如きプレッシャーを添えたラムレルーシュの問いに、自称自警団達は初めて親の激怒に遭わされた童のようなのに近くも圧力はその比ではない怯えに身を支配された。
「…ゥ…う…うわああああああ!?」
その恐怖に身を支配された自警団員の一人がわなわな震えた手で拳銃の引き金を引くが、やはり弾丸は誰にも当たらず一発目のように宙へ波紋を広げながら泊っていく。
「そのような只の銃弾では私には当たらない。常にこの身よりそちらで言うプール一杯分の水を生じさせて周囲に身を守るための幕として張っているからな。今はこの人々にも当たらないように広げているからな」
「「「「「………………」」」」」
ラムレルーシュが静かだが深海のようにそこが知れなくて且つ巨大な威圧感を添えてそう語った頃には、周囲はもはやどう言葉を返せばいいのかわからず、動くことも出来なくなっていた。
「…! 警備兵さん! 耳を貸して…!」
「っ! わかった!」
その中でまず我を取り戻したフレイが同じく止まっていた警備兵に耳打ちし、現実へ引き戻してある作戦を伝えた。
「取り押さえろぉ!」
「こんなの何処から持ち出したか隠し通したんだ!?」
「うああ!?」
「は、離せよ!」
「なんで俺達なんだよ!? 向こうだろ!」
そして、警備兵達はフレイの要請通り別の通路から自警団員達の背後に回り込み、その身を拘束して武器を奪っていく。
「…そういうわけで王女殿下、あなた達にもお部屋へ戻っていただきたいのですがよろしいでしょうか?」
「ああ、ありがとう。ラクス、戻ろう」
「はい、そのようですわね」
別の警備兵達は緊張した様子でラムレルーシュ達と対峙するが、相手方は素直に受け入れた。
「…はあ、どうにかこれ以上は荒くは―――」
「ま、待ってください! 何でその二人がそんな何も拘束されないままなんですか!?」
「―――あ…!」
それにフレイが一安心しようとした時、その場に残されたままのシャアラが強めた怯えを隠せないままの表情でラムレルーシュを指さした。
「シャアラ、何を言って…!?」
「…コーディネイターの! アーヴの
「「「「「!!!!!!」」」」」
ルナがそれに戸惑いを覚えた直後、シャアラのその叫びは周囲、特にキラには衝撃とショックを与えて大きく凍り付かせて周囲を沈黙に沈めた。
「……そこまで不安ならあの二人が部屋に戻るまで僕が見張りながら送ってくる…」
「「「「「………………」」」」」
数秒後、周りと違い達観や諦観に近いがそれ以外の何かが混じる冷めきった表情でリュールがその場を二人と共その場を離れ、後にキラも無言で自室に戻っていくとが、誰もそれに声をかけることが出来なかった。
「…シャアラ!」
「ひっ!?」
リュールがラクスとラムレルーシュを引率して姿が曲がり角の向こうに消えると、ルナがキッとした表情でシャアラを見据えた。
「何でさっきあんなことを言ったの? あなた…ブルーコスモスじゃないって自分は言ってたじゃない」
「…そ…それは…でも、過激なことをする人はいるけどそれだってあのアーヴ達の方が酷いし…何よりあの人達の言ってること自体は間違ってない!」
「…え?」
ルナに問い詰めにシャアラは初め押されかけるが、途中で声を荒げて話の内容を変えだして彼女を戸惑わせた。
「…病気でもないのに遺伝子を操作したり…、ましてや他の生き物の遺伝子を組み込んでその能力を使えるようにしたり、他の種族との間に子供を作ったり、魔術なんて使って奇跡を勝手に真似したり…やっぱり、自然や神様の作ったこの世界を壊す…正しくない行いじゃない…!」
「「「「「………………」」」」」
「…皆も…! そうやって何も言えないってことは…本音ではそう思ってるってことでしょ…!」
「…シャア…ラ…」
そのシャアラの確かな怯えと反発がしみ込んだ叫びに周囲は俯いて視線を逸らすだけで、彼女が気弱で理不尽な圧迫に抗えない友人と言う印象が強かったルナはただ戸惑うだけであった。
「…そういうわけで、皆の食事はここに置いておきますので、何かあったらこちらにある室内電話から担当の方へお繋ぎください。もしも外部へ出なくてはいけない用事が出来ましたら、同様にして警護の人を付けてもらえますから…」
フレイの部屋で陰鬱とした空気が中を満たして数分後、リュールはラムレルーシュとラクスを二人の部屋へ戻した。
「あそこで皆さんとお話がしたかったのですけど…」
「止めておいた方が良い。正当なものや理不尽なもの問わず、“嵐神官に討たれれば
残念そうなラクスに対してラムレルーシュは冷静かつ憂えた表情で彼女を注意する。
「顔を会わせても話が通じないなら初めから会わせず口も利かせない方が実害が出ずに済む場合もありますから」
そのラムレルーシュの説明をリュールは諦観や達観に近いが全く同じとも言い難い冷静な様子で補足した。
「でも、あなたはお話をしてくださるのですね?」
「…まあ、理屈ではそう言っても根ではアーブだからって勝手な親近感が無意識に出ているかもしれませんね…」
だが、ラクスはそんなリュールの冷徹さに近い雰囲気でも、終始ほんわかとした感じで話し続ける。
「…ですが、そのあなた達の優しさはあなた達も含めて皆で同じく持ち合っているものではありませんか?」
「…まあ、少なくともこの子は…」
そんなラクスの語りにリュールは何処か虚ろさが目立っていた双眸に何処かいつもの抜けつつも元気な感じがいくらか戻った感じになり、ラクス達がいる部屋のドアを開いた。
「きゃあ!?」
「ほら、帰るよ」
「え、あ、ま、待ってー…」
ドアの向こう側で心配から盗み聞きをしていたが気付かれていたことに驚く様子のキラの襟首をつかむと、彼女をズルズル引きずる形で自室へ戻っていった。
〇プラント小銀河 ユニウス市 ユニウス・セブン 第二惑星クリュセ 第一大陸 レノア・ザラ邸宅○
「…あ、今日の夕食はロールキャベツか…」
キラがリュールにぞんざいに扱われていた頃、その二人の幼馴染みであるアスランは夕暮れの下にある母の邸宅の庭に用意された夕食を口にしていた。
(…やっぱり、皆で暮らしていた頃に食べていたカリダさんの方が美味しいな…)
その味から嘗ては身近であったのに、今では何よりも遠くなって非現実的な光景のように感じられる記憶をアスランが思い返していると、今の現実を告げる報せが入ってきた。
『軍本部のハーコート隊員より重要指令です。時差は13分23秒です』
「本部から?」
電脳空間で視界に映しだされたそのメールの通達に、アスランが胸騒ぎを覚えつつも即座にメールを開いた。
『お久しぶりアスラン君、こちらコモリ・ハーコート。あなた達へ軍本部からの緊急指令があります。今晩〇〇時××分の便に乗ってアプリリウス・ワンに戻ってクルーゼ艦隊に帰還し、アルハンド星系基地に臨時ゲートで向かって隣りのダミッド・デブリベルト星系へ調査任務に向かうことを通知します』
「…調査任務?」
そのメールから映し出された黑ショートヘアーで泣き黒子が特徴な数歳年上と見られる同じ赤服の女性の、親しげな口調だが穏便さを感じさせない内容の通達にアスランが困惑を覚えるが、そこで止めをさすように庭へ設置された空中投影式テレビの画面に緊急ニュースが映し出された。
『臨時ニュースです。一昨日1月29日の某時にて、ダミッド・デブリベルト星系で発見された帝国の移動可能コロニーゼミーシュル残骸での、追悼慰霊式の準備及びその事前調査のために現地宙域を訪れていた帝国の民間調査船フェールヴ号の残骸が発見された模様です。同船には帝国の追討慰霊団の皇族代表として同国王女の一人であるラムレルーシュ殿下、更に他国青少年代表枠で我がプラントの議長シーゲル・クライン氏の令嬢ラクス・クラインも乗船しており、今も捜索中で…』
「…!? ラクスが…!?」
それにアスランの戸惑いの表情は驚きへと変わった。
こんなのシャアラじゃないという意見が多いでしょうけど、この世界の彼女も色々ありまして…そのあたりの話も今後の流れに絡める形で出す予定ですので、今後も根気強い応援をお願いします。