星界の輪廻   作:oosima

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今回、主人公の母国の軍艦が久々に登場しますが、その艦艇の外見デザインはCOMICメテオ漫画版です。あの初代Gで某総帥と争ったその妹君は“宇宙島のガルマ君”寄りです。
それと、今回のお話の投稿後にお気に入り登録がついに百件に到達しました。
ありがたいのですが、そろそろこの作品の評価バーにも色がついてほしくなります。
時間がある時でいいので、お気に入り登録や感想投稿の他にも評価付与の方もよろしくお願いします。


069 重なる吉報と凶報

 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月2日朝(帝国暦952年1月31日朝) プラント小銀河 アプリリウス市 首都星系アプリリウス・ワン 第一プラント 国防委員会本部ビル○

 

「アスラン・ザラ、到着しました」

「ガルマ・ザビ、到着しました」

 

 レノア・ザラ宅で不穏なニュースを聞いてから二日後、アスランとガルマが休暇予定を大幅に繰り上げてザフトの軍本部に戻った。

 

「お久しぶり二人とも、今回の任務はもう聞いているわね」

「はい、姉う…失礼、キシリア・ザビ国防委員長補佐官」

 

 その二人を出迎えたのは、ガルマの姉で本来は古代文明研究委員会所属の研究者兼高官だったが、今回の大戦激化に伴って国防員会との連絡強化のために同委員会に移籍したキシリア・ザビであった。

 面貌はオレンジ色のショートヘアーを含めて本来は家庭的な温かさが似合うものだったが、情勢の変化などによる緊張の増加でやや険しさを増したものをしている。

 

「…はい、ですがキシリア国防委員長補佐官、我々には足つきの捜索及び捕獲もしくは破壊の任務が…」

「…あのねえ、婚約者の安否が気遣われるべき状況で真面目なのか冷たいのか区別しづらい反応はよしなさい。それに、同星系に出向いていた我が軍のザクが一機破壊された状態で発見されたわ。更にそれのブラックボックスを解析したら例の奪い損ねた銀連軍のMSらしき姿も確認されたのよ」

「!? 本当ですか!?」

 

 キシリアはアスランに向ける視線の険しさを呆れからやや強めたりしつつ、現状を説いて彼の憂慮と警戒を引き上げた。

 今現在、銀連軍でMSを採用している隊は限られており、更に事件が起きた位置からして最優先で幼馴染たちが今はいるアークエンジェルが思い浮かぶためだ。

 

「…それはまあそうですが、だからと言って帝国の王女殿下のお一人がこの状況では無関係というわけではないでしょう」

「ええ、そうよガルマ。今現在、帝国はどちらからの和平交渉の仲介依頼も拒否している状態だけど、今現在の皇太子は中道左派で今現在の情勢の危うさを理解しているわ。その彼女をこちらで救出に成功したとなれば…」

「彼女と共にその姫君をヒーローのように助け、帝国(向こう)をこっち側へ引き寄せろということですか…?」

「……………」

 

 だが、その中でもアスランがこの状況へ感じるいかがわしさから口にした内容に、キシリアは言葉こそ発さなかったが眉間の皺を寄せた。

 

「あるいはその亡骸を号泣しながら持ち帰って涙ながらに訴えて青き巨竜も戦火におびき寄せろ…か」

「「「!!??」」」

 

 だが、その気まずい雰囲気のわだかまりは突如として割り込んできたその言葉で、三人が同時に抱いたギョッとした寒気で掻き消されてしまう。

 

「クルーゼ! 冗談でも縁起ではないことを言うでない!」

「これは失礼しました。ま、何はともあれ君が行かねばこの話は格好がつかないということを言いたいのさアスラン」

「「……………」」

 

 キシリアの叱責におどけた態度を見せるクルーゼだが、それはアスランとガルマが彼に対して時おり感じる得体の知れなさからくる不安をこの場では鎮めることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月6日朝(帝国暦952年2月6日朝)銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 銀連軍宇宙戦艦アークエンジェル○

 

「…どう? すこし遠回りになったけど…自然妨害電宙域の薄い場所を通っているけど…?」

「…さっきから何度か近づきつつある反応は微弱なものを数度か拾えてるんですが…まだザフト側の欺瞞情報ではないという確証を得られませんから…」

 

 クルーゼの笑えない冗談がアスラン達をギョッとさせて4日後、ダミッド・デブリベルト星系を航行中のアークエンジェルで、スメラギ・李・ノリエガ達は艦橋の通信機画面とにらめっこをしていた。

 

『…こちら…銀連軍…第八艦隊…先遣艦隊旗艦…モントゴ…』

「! 繋がりましたぁ!」

「味方の暗号パルスよ!」

「「「「「やったアアアァ!!」」」」」

 

 そして、通信機よりノイズ交じりだが臨んでいた反応が出てきて、艦橋は瞬く間に喜びで満たされていった。

 

「ハルバートン中将の艦隊に繋がったのね!」

「ええ! ノイズからしてまだ相当に遠いですが…!」

「これでー安心できますねー」

「ええ、本当にー…」

 

 艦橋で発生したその喜びは艦内へすぐに広まっていった。

 

「…良かったー、艦隊と合流できそうでー…ってあれ? もういる?」

 

 数分後、キラはストライクなどMSの整備や調整をするべくMS格納庫に入ったが、そこには既に到着して作業に従事しているリュール達の姿があった。

 

「え、何でもうこんな朝早くから…?」

「不安だからだよ。艦隊と合流できるといってもこれまでのザフトとの交戦の経緯を調べるとその前にまた一戦くらいあっても不思議じゃないでしょ」

 

 キラの暢気な問いにリュールはこの状況で当然の懸念を口にする。

 

「え、ここまで来て…?」

「逆にここまで来てだからこそだよ。ザフトにとって自分達のアドバンテージを失わせる材料を持っているこの船が艦隊に合流されるのは何としても避けたいでしょうが。だからキラ以外の皆がもうとっくにここへ集まって作業中なの」

 

 リュールが指さした格納庫内部では、セレーナたちモルゲンレーテ所属メンバー組や、両津などアークエンジェル艦内で志願した面子が機体の整備や画面とのにらめっこをしていた。

 

「そうそう、それで今もアーヴ坊主が司令達に掛け合って志願者を再び募ってそれで来た連中が今はナチュラル用OSや人機複合同調装置の試験を受けてくれてるからな。ほら、あっちで」

 

 マードックが指さしたMS用に改造されたシミュレーター装置で、新たな面子がMSの訓練を受けていた。

 

「…うわ! 慣れるのが早いなカオル。反応スピードなら実戦と相手と変わらないのに…」

「まだシミュレーター上の結果なんだからいちいち目を丸くするな」

 

 そこにはヘリオポリスでの対アルテミスゲート前での戦闘で発見されて保護されたメンバーの一人である、黒髪と同色の瞳でクールな印象を与える少年カオルの姿もあった。

 

「うわァアアアア!? 避けるなよぉおおおお!?」

「敵さんでそんなの聞いてくれるのがいるわけないでしょうが! そんなので実戦に出たら十秒で死ぬわよ!」

 

 それとは対照的に、カオルやリュールへの対抗意識で出たハワードはシミュレーター画面だというのにまるで実戦で死にかけているような悲鳴と泣き顔をし、何処からかもって来た竹刀を振るうネーナに叱られていた。

 

「最初はアルテミスで保護した連中にもさせてみたらッて坊主が言ったけどよ。さすがにまだ早いって司令と艦長が言ってそれはなしになったぜ…?」

 

 それにマードックが幾分か補足したところで、何処からか澄んだ湖面に浮かぶ妖精のような歌声と、深夜の澄んだ海の精霊が奏でているように澄んだ水を思わせる竪琴の音色が響いてきた。

 

「…この歌や音色は?」

「ああ、あのプラントから来たラクスって子の歌と、アーヴのお姫様が借りてきたお盆の水に魔術で形を与えて作った竪琴の演奏のそれよ。艦内にいる人たちの多くが疲れた顔ばかりしてるからそれを和らげたいってね」

 

 その声にキラが戸惑うと、彼女と同じピンク色の銀連軍少年兵士官服に身を包んだジョセが説明した。

 ジョセと深雪は交戦中のザフトもしくは非好意的中立国の帝国ではなく、どちらとも悪くない関係を維持している中立国の国籍保持なので、艦内行動では自由を与えられて今は不足している艦内作業員の臨時志願兵として協力していたのである。

 

「…でも、どっちも本当に綺麗な音色…」

「はん、生まれる前から金と魔術でインチキかけてりゃそうなるだろ…!?」

 

 それにキラが素直に賞賛し、ハワードが毒づこうとしたところで艦内を緊急警報が鳴り響いた。

 

『緊急警告! 同艦隊より×時××分△△度○○キロ宙域点にて所属不明の艦隊反応を確認! 今現在調査中!』

「!? ちょ!? ここまで来てザフトがぁ!?」

「まだザフトと決まったわけじゃない! 落ち着いて…」

 

 これまでの経緯から艦内は騒然となって恐れの色が強まる。

 

「艦隊の識別反応は割り出せる!?」

「この宙域はデブリから発せられるノイズが基本酷くて今もそれが強まってて…あ! もう少しで出ます!」

 

 その報せを真っ先に受けた艦橋はとりわけ緊張と恐れが強まっているが、それは次の報せを受けてある種の安堵と別の緊張に変わる。

 

『…こちら帝国星界軍赤閃(せきせん)艦隊。我々は流星系表敬訪問のためこの宙域を航行中である。この信号を聞いているものは…』

「!? 帝国の…!?」

 

 その信号を聞いてスメラギの声音に安堵と別のこわばりが生じる。

 

「…とりあえずザフトのものではないようで、我々にはまだ気づいていないか関心を向けているようではなさそうですが…」

 

 スメラギ達の脳裏に今現在この艦内にいるアーヴ、特にあの王女の姿が特に強く浮かぶ。

 味方の艦隊が近づいてきたことへの安堵からの反動で、アークエンジェルの中心は対ザフト戦とは異なる緊張と恐れに支配された。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 帝国星界軍(ルエ・ラブール)赤閃艦隊(ビュール) 旗艦(グラーガ)ゼディーラ○

 

「艦隊司令、艦長、こちらにまだ気づいているかどうか不明ですが銀連軍の単独行動している軍艦及び別の近隣宙域で活動している同所属艦隊を確認しました。前者は情報省からの報告でヘリオポリス崩壊半年前の報告書よりあった銀連の新型艦の模様です」

 

 アークエンジェル側が戦闘時とは別の緊張に襲われていた頃、その原因である千隻を数える帝国(フリューバル)艦隊(ビュール)旗艦(グラーガ)である巡察艦(レスィー)ゼディーラのトップに報告が寄せられた。

 

「…これがザフトに“足つき”と呼ばれている銀連の新型艦か。銀連にしてはいい船だな…」

 

 報告を受けたこの艦隊を仕切るヴァダム・アロン=ゼーリュ・ウルス大公爵・ゼスカハ準提督(ロイフローデ)は緋色の瞳を細め、赤紫色の髪を揺らした。

 ゼスカハはこの世界の帝国(フリューバル)でスポールと並ぶ名門ヴァダム一族宗家の現当主で、彼女自身も現在大戦中というのもあって武功中心で帝国に貢献してきた同一族の例にもれず、軍功で今の地位まで上り詰めた身である。

 ちなみに、彼女が乗る巡察艦(レスィー)の名であるゼディーラの由来は彼女を育てた祖母の名に由来する。

 

「…今現在入って来ている情報からして銀連の中心領域艦隊本部を目指して航行中といったところでしょうか?」

「そうだろうなー。一応、航行目的と理由を通信で問いかけてー」

 

 通信士(ドロキア)の疑問にゼディーラの艦長であるコヴナント系知性種族の一種アンゴイを祖先に持つ男バッソ・ボルジュ=バラク・マーシュは、出身種族アンゴイの姿が強く出る原種体*1に似合わない、低く緊張感のない伸びた声で命令を出した。

 

「先日に王女殿下(フィア・ラルトネル)を載せた民間船行方不明もあって、本国から捜索及び救助の命令と流星系からも救助の要請が来ている。念のため通信には情報提供を求めるものも混ぜておけ」

「はいはい、ご子息のご友人の時みたいなのは勘弁したいですもんねー」

「その態度、あの()()()()の前では絶対に取るなよ」

「いやいや、さすがにわかってますっちゅーに…」

 

 そのマーシュに注意を交えつつ指示を下すと、ゼスカハは愁いを帯びた瞳で頭上を見上げてそこから見える広大な宇宙を見やる。

 

「…ゼツィーリュ…ドゥリュース…」

 

 そして、誰にも聞こえない小声で息子とその今は亡くなっていると認識する友人の名を呟いた。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 クルーゼ艦隊 旗艦ヴェサリウス○

 

「…大急ぎでこの星系まで来てみれば、まさか足つき及びそれが合流を目指す銀連の先遣艦隊を発見するだけでなく、まさか帝国の艦隊と接触しかけるとは…」

「向こうから掛けられた通信には我々の目的はラクス・クライン氏も乗るフェールヴ号の捜索も兼ねていると返信を出したので、今の所は緊張化の気配は無いですが…」

「馬鹿を言うな。ナチュラルみたいな馬鹿な真似をしてるわけではないのにそんなことになってたまるか」

 

 一方その頃、同星系の別宙域に銀連側には知られぬうちに短期人工ゲートを用いて侵入してきた、数百隻を超えるも隕石群に隠れているクルーゼ艦隊側の作戦会議でも、画面上に映る帝国艦隊が話題になっていた。

 

「帝国側はともかく…銀連の方は我々には気づいてはいなさそうだな…」

「帝国側が連中に我らの事を報せている可能性は…?」

「血のバレンタインが起きた後では天文学的に低い確率だよ。それよりもこの帝国の艦隊…足つきと先遣艦隊の合流を防ぐのに利用できないかな…」

 

 その会議でクルーゼは帝国艦隊の異様と戦力を見て今後の戦闘の算段を進め始める。

 

「? 今この状況で銀連軍に仕掛けるのですか? 我々には民間船フェールヴ号捜索を優先せよという指示が…?」

「それにこの状況で交戦してその我々の流れ弾が帝国側に当たりでもしたら…」

 

 それに対しアスランが生真面目さから、ガルマが現実面における危険性からその作戦に苦言を呈する。

 

「もちろん、ラクス・クライン嬢の捜索は続けながらだよ。だが、船一隻のために私とて味方の犠牲を増やす理由を残すという愚行はしたくない。後世の歴史家の評価もあるしな。それに、何も中立国の艦艇が巻き込まれるような確率が高い作戦を取る気はないさ」

「「「「「………………」」」」」

 

 クルーゼはそれを理詰めで説き伏せるが、それを受けても問うた二人も含めた周囲は彼から感じる得体の知れなさに対する不安を禁ぜずにはいられなかった。

*1
コヴナント系など地球人類から遠く離れた知性種族を祖先に持つアーヴが取る人間型の姿とは別に、その出身種族をアーヴ化したもう一つの姿




今回、登場した主人公の友達ゼツィーリュの母親ゼスカハさんの仮人化時の姿はFGOのスカサハ師匠アーヴ化です。二人の赤紫色の髪はヴァダム家の家徴(ワリート)です。次回は、種原作の方であの子を大きく曇らせるきっかけになったあのシーンに入る予定です。
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