星界の輪廻   作:oosima

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今回、出てきている数字は日本における中学生の総数などを基準にして作者の妄想多分の状態で割り出したものです。


007 新たな学び舎も憂鬱を添えて

 ○帝国暦949年4月3日朝 アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) スュルグゼーデ王国(フェーク・スュルグゼーデル) ウルス大公国 惑星サンヘリオス軌道上 衛星クィコスト スュルグゼーデ修技館(ケンルー)

 

「…でさー…」

「えー、本当にー!」

「負けないぞー!」

「お宅の息子はどうです?」

「まだまだですなー」

 

 ドゥリュースが憂鬱気味に回想をしたり、不穏な様子を見せる通行人が呪いの言葉を吐いていた日の翌朝、サンヘリオスの周囲に浮かぶ衛星の地表の大半を占めているその帝国の学校の1つは大勢の学生やその保護者で溢れかえっていた。

 スュルグゼーデ修技館(ケンルー)は惑星サンヘリオスの周囲に浮かぶ衛星の一つに存在し、そこは帝国の科学技術や魔術で平均的地上とほぼ同じ環境が整えられていた。

 

(…星界原作では帝都に一括してあった修技館(ケンルー)だけど…ここでは帝都のも含めて各王国の中核星系に一つずつ置かれて九つあって、その中で飛翔科や軍匠科ごとに分かれるという感じなんだよな。まあ…アーヴの人口が原作よりも遥かに多いのと、先駆者(フォアランナー)の遺跡が各地で発見されているのを考えると、一カ所だけにするのは足りなくて且つ危険性も多いってのもあるし…。各館ごとに得意傾向や特色も違ってきているというのもあるからな…ん?)

 

 そうした人々を見下ろせる修技館(ケンルー)の高層階の窓辺に腰掛けた状態で、ドゥリュースは自身の記憶との違いに思考を走らせていたが、そこで彼の視界に移る修技館(ケンルー)に大空型天窓の一角がキラリと光り、その光は自分目掛けて猛烈な勢いで近づいてくるのに気付いた。

 

「うお!? 何だあの光…というか青い焔は!?」

「あ、あれはまさか…八顎龍(ガフトノーシュ)の家種形体!?!?」

 

 それはやがて青く輝く焔で出来た身と、一つの顔を中心として周囲に七つの顔が浮かび上がった異形だが神秘的な姿をした巨大な東洋的な竜の形で近づいてきて、周囲を驚かせつつもやがてドゥリュースのいる高層階の窓の前で止まってパパっと焔を振り払って一人のアーブ女性としての姿を現した。

 

「相変わらずアブリアルらしくないアブリアルな調子ね」

「…お久しぶりですな母上…」

 

 そうしてドゥリュースに微妙そうな笑みを浮かばせたそのアーヴ女性は、彼のこの世界の母親であるラムキースであった。

 

「…それで今回はどんな凶報をお持ちで?」

「心外ねー、私はアブリアルでありながら暗い表情を見せる事が多い息子とそれを憂う周囲を気遣って反骨方面から士気を上げやすくする手伝いをさせてもらっているだけなのに…それで今回は飛び切りのがあるわよ♪」

「何ですか? 外部からの祝辞を言いに来る方々にご一門の方がいるとかですか?」

「そんな陳腐でありふれた事ではないわよ。今年の新入生代表があのスポール一門の子で、更に貴方と同じ下宿先になったというだけよ」

(こ、この劇薬有能ブルジョア女性化南方熊楠…! 予想の斜め上を行きやがった!!)

「では、本日はこの辺りでごきげんよう♪」

 

 その嫌そうな顔色全開なドゥリュースから、ラムキースは表情を失わせて心中で絶望の咆哮を上げさせたのを確認した後、再び先ほどの姿に変わっていずこかへ飛び去って行った。

 

『……え、えーーっと…リュース…大丈夫?』

「…あ、どうも…大丈夫…」

 

 そのドゥリュースの視界内に映し出されている画面より、アスランが心配げな表情で問うてきたが、ドゥリュースの声音は明らかに元気が減っていた。

 今日は久々にアスランと連絡できる時間が取れた日で、入館式が始まるまでの僅かな時間をドゥリュースは遠くに離れた友人達との通信に費やしていた。

 ちなみに、アスランはつい先ほど家族から小用で呼ばれて同じく通信から離れていた状態で、戻ってきたのはちょうどラムキースが悪目立ちしながら登場した時のことで、彼女が帰るまではしばし言葉を失っていた。

 

『…何というか、アーブの学校は凄いね…今はプラントにいる僕とも話がこうして出来る施設があるし…』

「…いや、あれを基準にされても困るよ…。幾らかはそっちと大して変わんないよ…多分…。この通信だってこっちは通信代をめっちゃ払ってこそのものだし…」

『ごめん、君のその言い方は無性に不安を掻き立てられるんだけど…でもまあ、君が別れたあの日…プラントには多分来れないって言ってた理由を教えられた時よりかはまぁ…』

 

 そのアスランの話し方が示す通り、ドゥリュースが地球への留学時代で出来た友人達に正体を明かしたのは、彼一人が地球を離れて帝国へ戻ることが決まった日のことであった。

 結果、帰るための船に乗るために地球の宇宙港(ビドート)へ来た時に見送りに来たのは、キラやアスランなど数名の数少ない友人とその家族、ジブリ―ルなど数名の教師くらいであった。

 その思い出を踏まえてドゥリュースは少し恐れを滲ませた笑みである問いを放つ。

 

「…最初に言っていたら友達になった?」

『いや、君のジョセに次ぐトラブル特異点な性質を事前に知っていたらキラを連れて避けていたよ』

「おい!?」

 

 それに対するアスランの乾いた笑みを添えたその答えにドゥリュースは僅かな望みも断ち切られた悲鳴を上げるがいつもの感じに戻った。

 

『…まあ、深雪はそのご両親と君のお母さんの趣味は合うし、その深雪も趣味は二人譲りだから来てたけど…、あの達也は君の身元の危険性を最初から知っていれば近づけないようにしただろうな…』

「…ですよねー…(こっちは自然系(ロギア)化したドラゴンみたいなのが家種だし…物理攻撃は殆ど無効みたいな体質のおかげで暗殺とか誘拐とか如何にか掻い潜れて来たけど…下手すれば周囲に甚大な被害を出しそうになってきたし…。ジブリ―ル先生も変態みたいな顔で何度も拘束して調べようとして来たし…)」

『あ、そう言えばもう時間は大丈夫?』

「そうだね。もうそろそろ行かないと…それとーそっちも気を付けてねアスラン、特にレノアさんとかとはそういう方面には無防備すぎるし……。人の負のメンタルとかドンパチとかは何時何処で誰がその導火線に火をつけるかどうかわからないから…」

『心配がちだなドゥリュースは…BETAとか昔から君が居る帝国とかがあるのに…わざわざ戦争を増やそうなんて考える人はそうはいないよ…じゃあ、この辺で』

 

 そのままドゥリュースはいつもの微妙そうな感じに戻ってアスランと少し会話の続きをした後、互いに通信を切って入館式の会場に向かった。

 

「…うわぁ、これだけ多くなると確かにここ修技館都市の中心部の平原部で…それでも足りないから何カ所かに分けて入館式をやるというのもわかるわぁ…(アーヴの数も星界原作よりも大幅に増えている状態だからなぁ。修技館の数が増えているのも納得だ…それにしても大きいけど…)」

 

 数分後、ドゥリュースは入館すべく集まってきた同族たちに紛れてその数に億劫しつつも一種の感動を覚えていた。

 この世界のアーヴは約5億人と星界原作のおおよそ25倍は存在し、そうなると本年度に帝都と八王国中核星系にある合計九つの修技館(ケンルー)に入る翔士修技生の総数は約三千六百万人。

 そして、ここスュルグゼーデ修技館(ケンルー)に本年度から入る新入生総数は約五百万人になる。

 種族的アーヴの他にも、地上の募集事務所(バンゾール・ルドロト)で試験に合格したり、親が国民から貴士族に上がったりした事で、アーヴ身分を得て入館資格を得た地上人などの姿が見受けられる。

 型月系やディル=リフィーナ系の魔術などの要素もある事から、赤髪の子供先生が赴任した某学園都市に時に近い気分へドゥリュースを陥らせていた。

 入館式会場は野戦訓練にも用いられるテラフォーミング化されたクィコストの平原区域にあった。

 

(…初めに聞いておいた場所と感じられる魔力の波長からして―――)

「あ、いたいた。こっちだドゥリュース」

「―――え…あ、いた。ゼツィーリュ」

 

 その何百万という本年度翔士修技生の中でドゥリュースは当世で培ってきた様々な技術や情報を用いてある人物を探していたが、そこで声をかけてきたのは赤紫色のショートシャギーに赤い瞳をした、ドゥリュースの前世の記憶にある少女漫画SpecialAのメインキャラの一人辻竜(つじりゅう)をアーヴ化した少年ゼツィーリュだった。

 ゼツィーリュのフルネームはヴァダム・アロン=ゼーリュ・ウルス大公爵公子・ゼツィーリュ。

 ここウルス大公国に数千年前の古代から続く名門ヴァダム一族のうち、帝国のコヴナント併合に伴ってアーヴに加わったその一派がここウルス星系の大公爵家となり、この世界におけるアーヴの根源氏族に連ねた一族の宗家の出である。

 ドゥリュースより一才年上だが、その母親同士が友人の付き合いで幼少期から交流が出来た友人で、今は仮人化の姿をとっていた。

 

「久しぶりだね…あ、今日は動物を連れてきていないんだ」

「いや、さすがに俺も幾ら可愛い動物たちだからってこんな学校にまで連れていくまでじゃないぞ。これから修技館に暮らす間は母も世話になった下宿先の宿に看板動物として移籍してもらう条件で今は預かってもらっている…。あ、そろそろ始まるみたいだな」

 

 そのゼツィーリュとドゥリュースが久方ぶりに言葉を交わしていると、今回の新入生たちを見下ろす浮遊式展望台に設けられた壇上に、教師達や生徒達の代表が現れて周囲のざわめきが消えて意識がそこへ集まり出した。

 他国で言う校長に当たる館長ら教師たちの挨拶も終わり、生徒からの代表達の挨拶に入る。

 

「…そう言えば今年の新入生代表って誰なんだろ?」

「たしか今回は他所の王国から来る子らしいけど―――!?」

『それでは本年度新入生代表、お上がりください』

「―――お…え??」

 

 そこで今年に入る自分達の代表について二人の話題が移った所で、教師陣がそう放送して数名を残して壇上を去ると、一人の生徒が上ってくるがその姿を見たドゥリュースの表情は大いに引き攣った。

 

「…え? 彼女って…?」

「あ、確かこの前の帝国経済新報の月刊誌の表紙も飾ってた…!」

「お…おおお、あの表紙では…あの一族の生まれってのが信じられないくらいに綺麗な微笑みを浮かべてたあの子が…!?」

「げ、現実で見るともっとすっげえぇ…!!」

「同性のあたしから見ても惚れ惚れ…」

 

 ドゥリュースとは対照的に、周囲から驚愕や好感が次々と上がる中、その本年度新入生代表は壇上に上がって口を開いて拡声機越しにこう述べた。

 

『不束者ですが本年度のスュルグゼーデ修技館(ケンルー)新入生代表にならせていただきました。スポール・アロン=セクパト・レトパーニュ大公爵公女(ヤルリューム・ニム・レトパン)・レイカです』

(…何この学園ものラノベみたいな展開ーーーー!!??)

 

 技量や器量及び同胞(カルサール)としてはとても信を置けるが、個人としてはアブリアルの通例に漏れず非常に苦手なそのスポール宗家令嬢に、苦笑いを辛うじて浮かべるしか今は出来ないドゥリュースであった。




今回は、読者の多くが喜ぶ展開と作中内人物の希望が必ずしも同じとは限らないというよくある展開(?)でしたね…。
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