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「…え! 艦隊と合流できそうなの!?」
アークエンジェル、同じ銀連所属の銀河中心領域第八艦隊の先遣艦隊、帝国の赤閃艦隊、ザフトのクルーゼ艦隊の四者が同じ星系に揃ってから数時間後、アークエンジェルの医務室で作業していたために知るのが遅れていたフレイもそれを聞いて安堵と喜びを示した。
「ああ、もう明日くらいには合流出来そうだって。それとフレイのお父さんも乗ってるらしいよ」
「…え!? パパが…!?」
だが、サイから明かされたその人物の存在を知ってフレイの表情はやや苦くなった。
「…え? その顔は何? なんか二人の関係って微妙なの?」
医務室にあるベッドで、連日の哨戒や整備作業に対怪獣防衛任務で身を酷使して筋肉痛や魔力痛*1が出て横たわって治療中のリュールがそのフレイの嫌そうな様子に反応する。
「…あー、違うよ。単にー…」
サイがそれに苦笑を浮かべて答えようとしたところで、医務室のドアが開いて眼を細めた王留美が入ってきた。
「申し訳ありませんが先ほど入ってきた朗報に付属して一部の方々には残念なお報せがありましてよ」
「…あのー、今は治療中なんで後でお聞きするのは…?」
「残念ですがそちらはお勧めできませんわ」
「…じゃあ、手短にお願いします」
「大星洋連邦・サマリア公益協会現会長も先遣艦隊に乗り込まれているようですわ。どうやらこちらにお孫さんがおられますからそれが心配のようで…」
「…大星洋連邦最大のロビー団体の現トップが?」
王留美の登場にリュールは微妙そうな顔を向けるが、その報せを耳にするとますます嫌そうな顔になる。
今現在、銀連圏自由主義諸国の財界で大きな影響力を持つオルムス人の最大居住国はサード・サマリアだが、それに次ぐ居住国が大星洋連邦だ。
同国におけるオルムス人の影響力は大きく、特にマスコミでは絶対的で、オルムス系が同国やマスコミを牛耳っているなどという報道を行うのもタブー視されているほどである。
そのオルムス人達が組織し、大星洋連邦政界で影響力を持つロビー団体で最大最強と言えるのが大星洋連邦・サマリア公益協会で、同協会は反アーヴ・コーディネイター感情が強い大星洋連邦でもとりわけその運動を強く支援していることでも知られている。
「さっきもその報せを聞いてヘリオポリス避難民に混じるオルムスの皆さんが大喜びしていましたわよ。リュールさん含めアーヴの皆さんの所に乗り込んでこれでお前らも管理所行きで終わりだって意気揚々とはしゃがれようとしたくらいには。まーあの姫君お二人の所へ初めにそれを言おうとして警備兵の方々に注意されて戻されましたが…」
「…あーそう、そんなことはならないだろけど現状では…」
その現トップが近づきつつあるのも含めた今の状況に、リュールは好転の予感が薄れつつあるのを覚えてぼふっと暗い顔を枕に沈めた。
〇
『…こちら銀河連合軍中心領域艦隊第八艦隊先遣艦隊旗艦モントゴメリー。本艦隊はこれから5時間後に貴艦としていの位置で合流する。よくここまで来てくれた』
「こちらアークエンジェル。感謝します」
リュール達にとってその嫌な報せが来た日の翌日、アークエンジェルの艦橋でスメラギ達はようやく明瞭に繋がった先遣艦隊との通信で安堵と喜色を深めていた。
『こちら大星洋連邦事務次官ジョージ・アルスターである。まずは我が国のも含めた民間人の救助に礼を言いたい。あー、それと救助された民間人の名簿に―――』
その映像に映しだされたブロンドヘアーで妙齢の政治家というのが板に付いている、フレイの父ジョージ・アルスターが別時間軸のように娘の安否を確かめようとするが、そこで彼を映す画像は別人のそれに上塗りされる。
『それと我が国の最有力同盟国サマリアの市民も救助されていることに感謝を。名簿の中にシャアラ・アブラヒムを含めてサマリア側留学生達の姿も見受けられたので、その姿を確認させて…』
『―――い…あー、ノアム・ディズレーリス大星洋連邦・サマリア公益協会会長。合流できればゆっくりお話しできますのでそれからでもー…』
割り込んできた黒いシルクハット風帽子に黒ひげを長くのばしたその欧州系の老人の登場に、ジョージはハッとすると苦笑いでその人物を注意する。
「…今のこの爺さんの台詞、割り込みが無ければフレイの親父さんがフレイ絡みで言っていたな」
「…あー、お父さんが来ているのを知ってフレイがいやそうな顔をしたのって…?」
「親ばかされるのが恥ずかしいからだよ」
その二人のやり取りを見てサイは苦笑を見せた。
「ま、あとは艦隊に合流するだけねー…!?」
それも含めて王留美が安心の表情を浮かべたその時、艦内に警報が鳴り響いた。
『ザフトの反応を確認。艦定数はおよそ五百隻。ヴェサリウスの反応も検出』
「「「「「!!!!???」」」」」
アークエンジェルの人工知能が告げたその警報に環境にいる全員に緊張が走った。
「な!? ここまで来て!?」
「ヴェサリウスということはクルーゼか!?」
「じゃあ、あの奪われたGも!?」
その報せを受けて艦橋は大急ぎで第一級戦闘配備に入り、即座にザフト出現の報せは艦内中に知らされて再び慌ただしくなった。
〇銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 銀連軍中心領域第八艦隊先遣艦隊 旗艦モントゴメリー 艦橋○
「…何だと!? 今までどこに隠れていたのだ!?」
「ここは広範囲にデブリベルト化している星系なので、まだ反応上生きている廃棄コロニーなどに紛れながら近づいてきたのかと…」
一方の銀連側先遣艦隊もザフト艦隊の急襲を受けて慌ただしくなり、ジョージ・アルスターも含めて旗艦艦橋の面子の声から余裕は無くなっていた。
『おい! どういうことだ!? ザフトはアルテミス陥落の後始末でかかりっきりでここまで来れないんじゃなかったのか!?』
「ノアム・ディズレーリス会長、今はそれどころでは…」
「アークエンジェルに合流中止を打電! 直ちに当宙域を離脱し貴艦は戦闘宙域を迂回して対ムーンレイスゲートに突入して第八艦隊本隊が進行中の銀河中心領域付近ムーンレイス星系へ向かうように!」
その状況に貴賓室にいるロビイストのお偉いさんから抗議が来たりするが、その間に軍人達は迅速に戦況へ対応する。
『おい! ここまで来たのにシャアラがいる艦と合流出来ねば意味がないだろう!?』
「あの艦
「会長ご安心を! 貴方のご友人達がおられるあの艦とは合流が向こう側になっただけです。あの艦がゲートを通過すれば我々も直ちに続いて向こう側に合流するようにしますので!」
「し、しかし…」
「君達! 万が一の時のために会長をまだ安全な場所へ!」
「は!」
貴賓室からその動きに文句が出るが、ジョージ・アルスターの援護射撃を受けて銀連兵達は素早く動き、貴賓室からの通信映像が切れる。
「…すまないな。勝手に色々決めて」
「いいえ、こちらとしても同じ行動をとるつもりでしたので助かりました。ですが問題は…そう出来るまでこちらが持つか…」
「奪われた機体とはそこまで…!?」
「……………」
それに先遣艦隊司令官とジョージ・アルスターは一抹の安堵を覚えるも、すぐに現状のあまりの厳しさから表情を重くするのであった。
〇銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 銀連軍宇宙戦艦アークエンジェル MS・小型戦闘艇発進デッキ○
「…先遣分とはいえ艦隊と合流出来そうな所で来るなんてなぁ。しかもこの数…そのクルーゼって人…ヘリオポリス襲撃の都合で別においてきた主力を今度はしっかり連れてきたか…」
先遣艦隊旗艦モントゴメリー艦橋の空気が重くなる一方になった頃、アークエンジェルのMSが並ぶそこでリュールは電脳越しに伝えられてきた情報に険しい表情を浮かべていた。
『…先程先遣艦隊司令より当艦は現宙域を迂回して戦闘を回避し、先に対ムーンレイスゲートを通過して第八艦隊本隊と合流せよと司令が下ったわ。ですが…状況からして我が艦単独で敵の追跡を振り切ってゲート通過及び銀河中心領域ムーンレイス基地への到達は困難よ。故に、我が艦が合流し且つ味方の生還率を上げるには前線で合流して…』
そして、各MSのコクピット及びパイロット待機室に艦橋からスメラギの指示が下され、自分達も今度の戦闘へ参加せねばいけなくなったことを悟り、緊張と恐れが強まっていく。
『キラ! リュール!』
「あ!?」
「あ、確かフレイの許嫁の…」
その現場にいるキラとリュールのコクピット画面の一角に、艦橋からサイが映像付きで通信を入れてくる。
『先遣艦隊にはフレイの親父さん達もいるんだ。どうかよろしく頼む…』
「うん…私達も行くから…」
「…じゃあ、ちょっと頼みがあるんだけどいいかな?」
そのサイの頼みにキラは無理に笑みを作って答えるのに対し、リュールは何かを思いついた表情になる。
『…え、な、何を…?』
「ちょっと通信を繋げたい人がいるんだ。だが悪いけど他の人には聞かせられない。けれど上手く行けばこっちと向こうが助かる可能性が大幅にー…」
『………?』
リュールのその言葉に、サイは不安とそれ以上の期待が生じて耳が自然と傾いていく。
〇銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 銀連軍宇宙戦艦アークエンジェル 医務室○
「ええ!? また戦闘!?」
「死んじゃうのぉ!?」
「大丈夫! あのリュールってお兄ちゃんや私達の友達のキラとか強い人がこっちにもいるからー…」
MS・小型戦闘艇発進デッキでそのようなやり取りがなされていた頃、フレイは震えを押し殺しつつ新たな戦闘の報せを受けて怯える子供達を励ましていた。
『すみませーん。ちょっとお取込み中っぽいけどこっちの皆の生存にも関わるお話なのでー』
『え…あなた…何でこの時に!?』
そのフレイに電脳越しにリュールが連絡を入れてきた。
『状況が状況だから手短に言う。そっちにやってほしいことがあるんだ。まずー…』
フレイの驚きが落ち着かぬ前にリュールは早口である作戦を伝える。
『…ちょ!? あなたそんな作戦…!?』
『…無理にでもとは言わないけど…正直、今この状況の戦力差じゃこのまま普通に戦えばこっちは全滅する可能性大だよ』
『…それは…』
『あーもー出撃が近づいてきたからもう通信は一旦切るよ』
その作戦に拒否感を示すフレイだが、リュールの言葉と声に嫌な現実味を覚えたところで通信を一方的に切られる。
「…………」
「お姉ちゃん、どうしたのー…?」
「…! 大丈夫よ…」
通信が切られたフレイは自分に突然のしかかってきた重責で俯いて黙りこくるが、傍にいた少女の声ですぐ現実に戻り、その瞳に腹を括ったものの光が強まり始めた。
〇銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 銀連軍宇宙戦艦アークエンジェル MS・小型戦闘艇発進デッキ○
「………」
フレイにある秘密作戦が伝えられて数分後、次々とMSが出撃していってそれが無くなったように見えるそこの一角で日光が、ヘリオポリスの研究所からオーブ・帝国共同研究資料が入った重要物コンテナとして運び込まれたそれに、悩みを深めた表情で手を当てていた。
「おい! 嬢ちゃんよそんなところにずっといたら跳ねられるぞ!」
「…っ…マードック少尉…」
そうして止まっている姿に周囲から注意や怒号が飛んでくるが、それがきっかけになったのか日光の表情はいつもの怜悧と秀麗という言葉が似合うそれに、けれどいつも以上に意志の強い光を宿した瞳を添えて変わる。
「…パイロットスーツの予備はまだありますか?」
「はあ? 何を言って…!?」
日光がそう問いかけてマードックに怪訝な顔を浮かばせたその時、彼女が手を触れさせている箇所よりコンテナの全面を幾何学的な文様の光線が覆っていき、それはパズルのようにコンテナをばらして、中から新たで且つ大きい人型の何かが姿を現し、周囲を驚かせた。
次回、種ガンでも大きな契機の一つになったあのシーンが、この世界なりに起きてしまう予定です。