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「護衛艦バーナードとディークロッド撃沈! 左翼旗艦アルバート中破し一時戦線離脱!」
「何だとぉ!? 戦闘が始まってからまだ10分しかたってないぞ! それなのにこちらがもう三十隻沈められて向こうはまだ一隻も無しか!?」
日光がマードックにパイロットスーツの予備を問うてから数十分後、銀連側先遣艦隊の旗艦の艦橋でジョージ・アルスターの顔色は険しくなる一方であった。
「…連度の高い残った兵の多くは対BETA戦線に向かっているのは向こうも同じはずなのに…」
「そうした兵達の多くもコーディネイターでしたから、今ではその大半が…」
「ええい! アパート屋上がりの今の大統領がこちらの言うことも聞かず後先考えずにコストカットを優先するから!」
艦橋要員の一人の愚痴にジョージ・アルスターも口汚く同意した。
現在の大星洋連邦大統領は極右的なのも含めた過激な言動や行動で、コーディネイターに職を奪われてプラントに産業を取られたと不満を募らせた自国内の多数派である欧州系の低所得者層から絶大な支持を受けているが、そのためにブルーコスモス強硬派やサマリアと友好的な一方で、亜人系が住民の大半を占めてアーヴが指導者層を占める帝国とは過去最悪レベルにまで関係を叩きこんでしまっていた。
その結果、帝国からも少なくない資本や人員が流れていた戦前のプラントにも制裁や圧力が及び、当然プラントの大半を占めるコーディネイターの反発を買ってしまう。
更に、国内ではアファーマティヴ・アクションや多様性尊重は逆差別や予算の無駄遣いだとして、実力主義に戻すと人事にも手を突っ込むがこれが悪手になった。
以前までは国内外コーディネイターを使い潰そうと市民権を餌に動員して対BETA戦線で酷使していたのだが、それを現大統領はコーディネイター優遇のナチュラル差別だとして軍の要職から外したことで、自由になった彼らの多くはプラントの独立運動に身を投じるという三流コントみたいな事態が発生したのである。
ちなみに、この世界のジョージ・アルスターはコーディネイターのナチュラル回帰を主張する穏健派で、その影響でプラントともパイプが太かったためにそうした裏事情に詳しかった。
そんな彼がブルーコスモス強硬派や反帝国・反プラント派が多い大星洋連邦現政権に何故いるのかというと、今の政府の方針に反発するリベラル派や野党から現政権に対する監視役やストッパーを期待されて今の地位に着けられた面が強かったのである。
「本艦に敵MSが急速接近! 迎撃間に合いません! イージスです!」
「何だと!? よりにもよって奪われた一機が…!?」
そうした背景で現状に対する恨みがさらに強まったジョージ・アルスターの前に、アスランが駆るGの一機が艦橋の窓越しに姿を現してライフルを構えるのが見えた。
(こいつがこの敵艦隊の旗艦だな。これで終わりだ―――!?)
婚約者の捜索の邪魔をする敵を早く終わらせる好機が来たことにアスランは安堵を覚えるが、それ故に彼の乗る機体を突如として横腹から蹴り飛ばしてきた存在にその時まで気付けなかった。
「―――あぁ!? あ…あれは…!?」
真横からの強烈な衝撃に脳震盪を起こしかけるも戦闘中も相まって踏みとどまったアスランが画面越しに見つけたその衝撃の正体は、彼の異郷から来たりし幼馴染が駆る新発見のGフレーム使用機バルバトスであった。
「ッ!? あれはたしかアークエンジェルからの報告にあったオーブ・帝国共同研究対象の…!? だとすると…!?」
その姿にモントゴメリー艦長が良からぬ意味である推測を口にすると、彼にとって最悪な意味でその答えが映像付きで示される。
「我が艦隊より○○度○○時○○分*1○○キロ時点にアークエンジェルの姿を確認! 先程イージスを本艦より離脱させたのはオーブ・帝国共同管轄下実験機バルバトスの模様です!」
「この状況で来たというのか!?」
「…何と馬鹿なことを!」
艦橋に映しだされたその白く特徴的な姿に、ジョージは複雑な思いを抱き、先遣艦隊司令官は苦虫を噛んだ表情となった。
「…ふ、やっと本命にも到着してもらえたか。足つきには予定通り指定の隊を向かわせて足止めしておけ。まずは雑魚の集まりを掃除する」
そのアークエンジェルの姿はクルーゼ艦隊旗艦ヴェサリウスの艦橋でも確認され、クルーゼは冷笑を浮かべると意識を再び先遣艦隊へと向け直した。
『ヴェサリウスより指令です。足つきには指定の隊を向かわせるのでメアリ・サンディ隊員は敵先遣艦隊の殲滅を優先してください』
「…っ…了解しました」
数十秒後、それはザフト艦隊側の動きとなって、メアリは幼馴染が乗る機体を確認した直後のその指示に一瞬舌打ちするが指示に従って近くの銀連艦に向かう。
「…潰れろ!!」
そして、メアリが駆るベヒモスが護衛砲撃を回避しながらドレイク級宇宙突撃艦*2の一隻に向けて、その片手より巨大で黒い球体をした魔術式を砲弾のように撃ち込むと、その艦はまるで収縮していくボールに包まれたように球体状で圧縮され、最後は爆散してしまう。
「…あれはベヒモスの重力操作兵装! 乗り手も相性がいいのが乗っているみたいね…! 我が艦は味方先遣艦隊左翼のA2エリアの護衛に回る! ネルソン級巡察艦*3ディーゼルと交戦中の敵のムサイ級突撃艦小艦隊及びその随伴ザクを引き離すわ! 両津隊とフラガ隊はーまずー…!」
それをアークエンジェルの艦橋より見たスメラギ・李・ノリエガは少しでも自由に動けるようになる味方を増やすべく、次々と指示を下して味方MS部隊を高速で動かしていく。
「…ぬおおおお! 味方は増えたが却ってカバーしなくちゃいけない範囲もデカい!」
だが、そのパイロットも含めた意外な能力の高さで、アークエンジェルMS隊は広くに活躍するが、一方でMSパイロット達に早いうちから多大な負担をかけることにもなり、両津はそのパイロット達の気持ちを時機の中で咆哮して代弁した。
「ほあちゃー! 数ばかりが多いネ―――!」
「そりゃこっちが言いたい台詞だっての!」
「―――えってぬおお!?」
同じ感慨は別のウィンダムに乗っている神楽も抱いており、その機体の足でザク一機の頭を蹴って千切り飛ばすもディアッカに文句を言われながらその長距離ビーム砲を撃たれて、機体の片足を撃ち飛ばされてしまう。
「…初めの方は上手く押していたがあの小戦力で戦域を広げすぎたな。交代しながら始めろ」
その銀連側の少々遅くなった程度の苦境はクルーゼにも見え、その指示の下で数千機を超すザフトMSは新たな動きを見せ始める。
『キラ! リュースと共にもう投降しろ! もうこれ以上続けてもナチュラルの道連れにされるだけだ!』
「うう! アスラン…だから私はザフトには行かない…きゃああ!?」
「キラァ!」
アークエンジェルの貴重な戦力であるキラが駆るストライクに、イージスを駆りながらアスランが説得を始め、それで動きが鈍り始めたストライクのフォローにリュールが乗るバルバトスが割かれ始めるが、それを付かず離れずの距離で複数のザクが邪魔をし始める。
そして、アークエンジェルにもガナー装備のザクが中心となって集中砲火を浴びせ始め、それで他の銀連艦との距離を詰められなくなったのを見計らって、他のザフトMSの大軍は先遣艦隊への攻撃を強め始めた。
「ッ!」
「「「「「うわぁアアアアァアアアア!?」」」」」
ルイス・ハレヴィの駆る薄紫色を基調とするシールダー*4が機体前面に円錐状に回転するビームシールドを発生させ、それを破城槌のように用いて銀連のドレイク級の艦橋を真正面から穿ち抜いて潰してしまう。
「うわぁアア!? 隣接するバルナートからミサイルが集中攻撃を浴びせられます!」
「バルナートから火器管制コントロールが利かないと返信が!」
他にもガルマが駆るルーラーが放つハッキング機能付き兵装ポッドに食い込まれた銀連艦がハッキングされ、艦橋の意に反してその兵装を味方に向けて次々と同士討ちを始めてしまう。
「…下翼旗艦アルダンド撃沈! 艦艇反応の19パーセントが消失しました!」
「そんな馬鹿な!? 戦闘が始まってからまだ一時間も立っていないんだぞ! そこまでなのか!?」
それらが示す戦況の悪化は先遣艦隊旗艦にも届けられており、それが示す敵味方の絶望的な戦力差にジョージ・アルスターは悲痛な叫びをあげる。
「事務次官はディズレーリス会長と共に救命ポッドへ…」
「会長とその側近の方々はもうすでに救命ポッドへ強引に乗り込まれて艦を離れたようで…!」
「こんな状況で何と無謀な…だが、こちらとどちらがましなのかもうわからん…」
時折、呆れとある種の感心の混じった愚痴を吐いたりもするが、状況の悪化は変わる気配を見せなかった。
「…ウゥ…」
「鎮痛剤を持ってこい! これだけじゃ足りない!」
「………」
その状況はアークエンジェルの医務室にも肌で感じ取れるまで伝わっており、まだMS部隊の撃墜の報せは来ていないが、負傷した状態で戻ってくる味方や、他の艦所属の小型戦闘艇のパイロットの重傷からもフレイはその現実を痛感させられていた。
そして、彼女の脳裏に出撃前のリュールが打ち明けた起死回生の策が重く頭に伸し掛かる。
(…もう戦況は良くなる気配は…けれど、こんな手をしたら―――)
「…静かなー…」
「―――っ!?」
友人達と我が身に迫る死の恐怖と良心の葛藤に苛まれるフレイの耳に、リュールが伝えた秘策の鍵となる存在の片割れの歌声が聞こえてきた。
本来ならこのひっ迫した状況で何を考えていると苛立つ筈だが、不思議とフレイはそれに震えていた気を静められ、それが彼女の決心を固めた。
「…っ?」
そして、その存在であるラクス・クラインがいる部屋のドアが開かれ、同じ部屋で彼女との会話その歌を楽しんでいたラムレルーシュは、ドアを開いたその訪問者に怪訝な顔を向ける。
「…聞いてほしい話があるの。どうか聞いて…!」
「…状況からして早く聞いた方がこちらにも良さそうだな」
「………?」
そのフレイの後ろめたさを覚えつつも真摯に重く吐かれる言葉に、ラムレルーシュはスッと目を細めるが耳を傾け、ラクスは自然とだが何処か底の知れない雰囲気で首を傾げた。
次回、今現在の戦闘のメインである、種ガンでも有数の問題シーンのピーク場面が、この世界の要素も加えて出る予定です。