星界の輪廻   作:oosima

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今回、種ガン有数の問題シーンのピーク場面にようやく入れますが、原作とか異なる内容も混じっています。


072 身を明かす龍威

 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月7日朝(帝国暦952年2月7日朝) 銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 銀連軍宇宙戦艦 アークエンジェル○

 

『おい! これ以上この場で戦ってもじり貧で全滅だ! 早くチャンスを見つけてゲートを潜って向こうに逃げないとまずいぞ!』

「…わかっているわ! けれど…!」

 

 ラムレルーシュに覚悟を決めた様子のフレイが接触する数分前、アークエンジェル艦橋に両津がその通信を入れた様に、戦況は銀連側に不利なままで進んでいた。

 アークエンジェルが加わってからスメラギの機敏且つ多彩で適切な作戦で先遣艦隊の被害が出る速度は同艦参戦以前よりも遅くなり、ザフト側にもムサイ級の突撃艦や護衛艦を中心に撃沈される艦が出始めているが、如何せん総合的な戦力差はザフトが明確に優位で、いずれは壊滅か壊走を起こすのは明らかであった。

 

「…まさか第八艦隊本隊がいるムーンレイス星系に繋がるあのゲートの前に、帝国軍艦隊が通過のために近づいている時に襲ってくるなんてね…相変わらず嫌な奴ねクルーゼ…!」

 

 そうなる前に撤退という決断が出来ずにいたのは、アークエンジェルの総指揮をとりつつ先遣艦隊支援作戦を指示しているスメラギが口にした通り、対ムーンレイスゲートの前の宙域を進んでいる帝国の艦隊にあった。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 対ムーンレイスゲート前宙域 帝国星界軍(ルエ・ラブ―ル)赤閃艦隊(ビュール) 旗艦(グラーガ)ゼディーラ○

 

「…あの足つきは中々周囲の味方との位置関係を生かして上手く戦っているようですがー、全滅か壊走までの時間を少々引き延ばすのが精いっぱいなようですなー」

 

 そのスメラギに苦虫を噛んだ表情を向けられている帝国軍艦隊の旗艦における艦橋で、同艦の艦長(サレール)を務めているバッソ・ボルジュ=バラク・マーシュ百翔長(ボモワス)は、ザフトのクルーゼ艦隊と銀連軍第八艦隊先遣艦隊の戦闘を疑似超光速魔導望遠装置越しに見て伸びた声を上げていた。

 

「け、けれど流星系との交渉通り及び国際既定の速度で通過は進めていいんですか? 急いで通らないと壊走してきた銀連艦隊でこちらも巻き添えを受けるのでは…?」

「あー大丈夫大丈夫、我が艦の書記(ウィグ)のゴモッド主計十翔長(ローワス・サゾイル)。後で中立言ってるくせして味方が逃げるのを邪魔してザフトを助けたーって大星洋のアパート屋社長殿が文句言って来てもー、“以前に帝国の軍艦が友好国難民の救助のために第三国の(ソード)を潜ろうとしてきた時に向こうから貴国最強同盟国の艦隊が通過してきて通過中の我が艦隊に近づいたら宣戦布告とみなすとか言われていつもの倍以上待たされて待ちぼうけ喰らったことがあったんで別に大丈夫だろうって思いまいしてー”な言い訳な材料を用意してくれてるからー」

「それさぁ本当に向こうとの交流会とかでは言わないでくださいよ絶対!」

 

 その軽さ全開なバッソの態度に、同艦の後方活動を仕切るゴモッド・ボルジュ=バージュル・バーソが、ジラルハネイ型アーヴの巨躯には似合わない心配げな様子を隠せなかった。

 

「別に両者から通信を貰っているわけではない。予定通り艦隊を進めていい」

「ほら、司令官も言ってんだからー大丈夫だってー…ん?」

 

 そのやり取りを間近から見ても無表情なゼスカハだが、彼女のその態度を援護射撃にしようとしたバッソに怪訝な色が浮かぶ。

 

「…え!? ちょ…待って!? 何で銀連の船から内がオーブと一緒に調べてたあの機械甲冑機(ソウォーヴィ)のG二機が出てきているわけ!?」

「…!?」

 

 そして、少し慌てだしたバッソが大きく映し出したその画面に映し出されたバルバトスと、空気に半分溶けて且つノイズがかかったような状態で映し出されている薄桃色の人型機械の姿に、彼が慌てた顔を見せたのに続いてゼスカハの両眼が少し見開かれた。

 

 

 

 

 

 〇銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 銀連軍中心領域第八艦隊先遣艦隊 某避難艇○

 

「…くそ! サマリアにとって一番都合が良さそうだから散々選挙資金をつぎ込んで大統領に当選させてやったというのに…! こっちが乗る艦隊まで弱めおって…!」

 

 帝国軍赤閃艦隊の艦橋に不穏な報せが届いた直後、ノアム・ディズレーリスは味方に無断で乗り込んで脱出させた民間用避難艇の中で悪態をついていた。

 

「おい! 早くゲートの向こう側に行かんか!」

「そ、そうは言いましても周囲は敵味方の攻撃の雨が続いていて、更にゲートの前にはアーヴの艦隊が通過しようと近づきつつありましてぇ…!」

「何だとぉ!? くそぉ! 帝国め戻ったらアパート屋をけしかけて経済制裁をもっと強めてやるぅ! あのアークエンジェルももし沈んでシャアラを死なせたら艦に乗ってる連中の遺族は―――」

「ああ!? 旗艦モントゴメリーに敵旗艦ヴェサリウス主砲の照準が当てられましたぁ! もしも今ここであの艦が撃沈されたらその爆発で我々も巻き添えで道連れにー!」

「―――あってんなぁアア!?」

 

 船の中で現状と敵味方の全てに文句を吐きまくるディズレーリスだが、船を操る総舵手のその言葉で赤くなっていた顔は一瞬で真っ青になった。

 

「…敵旗艦に主砲級熱源反応! 我が艦に向けられています!」

「避けろー!」

「駄目です! 間に合いません!」

「ああ!? フ、フレイ―――!?」

 

 一方のモントゴメリー艦橋にもその報せは届いたが、それが間に合わずヴェサリウスの主砲の砲口から放たれた視界を焼かんばかりの閃光が艦橋を照らしたその瞬間、真空から浮かび上がるようにして、薄桃色の女性型の形をしてガンダムであることを示す額のV字アンテナをした機体が姿を現した。

 

「…え!? 何であれが…!?」

『…アージェイト!』

 

 その巨人をバルバトスの中から視認したリュールが知っているようだが何でこの場にという表情でつぶやいたその時、その機体から味方の回線で記憶喪失時代の生活で縁が深くなったあの地上出身アーヴ貴族の少女の声でその名が叫ばれ、直後に撃ち放たれたヴェサリウスの主砲ビームを正面から受け止めて周囲へ霧散させた。

 

「―――いって…!? あ、あれは!?」

 

 それは救われた形になったモントゴメリーの艦橋の人々を特に驚かせた。

 

「ッ!? あの機体はいったい―――!?」

『驚かせて申し訳ありません! 私です!』

「―――いって…日光さん!?」

 

 アークエンジェル艦橋もそれに驚く中、その薄桃色のMSと思わしき巨人から通信が繋がり、銀連軍のパイロットスーツに身を包んだ日光を見てマリュー・ラミアスはとりわけ強く驚いた。

 

『ちょっと日光!? それってオーブと帝国で共同解析及び研究中の機体でしょ! 今この場で持ち出すなんて何を考えてぇ!? 何よりわかってない部分がまだ多すぎるそれで戦場へ出てくるなんて君が危ないよ!』

『ですがこの状況では…ああ! また…!』

 

 それを同じく驚いたリュールが引き攣った笑みで通信に加わってくるが、その間に他のザフト艦からも主砲の砲撃が来ているので、日光は自分が乗り込んでいるアージェイトの何らかのエネルギーシールド兵装を用いてそれらを弾いていく。

 

「何だあの機体は!? あのようなものがあるなど話に聞いていないぞ…!?」

 

 ナタルがその光景とそれを成すアージェイトに珍しく狼狽の色を見せると、艦橋のドアが開かれて思わぬ二人が姿を現す。

 

「ちょ!? フレイさん!? 何でその子を…!?」

 

 医務室で今も負傷兵の治療に追われているはずのフレイが、あろうことか帝国の王女であるラムレルーシュを引き連れた形で艦橋に現れたのだ。

 

「艦長殿、ザフトの旗艦との通信を映像越しでお繋ぎ願えるか?」

「え…な、何をするつもりで…!?」

 

 驚き戸惑う艦橋の面子に構わず、その中を毅然とした表情で進むラムレルーシュは通信機を探し始めるが、悪い意味で火に油を注ぐ存在がそこへ現れた。

 

「そ、そうよ! 言ってよ! お爺様の船を撃ったらそのアーヴを殺すって!」

「「「「「!!!!!!??????」」」」」

 

 その遅れて艦橋へ姿を現したシャアラの悲痛な声での脅迫の要請の叫びに、フレイを含めてその場にいた面子の多くが凍り付いた。

 

「…ちょっと! 私達はそこまで言うつもりじゃ―――!?」

「敵旗艦の高熱源反応を感知! 再び先遣艦隊モントゴメリーに照準が当てられた模様です!」

「―――あ…えぇ!?」

 

 父の乗る船に再び凶行が迫りつつあることを知ったフレイに恐れの色がまた強く浮かぶが、次の瞬間に彼女達はその最悪の予想とは斜めの方向に行く驚くべき光景を目にする。

 

「くっ! またぁ!!」

 

 日光が駆るアージェイトがヴェサリウスから放たれた主砲ビームをまた四散させるが、その一本がザクの一機に当たってそれは煙を上げながらザフトの撃沈寸前のムサイ級突撃艦に衝突して爆発し、それで生じた護衛艦誘爆の破片はモントゴメリーの近くを漂う味方艦だった残骸を次々とビリヤードのように弾いていき、それらに隠れていたあれにも接近していく。

 

「う!? うわアアアァアアアアァ!?」

 

 ビリヤードのように猛スピードで近づいてくる弾薬交じりの残骸を窓越しに見たディズレーリスが悲鳴を上げたその次の瞬間、彼が乗る救命ポッドは残骸に衝突されて爆発した。

 

「今の爆発は!?」

「どうやら近くを航行していた脱出ポッドがザクの爆発に巻き込まれた模様です! モントゴメリーは中破こそしていますがまだ健在でー…!?」

 

 それに今の時点で最悪の展開を予想したスメラギの問いに他の面子から少し安心させられる報告が出た直後、ナタル・バジルールが通信機の一つをひったくって敵味方問わない広域オープン回線で繋げる。

 

「こちら銀河連合軍所属アークエンジェル! 我が艦は今現在中立国アーヴ帝国の王じ…!?」

 

 だが、ナタルが別時間軸で後に大きな禍根となったその放送を流そうとしたその時、彼女が掴んでいる通信機は大きく澄んでいる水の手で引っ手繰られた。

 

「って姫さん!?」

 

 アークエンジェルの総舵手であるノイマンがそれに驚くが、その水の手を手繰り寄せて通信機を奪った当人であるラムレルーシュは通信機に自らの頭環(アルファ)の有線を繋げて通信領域をさらに広げ、澄んで深い声でこう言葉を放つ。

 

「現宙域に存在するザフト軍・銀連軍・帝国軍三者に告げます。私はアブリアル・ネイ=ラムサール・アリエス子爵(ペール・アルィエシュ)・ラムレルーシュです」

「「「「「『『『『『!!!!!????』』』』』」」」」」

 

 そして、ラムレルーシュにハッキングされたアークエンジェルの通信機を介して、彼女の姿が三勢力の艦隊の通信画面に映しだされ、その姿を目にした人々は戦闘中なのも忘れる衝撃に追い込まれた。




この世界のこの場面で衝撃を及ぼしたのは、ピンクの歌姫や生真面目軍人副長さんではなく、この世界におけるアーヴのお姫様でした。
次回、この世界ではなくてラクスとそれを盾にしたナタルではなくて、状況を知らされて動き出したラムレルーシュの行動と、それが周囲へ及ぼしていく影響が中心になります。
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