星界の輪廻   作:oosima

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今回、種ガンでも問題のあのシーンのこの世界でのものが中心になりますが、ピンクの歌姫様ではなく本作世界でのブルーお姫様が活躍します。


073 理不尽を取り繕う道理

 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月7日正朝(帝国暦952年2月7日朝) 銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 銀連軍宇宙戦艦 アークエンジェル○

 

「現宙域に存在するザフト軍・銀連軍・帝国軍三者に告げます。私はアブリアル・ネイ=ラムサール・アリエス子爵(ペール・アルィエシュ)・ラムレルーシュです」

「「「「「『『『『『!!!!!????』』』』』」」」」」

 

 銀連軍とザフトの互いに数百隻を超す艦隊船が繰り広げられている中で、その銀河系最大の大国の王女の一人の名乗りは、オープン回線で繋げられた通信を聞いた全員に戦場であることを忘れさせる衝撃を与えた。

 そのアメジストを精緻に加工したような紫色の瞳に、映像付きで通信が繋がったもの全員が全てを見好かれているかの如き圧迫感を受けている中で、急に弾幕や艦船の動きが減っていくのを見てかラムレルーシュは言葉を続ける。

 

『私達はこの星系のデブリベルトへ時空間異常現象で漂着したゼミーシュルの調査及び追討慰霊祭の準備のために、流星系許可の元で同国・帝国双方官民共同の調査船理想郷(フェールヴ)号に乗船していました。ですが、無許可でこの星系を訪れていた他国の宇宙船を発見したのでそれを流星系政府に報告したところ、逆上したその船と交戦状態に入った後、銀連軍所属であるこのアークエンジェルに保護されました』

「え? マジで? なんか何日か前のこの宙域での流星系との合同演習の時にー、サマリア辺りの大型輸送船からなんか廃棄という理由で古びた宇宙船がデブリベルトにポイってされたのは見たことあるけどー…まさかー…?」

「艦長! そういうのはあまり証拠付でも公に繋がっていそうなこういう場所で言わないでください!」

「…おい、放送が終わったらこちらから銀連とザフトの両艦隊に停戦を呼びかけろ。おそらく、王女殿下(フィア・ラルトネル)もこの話を最終的にはその方向で…」

 

 同じくオープン回線に繋げられていた帝国軍旗艦の艦橋で、自国の王女の放送を聞いた同艦艦長のバッソが軽い口調で地味にやばい内容をぼやくと隣に座るゴモッドに突っ込まれるが、ゼスカハは目を細めつつもこれからの流れを予想して素早く指示を下す。

 

『…今現在この艦には私達の他にもヘリオポリス避難民が多数乗船しています。戦火に巻き込まれぬ形に引き出された方が生死問わず存在するこの星系で、これ以上この戦いを行うのはこのゼミーシュル追討慰霊団の帝国側代表予定の立場としてもこれ以上お勧めできません』

「…帝国の王女だと!? 本物なのか!?」

「おい! 音声及びその霊質反応から早急に調べ上げろ!」

「全艦艇に緊急指令! 即座に戦闘行為を一時停止しろ! ザフト艦隊から距離を取れ!」

 

 ラムレルーシュの横槍に救われる形となった銀連軍にもその放送は流され続け、特に先遣艦隊旗艦モントゴメリーの艦橋は彼女の存在もあって戦時にありながらそれとは別の慌ただしさを見せている。

 

『…戦う理由に違いはあれど、その務めの一つに力を持たぬ人々を守ることがあるのは尽くすべき国の違いはあっても防人共通の責務のはずです。その人々がこの場から離れるまではー…』

「ク、クルーゼ提督…」

「銀連側の動きは…?」

「それが…反撃の密度が下がっていって先遣艦隊は徐々に我が艦隊から離れていっており…」

「…やむを得ん。この王女本人の内心はどうあれ…全艦に銀連側と距離を取るように通信を出せ。全MSに母艦の随伴に戻り攻撃中止の命令をー…」

 

 放送が続く中、それを受けているザフト側旗艦ヴェサリウスの中でアデスらのやや強張りを宿した言葉を受け、クルーゼは警戒と興味を少し見せた笑みを口元に浮かべつつ味方に交代の指示を出した。

 

「…クルーゼ提督から全軍に後退命令!?」

「帝国のお姫様が足つきに乗ってて本人が停戦しろって言って来たってさ!」

「何の冗談だ!?」

「冗談ではない。声紋及びその霊質反応を解析したら本物の生放送だと。これ以上やるとその白いおかっぱを丸刈りにするだけではすまんぞイザーク」

「う、うるさいぞメアリ!」

 

 ザフトのMS部隊もその内容と理由に驚愕し、一部は反発を示しつつももしも本物だとした場合の危険性から、銀連の宇宙戦闘艇部隊が退いていくに連れて各々の母艦に戻っていく。

 

「…………」

『…キラ…何だあの放送は!?』

「…っ! あ、あれは…」

 

 その光景と先のラムレルーシュの放送で呆気に取られて半ば呆けていたキラに、イージスからアスランの通信が疑念と憤りを宿した状態で流れてきた。

 

『何故関係のない国の民間人! しかも王女がお前のいる船に乗っている!? それとも()()()()()()()()!?』

「…っ! そ…それは…!」

『言い訳は通用しないぞ! どんな真実だろうと必ず明らかにする!』

 

 戸惑いと後ろめたさを強めるキラの声に、疑念と軽蔑を隠さない声音でそう言い残すとアスランも退いていく味方に遅れて続いた。

 

『キラ、あれの理由を考たり調べるのは船に戻ってからでも出来る。今は退くんだ』

「…リュー…ス……」

『幸いにもザフト側も退き始めて、私達の艦も先遣艦隊に合流出来ましたから…』

 

 そこで寄ってきたバルバトスから入ってきた通信にキラはその乗り手に昔の呼び名で答え、日光が乗るアージェイトも随伴してきたのでストライクもアークエンジェルへ戻るのであった。

 

 

 

 

 

 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月7日昼(帝国暦952年2月7日昼) 銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 銀連軍中心領域第八艦隊先遣艦隊 旗艦モントゴメリー○

 

「怪我人はDブロック医務室へ!」

「その中破したメビウス23号機は三番倉庫に一先ず放り込めー!」

「…何とか助かったけど…素直に喜べない状況ね…」

 

 ラムレルーシュによる放送で戦闘が強引に中止させられて数時間後、別時間軸と違って全滅を免れた先遣艦隊だが、楽観視できない被害はその旗艦でも容易に視認でき、先の放送と今後の対策でモントゴメリーに呼ばれたアークエンジェル側最高指揮官スメラギ・李・ノリエガが、行きかう怪我人や傷ついた戦闘艇の数に重い表情を浮かべていた。

 

「スメラギさんにマリューさん! さっきのあの放送は何なんですか!?」

「ッ、キラさん…」

 

 そこで遅れてモントゴメリーに移ってきたMS組の一人から疑念と非難が隠せていない問いが投げかけられた。

 

「あんな巻き込まれた女の子を盾にするような真似をするなんて…!」

「落ち着け嬢ちゃん! あのお姫さんのあの動きは俺達だっていきなりだ!」

「ムウさん! だったらあんな私達と敏が変わらないあの子がどうしてあんなことをー…!?」

 

 その厳しい声音で近づくキラにムウ・ラ・フラガは険しさの隠せない顔で対応しようとするが、そこでリュールが少し険しくなった顔で間に割り込んでキラを止めた。

 

「僕だよ」

「「「「「!!!???」」」」」

 

 そして、リュールのその小さいが衝撃的な告白に、他のアークンジェル組は声こそ出さなかったが驚きを見せた。

 

「…あの状況だと開戦前からこっちがそう長くない内にすりつぶされるのは目に見えていた。だから、そうして全滅するよりかはましだと考えて、僕があのお姫様に仲介をお願いしたんだ」

「…リュール君…」

「…だけど!」

 

 その告白にアークエンジェル士官組、特にマリューは複雑だが陳謝を声音に滲ませるが、若いキラはなおも食い下がる。

 

「…ここであのお姫様を道連れにして、代わりにゼミーシュル付近に残されている揉めた物証と共に、銀河で一番デカくてえげつない国で今の安全保障名目の制限は甘いという派閥の人達へ口実(プレゼント)残すなんてしたい人はいないでしょ」

「「「「「!!!???」」」」」

 

 それにリュールが普段のヘラっとした感じも時々する穏やかな口調とは真逆の、冷たい声とそれで返した言葉の内容は耳にした銀連側を強張らせた。

 

「…っ! リュール・ソードリュ! 不用意な発言は慎め!」

「…はい」

 

 数秒の沈黙を置いた後、嫌悪とそれでは隠し切れない慄きを滲ませた声でナタル・バジルールは怒鳴りつけるが、リュールは冷めた声で短く了承した。

 

「…なるほど、この星系のデブリベルト宙域に通りかかったら民間船同士のトラブルで避難させられた、アーヴの王女とプラント最高協議会やらニュートン宗家に四葉家分家それぞれの令嬢を救出したと…」

 

 数分後、モントゴメリーの会議室で開かれた先のラムレルーシュの放送も含めた査問会及び今後の作戦会議で、先遣艦隊司令官はアークエンジェルより提出されたデータを一通り見て憂鬱そうな顔を見せていた。

 

「帝国艦隊の様子は?」

「先の放送を受けてこちらに事情の説明を求めてきています。それで航行を停止して対ムーンレイスゲート前宙域にすぐ移れる宙域点で陣取りました。既に流星系政府から追加許可を貰っていることも正式証明書データ付きで送ってきました」

「…技術力、特に通信の差だな。この場合助かったと言うべきか…政府は認めたがらないだろうが…」

「………」

 

 だが、その憂鬱は会議室の空中影像に映しだされた帝国艦隊に対するものと同時に、いや、それ以上に味方であるはずの本国に対するものが向けられているようにリュールには見えていた。

 

「ザフト艦隊の様子は?」

「本宙域より宇宙○○○〇キロ離れたAK13宙域点で呈しています。すぐに互いの最大射程範囲内に入れる距離ですね」

「…そうか、とりあえずこちらが送ったデータで慎重になってくれているか…」

 

 現在の他勢力艦隊の動きを見て時間が生まれたのを再確認した後、数秒の沈黙を置いて一人が再び口を開く。

 

「結論から言ってその王女含めて4人は解放した方が良い。帝国に仲介役をやってもらってそれで解放した後はさっさとゲートを潜って一番近いムーンレイス司令部に逃げるしかないだろう」

「ええ、それが一番安全で現実的な案ですな。問題はあの二者が受け入れるどうかですが…」

 

 ジョージ・アルスターが出した結論に先遣艦隊司令も含めて場にいる面子の多くが同意しつつも懸念も示す。

 

「…いや、今のそれぞれの本国政府の状況を考えれば、今の停止状態を保てたままにすれば…早ければ一週間ほどで帝国側の方から仲介を申し出てくるだろう。特に今の帝国の政権の状態を考えればー…。後はーこっちの本国の大統領に詳細が知られる前に民間人の人道的交換及び避難という形で王女殿下及び中立国市民を帝国に、クライン嬢をザフト側に引き渡したのち、本国大統領によるお手柄という形にして押し通す。今の支持率を考えれば大統領も表立ってなかったことにしたり曲げたりはすまい。腹の中はともかくな…」

「…そこまでですか?」

「「「「「………………」」」」」

 

 ジョージの出したその案の補足説明に周囲は一定の信を向けつつ、同時に敵よりも味方であるはずの本国への憂鬱を強めた。

 

「…あの、僕からも質問を一ついいですか? ほぼ間違いなくこれからこの艦隊の生存率を上げるには避けては通れない問題なのでー…」

「あ、君が亡命アーヴのオーブ人でアークエンジェルMSパイロットに志願したという…何かほかに問題でも?」

 

 途中でリュールが発言許可を求めて、事前に話を聞かされていて悪くない感じで注目を向けていたジョージが許可するが、それが今の状況にも関係するあの懸念を一同へ強く再認識させる。

 

「…帝国の艦隊が近くにいるということは、あの艦隊に先の戦闘を情報収集の一環で見られていますよね? オーブと帝国で共同研究されていた先駆者(フォアランナー)の遺物であるあの二機…“バルバトス”と“アージェイト”…どっちも所有権は特殊ではありますけど帝国にあるはずですし…」

「「「「「……………………」」」」」

 

 そのリュールが上げた懸念に、先ほどまで少し安堵が生じていた会議室内の空気は再び重くなった。

 

 

 

 

 

 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月7日夜(帝国暦952年2月7日夜) 銀河連合 銀河中心領域付近 ダミッド・デブリベルト星系 帝国星界軍(ルエ・ラブール)赤閃艦隊(ビュール) 旗艦(グラーガ)ゼディーラ 艦隊司令官室○

 

『…今さっき本国政府が決定した。フェザーン経由で大星洋連邦現与党穏健派の同意を得た。本宙域では相手側から危険水準越えの攻撃が発生しない限り三者停戦を維持。うちの艦隊、つまり現場のお前さん達が仲介役という形で、銀連側が保護している民間人の安全な第三国経由での避難及び帰国という形で王女及び希望者をこちらが受け、ザフト側に現議長の令嬢含めたプラント民間人をザフト側に帰国させるとさ。及び三者のダミッド・デブリベルト星系からの退去を停戦終了の合図にするというのを主な骨組みにしてな』

『そういうわけでー、小難しいのは儂とズァリスで色々するから現地の手綱役は頼むよー。まー表向きは半分銀連側の手柄という形にして今の大星洋連邦現政権へのプレゼントとしてねー。支持低下中に悩んでいた現与党の知人に事が終わった後で顔真っ赤にするだろう大統領殿の宥め役はお願いしたしー…』

 

 ゼスカハがいるその部屋に、帝都ラクファカール及びそこと赤閃艦隊を仲介している近い鎮守府(シュテーム)からの連絡を、同鎮守府司令官及びラクファカールの外務省本部の動けるもので最高位の人物からそう連絡が入っていた。

 

「感謝します。バマル外務省副尚書、ズァリス大提督」

 

 ゼスカハが感謝を口にすると、鎮守府(シュテーム)及び帝都(アローシュ)からの超長距離通信は終了し、彼女の視線は艦内の部下との通信画面に切り替わった。

 

「よし、あとはもう帝都及び他の友軍からの着信に気を払えばいい。必要な要員だけ残して臨時通信士(ドロキア)も休憩及び本来の業務へ戻ってくれ」

『はい、それにしても(ソード)を挟んだ状態で帝都や他の友軍と時差ほぼ無しで通信ができるようになるとは凄い時代になりましたねー。魔術学要素が多いですからそれを用いるには感知系が得意な魔術師が複数必要で距離や情報量が増すにつれて要員の負担も増えるのが難点ですが…。民間に用いるのも費用が高いですし…』

「それでも連絡に時間がかかり過ぎるのをいいことに目が届きづらいあちらこちらで馬鹿な真似をされるのが減ったのはいい」

『おかげでBETAからの人類宇宙防衛戦争の責務の一環として、銀連が昨年のゼミーシュル事件で出された安全保障技術保護令を解除しろといってきている理由の一つになっていますが…。超長距離通信時差微小化技術発展にも大きく役立った“疑似星核粒子炉”を実用化させたリューナクト博士が生きていれば…』

「…ないものねだりをしても仕方あるまい」

 

 その後、部下と昨今の技術発展やそれに伴う愚痴を言い合った後にその通信画面も閉じると、ゼスカハの視線は先の銀連とザフトの戦闘を映し出した映像に向けられる。

 

(…この先駆者の遺物である二機…特に悪魔の名を冠したGフレーム使用機械甲冑機(ソウォーヴィ)の動き…、ゼツィーリュと友人だったラムキースの息子がリューナクトの名を用いて乗っていた時に似ているな…。機体の性能差から動きが遅くて硬い分を除けば…)

 

 ゼスカハの双眸は画面に映る銀連側で戦うアージェイトとバルバトスに向けられ、特に後者に対して警戒が強まりつつも懐かしさも滲んだ色を浮かべた後、別の通信画面を映し出した。

 

「今現在、試験運用中の()()()()の準備もしておけ」

『え…? 現在の我が艦隊の機械甲冑(ソウォーヴィ)操縦士であれを乗りこなせるものがー…』

「その操縦士、私を除いていないか?」

『…は!?』

 

 そして、ゼスカハが銀連側の二機に対して抱いた懸念から出したその命令に、ゼディーラ及び同艦所属の機械甲冑機(ソウォーヴィ)のハードウェアの管理責任者である監督(ビュヌケール)は顎が外れそうになった。




今回は本作におけるブルーの姫様のお一人が中心になりましたが、次回は種ガンファンなら待っていたピンクの歌姫様が活躍する予定です。
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