星界の輪廻   作:oosima

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今回、種ガン自然軍人で数少ない良心枠だったあの人がやっと登場します。


075 好事と凶事の重なり

 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月11日早朝(帝国暦952年2月11日早朝) 銀河連合 銀河中心領域付近 ムーンレイス星系 銀連軍中心領域第八艦隊○

 

 帝国仲介でザフトとの間で民間人解放や返還を行い、一刻も早くザフト艦隊から離れて安全な領域へG及びその資料を届けるべく銀連軍の先遣艦隊はそれらをその日のうちに終えてダミッド・デブリベルト星系の対ムーンレイス・ゲートに飛び込んで二日後、ついにザフトの追撃を受けずに銀河連合軍の中心領域付近艦隊司令部があるムーンレイス星系に入った。

 この星系は対ザフト戦線のみならず対BETA戦においても重要な銀連軍の拠点であり、大星洋連邦左下端部にあるパナマ星系ジャブローの銀連軍総司令部、大星洋連邦左上端部にあって同国の対BETA戦線司令部であるアラスカ星域のユーコン星系にあるJOSH-A(ジョシュア)、プラント小銀河において銀連側の唯一残された一大拠点であるリーチ星系に次ぐ重要拠点である。

 

「…いやー! ヘリオポリスが崩壊したと聞いた時はもう終わったかと思ったぞー! 何せあっちの方で進めていたので得たデータをもとに進めていたもう一つの方もザフトにばれて奪われたと聞いてからたった一時間後の事だったからなー!」

 

 そして、そのゲートを潜って早々に合流できた銀連軍第八艦隊の司令官であるデュエイン・ハルバートン中将がアークエンジェルで安堵した様子を見せていた。

 

「お久しぶりです閣下!」

 

 何気にまた危ないフラグを臭わせる発言もあったが、アークエンジェルの搭乗口で出迎えたスメラギ達はそんなことには目もくれず喜色を見せていた。

 

「…わざわざ第八艦隊総出で出迎えたのがこの奪われずに済んだ艦一隻及びG一機と試作量産機数十機だけとは…半公開済みとはいえ帝国管轄のオリジナルGフレーム使用機体二機もおまけしているとはいってもなー…。途中でアルテミスほぼ壊滅もあるしなー」

「「「「「………………」」」」」

 

 数分後に艦隊司令官の執務室に到着すると、第八艦隊副司令官ホフマン准将の嫌みにアークエンジェルの士官達は反論できずにいた。

 

「…残ったGであるストライクのパイロットはコーディネイター、それでオリジナルGフレーム二機のパイロットも片方が亡命二世とは言えアーヴで、更にもう片方は帝国からヘリオポリスのモルゲンレーテへの留学生兼研究員であの噂の葉月(ガリューシュ)のお姫様…こういうところにばかり運が回ってもなー。ウィンダムの方も何機かはコーディネイターというし…」

「…彼ら…特に三名、リュール・ソードリュ、キラ・ヤマト、日光・葉月(ガリューシュ)はそれぞれ出自こそ違いますが、ヘリオポリスで平和に暮らしていた市民や学生でした…」

 

 ホフマンの言葉に抗うようにスメラギ・李・ノリエガがまず再び口を開き、マリュー・ラミアスもそれに同調する。

 

「…特にキラ・ヤマトはそれが顕著ですが、他の二人も運悪く戦火に巻き込まれる形となって、自らの同胞との戦い…いいえ、戦争そのものに罪悪感を覚える…我々のよく知る少年と少女そのものです。その上で三人とも我々がここまで到着する上で最も大きく力を尽くしたと言っていいでしょう」

「それに我々は信頼をもって答えるべきかと…」

 

 二人とも三人に対する後ろめたさとその身への案じで解放するべきと述べるが、それに対する反論も出てくる。

 

「…それはつまりあの三人、特にリュール・ソードリュを下ろすということを意味しますか?」

「……っ…」

 

 少し険しい顔で割り込んできたそのナタル・バジルールに、アークエンジェルの宇宙戦闘艇・MS隊で兄貴分的に信頼されているムウ・ラ・フラガは苦い顔を向ける。

 今現在、先の民間人解放を受けて帝国と大星洋連邦の間では、リュール達をも含めた残りの民間人は銀連軍総司令部のあるパナマ星系ジャブローの前の星系でそれぞれの関係国艦隊へ引き渡すということで解放を行い、時間の都合で今はまだアークエンジェルにあるジェフティとバルバトスの二機もそれに伴って帝国側へ返還することになっていた。

 だが、これまでの戦いでアークエンジェル側にて戦ってきたコーディネイター達の活躍、特にリュールのそれでナタルは帝国への返還や帰国には強い拒絶を覚えていたのだ。。

 

「…そうだなあ。あれだけ我が軍の機密に触れられた状態で解放というのは…」

「その通りですホフマン准将。それに加えて、これまで我が艦が生存出来て、先遣艦隊が少なからぬ被害を出しながらも共に合流できたのは彼ら、特に彼の能力とそれによって大きな戦果を上げられたバルバトスがあってこそかと…」

「だがなあ、本人達にはその気はもうないという話だろう。何よりザフトにあれだけ奪われた後で軍の機密など…他にもここで帝国相手にネコババなんぞ真似をするなんぞなぁ…」

 

 そのナタルとそれに同調するホフマンに対しハルバ―トンはスメラギ達と同じ立場のようで、それは文官サイド代表の立場で出席していたジョージ・アルスターも賛意を口で示す。

 

「血のバレンタインで盛大なとばっちりを受けさせたせいで、帝国がますます密輸阻止強化を進めて前線での物資不足が悪化しているのは君たちの方が知っているだろう。まー最近はBETAの大規模侵攻が対帝国方面で集中しているからそもそもこっそり横流しさせてもらえるものが少なくなっている一方というのもあるがー、そこでネコババなんぞしてますます酷くしたら財務省や商務省がこっちへ絞め殺しに来るぞ」

「ですがしかし! このままみすみす下ろして帰すというのは…!」

「それではどうやってこちらに来させるというのかね?」

 

 政経の視点でも強まる問い詰めにも食い下がるナタルに、ハルバートンは口調こそ平静だが眼力を強めて問う。

 

「今回の合流前の各戦闘で尽力してきたGフレーム使用機体ですが、その一機であるアージェイトのパイロットは日光・葉月(ガリューシュ)です。彼女は帝国の貴族となっていますが人種は地球起源人間のナチュラルでその実態は同国による日常的侵略行為で併合された後に傀儡として建てられた存在なのは明白です。これまでの戦歴を元に帝国側へ彼女が亡命済み同然なのを通達した後、彼女をここに留めさせて説得を始めてその連鎖で他の者達もー…」

「……っ…」

 

 それに対するナタルのさも当然という策にマリューは声こそ出さなかったが軽蔑と嫌悪を表情に滲ませた。

 その軍人気質や真面目な性分から気付いていないが、ナタルは日光を詐術で帰国できないようにして脅して、彼女を人質に他のメンバーも引きずり込めと言っているのだ。

 

「馬鹿も休み休み言え! そんな手で手に入るような兵をたかが数十名増やしただけで何になる!!」

「…っ! 申しわけありません…」

 

 当然、ナタルの気付いていない卑劣さはハルバートンに叱責で返された。

 

「…それに、戦前よりもコーディネイターや魔法技能師、亜人種…特にアーヴが連合圏内でどのように扱われているか。“ゲットー”の状況がどうなのかは君も何度か見聞きしているだろう」

「…“保護自治区”の事を言っているのですか? 中将、まさか電子動画至上主義者や陰謀論者の虚言を信じているとでも…?」

「これまで陰謀論や欺瞞とされてきた事実が真実だと明らかにしてきた人物の多くが君の()()だがね」

「…………」

 

 その上で銀連の影の部分も絡めてくるハルバートンの言い分に、ナタルは政府の公式見解や大手マスコミの論説を盾に如何わしいものに対する表情を見せるが、上官が彼女の出自も絡めて問い詰めると不満を隠さない表情だが押し黙る。

 

「…それよりも今はこれからの戦況だ。Gの開発と量産を何としても軌道に乗せねばならん。悪いがこれまでのザフトの進撃スピードを考えれば、ここから到達するのに一週間かかるムーンレイスの中心領域付近司令部まで君達を守り通せる見込みは低い。故に、この宙域の今この時期で生じる疑似ゲートユアノン複数半自然発生現象を利用し、君達には一気にパナマ星系ジャブローまで行ってもらう」

「「「「「…………」」」」」

 

 そうして話を遮る芽が鎮まったのを見て取ると、ハルバートンが出したその命令に、これまでの戦闘でザフトの脅威を否応なく肌で感じさせられてきたアークエンジェルは反論できなかった。

 

「ザフトが様々且つ効果的なMSやMAを導入してこちらとの戦況を有利に進め、更にそれを中心とする技術を対価にしてBETAの脅威に晒されている各国の切り崩しを進めている! それで我々よりもBETAの侵攻を受けながら帝国は奴らと接触する前より効果的且つ臨機応変に軍政や装備の刷新を進めて、前線国で唯一領宙失陥を防ぎ続けている状態を保ち、銀河全体を見据えて中立国を巻き込んで新しい防衛体制の構築を進めているのだ!」

 

 その上でハルバートンの言葉は今現在の国際情勢も絡めて言葉を重くしていくと同時に、憤りの色もまた見せ始める。

 

「…だというのにアラスカやパナマに潜って、過去の仮初の覇権の残滓である利権に執着して宇宙(そら)の戦いがどうなっているのか知ろうともせんモグラ共は! 戦場でどれだけの将兵や市民が犠牲になっているのか数字すら満足にわかっとらん!!」

「…閣下のそのお言葉、ハニア戦線の“長平”で南部(なんぶ)少佐に生かされた身の一人として無視できませんな…」

「…頼むぞ皆」

 

 そうして紡がれた言葉に、両津勘吉が別時間軸と同じく多大な恩を受けるもその最後を看取った男の姿を思い出し、普段のちゃらけていたり無茶苦茶な振舞などない重い様子で答え、ハルバートンはそれに真摯さを感じ取った。

 

 

 

 

 

 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月11日正午(帝国暦952年2月11日正午) 銀河連合 銀河中心領域付近 ムーンレイス星系 銀連軍中心領域第八艦隊 戦艦アークエンジェル○

 

「…俺達…降りられるかなぁこの船から…?」

 

 艦隊の上層部でそのような重い話がなされてから数時間後、自分達も世話になった人達もその場にいるなど知らないカズイ・バスカークは不安そうな表情でそう愚痴った。

 

「降りられるに決まってるでしょ。こんな服を着てるって言っても私達は人手不足で手伝ってるだけの民間人なんだし…」

「だけどさーミリ、俺達はともかく…キラやあのアーヴの子とかMS組の皆は大丈夫かなぁ? あれだけ軍の機密に触れちゃってるわけでしょ?」

「「「「「………………」」」」」

 

 そのカズイの不安は周囲の共に臨時志願兵となっていた周囲の少年少女へ広まっていく。

 昨年の血のバレンタインに代表される銀連軍の問題行動の数々は、古くからの大手メディアによる必死な情報操作でも隠せるものではなく、寧ろ悪化していく一方の実生活やネットの情報で寧ろ悪い印象を与える形で広まっていた(コーディネイターへの反発も負けず劣らずだが…)。

 だが、友への心配と艦隊への合流で、カズイたちは今の自分達にとって最も恐るべき脅威を次の瞬間まで忘れていたことに気付かされてしまう。

 

『緊急警報!! ザフト艦隊の反応を検知!! 総員第一級戦闘配備!!』

「「「「「!!!!!?????」」」」」

 

 これまで自分達の死の気配を幾度となく覚えさせてきた追手が、本来ありえないはずのこの状況で再びやってきたことは彼らから言葉を奪うには十分すぎた。




次回、今回の話の最後で衝撃となった彼らの内情と今回の行動の理由が中心になります。
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