星界の輪廻   作:oosima

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今回、種原作の方でもそっちの主人公を曇らせたあの鬱シーンが出てしまいますのでご注意をお願いします。


078 救いが齎す別の犠牲

 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月11日昼(帝国暦952年2月11日昼) 銀河連合 銀河中心領域付近 ムーンレイス星系 銀連軍中心領域第八艦隊 旗艦メネラオス○

 

「我が艦が位置する中央艦隊も第三防衛線まで敵の新型MAを中心とする部隊が到達しています! 損耗スピードの速さからして我が艦までその先陣が達するまで最長十分しか残されていません!」

「ああ! 敵艦隊に属するクルーゼ艦隊によって戦域離脱中のガーナール! ヴィッテラン! アルハバドら43隻が全て撃沈されました!」

「…おのれドズルにクルーゼめ…! 今この場から逃げ出す余裕すら奪うつもりか…!」

 

 リュールがバルバトスに戻ってから十数分後、さらに悪化していく戦況の中でそれらの情報が集約されていく第八艦隊中枢にて、ハルバートン達は苦悩を強めて今この場で最も逃がすべき存在に意識を向ける。

 

「アークエンジェルに繋げ! 全通信能力を使って構わん! 大至急だ!」

「…え!? あ…はい!」

 

 その苦渋の覚悟を宿した言葉に、通信兵は戸惑いつつも上官への尊敬と信頼から直ちに実行する。

 

『こちらアークエンジェル指揮官スメラギ・李・ノリエガ少佐です。ハルバートン中将! 何用で!?』

「アークエンジェルは今現在最接近中のゲートに対して突入態勢に入れ! この数値ならパナマへの直行は出来んがあちらと繋がる近隣星系への味方領域に出られる!」

『!? しかし今この状況で本艦が抜けたら戦況が…!』

「目先の戦況だけに囚われてどうする! これ以上貴艦がこの場に留まっても我が艦隊全滅までの時間を少々引き延ばすだけだ! アークエンジェルに早くこの宙域を離れてもらわねば我が艦隊もムーンレイス基地防衛圏内に戻れずこの場で全滅だ!」

『…っ! 了解しました!』

「…わるくないと蔭口でも言える時代が来るまで、死ぬんじゃない…」

 

 そこで繋がったスメラギに苦悩の色を浮かばせつつも、今この状況で最良の選択だということを素早く納得させると即座にアークエンジェルとの通信を打ち切り、それからメネラオスから第八艦隊全体に向けて別の通信が発せられる。

 

「ハルバートンより全艦隊全人員に告げる! これより我が第八艦隊はアークエンジェルの味方側宙域ゲート通過のための最終絶対防衛線態勢に陣形を組み直す! あの艦とあれに乗せられた機体らの情報は明日以降の我が軍! 否! 全人類が真の敵BETAに対して勝利し生き残るために必須の存在だ! 彼らにザフトが追い付けば人類の命運は尽きると思って銀河連合軍の力を見せてやれ!!」

 

 そのハルバートンの激励を乗せた指揮を受け、第八艦隊は直ちに陣形を組み直し始める。

 

「…む? まだパナマ星系への数値が出たゲートは先なのに足つきが動き出した…? それに…この連中のあいつらを包み込んで守りながら移動する動きは…!?」

 

 一方、戦況を有利に進めているザフト艦隊の旗艦バクト・デギンの艦橋より、艦隊司令ドズル・ザビはその銀連軍の不審な動きに気付き、その目論見に気付くまでさほど時はかからなかった。

 

「付近にあるビグ・ザムとGを全て投じて構わん! 何としても足つきをゲート向こうへ逃げられる前に落とせ! 付近にいるクルーゼ艦隊とブル艦隊にマネキン艦隊は全力で支援しろ! 予備戦力に回している高速艦隊であるバゼット艦隊も投入して向かわせろ!」

「は、はは!」

 

 即座に発せられたドズルの号令で、ザフト側もまたこれまで全体的有利であった戦況故の高揚に対する冷や水が浴びせられてこわばりが生じる。

 

「足つきがゲートに逃げ込もうとしているだと!?」

「そうなったら今この状況ではほぼ追撃できなくなる!」

「何としても突破し追い付いて仕留めろ!」

 

 特にそのこわばりはMS隊やMA隊に強く張り詰め、アークエンジェルを狙える距離にある機体のほぼ全機が向かい始める。

 この宙域で発生している短期間自然発生ゲートというのは、嵐状や竜巻状に破壊力のあるユアノンを撒き散らしており、その状況でゲートを潜ろうとする宇宙船はそのユアノンから守る時空泡や防御磁場に大きくリソースを割かれてしまい、軍艦でもその間は防衛装備の多くは使えなくなってしまうのだ。

 ましてや、昔よりかは高性能化が進んでいるとはいえMAやMSで発生させられる防御磁場や時空泡ではゲートを潜ろうとすれば高い確率で破壊されてしまうので、今この状況でアークエンジェルにゲートを通過されればMSやMAでは追跡することはほとんどできなくなるので、ザフトのMS・MA隊の面々が必死になるのは自然であった。

 

「…く! ドズルめ…もう気付いたか…! 第十二分艦隊をアークエンジェルの防備に回せ!」

「あぁ! 駄目です! その第十二艦隊が敵の例の新型巨大MAに突き破られていっています!」

 

 だが、緊張が強まってもその能力差からくる戦況有利なのは相変わらずで、ビグ・ザムを中心としたザフトのMSの大軍がアークエンジェルに向けて猛スピードを出し、それはその道を阻む位置にいたメネラオスへもう接近しだす。

 

「敵の大型MAに小型戦闘艇部隊は至近距離からレーザーカッターで攻撃を仕掛けろ! 遠距離からのビーム砲撃は聞かないが至近距離でのレーザーカッターで傷を付けられたのは確認済だ!」

「だ、駄目です! あの大型MAの足に付けられている巨大クローが無線誘導で動くのか分離して接近を試みる戦闘艇部隊を次々と返り討ちに…! アア…も、もう…!?」

 

 その状況でもハルバートンは僅かな勝ち筋を見逃さない指示を出すが、それが実を結ぶ前にとうとうビグ・ザムの一機がメネラオスの防御磁場を無意味とする距離まで接近し、その中央に位置する戦艦の主砲と同等以上のビーム砲口を光らせ始める。

 

「敵旗艦メネラオスロック!」

「よし! こいつを落とせば足つきへの道を遮る障害はな―――!?」

 

 だが、ビグ・ザムの搭乗員達が勝利と大手柄を確信したその時、ビグ・ザムが凄まじい衝撃に襲われて、彼らのいるコクピットブロックを真下から巨大なビームランスが穿ち抜いた。

 

「―――あがぁ…!? な、何が起き…!?」

 

 その不意打ちで重傷を負いつつも死にぞこなった機長が血に染まった視界で画面を見やると、そこに巨大なビームランスとそれから伸びている有線の先に青を基調とする悪魔の名を冠したGフレーム使用機を見て、そこで視界は爆炎に包まれた。

 

「ビグ・ザムが一機やられただと!?」

「例の機体です! 名は先日の調査で分かっています! あの機体は…バルバトス!」

「! アスラン! メアリ! あのGフレーム使用機が!」

「っ! ああ! こちらも見えている…!?」

 

 それを成したリュールのバルバトスの姿に、ザフト側は驚くと同時に交戦経験を持つ面々は不審を覚える。

 

(…ストライクの姿がない!? キラは…!?)

 

 アスランの脳裏にこの場に姿を見せない幼馴染の少女が思い浮かび、それは不穏さを覚えさせた。

 

「ちょっと! 私達の出撃がまだ出来ないの!? 確かにこの数の差じゃあ焼け石に水だけどあのままじゃあリュール君が良い的よ!」

「無茶言うんじゃねえよ姉ちゃん! 通常のゲートはともかく今のユアノン嵐状態じゃあウィンダム程度は時空泡もろとも消し飛ばされるぞ! フラガ少佐や両津少尉じゃともかくお嬢ちゃんたちの今の腕じゃあ無理だ! というか何で嬢ちゃん達がまだ何でここに…!?」

 

 一方、その映像はアークエンジェルのMS格納庫にも届けられており、ゲートの向こう側に平面宇宙を挟んで存在する銀連側領域に着いてから除隊予定になっているセレーナがマードックに噛みついていた。

 

「この状況だと今この船で出撃できるのは、Gフレーム使用機なのでエイハブ・リアクターのエネルギーを常時大出力で引き出せることで防御磁場を戦艦並みに発生させられるバルバトスとアージェイか…」

「実態弾攻撃やユアノンに対して高い耐性を持つPS装甲持ちのストライクくらいです」

「そうだよ嬢ちゃん達…はぁ!? お前さんたちまで!?」

 

 そのマードックの抗弁を後押しする存在もいるが、それがパイロットスーツに身を包んだ日光とキラであった。

 

「どっちみちゲートを潜る前にこの船ごと落とされたら意味ないでしょ。どの道ゲートを潜って向こう側の銀連の領域に着くまでは除隊できないってことだし」

「ネーナの雀斑嬢ちゃんも!?」

「まー、今の状況だと即座に機体ごとユアノン嵐で木っ端みじんだから予備兵力待機が基本だけどね」

 

 更に、ネーナなど臨時でMS隊員になった面々も続々と格納庫へ姿を現し出した。

 

「…ごめんなさいマードックさん。今も別の格納庫で待機中の民間船へ乗る前に、リュールが守るために一人で残るだろうって思ったから、戻ってみたら皆に捕まって白状させられてそれで皆が放っておけるかって…」

「…はぁぁ…」

 

 その何とかこの艦を降りてほしい少年少女達の帰還に、ムウは我が身の情けなさを改めて覚えるのであった。

 

「すみません! 遅れましたー!」

「あ、あなたたちは今も待機中のシャトルにいるはずじゃ…!?」

 

 同じ頃のアークエンジェル艦橋にも、少年兵服に着替えたサイ達も戻ってきて、マリューを驚かせた。

 

「緊急事態故に私が許可しました。今ここで必要なのは戦力です。このままバルバトスだけでは我が艦ごと機体とデータも全て沈められて第八艦隊の犠牲が全て無駄になります!」

「っ! ナタルゥ!」

「ラミアス少佐! 落ち着きなさい! 今は彼ら含めてこの艦と機体を全て向こう側に生きて届けることです!」

「…っ!」

 

 そこで彼らを招き入れたナタルとマリューの間で口論が起きかけるが、アークエンジェル司令のスメラギの言葉がマリューの憤りを口籠りに押し込んだ。

 

「くそ! あのストライクと他のMSは何処だ…!?」

 

 一方その頃、アークエンジェルを囲む激戦宙域で戦闘中のザフトMS隊に新たなザクへ搭乗したジーンがいたが、その瞳は画面越しにメネラオスなどから射出された民間シャトルに向けられていた。

 それらのシャトルは、今この状況では艦内に留められていても一緒に撃沈される可能性が高いと判断され、ジャブローまでとはいかずとも近くの安全な星系へ繋がる反応を示すゲートを目指して、比較的ユアノン嵐も低下している今のうちにと脱出させられたものであった。

 

「…帝国とオーブのバルバトス以外のMSは未だに姿を見せていない状況で民間船を…まさか!?」

 

 だが、そうした事情を知らないジーンは今の敵の不審な動きもあって脳裏に生じたその考えに焦りを高められ、ザクのスラスターを全力で噴かせて民間シャトルへ向かいだした。

 

「!? ジーンどういうつもりだ!?」

「イザーク! あいつら帝国に返すくらいならとバルバトスをここで使い潰してその間にストライクとかを民間シャトルに偽って届ける魂胆だ! 姑息な真似をしやがって!」

「お、落ち着いてください! 民間信号ですよ…アア! もうあそこまで…」

 

 それに対する味方からの戸惑いや制止も無視してジーンのザクは猛スピードで民間シャトルの一団に向かっていく。

 

「…ふう、やっと他のシャトルも出られたし、艦隊には悪いがここでシャトルが一隻でも巻き添えにされたら国務省が更に締め上げられて強硬派がますます…。後は我々のも含めた最後に出たこの船団がもう少しで落ち着くだろうゲートを潜れば―――」

『緊急警報! ザフトのザクがこちらに向けて急速に接近中です!』

「―――あってなぁ!? 何ぃ!?」

 

 そのシャトル一団の一隻に同じく搭乗させられて脱出させられたジョージ・アルスターは後ろめたさを覚えつつも一息を付けたという表情をしていたが、そのまたしても危険が迫ってきていることを知らされて窓越しにその理由をギョッとした表情で見つけてしまう。

 

「…フヒ! フヒヒヒヒヒ! そんなセコイ手でごまかせると思うなよストライクゥ!」

「このオープン回線による声! こっちにMSが隠されていると誤解したのか…!?」

 

 ジーンの挙動不審なのが丸出しな声が響いてくると、搭乗するシャトルのコクピットに移動して状況を詳細に確認しようとしたジョージの眼に、ジーンが求める機体の姿が別方向から猛スピードで近づいてくるのが映った。

 

「そのシャトルに手を出さないでええええええええええええええええええ!!」

「…あ!?」

 

 エールストライク装備でスラスター全開にして駆けつけてきたキラのストライクが、その叫びと共にジーンのザクを斜め上から真っ二つに切り裂いた。

 二つに裂かれたジーンのザクはちょうどジョージが乗るシャトルの上下をかすめていく。

 

「のわぁ!? な、なんて無茶を!?」

「だ、だが助かった…。あの機体は確かフレイの友達が乗ってる…!?」

 

 その破片が幾つか当たったのか揺れる掠められたシャトルの中で悲鳴が起こりつつもジョージは安堵と感謝の表情を浮かべるも、その離れていくジーンのザクが向かう先にあるものに気付いて再び目を見開かせた。

 

「…良かった間に合って――」

『キラ! まだだ! あのザクの向かう先!』

「―――え…!?」

 

 一方のキラはジョージが乗るシャトルが守れたことに一安心という表情を浮かべるが、そこで通信越しにリュールの険しい声が割り込んできて、初め戸惑うが直ぐにその理由に気付いて、同時にもう手遅れだということに気付いて顔が青ざめる。

 

「…え!? あのザク…隣に近づいて…!?」

 

 そして、ルナ達が乗るシャトルの近くを進むその別のシャトルの窓に、キラへお礼の花を渡した少女の姿が映し出されたその時、ジーンのザクはそこへ直撃した後にシャトルを巻き添えにして爆発した。

 

「…あ、あ…アアァアアアアアアアァ!?」

 

 それにキラが愕然として声を絶望が染めた時、彼女が乗るストライクを竜巻状ユアノンが飲み込んで大きくその位置をずらし始めた。

 

「キラァ! しっかり気を持つんだ! 聞こえるなら返事をー!!」

「あああアアアアアアアアァアア!?」

「っ!」

 

 それを見てリュールは必死に呼びかけを行うが、通信で返されるキラの声が悲嘆と絶望に嗚咽で支配されているのを感じ取り、バルバトスのスラスターを全力で噴かしてストライクに向かう。

 

「っ! ユアノン竜巻に巻き込まれてストライクが別ゲートに向けて離脱中! バルバトスがそれに向かっていきます!」

「アークエンジェルのスラスター全開! あの両機も我が艦に着艦させるわよ!」

「ノリエガ司令! それではアークエンジェルの通過ゲートも変わります!」

「バジルール大尉! あの二機を失う損失の方が大きいわ! 数値からして既知人類領域星系へこの艦なら到着できるのが先にある!」

 

 アークエンジェル側もそれに気づいて艦橋で一部反発が出つつも、スメラギの司令権限でキラとリュールを救うべく即座に通過ゲートを変える覚悟で向かいだす。

 

「っ!? あの動き…あの二人を救うために…!?」

「ですがあの位置だとあの二機を救えても味方領域に繋がるゲートとは別のものを通過してしまいます! 数値からして潜ったらすぐに閉じて先の星系に進むしかなくなりますよ!」

 

 それは別シャトルに乗るジョージ達も見ており、別の懸念が彼らに生じてしまう。

 

「彼らが進む先にある星系を割り出せるか!?」

「周囲に別ゲートの反応があるので詳しくは割り出せませんが…一番確率が高いのは…」

 

 そして、シャトルのゲート計測装置が示していく数値や文章を目にして、ジョージ達の表情はますます強張っていく。

 

「…旧人民主権星系連合体大星域、銀河中心領域付近…シュリア星域パルミュラ星系…」

「…何だと! あそこは完全にではないが…」

「…ええ、ザフトの勢力圏とも重なっています!」

 

 その画面に表示されたその答えは、ジョージ達の表情を更に詳しくさせるには十分すぎた。




次回、新たな戦いや今後の話の流れにも大きく関わる(…かもしれない…)選択のパートに入りますので、次のアンケートを実施します。

アークエンジェルがこの世界で共に戦うレジスタンスの正体は!?

  • SEED原作通り
  • 作者に別案があるなら失敗覚悟で見たい
  • 作者の選択にお任せします
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