星界の輪廻   作:oosima

79 / 97
今回、あの種の映画版で大きな成長を見せたあの子がようやく再登場します。


第三章 熱砂と樹海の焦燥(機動戦士ガンダムSEED)
079 砂海と樹海の狭間で


 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月13日夜(帝国暦952年2月13日夜) 銀河連合旧人民主権星系連合体大星域 銀河中心領域付近 シュリア星域 パルミュラ王国 第一パルミュラ星系 第二惑星アンティオキア○

 

 ドゥリュースの今はまだ思い出せない星界シリーズに関する知識に、4カ国連合というものがあって、その内の一つを示す国で人民主権星系連合体という国があった。

 その国はこの世界でもかつては存在したが、数百年前における星界原典の世界で言うハニア連邦の右側に位置している地球時代欧州白人を起源とする列強による帝国主義時代による侵略を受け、技術差もあって崩壊して植民地にされてしまう。

 暦がC.E(コズミック・イラ)に変わった今でこそ形式上は独立して銀河連合の所属星域に大半が加盟しているが、実態は欧州起源人間族列強を起源とするE.Uの経済植民地となって実質的な植民地統治は()()()()長らく続いていた。

 

「……ここが銀連軍総司令部のあるジャブローで…、それでー…今の私達がいるのがーー…ここ…パルミュラ…」

 

 その一角に位置するパルミュラ王国の中心惑星の地上世界にある砂漠地帯と密林地帯の境界の一角に、銀連軍の宇宙戦艦アークエンジェルの姿があり、その船内の一室でフレイ・アルスターが画面に映し出された今の艦の位置と、本来この船が到着するはずだった大星洋連邦銀河中心領域付近下側に位置するパナマ星系ジャブローの位置を見比べて、憂鬱な表情を浮かべていた。

 

「…ウゥ、こんなことならあの時のシャトルに乗ってジャブローに行けば良かった…」

 

 今のフレイがいる食堂には他の人影もいたが、それに混じるところ天の助が頭を抱えてしまっていた。

 

「でもさー、あそこでパナマ行きの船に乗っても撃ち落される可能性があったと思うわよー。こっちの親戚が乗ってた船は大丈夫らしいけどー、一隻は落ちたらしいしー…」

 

 同じく食堂にいるミリが室内テレビの画面を付けると、帝国系報道番組に映しだされるジャブローの映像にフレイの父であるジョージが記者に問い詰められている場面があった。

 前回の銀連第八艦隊とザフトのドズル艦隊の戦闘による影響で、アークエンジェルは別星系に流れそうになったストライクとそれを救おうとしたバルバトスを救うべく進路を変えた結果、ジャブローがあるパナマ星系ではなく、そこから離れたここ第一パルミュラ星系に出てしまったのだ。

 しかも、ゲートを潜った直後に季節性短期間自然発生ゲートも閉じてしまい、さらに出口側ゲートの位置の影響でこの惑星アンティオキアの重力から逃れられない位置へ出たことで、大気圏突入する羽目になって今はこの地上で立ち往生という状況になってしまったのである。

 

「…でもさー、完全じゃないとは言ってもザフト優勢の領域に出るなんてさー…?」

「皆ー! あの三人が目を覚ましたってー!」

「っ!? それって本当!?」

 

 そんな重い状況の中、何とかこの艦が沈められずに済ませた人物達絡みで朗報がやっと来た。

 

「…ウゥ…」

「「………」」

 

 数分後、アークエンジェルの医務室にはうめき声を上げて寝ているキラ・ヤマト、声こそ出していないが苦しそうな寝顔を晒しているリュールと日光のベッドに横たわる姿があった。

 

「…今さっき三人とも目を覚ましたけど、この船は無事だというのを聞いて安心してまた眠ったみたい…。今は大事がないわ…」

「良かったー…」

 

 フレイの説明にミリアリアが周囲の安堵を代表して息を吐く。

 

「でも今は本当にこのままで大丈夫なんですか? 確かーあの時はバルバトスとアージェイトが流されそうになったストライクを上手く捕まえてアークエンジェルに着艦したけど、確かーあの時のユアノン嵐で発生していた悪性ユアノン粒子ってMSに積んである除去装置や防御磁場で取り除ける量を引いても、人間じゃー生きてられる量と密度じゃなかったってー…」

「…あー、その件に関しちゃー俺もコーディネイター、ましてやアーヴなんて診るのは初めてだけどさー。連中は俺たちと同じか近く見えるっつっても中身の性能は段違いだから心配はないさ。今はー栄養を取らせて休養させれば問題はなしだよ」

 

 それでもカズイは心配そうな様子だが、第八艦隊から欠員補充としてきた医師は何処か気楽な様子で三人を指さした。

 

「俺たちよりも多くの知識が得られて且つ頭の回転も速くて能力の成長スピードも速い! 生まれる前でそうなるようにあれこれ手を加えられているのさ。ましてや男の方はアーヴだぜ。連中は何千年も前からそれをもっと振り切って進めて空識覚なんてのを得て全員が魔術を使えるようになって挙句に別の生き物の姿や能力まで使えるようにしてるんだ。種によっちゃー全身がバラバラになったり頭が吹き飛んだりしてもケロッと元に戻れるなんてのもいるくらいだ。ぶっちゃけ俺にも分かんないことばっかだから今はそれしかないよ」

「じゃー日光の方はー? あの子は何かGフレーム使用機を動かせるといっても人間のナチュラルでしょ」

「そんなこと言ってもあの嬢ちゃんって帝国から来たって話しだろー。連中は何千年、種族に寄っちゃー何万年も魔術で遺伝子どころか魂とかも調べて弄るなんてのをしてきたんだからさー…」

「「「「「………………」」」」」

 

 周囲から上がる疑問や心配にも医師は軽さの混じる態度を崩さず、若者たちの三人の身を案じる念は変わらなかったが、一方で医師の言い放つ言葉が異物に対する不安感もまた強めていってしまっていた。

 

「…これが銀連軍の新型艦アークエンジェル…タマキューリョー山岳密林地帯と、我々が把握している砂漠地帯の真ん中に位置してますね…。君達が見たものと間違いありませんか?」

 

 そんな感じに敵側が有利な地上世界に迷い込んでしまったアークエンジェルを、超遠距離把握可能魔術内蔵衛星カメラ越しに、レーダーの外からその敵側であるザフト側士官が地上母艦の映像で見ながら問いを投げ掛けていた。

 

「…間違いないも何も、第八艦隊との交戦中に撮った映像から照合は済んでいるんですからもう答えは出ているでしょう…」

 

 その問いに、ザフトのブル艦隊所属だがムーンレイス星系での季節性ユアノンゲート帯の嵐に巻き込まれ、この惑星のザフト側勢力圏に迷い込んで救出されたコモリ・ハーコートはジト目付きで答えた。

 

「まー、そんな堅いことを言うなコモリ君。経験者の見識は貴重だぞ」

「経験者と言っても私はまだ同じ戦場であの足つきとその搭乗機を遠目で見ただけで別の艦隊の防衛線と交戦中でしたよ。バルトフェルド提督」

 

 コモリにやや渋い笑みを向けるその男の名はアンドリュー・バルトフェルド。

 ここシュリア星域一帯に駐留するザフト軍の中で、今はこの星も属する第一パルミュラ星系のザフト軍の司令官を務めている名将で、この世界でも“砂漠の虎”と呼ばれている男である。

 

「…それにしてもあなたが乗るこのGの記録映像にあった、このGフレーム使用機…特に桜色の機体は綺麗ねぇ。こんなユアノン嵐に巻き込まれている状況でも…」

 

 そのバルトフェルドの傍に侍り、黒髪に二房のオレンジ色のメッシュが入った美女は、彼の恋人で同艦隊所属のエースパイロットの一人であるアイシャだが、彼女がコモリと共にこの星へ来たカラミティに重ねる形で映し出した映像には、ストライクとそれを掴んでアークエンジェルに引き戻そうとしているバルバトス、その二機を庇うように前へ出て搭載している兵装の一種である高エネルギーシールドを張ってユアノン嵐から自らと二機を守るアージェイトの姿があった。

 

「報告です。カラミティと共にユアノン嵐に巻き込まれていたフォビドゥンとレイダーもこの星の赤道海上L12で発見されました。パイロットも無事なようです」

「…うげ、エグザべ君はともかくコーラサワー隊員は来なくて良かったのに…正直、悪いけどアスラン君かニコル君に来てほしかったなぁ…」

「まー、そんなことは置いといてちょっと大天使の所へあいさつに行こう。コモリ君、君にもさっそくそのあいさつ回りに加わってもらうから準備もね」

「ッ! 了解しました!」

 

 それに興味深そうな顔をバルトフェルドは浮かべた後、別の報告で微妙な顔を浮かべたコモリも含めて周囲に指示を下して気を引き締めさせた。

 

「…よし、これで両機とも設置及び術式の展開は完了したか」

「ええ、微差の調整も終わりました」

 

 アークエンジェルを監視するザフト側でそのようなやり取りがなされてから数十分後、目覚めたリュールと日光はそれぞれバルバトスとアージェイトに乗り込み、アークエンジェルの下の砂漠に降り立って周囲に円形を基調として複雑な魔術式を構築させていた。

 ちなみに、バルバトスとアージェイトは猛烈なユアノン嵐からストライクを守り切ったのと引き換えに、装甲や内部のGフレームに損傷が多数見受けられていた。

 

「…ちょっとー、二人とも起きたばかりで大丈夫ー?」

『そんなこと言っても敵地と混ざり合ってる土地なんだから少しでも早く直さないといかんでしょー。あ、もう始めるからその術式の内側から離れてー』

『フレイさん、それに他の皆さんも巻き込まれて取り込まれないようにお願いしますー』

「はいはい、無茶しないでねー」

 

 そして、周囲に集まっていた警備兵などが距離を取ると、リュールと日光はコクピット内部で意識を集中して魔力を機体に流し込んだ。

 

「うわぁ!? 周囲の魔法陣っぽいのが光り出して風が…!?」

「す、砂が集まっていって…あ! 装甲に纏わりついてその一部に変化していってる!」

「これがGフレーム使用機体が持つ…先駆者(フォアランナー)テクノロジー由来複合ナノマシンによる自己修復機能か…」

「いやー、今回のはあの二人が魔術でそれを強化して早めさせてるわよ。すっごい疲れるのと引き換えに…」

 

 周囲がその光景に驚いて沸き立つ中、数十秒後に光が収まるとバルバトスとアージェイトは見た目なら出撃前と同じ綺麗な状態へ変わった。

 

「おーしご苦労さんだ坊主に嬢ちゃん、生きてるかー?」

「…銀さん…不吉なことは言わないでください…生きてますよ…」

「…すんごいしんどいけどね…あう」

 

 だが、コクピットから出た日光とリュールは深く疲労した状態で砂漠に前のめりでぶっ倒れた。

 

「うわぁ!? リューにー!」

「あーもー二人とも言わんこっちゃない!」

 

 そうして再び眠りについた二人をアークエンジェルクルーは再び船内へと戻すが、その様子を砂漠の隣りにある密林に包まれた高山の一角より、双眼鏡やもしくはそれ以上に優れた視力を持つ己が双眸で盗み見る一団がいた。

 

「…あれが銀連軍の最新鋭戦艦か…(かすみ)、そっちは見えるか?」

「ええ、カガリさん…あの二機が…」

 

 その一団は概ねフードを深くかぶっていたが、二人だけ顔の部分を露出させており、金髪の快活な面貌をした少女カガリは双眼鏡越しにアークエンジェルを見ていたが、その隣りにいる栗色の髪をした大人しそうな面貌をした少女の霞は肉眼で同艦の下にあるGフレーム二機をしっかと詳細まで見ていた。

 

「…人間ばっかの銀連にしちゃあ珍しく頭が冴えてるハルバートンが守り抜いた艦だ。無視するわけには行かねえなぁ…」

「ですけど、向こうが役に立ちそうになかったら…?」

「…ふん、いつも通り捻り潰すだけだ…」

 

 二人の少女を囲うようにアークエンジェルを盗み見る他の者達は、フードを深くかぶって顔を伺わせず、双眼鏡などを掴む手も獣の毛皮のような手袋に覆われているように見えた。




果たして、今回の最後にようやく出てきたこの星のレジスタンス(?)の正体は…!?
そういうわけで以下のアンケートの方もよろしくお願いします。

アークエンジェルがこの世界で共に戦うレジスタンスの正体は!?

  • SEED原作通り
  • 作者に別案があるなら失敗覚悟で見たい
  • 作者の選択にお任せします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。