星界の輪廻   作:oosima

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今回は主人公の下宿先と、こちら側におけるSEED要素の歴史についての解説が中心になります。
それと、アクセス数が千を超えました。ありがとうございます。


008 学校と社会情勢は不可分なるもの

 ○帝国暦949年4月3日朝 アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) スュルグゼーデ王国(フェーク・スュルグゼーデル) ウルス大公国 惑星サンヘリオス軌道上 衛星クィコスト スュルグゼーデ修技館(ケンルー) 入館式会場○

 

「…おお、あれがスポール宗家令嬢の…」

「毒舌が似合うようには見えないが…?」

「いや、あの毒々しくも妖しい艶も帯びた瞳は…スポールの紅瞳(キレーフ・ピアナ・スポル)だ…」

「……………」

 

 浮遊式壇上に登った自身に向けられる好奇や興味、困惑などが混ざった視線に対して、レイカは臆せずにただ怜悧な表情で何かを待っているように見えていた。

 

「…何かさっき挨拶してから全く喋らないけどどうしたんだ?」

「…何だかんだ通例から外れてる点も多いけど…やっぱりスポールだけあってこういうのはうまいなぁ…」

「…む?」

「人々がお喋りやそれに現れている困惑も含めて、そう言った余計なことに回している分も纏めて自分に向けて意識が向けられるのを待ってるのさ。この場で黙り続けていればやがてそれが意図的なものと目利きのある人から順に気付いていくのを知ってて」

 

 その様子にゼツィーリュは怪訝なお顔をするが、ドゥリュースは感心している表情を向けていた。

 やがて数十秒ほど経過し、入館式会場に集う人々の大半がその沈黙が意図的なものと感づいた所で、レイカは再び微笑んで口を開いた。

 

『…本日はお日柄もよく…』

「…母から聞いた現レトパーニュ大公爵の入館式新入生代表の時のとは違うな…」

「いや、あの人はスポールでも別格でしょ…!?」

 

 それからレイカの新入生代表としての挨拶を経て言葉はしばし続き、ゼツィーリュが意外そうな顔を浮かべてドゥリュースがまた苦手な人物の顔を思い出してしまったその時、彼は慣れた嫌な感覚を覚えてしまう。

 

『…これからは帝国法の元で()()()()()()()学ぶ気力とその力を示してここへ集われていると信じている皆様と共に! 時には()()()()()()()()()()()()も含めて競い合いつつも! 第一は共に学び合う学友として()()となって協力して前進していこうと思います!!』

(うお!? これって割と考えにもよるけど際どく感じる人も多いんじゃ…!?)

 

 他国から非民主的だの専制的だの独裁国家だの非難が多い帝国(フリューバル)で、しかもそこの皇族(ファサンゼール)という一見勝ち組だが内実死亡フラグが質量ともに○ネス級という生まれになったドゥリュースだが、その彼から見てレイカの用いたフレーズは当然だけど、それ故に危うさも感じさせるものだった。

 帝国(フリューバル)のクリューヴ王国に隣接する、同じ弧状列島起源で且つそこから続いている某国は、現代魔法と称されている魔道学分野でトップの一角を走るが、そこでは教員の不足という問題で魔法科学校では生徒間の教育格差とそれを原因とした差別問題が顕著になっている。

 修技館(ケンルー)の方は土地柄から魔道学は古くから発達し、むしろ帝国(フリューバル)では魔道学は科学の一種として産業面でも大きく影響力を持っており、携わっている人数も多いので教員不足の問題はなかった。

 だが、如何せん人口とそれを構成する知性体種族の数がけた違い且つ歴史が古いのと、それから生じる派閥や流派などが多いのでそれから来る(他国から見れば緩やかなのが多いが)対立が教員や生徒には目立っていた。

 地力が大きすぎるが故の悩みと言えるが、今も異夷(ゼビーシュ)(他国で言うBETA)に悩みを通り越して滅亡の危機にある場合も多い他国などからすれば“贅沢な悩み”と受け止められるだろう(実際、マブラヴ原作と同様に領域と大半の人口を失って他国に亡命政府のようなものを作っている国もある)。

 

「…凛として且つ気品があるわ…」

「まさに副船王の血脈にふさわしい才を体現した答辞よ…」

「素晴らしい…! 何て良い意味でスポールらしさを感じさせない内容なんだ…!!」

(…あーうん、良い意味で杞憂に終わったか…今の所は…)

 

 だが、そうした背景を踏まえてドゥリュースの脳内に生じた憂いは、周囲から上がる憧憬や新鮮なものに出会えた感動を覚えているように思える周囲の反応で脱力感に変わった。

 

 

 

 

 

 ○帝国暦949年4月3日夕刻 アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) スュルグゼーデ王国 ウルス大公国 惑星サンヘリオス軌道上 衛星クィコスト スュルグゼーデ修技館(ケンルー)近隣 商業都市ヒェーデル コゼル商店館(イレーヴ) 伽藍の堂○

 

 帝国の帝都と各中核星系にある帝国の施設は、地球時代の暦を元にした帝国暦に合わせて調整されており、同国の発達した科学技術や魔術で距離に関係なく時差はない状況となっている。

 

「…ここが…僕らが最低でも3年間は過ごす学校生活で拠点となる所か…」

「…錆の臭いが香る建物が多い中で…上が金属製建材剝き出しの建物…、古拙的且つ半端な仕上がりだけど…ここまでだとむしろ古風な雰囲気を感じられるね…」

 

 その都合によって夕焼けで赤く染まっている、修技館(ケンルー)と隣り合うその町の外れにある、これから自分達の学生生活の拠点となるその事務所の前で、再び微妙そうな意味での既視感を覚えた顔で見上げるドゥリュースと、一種の感動を覚えた表情で見上げているレイカの姿があった。

 

「おい、そんな所に突っ立っていても何も始まらんぞ」

「うわ!? この声は…!?」

「え、いつの間に…?」

 

 そこで立ち止まっている二人は背後から誰かに呼びかけられて驚きの反応を見せた。

 この世界のアーヴは空識覚器官(フロクラジュ)があるので元から周囲を他の五感に頼らずとも把握できるほか、今の二人はそれを強化する頭環(アルファ)も装着して通常なら不意打ちもほぼ不可能な状態なので、気配を感じ取れずに背後へ近付かれた事でそれが自然の反応だった。

 

「おいおい、家主相手にぞんざいな反応だな。まーラムキースとは付き合いがあるし…何より色々貰えるものは貰ってあるからさっさと上がろう」

「…橙子さん…」

「貴女が…」

 

 二人が振り返ると、そこには地上人だが橙色の髪と瞳で怜悧な美を感じさせる女性が立っており、ドゥリュースは懐かしそうな反応を見せ、レイカは静かだが深く驚いた反応を見せた。

 この世界の銀河系の認知領域における魔道分野においても、当代で首位を争う人形師蒼崎橙子(あおざき とうこ)

 今の二人の前に立っているその女性がその本人であり、彼女もまたドゥリュースの母であるラムキースの悪友の一人である。

 そして、ドゥリュースにとっては彼がある意味で発案者となり、今は実用化と量産に向けて大きく進んでいる機械甲冑機(ソウォーヴィ)*1でも、技術分野で大きく関わっている身の一人でもあった。

 

「…そういうわけで家賃はあなた達の親御さんから貰ってるから心配しなくていいわ。いやー、久々にこんな若い子達、それも将来有望そうな子達が久々に話し相手にもなってくれるから嬉しいわよ。ウチの青ロビタはネタが豊富だけどきつい言い方も多くてねー」

 

 数分後、自分達の荷物を運び終えたドゥリュースとレイカは、先ほどと違って眼鏡をかけて穏やかで親しみやすい様子になった橙子と対面していた。

 

「話に聞いていましたけど眼鏡のあるなしで本当に印象が変わりますね」

「まあね、人によって表層の性格を切り替えた方が良いのよ」

「それにしても橙子さんのは色々変わりすぎると思うよ」

「スポールじゃあるまいし酷い言い方をする子ねぇ、一緒に切磋琢磨し合って且つ技術方針云々で喧嘩しつつも協力し合った仲じゃない」

「そう言う時には…()()()さんと橙子さんの喧嘩で施設や部品がしょっちゅう壊されまくって主計科の人達に毎回怒られましたよね…」

「優しそうに見えて相変わらず人の気にすることを平気でズケズケ言う子ねー。そう言う青子みたいな点は嫌いよ」

「いや、橙子さんの寄り道好きすぎる性分を知れば大抵の子は距離取ると思うよ」

「それにしても意外でしたね、帝都では腕利きで且つ底の知れない人形師として畏怖されている貴女がこんな…」

 

 親しんでいる仲ゆえに所々で微妙そうな顔を見せるドゥリュースに対し、レイカは話の節々でスポールならではのキツイ言い方をするが基本は敬う態度を見せていた。

 科学技術者としての他にも実母とその魔窟と化した王宮から少しでも逃げたい一心で秘密工廠に浸り、その縁で橙子としばしば口を合わせる機会が多かったドゥリュースと違い、レイカは試運転やテストパイロットを務める時以外はいない時の方が多かったので橙子とは会うのは今回が実質の初であるが故の違いだった。

 

「スローネの半樹性金属筋線維で大きく携わった人がこんな人とは…」

「いやー、お褒めに預かって嬉しいわよレイカちゃん。スポールの中にもあなたみたいな子がいるなんてねー。そう言えばあの人型機械開発を似たように進めてるプラントからの子で、ドゥリュースが何度か通信で言っていた例の少年はどうしているかしら?」

「ああ、彼なら今はプラントの方に…?」

 

 そうして技術者としてやそれに関係する物事や人について話は移ろうとしたところで、彼らのいる事務所内の空中に映し出されている画面に臨時ニュースが飛び込んできた。

 

『緊急速報です。今現在より2日前に異夷(ゼビーシュ)がプラント方面に侵攻を開始した模様です…』

「…え!?」

 

 それは今まさにドゥリュース達が話題にあげようとした国からの凶報であった。

 

「…確かプラントってリュース君の昔の友人が戻ったって言う辺境小銀河の…」

 

 そう注意深そうな言葉を吐いたレイカによってニュース画面の横に映し出された別の画面上に宙域図には、プラントはクリューヴ王国より一回り小さい状態で、星界原作で言うハニアとイリ―シュ王国を挟み込んだ近隣の状態にあった。

 

「…銀河連合…特に自由主義圏が開発を推し進めつつも待遇はお世辞にも良いとは言えなかった星域だな」

「開発が始まって少し経った頃に帝国へも一応共同開発への提案が寄せられていた所だね。まー、色々と怪しさ満点であったし、こっちはその前から技術が進めば開発も現実に進みそうな周辺小銀河を既に発見済みだったから乗る事は無かったけど…」

 

 そのプラント小銀河に橙子とレイカは少々複雑な顔を寄せていたが、実際この世界における星界原作から変わった歴史でプラントは大きな理由の一つになっていた。

 星界原作で帝国(フリューバル)が敵対諸国に戦争を仕掛けられた理由だが、それは原作主役の故郷がアーヴに発見されて征服されてしまったことで、帝国の他の七王国と他国を取り巻く外縁部が全て帝国領となって、他国は別銀河系へ行く手段を失ってしまったことにあった。

 銀河系は広大だけれども人口が増え続ける以上は新たな未開の地が必要だが、そこへ行く手段はアーヴによって独占されてしまったことが原作の敵役の国々が主人公サイドに戦争を仕掛けた理由だったのだ。

 だが、この世界では星界原作の方には居なかったジョージ・グレンという存在が大きく変えてしまう。

 彼はSEED原作と同じく自身でツィオルコフスキー号を設計し、それに乗って帝国に認知済みの小銀河群とは別の、今のプラントになる小銀河と進みづらいがそこへ連なる幾つかの(ソード)を発見してそこへの探索に出発した。

 それで出発直後にSEED原作のようにジョージ・グレンが自らを受精卵の段階で遺伝子調整を受けたコーディネイターである事を告白し、この世界ではプラント小銀河深部で発見した更に遠方の銀河系産と思わしい銀河系外生命体の化石であるEvidence01(通称クジラ石)を発見して持ち帰った事で、SEED原作歴史の設定にあった混乱が銀河規模になった状態で襲ってきてしまった。

 ちなみに、この一連の出来事から今の間に帝国は星界原作通りにそちらの原作主役の故郷を征服したり、そこの政府代表とその家族を政治取引で貴族に取り立てたりして、他国から非難を集めたりしたが原作ほどではなかった。

 何故なら、ジョージ・グレンのプラント小銀河の調査でそちらの平面宇宙と他国を細く且つ不安定的だが繋ぐ(ソード)が幾つか発見されたので、戦争せずとも未開拓地へ行けるようになった他国政府は戦争よりもそちらの開発を優先するようになったからだ。

 一方で、このプラント小銀河を開発し始めようとした時期に、星界原作の4カ国同盟に当たる銀河連合は帝国(フリューバル)にも共同開発の打診をほぼ形式上だが送ったりもした。

 魔術やフォアランナー技術もあって惑星改造技術やその経験などにそれらで裏打ちされた国力は帝国(フリューバル)が断トツであったので、共同開発事業を通してその技術や資金を吸い上げようという腹積もりもあったが、帝国(フリューバル)もその本音は見透かしていたのと、実際には自分達も別銀河へ行ける可能性の高い(ソード)の幾つかをイリ―シュ王国で発見していたこと、そこへの航行と開発はまだもう少し時間がかかる事がわかっており、プラント小銀河もそれほどではないが難しいのがわかったので計画の不透明さを理由に参加を見送ることを発表していた。

 

「…それで他の国の遺伝子調整体…向こうで言うコーディネイター達がプラント小銀河の開発に携わったけど…、その扱いはお世辞にも良いものとは言えないのはレノアさん達から聞かせてもらったからなぁ…」

 

 それでドゥリュースが口にした通り、この世界でも各地で誕生しだしたコーディネイター達が、その能力さゆえに周囲からの扱いが悪くなったこともあって、それからの逃亡もありプラント小銀河への開発に参加していったが、そのスポンサーである銀河連合の彼らに対する待遇は銀河規模でのスケールアップもあってか更に悪かった。

 

「…鉱物資源や生物資源にエネルギー資源こそ豊富だけど、惑星改造しても人の居住化には不向きな星が多いからというのもあるけど農業開発は禁止して食料を自給出来ないようにしたり、ノルマ優先して移住してきたコーディネイター達の生活環境改善は二の次三の次だったり…、現地に住む怪獣を始めとした生物に対抗できる戦力を持つことに大きな制限を掛けたり、自治権や参政権を認めなかったり…、その上でブルーコスモスみたいな過激派によるテロが頻発していれば…、人権や民主主義を声高に言うその陣営内にいるはずの自分達は享受できてないって怒るのも無理ないでしょ…」

 

 実を言うと地球への留学時代に、母に連れられて身分を偽ってプラント小銀河へ秘かに訪問した時期があるドゥリュースだが、その時の彼から見ても待遇は何処も良いものとは言えず、酷い時には帝国の開発発展途上地域のように、トリコを思わせる過酷な環境や生態系を持つ僻地で駆り出されて苦しむ人々の姿もあった(アスランへプラントに来るように誘われた際に、多分無理だと言ったのにはこの時の経験もあった)。

 

「…それに対し、銀河連合の理事国は初期費用の大きさや苦労さから、向こうの人々の権利拡大の要求は抑え込んで採算をもっと上げようとしているって話ね…。今は異夷(ゼビーシュ)に天の川銀河にある理事国の本国は浸食されていっているから、その高くなった生産力を持つ後背地を不安定にしたくないって理由もあるだろうけど…」

 

 その一方でレイカはその出自から統治者としての視点からの意見も複雑そうに述べていた。

 SEED原作でもプラントが独立戦争を始めた時には、その理事国は力ずくで抑え込もうとしていた。

 アニメなどを見ている限りでは理事国の横暴さが目立つ形だが、ドゥリュースの記憶にある某弧状列島時代に例えるなら、先進国が発展途上国に技術や資金に人を投じて建てて経営を軌道に乗らせた現地の工場が、そこの労働者に乗っ取られて独立を宣言されたようなものだから、それを阻止しようというのは理事国の立場からすれば当然と言える。

 

「…とは言ってもあっちを立てればこっちが立たずというし…(BETAがこの世界相応にスケールアップした状態でいる以上はそっちにも注意しないといけないから、お互いにその辺りも含めて妥協点を探っていくと思うけど…、凶事は重なって起こりやすいというしなぁ…)。少数ながら密かにプラント側の誘いを受けて移った人もいるし…何か起きそうなのがなぁ……」

 

 そう言った双方の事情を鑑みつつ、レイカや橙子達と同じくニュース画面を通して今の銀河情勢の複雑さと深刻さを再認識し、その生まれ故に無関係でいられなくなる可能性の高さにドゥリュースは再び憂鬱さを覚えた。

*1
作者が考えたアーヴ語で意味と語源は“(よろい)




橙子さんって例えSEED世界でも色々な方面の裏方で関わっていきそうですね…
次回は、今回にて成り立ちに触れられたSEED要素の強いあそこの現状と戦況が中心になる予定です。
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