それと、例のアンケートの方もよろしくお願いします。
〇
「…そういうわけで、今宵のその所定時刻にて敵艦足つきに対する威力偵察を行う!」
夜中に砂漠を見下ろす樹海地帯の山中の一角より何者かがアークエンジェルを盗み見ていた晩が明け、空が白くなり始めた時間帯にて、同惑星におけるザフト軍の最高指揮官アンドリュー・バルトフェルドは集まった部下達を見回してそう言った。
「…あれぇ? 威力偵察ってぇおとしちゃ駄目なんですかぁ?」
「…む、まー第一目標は敵戦力の確認だが…まー、結果として撃沈とかなったらやむを得んなぁ」
「ちょっと皆さん、あれはそんな軽い気持ちで沈められるものじゃないです」
その中で現地組は軽口をたたき合うが、宇宙から来てしまったコモリ・ハーコートは苦い表情を浮かべていた。
「…そっちはどうー?」
「うん、エール装備のこの惑星の大気圏や重力に応じた調整はもう少しで終わりそうー」
一方その頃、自分達が狙われていることに気付けていないアークエンジェルの内部では、乗組員達がこの惑星の艦橋に応じたMSの調整や整備に追われていた。
「…ってか神楽ちゃん凄い! 宇宙空間の時も凄かったけど重力圏内ではそれ以上よ! “
「うん、モルゲンレーテでもアストレイやムラサメのテストパイロットもしてくれてた子なんだもの」
「へへへ、褒めても何も出てこないネ。これ取るヨロシー」
「おいお嬢ちゃん、こっちは宇宙空間じゃないんだからそんな適当に投げんな…ぬおお!?」
「きゃあ!? 測定用タブレットが艦内の壁にめり込んだぁ!?」
昨晩に一度目を覚ましたもののすぐに寝たキラがその中心であるMS格納庫に来たのは、神楽がウィンダムのコクピットより投げた端末が誰にもキャッチされず、彼女の現れた出入り口の横にドガっとめり込んだ時だった。
「ちょっと神楽ちゃん、こんな敵地といつ超裏ボスになるかわからない人達がいる租界が混じる星で補給が不安なんだから無暗に壊さないで! 次にやったら酢昆布半減よ!」
「ちょ!? それはねーゼ姉御…!?」
この世界でも変わらない夜兎族の怪力に周囲が驚く中でもセレーナは遠慮なくしかるが、それに反応して出た神楽の目が留まったのは、体はともかく心が酷く影にさされて焦燥しているキラだった。
「…え? キラ…? なんかすごくやつれて…?」
「…あ、いや…そんなに気にしなくて大丈夫…それよりもストライクの整備をしなくちゃ…そう言えば…リュール…じゃなくてリュースは…?」
「…リュールはもうバルバトスの整備が終わったから、この地での運用を確かめるのも兼ねて周辺の偵察に出ているわ…。他にもしないことが多いし…」
「…そ、そう…もしも帰ってきたら…教えてくれると…いいな…じゃあ、整備を…」
それにステラは何かを感じて憂いの混じる表情を浮かべた。
〇
アークエンジェルの艦内で一人の少女が身に帯びている翳を強めていた頃、この惑星のザフト軍の駐屯地に近いそこの海上で、ザフト軍の水域圏部隊の姿があったが、そこの彼らの多くは驚き物珍しそうな表情を浮かべていた。
「うわ! バビのビーム砲が当たっても曲がって逸らしちまった!」
「あれが銀連軍の新装甲“ゲシュマイディッヒ・パンツァー”を使用した新型MS…“フォビドゥン”か…」
その彼らの多くが注目を向けているのは、カブトガニを思わせる緑色の大きな兵装付き装甲を頭からかぶり、その側部から二つのマニピュレーター付き盾が付いて単独で飛行し、両手で大鎌状の近接兵装を持った、銀連軍からザフトが奪った新型MSにしてGの一種である“フォビドゥン”の姿であった。
「さっきの曲がるビーム砲と言い、ナチュラルにもまだこんな技術力があったなんて…奪えて良かったですねー…ぬおお!?」
それのデータを取っていたザフト側の技術者の真上を、水色の鳥を思わせるMA形態に変化した、同じく連合からザフトが強奪したGの一機である“レイダー”が飛びぬけてその突風で驚かせた。
「あの馬鹿! “クラッシャーのコーラサワー”め!」
そのレイダーの棒雀無人な動きに、同地のザフトの指揮官はそのパイロットに対して悪態をついた。
〇
「…あー、やっとこの辺りのデータ採取と艦の反応を探知されにくくするための術式の展開は終わったー…」
ザフトの方でも新たな動きがあって数時間後、夕暮れになった砂漠地帯に岩山地帯に移ったアークエンジェルにリュールがバルバトスに乗って戻ってきたが、MSから降りたその姿はやつれて目の下に大きな隈が出来ていた。
「ご苦労様ー、水源が見つかったから今日はシャワーも浴びれるよー。それと近場の森で過食可能な素材が外では高級なものも含めて結構見つかったから今は調理中ー」
「あー、ありがとう」
「…それで聞くけどー、ご飯とお風呂のどっちにするー? それともーわ・た・し…あいた!?」
「はいはーい、その辺の相談はここでは遠慮よー」
バルバトスから降りてきてフラフラとしているリュールをネーナが抱き留めるが、そのまま小声でさりげなく誘おうとしたところで微笑んでいるステラに耳たぶを抓られて引き離されてしまう。
「ありがとよ坊主ー。ザルカバス宣言で帝国から魔術系部品が殆ど入らなくなっちまってそれを使用していた高機能機器もあまり使えなくなったからなー。代替品も今回のみたいに設置や使用にすごい負担をかけるものばかりだしなー」
「マードックさん…ごめんなさい。もうこれ以上は動くどころか聞く気力もないので…引きずって放り込むだけでいいので部屋の方へー…ぐふ」
そのまま支えを失ったリュールはMS格納庫の床に重力作用でパタリと倒れた。
「うわ、リューにーもう寝入っちゃってるし…」
「よっぽど疲れていたんだね。私が部屋に連れていくからそっちは残りを遠慮なくやってて…」
そして、リュールの身はキラの手によってアークエンジェルでの彼の部屋へ連れていかれた。
「…よし、リュールは彼の部屋で寝かしつけたから…少しでも元気に戻れる料理を作ろう…!?」
数十秒後、アークエンジェル内の厨房の一つの一角に移ったキラは、冷蔵庫を開けるがそこで予想だにしないものを目の当たりにしてしまう。
「…へっきし、数分くらいでもこの中に居るのはやっぱり冷たいわねー」
キラが開けた冷蔵庫の中に体育すわりをしてジト目を浮かべているネーナがいたためである。
「…物資不足の期間中も一番人が来ないここへこっそり料理の練習をしていると聞いたけど…、これー普通はこっそり数回練習に使っただけじゃーなるものじゃないわねー…」
「…これ、あと一回したらもう底から水が零れてしまうレベルで薄くなってます…」
続けて食器棚の影より、非常に刃こぼれした包丁を手に苦笑したステラと、底が削られまくって変色までしている鍋を憐れむ表情の日光がヒョコッと出てきた。
「苦手分野を克服しようとしているのは感心しますけどこの補給の目途が立っていない状況でそれを食いつぶしかねない真似は看過できませんわ」
「はいはーい、そういう系のお話は後の余裕が出来た時にゆっくりとしましょう。今は何処も色々と余裕はないんだからー」
続けて物陰より帳簿アプリを画面に出したタブレット片手の王留美と、普段通りの陽気な表情に見えはするセレーナが出てきた。
「…あ、あのこれは…リュールが酷く疲れてたから…何か作ろうと思っただけで―――」
「これ、廊下に落としてたわよ」
「―――え…う…! あ…ぁ…!」
とうに自分の行動が気づかれて先回りされていたこと、実際の料理の腕がどのようなものが知れ渡られていることにキラは初め気恥ずかしさをを覚えるが、そこでセレーナが懐から取り出したその折り紙の花を見るや、顔から血の気が急速に引き出して激しい後悔と嗚咽に襲われて膝から崩れ落ちてしまう。
「…言葉だけじゃ埋めるどころか、痛みを薄れさせることが出来ない穴が自分に開くことがあることを私達は知っているつもりよ…」
「…あ…ううぅ…」
「…だから、私達の座ったり共に歩いたりする分まで取らない限りは…、これから一緒に作った献立をあの子へ持って行った後で…あの子にどう癒してもらっても…」
「…う…あ…ああ…」
それから震え続けた我が身を優しく抱きしめてくれるセレーナの温かさが、今の機雷は何よりも優しかった。
「…ん…ここは…?」
数十分後、睡眠でどうにか疲れが幾分かとれたリュールが目を覚ましたのは彼の自室で、上体を起こしたところでドアが開かれた。
「…あ、起きたんだねリュール。夕食が出来たから…」
そこから食事を載せたトレイを手にキラが部屋に入ってきた。
「…え、その料理…もしかしてキラが作ったとかじゃないよね…!?」
「ち! 違うよ半分…というか八割くらいは…セレーナさん達が手伝ってくれたものだけど…私も作った部分はあるからー…」
「…あ、本当だ。まえのに比べてだいぶ減ってるけど燃やされたばかりの炭みたいな消し炭みたいな焦げ付き部分とか…削りだされた鍋や包丁の細かい一部が少しだけだけどー…」
「…え? 何その見分けの付け方…?」
それでリュールは嫌な予感で即座に意識が覚醒し、キラは先ほどの元とは別の気まずさや悲しさを覚えるが、料理自体は時々感じられる体に害はない程度の異物を除けば意外と美味しかった。
「…時々塩と砂糖を間違えたテンプレ的な違和感のある部分はあったけど…、美味しかったよキラの今回のご飯…?」
十数分後、意外に良い味壁を取られていたこともあってか、疲労が残っていたリュールはいつの間にかキラに腕を絡まれていることに気付いたのは、彼女の震えて涙をためている双眸が間近に来ている時の事だった。
「…キラ?」
「…お願い…もう少ししばらくは…このままでいさせて…」
「………」
「…あの人達がいるのに…こんなことして申し訳ないけど…今は…言葉だけじゃ…あの光景で…もう立てなくなりそうだから…」
「………」
「…あの人達にはお願いしたから…気にしないで…まだ、こうしてくる理由を言えない…女だけど……」
「…大丈夫、今は無理をして言わなくていいよ…。言葉だけじゃ…押しつぶされてしまうことがあるのがこの世界だから…」
「………あ…」
そうしてリュールの身にギュッと震えている我が身で抱き着いていると、彼の腕がそっと自身の背に回されて来て、キラは幼い頃にて父に抱いてもらえた時に近い、けれどもそれとは異なる愛しい深みを覚えながら目を閉じ、涙を遂に一筋零した。
次回、久々のバトルシーンへ入る予定です。
アークエンジェルがこの世界で共に戦うレジスタンスの正体は!?
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SEED原作通り
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作者に別案があるなら失敗覚悟で見たい
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作者の選択にお任せします