〇
「…アークエンジェルは…やらせない…」
ザフト軍のアンティオキア駐留地上軍を構成する地上艦隊からの砲撃でアークエンジェル一行が窮地に陥る中、その砲火の中を回避しているリュールが乗るバルバトスに抱えられているストライクの中で、キラの瞳から光が消えて底知れない深みが生じていた。
「…!? これは…!?」
そのことに魔力の波長で気づきつつも何なのかまだ把握しきれていないリュールだが、彼が駆るバルバトスの腕の中をストライクは抜け出し、その肩を足場に空高く飛んでスラスターを拭かせて舞い上がった。
「…む? 急に動きが…?」
『馬鹿め! こんな遮蔽物が少ない中で高く飛ぶなど的にしてくれと言ってるようなものだ…!?』
それを防炎カメラ越しに見たバルトフェルドは違和感を覚え、一方の粗鋼戦中のバクゥ部隊はそれにほくそ笑むが、ストライクに照準と意識を向けた機体は真横から砂塵を伴ってきた巨大な光線で胴体を穿ちぬかれた
「…何がストライクで起きたかわからないけど、あっちに気が向けられたおかげで五機くらい一気に仕留めきれた!」
バルバトスがハーケンを有線式の束ねた状態で射出し、超高速ではい回る蛇のように突き進んだその先端に構成された巨大ビームランスでバクゥを一気に数機撃墜したのだ。
「!!」
「うわぁ!? 急に白い方の反応も鋭く…!?」
さらに、それで驚いたザフトの大気圏内空戦用MS“バビ”の数機が、ストライクのビームライフルにその驚いている隙に機体胴体の可動部分を正確に打ち抜かれて爆散させられた。
「…む! 何やらあの二機の動きが変わったぞ…!」
「どっちかというと、あの白くて動きがはじめ地上になれずにいた機体が素早く動けて回避できるようになったことで、その世話が少なくなった水色の方も徐々に本来の動きをできるようになったという感じですね…」
「それでいて水色の方が白い方の動きを利用する形で連携力を強めてバクゥを次々と…」
「もう少し様子を見ようと思ったが…」
「ああ、このままだとザフトが損害に見合わないと引いてしまって向こうに恩を売れなくなるかも…」
「いや、逆のザフトが向きになって大戦力を投じてこっちが乗り込む隙がなくなるかも…」
「ああ、行くぞ!」
それは森林山岳地帯の高所の一角より盗み見るフードの一団も確認しており、まるで風のような速度で身は動き出した。
「ストライクの動きがよくなりました! ヤマト少尉が上空を高速で飛行してビーム砲でバクゥの動きを乱しつつも敵の砲撃で本当に危ない攻撃を打ち抜いて防いでくれます! それで陣形が乱れたバクゥをソードリュ少尉が順調に撃破していってます!」
「よし! 砲撃と敵機が今の状態ならこのイーゲルシュテルンとミサイル中心の支援でやり抜けられる。けれどもしもさらに増援が来たら…!?」
その動きで戦況がよくなるのをアークエンジェル艦橋は感じつつも、まだ戦略的には不利の色が濃厚な状況がわかるゆえに焦燥を感じ始めていた時、ザフトとは別で森林地帯からやや古めかしい感じのする軍用車両やヘリがミサイルをザフト側に向けて発射しながら近づいてきた。
『そこの銀連部隊! 助かりたければこれからそちらに送るデータに従え!』
「…え!? この声は一体…!?」
それに戸惑う艦長マリューの眼前に空中映像式でこの地域の地図が表示され、それに矢印や進行方向付きで作戦の大まかな内容が乗せられていた。
「マリュー! ちょっと見せて! 見ている間は代わりに指示をお願い!」
「ええ!? ス、スメラギ!?」
戸惑う艦長の身をアークエンジェル隊司令スメラギは押しのけ、高速で送られてきたデータと自分たちが集めたこの地でのそれを脳内で照合して整理していき、やがて視線は森林山岳地帯に向けられた。
「…よろしい。アークエンジェル隊はこれより送られてきたこのデータに従って動きます。出撃準備が完了したMS隊及び先に出撃したストライクとバルバトスで艦中心円陣15形態で同伴させて艦を守らせて!」
「っ!? あのようなどこの勢力かもわからない者たちに従えと!?」
「艦ごと数ですり潰されたくなければ向かいなさいナタル!」
「りょ、了解しました…!」
そして、アークエンジェルはその白き巨体を飛翔させ、その身すらも通れる森林山岳地帯に近い岩砂漠の巨大な岩山の合間へ向かいだし、MSもそれを守るように指示されたのでバクゥに背を向けて追っていった。
「っ! 森ではなく岩砂漠地帯に逃げるつもりか!」
「馬鹿め! こっちのバクゥは最新式で魔機複合ホバーシステムだから砂地でなくても追える!」
そうしてアークエンジェル側からの攻撃が一時止んだ隙に、ザフト側は素早く態勢を立て直して追撃に取り掛かった。
「…見えました! 送られてきたデータにあるこの岩砂漠地帯の例のポイントです!」
「ではこの数値のポイントにゴッドフリートを32パーセントの出力で斉射!」
数十秒後、出撃してきたバクゥのほとんどが自分たちを追って岩山の合間に浅からず入ってきたのを確認したアークエンジェルは、その眼前に聳え立つ岩山へビーム砲を撃ち込んで崩落させた。
すると、それで生じた大きな粉塵や砂煙の向こう側より、徐々に爆発とは別の大きな揺れが生じていき、それはやがて粉塵を押しのける巨大な洪水となって噴き出して岩山の間を豪速で押し流していく。
「…こ、これは…ああ!?」
「掴まって!」
それに岩山の間をアークエンジェルが進んでいる間に機体の地上向け整備が終わったアージェイトで出撃して、ザフトの砲撃から艦を守っていた日光は巻き込まれそうになるが、リュールのバルバトスが打ち出したハーケンのクローに掴み上げられて助かった。
「うわぁ!?」
「艦の姿勢制御を優先! 岩山には当たらないように!」
「メインスラスターを78パーセントまで引き上げろぉ!」
アークエンジェルはその巨体ゆえに洪水をまともに浴びるがそのパワーゆえにどうにか踏みとどまる。
「うわあああ!? 土石流がぁ!?」
「ま、まずい! 下のバクゥが砂を含んで重くなった濁流に飲み込まれていくぞ!」
一方のザフト側はMSで構成されたのもあって、艦に比べて小さすぎる彼らは次々と濁流に飲み込まれていき、特に地面を進むバクゥは追撃に出ていた機体の全てが押し流されて行ってしまう。
「…いかん、即座に飛行部隊にバクゥへの救助命令を出して撤退に入れ」
「…あの飛行ジープに攻撃ヘリ…あの山脈の例の厄介な連中ですね」
それを見たザフト側の司令官達は険しさを強めた表情を浮かべながらも、素早くかつ統制の取れた動きで撤退を始める。
「…何とか助かったけどー…、あの助けてくれた人たち…すんなりと味方してくれるってわけじゃなさそうだね…」
そのザフトの動きを見てアークエンジェル側は一安心するも、リュールはそのきっかけをもたらしたフードで姿を隠して軽装備で戦闘に介入してきた、現地レジスタンスと思わしい一団にも警戒を浮かべていた。
〇
転生者としての記憶を失う前のリュールのそれで人民主権星系連合体とされていた大星域を構成する星系の多くは、民族や種族に利害関係が複雑に入り混じっていた。
『…昨日に当惑星のセレウコス州に不時着した銀河連合軍軍艦の現状ですが、ザフト駐留軍との間に交戦がなされた模様で…』
その大星域の一角に位置するパルミュラ王国も同様で、星系間貿易の要衝に位置することと
「…銀連軍の軍艦が不時着か。今現在この星に駐留しているザフトの進出のきっかけになった…昨年の銀連E.U所属軍の侵攻みたいな事態にならないといいが…」
緊急ニュースが放映されているそのカフェにもアーヴの十代半ばと思わしい少年の姿があり、その少年はニュースに映されているアークエンジェルとザフトの戦闘の光景に憂いの瞳を向けており、周囲の現地人の客達も同様の憂いを帯びていたがアーヴがいることを気にかけてはいなかった。
「…さすがに昨年のユニウス・セブンの時みたいなことにはならないんじゃない? 受ける前のまだ貿易が続いていて大不況が起きる前と違って、こっちからの物資がごっそり減った挙句にNジャマーなんてものがまかれて大星洋連邦やE.Uとか銀連の主要国は絶賛大不況中だし、まーサマリアや大星洋の正典派の過激派はどう出るかはわからないけど…」
アーヴの少年の方は耳まで隠す帽子を被っているが出身種族の特徴である青味を帯びた髪をしているのがわかるものの、円形テーブルを囲んでいる数歳年上の十代後半と思わしい少女は顔の非常に整った造形からアーヴなのはわかるが、白人系のものだとわかる金髪ロングをしていた。
「…それにしてもこの水色の方の機械甲冑機…動き自体は機体の限界のおかげで遅くはなっているけど…あの人…ドゥリュース兄様が乗っているような動きのようだな…」
「あの昨年のゼミーシュル事件で死亡したっていうあなたの従兄弟のお兄さんと?」
「ああ、そうだリリア、あの人は本当に―――」
『緊急ニュースです。当惑星森林山岳地帯のゲリラで保守派の指導者である…』
アーヴの若い二人が心配そうな顔を向けていたそのニュース番組で、別の映像が流されだすと悪い意味で表情の変化が見えてきた。
「―――い…とどうやらどこにも残念だがいる話が通じない者たちがまた動き出したようだ…」
「…あー、また休みが減りそうね…」
そのニュースに少年の方は憂いを強めた瞳を浮かべ、少女の方は個人的本音を乗らしてテーブルに突っ伏した。
〇銀河連合旧人民主権星系連合体大星域 シュリア星域 パルミュラ王国 第一パルミュラ星系 第二惑星アンティオキア 砂漠地帯某所 アークエンジェル○
この星の首都にあるアーヴ帝国の租界で何やら新たに穏当ではないニュースが流れていたころ、時間差でまだ昼であるアークエンジェル側は戦闘後の後始末をしながら、戦闘に横やりして自分達を助けてくれた現地のレジスタンス組織との交渉に入ろうとしていた。
「…リュール、どうしよう…あの人たち…助けてくれたけど…?」
「とりあえずこちらから仕掛けないようにしつつ、いつ攻撃されても対処できるようにして…。それと僕らは顔を見せた方がいい。向こうはまだフードを深くかぶってさらに簡単だけど幻術も皆がかけて顔が見えないようにしているけど…」
その中にはアークエンジェル防衛でMS隊からはいち早く出撃しているリュールとキラの姿もあり、艦から降りたスメラギ達に続く形でレジスタンス幹部との距離を詰めていっていた。
「…っ!? お前たちはあの時の…あ!?」
「…!?」
双方の距離が対談できるそれまで縮んだその時、レジスタンス側の一人が驚きと困惑を隠せない声を上げ、そこで突風が勢いよく吹いてその一人はフードが大きくめくれ、輝くような金色のショートヘアと少年風に整った十代半ばのナチュラル人間族の少女の面貌が露になり、それを見たリュールはキラを守るようにその前へ出た。
「ど、どうしたのリュール?」
「…い、いやー…なんかあの金髪の女の子に…君が殴られるイメージが沸いたというか…なぜかわからないけど…」
「…とりあえず先ほどの戦闘で助けてくれてありがとうございます。つきましてはその目的と今後のお付き合いについてそちらとの交渉に入りたいのですが…」
「ああ、わかっておる。顔を見なきゃ安心できない部分もあるじゃろ。ほれ」
それに構わずマリュー達の問いにレジスタンス側は了承し、金髪の少女以外のレジスタンス達も身を深く隠していたフードを脱いでいく。
「…え!?」
「こりゃまあ…」
「たまげたなおい…」
そして、レジスタンス側の正体を目にしたアークエンジェルクルーの多くから困惑を強く帯びた驚きの反応が返された。
果たして、今回にてようやく主人公達と直に対峙したレジスタンスの正体とは…!?
それが明かされる(アンケートの結果)が出る前に、次回はこの世界における各国情勢とそれに関係する歴史のパート、それに絡められる形で他のキャラの今の様子が中心になる予定です。
アークエンジェルがこの世界で共に戦うレジスタンスの正体は!?
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SEED原作通り
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作者に別案があるなら失敗覚悟で見たい
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作者の選択にお任せします