星界の輪廻   作:oosima

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今回は前の話でのあとがきの通り、今のアークエンジェルがある現場以外にいる他のキャラたちと周り及び地元の様子が中心になります。


083 未来と今を繋ぐ過去の痕跡

 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月16日朝(帝国暦952年2月16日朝) プラント小銀河 アプリリウス市 首都星系アプリリウス・ワン 第一プラント○

 

 アークエンジェル一行が流れ着いた先の地上世界である惑星アンティオキアの砂漠地帯で現地レジスタンスと接触してその正体を知った日の翌朝、クルーゼはその原因となったムーンレイス星系での銀連第八艦隊を大敗させて撤退に追い込んだムーンレイス季節性自然短期ゲート前会戦の報告のため、短期人工ゲートステーションを介してプラント本国首都に戻っていた。

 

(…本来なら本懐を目指す道に入る前に朽ち果てるはずだった私にその助けをもたらした、かつて全てを奪われこの世の冥府に生きながら落とされた男は言った。この世に存在する全ては演者にして観客であると…、誰かが他者の言葉や動きを楽しんでいる間に…その誰かを別の何者かが演者に見立てて楽しんでいる…。だとすれば…今こうして私が目指す終わりへの道中も…それを囲う者たちも…誰かが演者と見立てて楽しんでいるということだろうか…)

『…私は今、 “先駆者文明歴史博物祭”が開催されているアプリリウス総合博物館に来ております! それでー…』

 

 その道中でクルーゼが誰かの意識を向けられているのを意識しているかどうかの間、彼らが乗るアプリリウス・ワン行き貨客船の機内テレビであるニュースを見やる。

 

(…この戦争の物語の始まりは多くのものによって様々に唱えられるが、私のようなものにとって言わせれば…それは数千年前…まだ我々人間族が太陽系から出ようとするも己の限界から出られずに壊死しようとしていた頃、遥かな太古に“先駆者(フォアランナー)”と呼ばれた者たちの遺跡を発見したことに始まるだろう…)

「…こちらがアーヴ帝国の帝都大博物館より期間限定で運ばれてきた、当時の先駆者(フォアランナー)指導者層と、現在帝国の主流派の半数を占めているコヴナント系の当時の指導者たちの間で交わされた契約を記した巨大モノリスの数少ない現物の一つです。長らくはサンへイリやサンシュームなどの神話でしか語られておらず実在を疑う声が地球起源一神教圏では強かったですが、一世紀前に帝国ウルス星系の衛星クィコストにおける修技館拡張工事で発見された遺跡よりこれが発見されたことで、先駆者(フォアランナー)文明はその存在は全銀河領域で存在していたことが認められ…」

 

 数十分後、クルーゼは貨客船での機内テレビで紹介された博物館に赴き、今この宇宙における星間文明構築の基盤になった先駆者(フォアランナー)の遺跡から発見された展示品を冷笑と憐憫が入り混じる表情で見上げていた。

 

(…我々は()()()()()であなたたちの誰よりも早くに星の海へ出て星と星をつなげただろう…それ故にあなたたちよりも先に終わりが見え始めたもの…その証を技と合わせてあなたたちに託す…か、ならば…今こうして星と種を超えて多くを巻き込みつなげる争いも…その遺産の一部か…)

 

 遺物に書かれた碑文の翻訳の一部に、クルーゼの表情は冷笑の要素を強めた。

 

(…戦争を悪だとするなら、数百年前に星達の眷族や 当時の“海賊たち”との覇権争いの果てに崩壊し、消え去った“旧世界政府”…それを作り上げた“天竜人”が…先駆者(フォアランナー)を災禍の根源としてその遺物を消し去ろうとしていたのは善であったというか…。その彼らが…当時はその支配下にあった今の銀連有力国の起源である当時の列強によって邪悪の集積というべき存在として書き残されているとしても…)

「…こちらの絵画はー、中立国ノルド連合王国のカンカネン美術館より貸与された当時の天竜人が残したものでー、当時の奴隷階級や旧世界政府非加盟国の人々がどれほど過酷な待遇に晒されていたかを示す資料となっておりー…」

 

 クルーゼが館内を歩きながら拝見しているその展示品にも、彼が今の戦争にもつながっているとみなす当時の歴史の負の側面が表れていた。

 

「…とりあえず中立諸国の先駆者遺品(フォアランナー・オーパーツ)をここまで運び込んで、無事に展示まで出来て良かったですね。今も何度か過激な活動家や工作員が表裏問わず捕まったりして大変ですけどー…」

 

 こうしてクルーゼが歩く博物館のバックヤードの一角に、ムーンレイス星系会戦からプラントへの帰りと同時に、その道中で今回の博物館のプラント外から貸し出されてきた展示品の護衛任務も課されていたニコルが愚痴っていた。

 

「つい今さっきも大星洋連邦から亡命を装ってプラントに紛れ込んだレヒリオン教正典派の男がモノリスに“こんな悪魔の遺産を守る金があるなら今の銀河系で苦しむ数百億人以上の人命を守れ”とかほざきながらトマトジュースをぶちまけようとしていたし…」

 

 その隣には同じ理由でプラントに戻っていたメアリの姿もあった。

 ちなみに、二人ともつい先ほど任務が終わって休暇に入れたので私服に着替えたばかりだが、メアリの方は後方での私服姿に似合わない特徴があった。

 

「…ここかーニコル―。確か今日は彼女も一緒に帰国していると聞いたがー…ってのわ!? なんだその血は!? 大丈夫かね!?」

 

 二人がいるそのバックヤードの一室に、プラント最高評議会議員の一人でニコルの父であるユーリが現れるが、全身に付いた赤い液体をバスタオルで拭いている最中のメアリにギョッとした。

 

「そこまで驚かないでくださいアマルフィ議員。これはついさっきに展示品をトマトジュースで損壊させようとした連中を影で捕まえた時に、抵抗されたので手足を何本かずつへし折っておとなしくさせた時に浴びた返り血です」

「…あ、あーさっきのか…だからと言って君くらいの子がそんな危ないことをしなくても…」

「戦場にそれくらいの子を送っている人が送られている一人にそれを言うのはどうなんだという人がいますが…」

「相変わらず出合い頭から耳に痛いことを言うな君は。まーだからこそ私たちの家にも早く来てほしいのだが…」

「もー父さん、それを言うならのんびり過ぎる母さんの方こそどうにかしないとー。今のままじゃ恥ずかしくてメアリには…」

『聡明な市民の皆様の多くがお気づきの通り、別に我々は一部の現実を隠そうとしてる人々がレッテル張りで印象付けようとしているように、別に天の川銀河全体を占領しようなど、向こうの全民間人に先天性遺伝子操作を義務化しようなどとは言ってはおりません』

 

 そこからの落差で場は惚気話に傾きそうになったりもしたが、そこでバックヤード一室にあるテレビでプラント評議会強硬派の有力な若手としてメキメキと力と功績を増しているギレン・ザビの演説の中継映像が流されてきた。

 

『…ですが昨年のユニウス・セブンで民間人を多数巻き込んだ帝国船籍ゼミーシュル号へのG弾攻撃、中立を標榜しながらも銀連軍の極秘兵器開発に研究して帝国との協定違反を犯して同国の軍事技術流出に加担していたオーブ前政権、先々週に起きたラムレルーシュ帝国王女殿下や追悼慰霊団プラント代表ラクス・クライン氏の人質化が濃厚な一件、つい先ほどのものも言えば平和の祭典である先駆者文明圏歴史博物祭でまで起きるテロ未遂事件、これでは彼らの言を鵜呑みにする方が不可能で…』

「…ギレンか。その通りだ。反対しているクラインの方がどうかしている…」

 

 映像の先で熱弁を奮って周囲の賛同や歓声を得ているギレンに危うげなものを感じ取りつつ、ユーリは言わんとしている内容には賛同を示していた。

 評議会では穏健派に属しているとされるユーリだが、昨今の情勢、特に息子達が捕獲してきたG兵器の情報もあってその意見は強硬派に同調することが多くなっていた。

 

「二人が入手したあのブリッツやベヒモス…あれらを調べただけでも嫌でもわかる。皮肉だが今回の博物祭が開戦前より予定されていたものと多国間での平和の祭典という名目のおかげで、友好各国より得られた技術も用いて早くこの内輪もめを終わらせなければ…」

「たしかノルドから今後の惑星開発や改良の件で銀鳳財団から技術者や経営陣が来ているという話もありますが…本日あたりにまた…?」

「ああ、何よりも戦争を無駄なものではなく早く終わらせるために…だが、私達にできるのはそれで出来たものを君やニコルら大勢の若者に渡して戦場へ送ることだ…すまないな」

「現場と後方に分かれるのは戦場でなくてもよくあることです」

「ニコルと君は誇りに思うよ。できればもうそろそろそのような堅いもの以外で接しあいたい…特にニコルとは…」

「…もー父さん…母さんもだけど気が早いよー…」

「??」

 

 その話を交えつつもアマルフィ親子は惚気話へ誘導しようとしているが、メアリは何をしようとしているのか気づけていなかった。

 

「…実際の被害が出なくて良かったですね…」

「ええ、そちらのご協力感謝しますわ。あの捕まった方々も今は先ほどみたいな乱暴なことをされていなければよろしいのですが…」

 

 一方その頃、博物館から離れていく車の一台に、ニコル達と同じ理由でプラントへ戻れていた一人であるアスランと、博物館での公務を終えて帰り道の途中であるラクスの姿があった。

 

「…テヤンデー!」

「オヒサシー!」

 

 その後、クライン邸に二人が到着すると大量の色違いのハロが出迎えてきた。

 

「…また今回も群がってきて…ラクス、あまり作りすぎましたか?」

「いいえ、どの子もあなたを懐かしがっておいでですわ。そういえばあのお二人のそばにいた鳥たちもあなたのお話をしたら懐かしそうにしていましたわよ」

「…え? 鳥…?」

「ええ、キラさんとリュール様ですわ。それぞれトリィとスカイという子たちを連れていましたわ」

「…!? あの二人…まだ…」

 

 二人はそれから意外な方で話を深めつつも邸宅の中へ入るが、それを見ている存在がいた。

 

「…まさしくこれからのプラントの、コーディネイターの未来を担う若者の見本だ。あの二人がより良き未来を進めるようにこの戦争を終わらせねば…」

「君たちが理想とする都合の良い方向でかね?」

 

 クライン邸の近くにある展望台より、少し気が和らいだ表情のパトリック・ザラと苦虫をかんだ表情を彼に向けているシーゲル・クラインの二人が、自分たちの子らを見守っていた。

 

「…我々とて楽観的予測で動いているのではありません。戦争がどんな題目を唱えようと過酷なものである以上は負けたら意味がない」

「…だからと言って戦火を今の調子で広げ続ければ人類*1そのものを追い詰めることにしかならないだろう」

「だからこそ今の戦争で我々コーディネイターの権利を潰して完全なる首輪に繋ごうとする銀連の戦争を煽る輩の手をつぶし続けてプラント独立による早期講和を実現させる必要があるのです。奴らの要求が実現するということこそ今の銀河の分断を進めてより人類を追い詰めることになるでしょう」

「…今回の展示会にかこつけて中立国経由で来ている君らの後援者達に銀連側内部の分断を煽らせているのも銀河全体のそれを後押ししているのではないか?」

「彼らの支援を分断の扇動と見るのなら、我々の動きに勇気づけられてこれまで銀連中枢諸国に抑え込まれて声すら上げられなかった現状に異を唱えて立ち上がっている諸国…それのみならず、進化した人類である我々のこれまでの歩みを否定して未来を閉ざすことを意味しますぞ」

 

 若者たちの営みを見守りつつも苦虫を噛む顔やそれへの冷笑も混じて親たちは言葉を重ねていくが、空気にしみ込む強張りと焦燥も増させていく。

 

「早くもその未来へ進む道を狭められつつある我々が進化しているといえるのか? 遺伝子及び()()()()の適正を基にした婚姻統制を敷いても世代を重ねるごとの出生率低下と()()()の発症率増加に歯止めはかかっていないのだぞ」

 

 別時間軸でのプラントを悩ませていた問題が、こちら側の世界の広がりと深まりもあってさらに多様化して深刻化して顕在しており、シーゲルはそのことも絡めて穏健さを求めるがパトリックは冷笑を強める。

 

「…これまでも容易な道のりではなかった。だが、我々はより良き先へ進まんとする意思と智慧を束ねて乗り越えてきたのです。何れは展示会の目玉になっている先駆者達も行った先…()()()()()()()()()()()()()()とて…」

「パトリック! 生命とは都合で造り出されるものではない! 意思の結び合いによって生まれるものだ!」

 

 それから紡がれる言葉に混じるある単語で、それまで重く伏せられがちだったシーゲルの瞼が開いて机が叩かれた。

 

「…そのような考えは懐古主義と言うのです。人はより良き未来を求めて先へ進むのものです。“オペレーション・スピットブレイク”もその一環。進化の道を逆戻りさせてナチュラルに帰りたいというなら、それこそ文明を進めて()()()()でも手にするしかありませんな…」

 

 パトリックはその気迫も意には介さずに一瞥すると展望台を後にする。

 

「…我々は進化することだけを目的に作り出されたものではないのだぞ…パトリック…!」

 

 それを追えなかったシーゲルは、今の吐くことを止めないその言葉を同じくする者たちが、少なくなっている一方であることも再認識し、それでも抗いたいといいう意志が拳を固く握りしめさせた。

*1
この世界で人類は地球起源の人間だけでなく、銀河系に住まう知性種族全てを指す




次回は本作主人公の本来の地元や、そこにいる知人たちの様子が中心になります。

アークエンジェルがこの世界で共に戦うレジスタンスの正体は!?

  • SEED原作通り
  • 作者に別案があるなら失敗覚悟で見たい
  • 作者の選択にお任せします
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