星界の輪廻   作:oosima

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今回は久々に本作主人公の地元の様子と、それの影響が及ぶだろう身内の今の様子が中心になっています。
今回のお話には成人向けの続きがあってこちらになります(https://syosetu.org/novel/382294/25.html)。


084 戦場の揺れで動く都

 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月16日朝(帝国暦952年2月16日朝) アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ) 帝都ラクファカール 惑星大和(ガノース) 軍政省(ワロディアシュ)*1

 

 アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ)の首都であるラクファカールは、人類しかまだ知的生命体は発見されていない別時間軸の同都市とは違い、地球起源人間族以外にも百を超す知的生命体を征服や併合をしてきたことで、数千万人のアーヴを中心として十数億人の帝国臣民(ルエ・ビサール)が住まう単体としては既知銀河最大級の都市である。

 この世界ではアーヴの遺伝的先祖でもある先駆者(フォアランナー)時代に他星系より移されてきた幾つかの惑星、同時代に築かれたかそれを基に建造された九つの大円環型軌道都市(ヘイロー)を中心とする数百もの軌道都市が、地球のラグランジュポイントを模しているような位置で恒星アブリアルを囲むように存在していた。

 そうした惑星の一つである個体型惑星大和(ガノース)*2の自然豊かな地表の一角に、この時間軸における帝国(フリューバル)の象徴にして統治の根幹の多くを占める帝国星界軍(ルエ・ラブール)の中心である軍政省(ワロディアシュ)は存在していた。

 

「…全く、銀連にプラント小銀河を完全に抑えられるのはあれだから、国内の親和派もあれだけ切り崩して経済制裁を掛けたというのに…まさか、銀連に完全な崩壊など当分はしてもらわないように小さな抜け穴を設けさせてもらっていたオーブのヘリオポリスが崩壊、しかも銀連へのこちらの技術の無断転用まで行っていたことが発覚とは…」

 

 その軍政省(ワロディアシュ)の省庁建築物の一角にある裏庭の一つにて、現在の軍政尚書(ワロズ・ヴォソル)*3である帝国元帥(ルエ・スペーヌ)レケーフ・スューヌ=モラム・フェザール伯爵・リパは、サンヘリ型アーヴの原種体での普段は威風堂々としている巨躯が知人には普段と比べてやや小さく見える憂鬱な表情を浮かべていた。

 

「…それでいて、昨年のゼミーシュルとユニウス・セブンでの崩壊で表向きはご逝去なされたソドール子爵殿下(フィア・ペール・ソドゥリュ)…もといリューナクト博士の一人も現地でご療養中であるところを巻き込まれて行方不明中になったと思えば…今はどういうわけか銀連軍に亡命アーヴ系志願兵として在籍中なのが発覚…。色々と理解に苦しむ経歴だが…彼女…ラムキースの息子と思えば妙に納得できるのが恐ろしくも面白いですな」

 

 それとは対照的に興味深そうな笑みを浮かべるのは、戦況分析を行う軍令本部(リュアゾーニュ)を仕切る軍令長官(ワロズ・リュアゾン)*4帝国元帥(ルエ・スペーヌ)ファラムンシュ・ウェフ=ルサム・ラザス で、人間型アーヴとしての秀麗な面貌で喉を鳴らしている。

 

「…笑いごとにするのは個人の嗜好でなら構わんがそれ抜きだとだいぶ面倒だ。今のところ正体はばれてはいないようだがもしも発覚すれば向こうが外交のコマに使えると勘違いして、それを受けたこちらの血の気の多い連中に向こうへも刃を向けさせる口実に使われかねん。そうでなくともあの頭脳が銀連に渡りでもしたら銀河自体の寿命が縮みかねん」

『…こんな状況でもお母君のスュルグゼーデ王殿下(フィア・ラルス・スュルグゼーデル)は大笑いなさっておいでのようですが…』

 

 その両者のやり取りに遠方からの立体映像越しに加わったのは、帝国艦隊司令長官(グラハレル・ルエ・ビューラル)*5であるアブリアル・ネイ=ラムサール・バルケー王(ラルス・バルケール)・ドゥサーニュであった。

 

「どうした皇太子(キルーギア)? 今回の件は前線周りが今の主務となっている貴殿にはかかわる余地を作らねばいかんほどのものか?」

軍政長官(ワロズ・ヴォソル)、リューナクト博士も関わっているヘリオポリスの件による間接的影響で大きなものが昨日にて生じました』

「大きな間接的影響?」

 

 予定上は次の皇帝であるドゥサーニュに対してもやや嫌味そうな態度を示すレケーフだが、ドゥサーニュの言い方に嫌な意味で無視できないものを感じ散る。

 

『パルミュラにおける親プラント政権成立と先の私の娘も関わったゼミーシュル慰霊式の前に起きたあの事件でさらに苦境となった銀連のサード・サマリアが、旧人民主権星系連合体中心領域付近のエリオハプト王国所属のスエズ星系を、現地の情勢悪化及び長年の友好関係にある同国支援を名目に保証占領しました』

「…おいおい…」

 

 そして内容を聞いてケレーフは声音こそ憂鬱そうだが、表情は逆に警戒とそれ以上にどう猛さの混じる興味の色が浮かんだ。

 旧人民主権星系連合体大星域に属する諸国の多くは、政体は表向き様々だが実質は権威主義に基づく独裁体制を敷いている国が多くて各国の独自色が強い。

 そして、地球起源一神教を源流に持つサルース教徒が多数派を占める地域が多く、住民の間では同胞であるカナン人を弾圧するオルムス人とそれを支援する銀連中枢国である大星洋連邦やE.Uに対して反発が強い。

 その反発は自分たちのそうした意見を抑え込んで、銀連中枢国への友好姿勢をとる自国独裁政権にも向けられていた。

 これまではそうした国民の声は抑え込まれて表面化することはなかったが、エイプリルフール・クライシスに伴う大恐慌でそうした国々も諸国民は立ち上がるか飢え死にするかの危機的状況に追い詰まれ、多くの国の国民が前者の道を選んだ。

 その結果、旧人民主権星系連合体大星域では多くの政権が倒れ、親プラント政権が成立して勢力図は現在進行形で塗り替わっている。

 エリオハプトも長らく王家を傀儡にしていた親銀連中枢国軍事政権が続いていたが、その煽りで同国は内戦状態に陥り、そこで自国の隣がザフトに制圧されるのを恐れたオルムスが先制的防衛権を行使してスエズ星系を制圧したのである。

 何せ、スエズ星系はパルミュラと共にE.U本国群大星域と旧人民主権星系連合体大星域を短時間で繋げる数少ない星系の一つにして、複数の星系とつながる(ソード)を持ち、そのうちの一つはプラント小銀河と天の川銀河を繋げるリーチ星系へ繋がる数少ないそれの一つなので、それを親プラント派に抑えられればプラント本国への反転攻勢が困難になり、何より周辺諸国との関係がほとんど悪く自国領域の縦深性が低い状況をさらに悪化させるので、サード・サマリアからすれば占領は自国防衛のために必要な措置であった。

 だが、サマリアと銀連中枢国及びそれと親しい自国独裁政権に抑え込まれていたサルース教徒たちにとっては、また身勝手な理屈で自分たちを侵略したことに他ならない。

 

「…その結果、E.Uが管理権を持つ旧人民主権星系連合体下部領域にある、リーチ星系へ繋がる(ソード)があるビクトリア星系でも反乱がおき、さらにその直後にザフトも侵攻を開始したので、もう今日中には決着がついてもおかしくないかと…」

「…だったら、ラムキースの息子は早めにこちらへ戻した方が良いな。こちらで育って増えている科学者達も慣れて疑似星核粒子技術は大きく進んでいるが、それに応じて発起人がいなければまだ早期解決が見込めん問題も多い」

「そういえば現地にはご一族の少年ももう一人、現地パルミュラとの軍での交流会という形で派遣されておいでだな…」

「ええ、それをかぎつけて色々と動いているきな臭い方々も増えていますので…。情報省とも早めに調整を…」

「大丈夫か? 無断でご一門におとりをさせても」

「私も同じ年代のころに無断でされていましたよ。というかこの世界では皇族(ファサンゼール)に限らずおとり役を本人に隠した形で選ぶなど珍しくないでしょう。私もされてきただけでなく今ではするようになっています。無論、おとりにされた方々が死なないように色々と助けをしておりますしね…」

「そういえば現地には私と若いころの学友である()もいたな。今は所属しているところの事情でザフトやパルミュラ政府とも微妙な関係と聞くがー…」

「…他にも、現地には確か()()()()()()()()()()()()()()()()()が…」

 

 こうして今現在の帝国(フリューバル)の武威の大権を皇帝(スピュネージュ)から預けられている三人も、現在の世界情勢を踏まえて密かにだが広範囲に影響を及ぼす形で動き出そうとしていた。

 

 

 

 

 

 ○C.E(コズミック・イラ)71年2月16日夕刻(帝国暦952年2月16日夕刻)現地時間夜 銀河連合 旧人民主権星系連合体大星域 銀河中心領域付近 シュリア星域 パルミュラ王国 第一パルミュラ星系 第二惑星アンティオキア 首都セレウキア○

 

「…ふう、これで今日の分の報告書は終わったな…」

 

 帝国の中枢で軽くない決断が下された日の夕刻、現地では日が沈んだばかりの夕方にある、アークエンジェルが行き着いてしまった惑星アンティオキオの一角で、昨日にてザフトとアークエンジェルの戦闘を現地ニュースで知ったアーヴの少年である、アブリアル・ネイ=ドゥブレスク・ウェムダイス子爵(ペール・ウェムダイサル)・ドゥヒールが電脳上で報告書を作成していた。

 この世界におけるドゥヒールはドゥビュースの息子でラフィールの弟なのは別時間軸と同じだが、生まれは別時間軸よりも早くて今年で15歳であった(ただし、容姿はアーヴにしても他の同年齢の同胞と比べても幼く見え、別時間軸をアニメ化した映像作品で猫と戯れていた頃のものであった)。

 

「ドゥヒール-、起きてるー? ちょっと見てほしいのがあるんだけどー」

 

 そして、ドゥヒールの別時間軸にはない(もしくはまだ登場していない)要素の一つが、彼が泊まる部屋のドアをノックした。

 

「ん? どうした? 何を見てほしいのだリリア…!?」

「どうこの格好? 次にこの星で開かれる国際防衛産業見本市のキャンペーンガールにアーヴの子もよこしてほしいって注文が来て、興味が沸いたから試しに着てみたんだけどー…」

 

 そうして自室の扉を開いたドゥヒールが目にしたものは、アブリアルのそれとは別の形状で尖った長い耳の形からエルフ型なのがわかる、生物学的アーヴでありながら欧州系のブロンドロングヘアをして左右にその一部をお団子ヘアにしており、この世界での彼の二歳年上の想人(ヨーフ)であるシェルベリ・ボルジュ=トゥルーズ・リリアの立っている姿だが、彼女の格好まで見たドゥヒールは一瞬で赤面して頭から湯気を立ち昇らせてぶっ倒れた。

 

「…あ、気絶してる…私も見せられた時は驚いたけど…刺激が強すぎたかしら…?」

 

 赤面し目を回してぶっ倒れたドゥヒールの姿と、室内にあった姿見に写し出された広告付き傘を手にして肌面積の露出が多いキャンペーンガールの格好をした自身にリリアは苦笑して頬をポリポリと掻いた。

 そのリリアの格好は、ドゥリュースのまだ思い出されていない記憶にあるSFロボット架空戦記作品で映し出された別時間軸で、同じ名と容姿をした同位体だろう女性が誕生日イラストで着ていたレースクイーンのような衣装であった。

*1
星界原作における統帥府(ワロディアシュ)がこの世界では常設の省になったもの

*2
大和(やまと)に由来する帝国の美称で感想支援由来のアーヴ語

*3
星界原作における軍政長官(ワロズ・ヴォソル)で、この世界では星界軍における皇帝との直接の普段における軍政調整や他の省庁との政治的調整を担当しており、星界軍の№1。序列上の№1は皇帝だが普段は実質的に軍政尚書が№1

*4
この世界における星界軍の実質的№2

*5
この世界では星界軍の実質的№3




次回は、主人公たちの現地での様子とようやく明かされるレジスタンスの正体が中心になります。
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