けれど、あの世界でのあのキャラたちがガチで抵抗したらどうなるか、それがSF世界だったらどうなるんだろうって興味や好奇心が抑えられなかったのです。
〇
クルーゼがプラント本国にムーンレイス星系季節性短期間自然ゲート前会戦の報告のために帰還していた頃、アークエンジェルはザフトのアンティオキア地上軍との戦闘で助けてくれたレジスタンスの案内で、その根拠地があるとされる密林と高山が入り混じるその地の山間を進んでいた。
「…見えてきました。あの霧が混じる蜘蛛の巣上に広がる巨大ツル群生地帯を通過してください。ツルは僕らの術によるものですから自然と避けてくれます」
「わかりました。アークエンジェルこのまま前進」
「…は、はい…わかりましたー……………ってこ、これは…!?」
艦橋に同席しているそのレジスタンスの一員の案内に従って進むと、アークエンジェルの行く手を阻んでいた巨大蔓の群生はズズズと地響きを鳴らしながら避け始め、その合間を進んでいくアークエンジェルが見たものは思いだにしない光景であった。
「…うわ! あんな大きい船が飛んできてるー!」
「あれが権太にユラ達が昨日の戦いで引き込んだっていう銀連軍の新型艦…」
巨大な岩山を多く削られて作られたと思わしい要塞都市の廃墟がアークエンジェルを囲む形で存在し、それらを繋げた町と住まう大勢の住民やレジスタンスが生活を営んでいたのだ。
「この辺りは二次大戦中にドクツ・ゲルマニクスがこの星を占領していた時期に資源採掘及びその防衛のために築き上げた要塞の廃墟です。今は僕らがここを住居にしてるんです」
「…え、ええ…ご説明感謝します。正吉さん…」
その街を映像に拡大して見せる、まるで狸の着ぐるみを来た人間のように二足歩行して手と言葉を器用に操って和風意匠が強い人並みの生活をしている狸たちと、その狸たちが組織したレジスタンス“タマキューリョー解放戦線”幹部の一人で青年である正吉の真面目そうな二本足狸という姿に、アークエンジェル艦橋マリュー・ラミアスはシュールさを禁じ得なかった。
「…皆ー! 銀連新型艦の連中を連れてきたぞ!」
「おお! 正吉に権太! 今日も全員で戻ってこれたか!」
数分後、そのレジスタンス狸達の本拠地の奥には和風の和尚姿をした老人男性と思わしき狸鶴亀和尚、赤い着物を着たおかみ風の女性狸おろく婆、眼鏡をかけた温厚そうな雰囲気の狸男性六代目金長らここのレジスタンスの幹部たちが勢ぞろいしていた。
その周りや近くの部屋には、地図など各種資料を精査して今後の作戦を練っていたり、装備の作成や点検をしていたり、電子機器を駆使して連絡や情報収集をしていた者たちの姿もあるが、それらも二足歩行する妖怪狸なので、地球起源人間族が大半を占める銀連中枢国圏内出身のアークエンジェルクルーの多くはシュールさを覚えているのを隠せない表情になる。
「…ちょっとあのスマホ、たしか帝国のノーム・エスカトル社のMフォーン952型ですよ」
「まじかよ。どうやって手にいれたんだよ!?」
「お前たち、これから会談なんだから私語は慎め」
「皆さん、こちらのお席へどうぞ」
こうしてアークエンジェル側は正吉の案内で、この惑星アンティオキアの先住知性種族である妖怪狸達のレジスタンスとの会談へ臨むことになる。
「…まずは先ほどの戦闘への助力に感謝を。銀河連合軍中心領域第八艦隊所属のスメラギ・李・ノリエガ大佐です*1」
「第八艦隊? あー…確か新型兵器をザフトに奪われてそんでその機体も加えたクルーゼ艦隊に全滅させられそうになったけど、まだ再建途中だった第五艦隊の援護で辛くもムーンレイス基地に逃げられたっていう…ま、殿してくれた第五艦隊は司令が戦死して残りも二割を切って逃げるしかなかったらしいけど」
「!? ボロディン提督が…!?」
その会談でのあいさつでレジスタンス狸達から出た軽口の内容に、第五艦隊に所属していた時期もあるキュルケも目を見張った。
「ふん、あんな砂漠に迷い込むだけあって大した鈍さだ。そのおかげでビクトリア星系とそれを守るラ・トゥール要塞も陥落寸前だがな」
「!? ビクトリアが!?」
赤い法被を着る権太がそれを小馬鹿にして鼻息を荒く吐くが、同時に言い放った内容がナタルを驚愕させた。
ビクトリアは対プラント本国の直接最重要拠点であるリーチ星系へ繋がるゲートを持つ星系の中で、先に陥落させられたカオシュンやサマリアに抑えられたスエズと共に銀連が持つ貴重な対プラントゲートの一つだ。
「…もともとこの星もある旧人民主権星系連合体大星域はE.Uの経済植民地状態でどこも国民は苦しかったが、BETA大戦がはじまってE.U本国が減る一方に連れてさらに搾り取られるようになっている中で、ザフトが撒いたNジャマーのおかげで経済はほとんどとどめを刺されちまったのが多いからよ。とうとうあちこちで反乱やら暴動やらの内ゲバが起きちまってるのさ。おかげで今じゃービクトリアはこのありさまよぉ」
権太がパソコンのキーボードを操作して出した空中映像には、暴徒化した先住民やそれから進駐軍の家族及びE.U本国からの入植者を守ろうとする銀連兵、その戦闘で血飛沫や悲鳴に爆炎を巻き起こすビクトリア星系の各所、そこを突いて戦況を大きく有利に進めていくザフトのMS部隊の大軍の姿があった。
「…そんな状況でこっちにつこうたぁ物好きだなぁあんたら」
「…俺たちからすりゃあナチュラルだのコーディネイターだのオルムスだのレヒリオンだのサブルムだの現神教だの言ったところで人間なんざ違うのは呼び名だけだ。どいつらも後からきて何もかも奪っていくあげく内ゲバでこっちを巻き添えにしてきやがる」
それを見た両津の物珍しそうな言い方に権太は双眸を細める。
「…でも、この状況からして私達と貴方達は共闘せざるを得ない状況でしょう?」
「理解が早くて助かります。我々の目的はこの星を銀連軍侵攻以前の状態に戻して、かつてパルミュラ王国中央と良好な均衡が保たれていた以前の状態に戻すことです。別に人間たちをこの星から排斥するのが目標ではありません。そもそも現地政府と完全な敵対に陥ればあなた達もこの星から宇宙に戻ってジャブローを目指すことは出来ないでしょう」
その上でのスメラギの問いに、妖怪狸達の中でりりしい雰囲気を持った青年の玉三郎がこの星の歴史を絡めながら説明を深めていく。
もともとこの星は在来の生物こそいても知的生命体はいなかったが、千数百年以上前に起きた、今は残っていない地球人星系国家の一つが
その後には妖怪狸達でともに流れ着いた資料などを用いて文明生活を再建していったが、現銀河三大唯一神教の一つサルース教の拡大に伴ってサブルム人が移民してきて
それから帝国の進出に伴って他所から進出してきた現神教徒主体の地球起源人間族や亜人種が多数派となるも、サブルム人と違って同じ多神教ゆえに文化交流は盛んになり、その時の移民が多数派になり同君連合という形でこの星はダークエルフ族を王家とするパルミュラ王国が成立するが、連邦制を敷かれたので妖怪狸達も議会に議席を持つなど概ね共存出来ていた。
その状態で平和は長らく続き、さらにサルース教圏と帝国の境界線上にあったことから交易で栄え、今現在でも近隣星域諸国の中では豊かになって先進国になり、
だが、E.Uで大革命が起きて民族主義や民主主義が銀河規模で広がると、パルミュラ王国で少数派になっていたサブルム人が現状に不満を覚えて分離独立や自治権拡大を要求する事態になる。
そうした混乱が水面下で長く続いていた中で、銀連とプラントの間で今回の大戦が始まると、パルミュラ王国をその地政学的重要性から欲しがった銀連は珍しくサブルム人への人道支援を名目にパルミュラを攻撃して占領下におこうとするが、驚いたパルミュラの保守派はザフトを引き込んで銀連軍を退かせることに成功するも、中立性を維持できなくなってプラントへの依存度を深めざるを得なくなってしまった。
だが、銀連が一時期この惑星を占領していた時期に、保守派の切り崩しのために利権の再分配を行うが、その時に妖怪狸達が持っていた資源豊かな森林山岳地帯を勝手に彼らへ切り売りしてしまった。
さらに、ザフトがパルミュラ王国の実質的な支配者になると、後ろ盾である銀連がいなくなってしまって窮地に陥った元親銀連派は、ザフトへ取り入るために森林山岳地帯の権利を勝手に売ってしまったのである。
それは政権が保守派に戻った後も維持されて返されていないため、勝手に奪われた地域の返還とまだ実効支配している地の権利を求める狸達と、獲得したばかりの利権保持を求める元親連合派の間での紛争状態に陥り、森林山岳地帯に必要な資源があるザフトも仲裁と称して既成事実的に同地の実効支配強化を進め始めたのだ。
「…なるほどねえ、この星にいるザフトに痛打を与えて有利な条件で関係を結びなおして、奪われていた土地に暮らしていた同族をもともと住んでいた土地に戻したいと…そもそもの原因はこっちだというのに器用なものですなぁ…」
「…ええ、今でこそザフトを引きこんではいますが王国の保守派もこれ以上ザフトの勢力拡大を望んでいないのと、この星に租界を持つ帝国も戦前での境界線回復を第一目標に動いています。僕らにとって最善なのは戦前の他の種族の人々と共存出来ていた状態に戻すことですから。幸いにも僕たちの長老達にはあの国の要職の方と―――」
「正吉」
「―――お…申し訳ありません…」
そうした歴史的背景も含めた説明が深まる中で若い狸から重要な情報が洩れそうになるも年長者に窘められたのち、当分の作戦を話し合った後に両者はそれぞれの住処へと戻っていく。
「…しかしまあ、あの時にヘリオポリスで教授に紹介してもらおうとしたそっちとようやく話ができると思えば…まさかここまで遠回りしてからとは…」
レジスタンスとアークエンジェルの幹部たちの話し合いが行われて十数時間後、夜中にてアークエンジェルが降りている妖怪狸達のレジスタンス“タマキューリョー解放戦線”の本拠地の開けた場所で、ヘリオポリスで軽く接触した金髪の少女であるユラ・ディーファとリュール達は会話していた。
ユラはどうやらオーブ本国にあるモルゲンレーテ関連企業の要職についているお偉いさんの養女で、栗色の髪を生やしている少女の霞は彼女の護衛役らしい。
どうやら今は親の仕事の都合でこの星へ来て妖怪狸達との取引で働いていた縁でザフトと彼らの戦闘に巻き込まれ、色々あってレジスタンス用の物資のやり取りで働いているとのことであった。
「…ですがそれだけの状況で本当によくここまで来れましたねキラさん。特にリュールさんはその私達と変わらない齢で凄いです…」
「うん、私達もリュールの作戦や活躍がなかったらきっともう生きてはいなかったよ。本当にありがとうリュール…あれ? またなんかどこか上の空…?」
(…記憶が戻った今ならわかるけど、あの時の僕が見習い研究員としてさせられていたのはMSの人機同調魔機複合装置の改良作業とか…僕が別人名義ながら特許や権利持っているとはいえ帝国系技術も混じるんだよなぁ…。これ…帝国にばれたらどうなるんだろう? 知らずにやっていた証拠が出ればなんとか無罪はしてもらえないかなー…実際にあの頃は記憶喪失で自分が王子なのは愚か帝国出身だってのも憶えてなかったし…!?)
その中で周囲から向けられる敬意や感謝など関係なく、リュールはアブリアルらしくない保身の心配をしていたが、そこで彼らの頭上を小型飛行機が慌ただしく通り過ぎた。
「た、大変だー! 隣のカナガワ湿原地帯がザフトの奇襲にあってるー!」
「「「「「!!!!????」」」」」
そして、リュールの心配はその小型飛行機を操縦するレジスタンス狸の一人によって報告された、狸達に襲い掛かった新たな危機の報せに吹き飛ばされ、リュールの心は周囲と同様の緊張と恐れが生じるも、それ以上にアブリアルの本能からくるのか戦意で鋭く表情が切り替わった。
今回にて登場したレジスタンスの皆さん、名前からもうお判りでしょうけど“平成狸合戦ぽんぽこ”の妖怪狸(のこの世界での同位体)達です。
ちなみに、最近のテレビで見なくなった理由であろう原作狸達の姿と違い、こっちの狸達は(見た目は昭和初期の田舎っぽい)民族衣装で上下ともに衣服を着ています。
次回は、妖怪狸達の別の拠点での戦闘が中心になります。