星界の輪廻   作:oosima

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今回、妖怪狸達の別の拠点だけでなく、本作ヒロインの一人が酷い目(?)に遭います。


086 砂上での新たな戦火への狼煙

 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月16日夜(帝国暦952年2月16日夜) 銀河連合旧人民主権星系連合体大星域 銀河中心領域付近 シュリア星域 パルミュラ王国 第一パルミュラ星系 第二惑星アンティオキア カナガワ湿原地帯 レジスタンス支配圏内○

 

「きゃー!」

「逃げろー!」

 

 アークエンジェルが案内された妖怪狸レジスタンスの本拠地に凶報が入ってから十数分後、そのザフトの夜襲を受けたカナザワ湿原地帯では妖怪狸達が逃げまどって悲鳴を上げていた。

 但し、上がっている火の手の数や大きさに比べて負傷者や死臭などは不自然なまでに少なかった。

 

『これから岩山に隠してある武器弾薬に食料を焼き払う。死にたくないなら早急に避難しろ』

 

 この隠れ家を発見して夜襲をかけたザフトのMS部隊が、このような放送を大きく流して狸達に攻撃地点から逃げる猶予を与えていたからである。

 

「…全く、海岸地帯からいきなり呼び出してこんな偵察をさせるなんて…砂漠の虎もだいぶ人使いが荒いなぁ…。まあ…確かにこの仕事をこなせるのはこのフォビドゥンしかないけど…」

 

 その様子をやや離れた湿原を流れる急流の上流より浮かび上がったフォビドゥンのコクピットより、ザフトのクルーゼ隊所属だがムーンレイス会戦での短期間限定自然ゲートに巻き込まれてこの星に流れ着き、バルトフェルド隊に救助されてその指揮下に入ったエグザベ・オリベが疲れた表情で見ていた。

 フォビドゥンはブリッツが持つミラージュ・コロイドを別方向に改良したゲシュマイディッヒ・パンツァー装甲の恩恵で、高い耐水性やビーム兵器に対してほぼ無敵な防御力を持ちつつも、ブリッツほどではないが科学や魔術を問わずレーダー機器などにも高い秘匿性を持ち、この湿原地帯の環境を利用して水中を航行して妖怪狸達の見張り役を尾行していき、この拠点の一つを発見してバルトフェルド艦隊本隊に報せたのである。

 その結果、この地は戦火に包まれてしまったのだ。

 

「…順調ですね。このままだと昆虫型ドローンで確認したレジスタンスの物資は予定通りにせん滅するでしょう」

「それはいちいち報告しなくていいんだよダコスタ。それよりも住民の被害は出ていないな?」

「…はあ、まあこの状況ですから火傷したりこけたりして負傷者は出ているでしょうが…まだそのような反応は…それよりもあの足つきの方が予定通り来るかどうか重要では?」

「相変わらず捻りがないなー君はー…む!?」

 

 それらを見下ろせる砂丘の上に、この星でのザフト地上艦隊旗艦レセップスの姿はあり、その環境の野外展望台よりバルトフェルドは部下達と共に指揮を執りながら眺めていたが、そこで夜空の一角より複数の機影が現れてそれらは狸達の集落へ急速に近づいてきた。

 

「…これは、ひどい…っ!」

「ああ! キラそんなに急がないで…仕方ない。あれもうまく使おう」

 

 たどり着いた先の集落の業火に包まれている姿に、機影の一つであるストライクの中でキラがキッとした表情を浮かべてスラスターを更に上げ、同行していたリュールはやや苦い表情を浮かべつつもやや別方向へ向かった。

 

「よし! 全機に通達! 予定通り敵の足つきのMSが来てくれた! レジスタンス拠点の兵站破壊は止めて砂漠まで後退! そこで敵MS部隊を包囲殲滅する!」

『『『『『了解!!』』』』』

 

 それを見たバルトフェルドは先ほどまでの気安い笑みからどう猛なそれへと一瞬で切り替わり、集落を襲撃していたザフトMS部隊も即座にそこから離れて隣接する砂漠地帯へ移動した。

 

「(…砂漠に退いたのは逆に向こうが今度は罠を敷いているのもあるだろうけど…正直こっちの気分としては助かるな…。非戦闘員を巻き込まずに済む…)うわ!?」

 

 ストライクを追い越してその先導をする形になったバルバトスだが、それを駆るリュールの危惧通りに砂漠に入ったところでザフト側が敷いた罠が始動した。

 

「っ!? 地面が爆発…けれど地雷の反応なんて…うわぁ!?」

 

 その罠によってストライクの足元が大きく爆ぜて中のキラは驚かされるが、それから立ち直る間もなく次々と地面が爆ぜていってストライクのエネルギー供給限界値を削っていく。

 

「…エネルギー供給が大昔のオーバーテクノロジーで理論上無限と言っても、機体自体が現代のものじゃ限界はそう遠くなない。ザガーリュ、残りはどれくらい使える?」

 

 それをレセップスの上よりバルトフェルドは見ていたが、艦と砂丘の間にはバクゥや重砲撃支援向けの機体でバクゥ程ではないがMA形態ではホバー走行で見た目よりも機動力のあるガズウートに護衛されている、背部に魔術複合兵器系のユニットを装備しているザクウォーリアがいたが、その足元には薄く発光している魔術式が円形状に展開していた。

 

『ご安心ください提督。この辺りはあの湿地帯を水源とする水脈が無数に飛んでいます。レセップスからエネルギー供給を受けてる限り爆薬(水素と酸素)はいくらでもあります。ポチポチっと♪』

 

 そのザクウォーリアのコクピットには、帝国から移民してきたアンゴイ系アーヴのザカーリュ・ウェフ=ダルバ・サワーム改めサワーム・ザカーリュが、光線状の魔術式で半分以上構成された頭環(アルファ)を被っており、電脳越しにストライクとバルバトスのいる砂漠にて現在進行形で仕掛けている()()を起動させていった。

 

「…うぐ!? ん…!? 爆音で聞こえづらいけど…雨音も…!?」

 

 一方、その爆炎の中にあるバルバトスの中で振動と轟音で疲労が生じだしたリュールだが、一方で機体の表面を細かく打つ水飛沫からこの攻撃の正体に気付く。

 

「キラ! 地下水だ! ザフトはここの下を流れてる地下水から水素と酸素を魔術で造り出してそれを爆発させてる!」

「そうか! だったらぁ…うわぁ!?」

 

 それに気づいたキラはすかさず電脳越しにストライクのセンサーに繋がって周囲の索敵を開始しようとするも、その間も魔術による地雷攻撃は続いて彼女の集中力を奪っていく。

 

「キラ! 掴まって! 僕の方で本当にやばいのは避けるか防ぐ!」

「あ、ありがとうリュール…! まずは地下を流れる音による振動からそれぞれの振動及びその原因を種別化…その内の地下水のものを把握して、おそらく水を分解して水素と酸素を作り出してるのは雷性質のものだから…その系統のパターン数値を撃ち込んでレーダー上に反応マークが出現するようにして…!」

 

 そこでバルバトスがストライクを掴み、そのバクゥ以上の敏捷性と機動力及び魔術結界による防御に空識覚(フロクラシュ)を生かして、地雷攻撃の多くを避けるか防ぎ、その隙にキラはストライクとバルバトスのレーダーに敵の魔術地雷の反応が出るようにプラグラミングを進めていく。

 

「…む? 何かあの水色の避け方や反撃の冴えもますます高まってたが…ストライクの方も十分に良くなってきた…。こっちにとってはよろしくないなぁ、カラミティに連絡を取れ。近づいてきている銀連の量産機部隊にはバビを当てて押し止めろ。それと私も空いてるバクゥで出るぞ」

 

 それに不審な気配を感じたバルトフェルドは戦闘指揮所を離れ始めた。

 

「…よし! これならもう敵の魔術式地雷に引っかかることは…!?」

 

 その数十秒後、キラがその場で作成して味方の機体にもインストールさせた魔術式地雷探知プログラムのおかげで、バルバトスとストライクは離れて地面の爆発を事前に回避できるようになったが、そこで別方向より大型のビーム攻撃反応に対する警報が響いた。

 

「それだけ大きな反応なんかすぐに避けられ―――!」

『キラ! こいつは避けるだけじゃだめだ! すぐに射線軸及び着弾予想点から大きく飛び退いて!』

「―――え…!?」

 

 それをキラは汗をかきつつも慣れも感じさせる表情を浮かべるが、そこでリュールの怒鳴り声と共にバルバトスがストライクにぶつかって押し出した衝撃を覚え、その直後に画面を閃光が埋め尽くしてこれまで感じたことのない衝撃波で意識が遠のいていく感覚を覚えた。

 

「…え!? リュール君!? キラちゃん!?」

 

 セレーナの駆るエールストライク装備ウィンダムがその場に駆け付けた時には、大量の砂煙と水飛沫を周囲にまき散らす巨大な爆炎で出来たキノコ雲が立ち昇っていた。

 

「……うっわ、すごい爆発…どれだけ地下で作った水素と酸素を集めたわけ!? この子の火力が強くて砂地を大きく撃ち抜いて爆薬に火を付けやすかったのもあるけど…」

 

 その大爆発の切っ掛けとなったビーム攻撃を発射した、レセップスの甲板に位置するカラミティのコクピットより、コモリは唖然とした顔を浮かべていた。

 

「おいおい、ザカーリュあれじゃー解析のための機体が残ってないんじゃないかー? それと下手すればバクゥに巻き添えが出るところだったぞー」

『そんなカリカリしないでくださいよ提督ー、ちゃんと味方を巻き添えにしないように爆炎はできるだけ上に向くように調整しましたし…あ、もう一機はまだわかんないけどここまで残ってるんなんて…銀連製にしては凄い丈夫だなー』

 

 それに全くカリカリとした雰囲気を感じさせないが困り顔を浮かべるバルトフェルドが乗るバクゥのコクピットの画面に映し出されたきのこ雲内部の映像には、装甲が色を失って絶命した死体のように仰向けとなってピクリともしないストライクの徐々にはっきりしていく姿であった。

 

「…ジュルルル…」

 

 一方、それらの経緯で砂漠に出来ていた無数のクレーターの一つの奥底に、怪しげだが獰猛な眼光が生じていたことに、気付けるものはまだいなかった。




次回、本作主人公のSEEDらしい要素が出る予定です(…多分)。
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