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「…うう…くっそ…なんて熱と振動だ…頭がくらくらする…他の皆は!?」
カラミティガンダムの砲撃で起爆した大規模魔術疑似地雷で生じた紅蓮の中で片膝をつくバルバトスの中で、リュールは脂汗と苦悶の表情を隠せない様子となりながらも周囲の味方の安否を確認しようとしていた。
「…え!?」
だが、そのリュールの苦悶の表情はそれを見た瞬間に一瞬で強張りに消し飛ばされた。
彼が駆るバルバトスの傍らに
その瞬間、リュールの中で種のような何かが弾けて四散したような感覚が広がった。
「ほらー気絶越してますけどちゃんと生きてますよ提督ー、さーこの調子であの水色のGフレーム使用機も含めて残りもじり貧バタンキューにさせて捕獲ー…!?」
それはザカーリュも確認して彼は直ちに地下に敷設中の魔術地雷を起爆させようとしたが、そこでまるで鼠が蛇ににらまれた時のような悪寒を覚えた。
「…っ…この感じは…あいつに頼まれてついでに様子を見に来たが…少し急いだほうが良さそうだな…」
そして、その感じはそのザカーリュがいるザフト地上艦隊旗艦レセップスも見下ろせる巨大な砂丘の上より、フードで全身を隠しているがかすかに見える赤い髪は非常に艶があって声も低いが中性的な何者かも感じ取ると、その身は砂丘から噴煙と思わせる巨大な砂煙を立ち昇らせる脚力で飛び立った。
「うわぁああああ!? 何者だアアアアアア!?」
一方、巨大砂丘から砂煙が立ち昇って数十秒後、ザフト側からの声には規制や余裕は消え、代わりに強張りと恐怖が強く出るようになった。
「…!!」
その理由は、機体の中で瞳から感情の色が消えて無表情になったリュールが駆るバルバトスによって、次々と味方が撃破されだしたからである。
「うわぁああ! 助けてえええぶげぇ!?」
バルバトスが撃ちだしたハーケンで今もバクゥの一機が穿ちぬかれるもコクピットは避けられたが、それはザフト側にとって慈悲ではないことはもはや明らかだった。
「ひぃぃ! また来たぞぉ!」
バルバトスはそのバクゥを盾状に構えて地上を超高速で疾走し、それを砲口を向けながら味方を巻き添えにするのを恐れて躊躇しているガズウートにまるでモーニングスターのようにたたきつけ、両機とも戦闘不能にしてのけた。
「今度こそはぁばぁ!?」
そうして味方を盾にしている姿がわずかになくなったと見抜いたバビの一機が、MGX-2237アルドール福相ビーム砲から大出力のビームを撃ち込もうとするが、その寸前に真下の砂地を突き破って現れたハーケンの一機に砲口を切り裂かれ、行き場を失ったエネルギーは内部で暴発してそれも砂漠に落ちた。
「…何? あの…リュール君の動きは…!?」
「あれ…アーヴでも対G抵抗値の平均の最低でも倍以上のGがかかってる状態のはずなのに…数値上は体の方に異常は出てないんだけど…この魔力数値は…!?」
その常軌を逸した戦い方はアークエンジェル側も確認しており、マリューは半ば唖然としていて、フレイは画面上でもかろうじて映し出されているバルバトスの機影とそこから送られてくるパイロット身体状況を示すデータの乖離に不安を掻き立てられてしまう。
「すげえなリュールの奴…このままだと今ここに出撃しているザフトのMSを全て潰してしまうんじゃないか―――」
『いや! あのままでは動かさせ続けたらリュール君が危ないわよ!!』
「―――あ…何だと!?」
それに自分達を包囲しているバビが減少しているのもあって両津が畏怖と安堵が混じる声を漏らすが、通信越しながらセレーナの切羽詰まった声が割り込んでくる。
「…この感じ…あえてザフトのMSパイロットが即死しない程度に機体を半壊させ、それへの救助や支援で力を割かれる隙をついて他の機体も同様にして…さらに、半壊して停止したMSの位置の都合で…先ほどの魔術地雷も含めてザフト側は支援攻撃をしづらい状況に固めてしまっている…何処でこんな戦い方を…!?」
アークエンジェルの環境ではスメラギが今現在のリュールの凶暴且つ無計画そうに見える動きに隠れた狡猾さも覚えさせる巧みな戦術性を見抜きつつ、それを生かす作戦を支援砲撃中心に出して押されていた戦況を少しずつ改善させていくが、その彼女もリュールの普段と比べても生産且つ無慈悲なまでの今の戦闘力と雰囲気に不安と憂慮の色を強めていく。
「リュール君! 落ち着いて! それ以上するとまた
「リューにー!」
一方、バビの戦闘を継続できる数が減ったことで薄まった包囲網を抜けたセレーナやネーナは通信機越しで必死に制止の声をかけているが、それは形を成していない。
通信自体は繋がっているので声はリュールの鼓膜を震わせているのだが、リュールの脳髄はそれをノイズの一種と無意識に切り捨て、今現在で自分が戦局をこちら有利に出来るかどうかで身の行動を決めていた。
(…次はK2地点のガズウートを…そうすれば…あそこから動かせないキラの障害は…!?)
だが、そのリュールの行動はほんのわずかにだが鈍りが新たな
(…これはザフトと別に…この場には不釣り合いな力を持つ存在が…もう一つのけた違いな方は
「キシャアアアアアアアアァ!!!!」
リュールがその二つの巨大な力の接近に普段のに近い強張りを少しだが取り戻したその時、彼らがいる砂漠の広範囲の砂地を下から突き破って巨大な砂塵を纏い、MSを南十機も飲み込めそうな巨大なミミズが咆哮しながら戦場へ乱入してきた。
「ひいいいいいいい!? 今度はなんだよあれええええええ!?」
『あー! あれは以前にへっぽこ丸が見せてくれた銀河生物兵器図鑑にも載っていたパルミュラサンドキングワーム! 当時の技術では殺処分が難しかったから仮死状態にされてこの星のどこかの地下奥深くに封印されていたって説は読んだことがある! あとついでに言うと人間が大好物でめっちゃ強酸な消化液を超長距離攻撃可能なウォーターカッター状に打ち出すということも可能!』
『いやいや! ついでの方が大変です!!』
それはアークエンジェル艦橋からも視認でき、艦橋要員の一人になっていたカズイ・バスカークは別時間軸と同じく怯えの表情を見せ、その間近にバビと交戦中のウィンダムのパイロットの一人であるボーボボからずれた解説が通信映像越しに割り込み、別の通信映像を通してアージェイトに乗ってアークエンジェルをレセップスなどの砲撃から守っていた日光が突っ込んできた。
「キシャアアアアァアア!!」
「っ! 回避ー!」
「ぬおおおお!?」
そこでパルミュラサンドキングワームより説明されたばかりの強酸性ウォーターカッターが撃ちだされ、マリューの指示でノイマンが大きく船のかじ取りをしてどうにか本体への直撃を避けるが、大気圏内での飛行にも使用される主翼と半重力式ロケットエンジンの幾つかに消化液が当たって金属が大きく溶かされる嫌な音が周囲に響く。
「お、驚いたけど足つきがやられたのはいいわね…けれど、何であの封印処分されていたはずの生物兵器が急に…あ!? まさかザカーリュ君の魔術地雷のせいで封印が解けたとか―――!?」
「キシャアアアアァアア!!」
「―――あってこっちに今度は来たああああああああ…!?」
それにレセップスの近くに移っていたカラミティの機内よりコモリが安堵と不安の混ざった反応を見せるが、パルミュラサンドキングワームが今度は自分たちのいるザフト側地上艦隊に猛烈な勢いで襲い掛かってきて、コモリはそれに悲鳴を上げるがレセップスとワームの距離が縮まろうとしたところで信じられないものを目にする。
「キシャア!?」
何とワームの巨大な頭部が胴体よりまるでキュウリでも切られたかのようにドンっとした重くも大きな切断音を添えて離れ、さらにその頭部は縦状に真っ二つになって完全に絶命し、砂漠に落ちて巨大な砂塵を再び巻き上げた。
「うアアアアアア!?」
「な、何が起きたんだぁ!?」
「MSのビーム砲や戦艦の砲撃でもびくともしなかったのにぃ!?」
「な、何がー…!?」
それに周囲は所属問わず驚愕と混乱に襲われる中、レジスタンス狸の一人がその巨大ワームの死骸の上に誰かが立っていることに気付く。
「…少し立ち寄って様子見をしに来ただけなんだが…まさかこんなのに出くわすとはな…。戦場だが放っておくと近くの町とそこで借りてる宿まで襲ってきそうだから退治したがー…」
そのサンドワームの死骸に立っている人物は、緑を基調としている冒険者衣装に身を包んで細身だがわずかに見えている胸元や首筋から高密度に濃縮された筋骨で構成されているのがわかり、短いツインテールになっている赤い髪と青く大きな瞳はまるで宝石を原料にしたようで、まるで女神像が命を得たような美貌を持つ青年であった。
「…え? あ、あの人は…誰…?」
そこでバルバトスに密かに守られていたストライクより救助されたばかりのキラが目を覚ましてその姿を見るが、彼女にとってその現れた謎の人物はまるで人間というよりそれに姿を偽った女神のように見えた。
「何が起きたんだ!? どうしたらあの宇宙怪獣類くらいはありそうな生物兵器が死んだんだ!?」
『決まってるでしょ、あの急に現れた赤い髪のあの人が手に持ってる剣で切り殺したんですよ』
アークエンジェルの艦橋でもナタルがその生真面目且つ常識的な性格というのもあって周囲よりもその状況に信じられないという顔だが、そこで通信映像越しにいつもの調子に戻った様子のリュールから信じられない正解を告げられる。
「何だと!? ありえんことを言うのは止せソードリュ少尉! MSの攻撃でもろくに傷をつけられなかった生物兵器を一個人で倒せるわけが!!」
『この広い銀河は“ありえないこそありえない”が常識です。ましてや…この銀河に存在する剣士の中での最強議論で…間違いなくその一角に挙げられるだろうあの魔法剣士殿ならね…』
「…!? この姿は…まさか!?」
ナタルの怒声にリュールはゆるりとかわすような態度で、アークエンジェルの艦橋に自分がバルバトスのメインカメラで撮ったその人物の拡大映像を見せるが、そこでスメラギがその青年の正体に気付いたようだが急速に顔色が悪くなっていく。
「…!? おいおい…何で
一方、出撃寸前であったバクゥの機内よりその青年の正体に気付いたバルトフェルドも、笑みを作ってはいるが無理しているのがわかるまでに緊張で引きつっているのが見て取れた。
「…とりあえずこれで今晩は大丈夫そうだな」
「はい、これで大丈夫ですねセリカ様」
そんな周囲の思惑など構わず、自分が踏みつけている巨大ワームの死骸を見て一安心という表情を見せ、何処からか現れた美しいメイドに傅かれているその青年に見える男の名はシルフィル・スューヌ=ゼアノク・スティンルーラ伯爵・セリカ。
帝国に籍を置くアーヴの一人で、銀河系に星の数の如く存在する剣士達の頂点の一角に数百年も座し、その経歴から“神殺し”や“戦女神”と畏怖されている男である。
「…な、何あの…すごく見た目に雰囲気もすごく綺麗だけど…自然にこっちの心臓が息苦しくなってくる人は―――?」
「皆ぁ! 下手に騒がないで! あの赤い髪の男を刺激するのはダメよ! 攻撃して怒らせでもしたら全滅よ!」
「―――あ…え、えぇ…!?」
そんなビッグネームを前にしても“?”が浮かび上がってきそうなキラだが、彼女をストライクのコクピットから救出したネーナの大声が委縮させてきた。
「…おい、そこのザクに乗ってるアンゴイの。どこかで会ったことのあるような感じがするがー…?」
「(…って僕に話を振るんすかああああ!? いやいや確かに
(((((ザカーリュゥゥウウウゥゥ!!??)))))
そこで何となくといった感じのセリカに問いかけられ、ザカーリュは完全にテンパってザクから飛び出して敬礼するが明らかに挙動不審となっており、セリカの身元を完全に見抜いて内心関わるまいと黙りこくっていた周囲のザフト兵は外面こそ硬直しつつ内心で絶叫し泣き叫び出した。
「…あっちにあるこの星での寝床まで壊されるのが嫌だったからこのミミズを退治しに来ただけだ。それとお前はたしかレケーフのところのリパとその部下の一人の子だろう。これ、あいつへのお土産に買ったここ土産のパルミュラ産デーツクッキーだから持って行ってくれ」
「…え、あ…はい…そ、それはどうも…ありがとうございます…」
「「「「「………………」」」」」
そのセリカからお土産のお届けを頼まれるというこの場の空気にそぐわない行為に、ザカーリュは拍子抜けが丸出しの感じで引き受け、周囲は敵味方問わず身に感じる風が妙に乾いている感触がして無言になった。
次回、久々にジャンプで“何をしてでも笑わせる!!”路線で伝説になったあのキャラ達が、今回登場した大人向けゲーム界ファンタジー部門主人公キャラ代表の一角に挑む(?)予定です。