○帝国暦949年4月3日夕刻 銀河連合 プラント小銀河 ユニウス市 ユニウス・セブン 第三惑星○
ドゥリュース達が伽藍の堂で知った凶報の舞台となったプラントは、
地球起源人類が大半を占める諸国家群で構成された銀河連合、その内の主に自由主義圏からの投資で開発が始まったプラントは新型の巨大コロニーを中心に構成された十四の市に大別される複数の星系で構成されたブロックで構成され、それらの星系の中心となっているのはSEED原作のそれよりも大型且つ多機能な砂時計型コロニーであるプラントで、それらは開発が始まった順の星系ごとに数字が割り当てられていた。
天の川銀河の銀河連合圏内ではまだなかったり、希少であったりする資源やエネルギーを移住してきたコーディネイターの手で開発していったことで、銀河連合圏ではそれまでイデオロギー上敵視しつつも、技術面や経済面で依存せざるを得なかった
故に、それに反抗や独立されることのないように、いざという時の為の後背地へ速やかにするためもあって自前の防衛戦力には大きく制限を掛けられ、特に農業開発は法的には禁止されてモノカルチャー経済化してしまっており、そこへノルマ最優先の過酷な労働状況やブルーコスモス過激派等による破壊行為が重なって住民の不満は上りこそしても下がる気配はなかった。
「ギャアァアアアアアァアア!?」
「し、死にたくない!」
「う、腕がぁぁ!」
故に、防衛用戦力は殆ど置かれていない状況で人々は宇宙より星の数の如く飛来し、地上も津波の如く埋め尽くすBETAによって次々と飲み込まれ、貪り食われていっていた。
その光景は惑星表面の各所で生まれ、地獄へと塗り替えつつあった。
○銀河連合 プラント小銀河 アプリリウス市 首都星系アプリリウス・ワン○
ユニウス・フロンティアからの凶報は、この世界でもプラントの首都となっているその砂時計型コロニーに位置する彼らに届けられていた。
「ユニウス市のセブン星系第三惑星の北西大陸ノース第十一州にBETAの侵攻を確認! 既に被害は近隣の第八州まであと四十分で到達する模様です!」
『何処からも救助要請や援軍要請でいっぱいです!』
理事国からほぼ非公認という状態で、プラントを構成する各十四ブロックの代表達やその部下達が集って構成されているそのプラント最高評議会の場も、口上や通信で津波の様に押し寄せてくるそれらの報告に、顔から血の気をひかせて脂汗を描いていた。
「何がプラント方面までの侵攻の予兆はないだ! 大星洋連邦め! いい加減な仕事をしおって!」
その中で一番声を荒げていたのは、ドゥリュースと友人になったアスランの父にこの世界でもあり、プラントの防衛委員長を務めていて且つプラントの地位向上要求運動の強硬派でもあるパトリック・ザラであった。
「…まさか
ザラ国防委員長ほどではないが、この世界ではその名を口にした人物から最近の急な事情で最高評議会議長の地位を引き継いだシーゲル・クラインも声を張り上げていた。
「…議長と防衛委員長、普段は我々の保護を名目として監視と威圧を行っている銀連の艦隊はソビエト方面への援軍にほとんどが出払っていておりません。このまま侵攻が今のスピードのまま進めば
「「「「「!!!???」」」」」
その二人の周囲を固める部下の一人が今現在の予想に置いて最悪の事態を口にし、周囲を強張らせて彼らの注意を集めた。
色素が薄い青系統の髪に面貌は整っているが目つきが非常に鋭く、怜悧さを感じさせるが酷薄さもまた覚えさせる雰囲気をした武官の男だ。
「…ユニウス・セブンで農業用惑星と共に極秘裏に組織した
「!?
その男ギレンが出した意見にクライン議長は顔を歪めるが、ザラ国防委員長は腹を括った表情に切り替わった。
「たしかユニウス・セブンの方には
「無論、その為の状態は既に指示しております。ですからここの我々がすべきなのは直ぐに必要な増援と支援を捻出して現地へ派遣して他の市への侵攻を阻止する事です」
武官たちが勢いを強めて実力行使を進めようとしたところで、クライン議長はそれに懸念を表す。
「パトリック!? あれはまだ理事国に隠している状態のものだぞ! 今の状況で出せば彼らの艦隊が戻ってきた後で衝突の可能性が…!!」
「今のBETA の侵攻を阻止せねばその懸念以前にプラント自体が新ソビエトやハニアの様に飲み込まれます!」
「むしろ、逆にこれを我々コーディネイターの実力が銀連と違ってBETAに対して有効的であることを証明する場とすべきです! 勝利は不可能ではありません! そうすれば理事国も今まで通りの圧政は行えなくなります!!」
「……ぐ…」
だが、武官たちの現状を踏まえたその意見にクライン議長は否定できず、眉間にしわを寄せる事しか出来なかった。
○帝国暦949年4月4日朝 銀河連合 銀河連合 プラント小銀河 ユニウス市 ユニウス・セブン 第三惑星○
「…ああ、この町までとうとう…」
「駄目だ…この星も…BETAに飲み込まれるんだ…」
「お願いします! どうかこの子だけでも先にシャトルへ…!」
プラントの中枢である決断がなされた日の翌朝、侵攻を受けている惑星と宇宙を繋げる軌道エレベーターは絶望と悲嘆に支配された人々で溢れかえっていた。
その彼らが集まる軌道エレベーターのある大陸の沿岸部にまでBETAは迫ってきており、もはや半日もすれば本隊が到達するだろう状態だった。
そして、その先遣隊の方はもう既に軌道エレベーターの地上部分から見える外れにまで近づきつつあった
「…う、うわぁぁ! もう来たぁ!」
「も、もうお終いだぁぁぁぁ…!?」
その絶望の津波に避難民が生を諦めそうになったその時、彼らの頭上を超音速で数本のミサイルが通り過ぎ、それはBETAの頭上で炸裂した。
「「「「「!!!!!!!!!?????????」」」」」
そして、その爆炎は灰色を帯びた稲妻状のエネルギーと化してBETAを背後の本隊諸とも広範囲に覆っていき、彼らの多くは体表に無数の血管のようなものを浮きだたせて破裂させ、血の様に赤い体液をまき散らしながら絶命した。
「…べ、BETAが…死んだ…?」
「た、助かった…のか!?」
「ま、まだだ! 本隊含めてたくさん死んだけど…元が大きいから結構な数が生き残って近づいて来ている…!?」
それに多くの人が安堵しつつも一部の識者がまだ危険が去っていない事に気付くが、その両者の上を今度は別の
「!?」
生き残っていたBETAの一体である要撃級が反応を見せた。
BETAの要撃級は別の時間軸のそれと同じく、十数メートル以上の四つ足の巨体に皺だらけの目がない人の顔に似た尾のような感覚器官を備えており、前面に付いている極めて堅牢な二本の前腕を構えて、猛烈な速度で近づきつつあるそれへ叩きつけようとした。
『ふん!』
「!?」
だが、接近してきた人型の何かがその要撃級の前に降り立つと同時に
続けて同様の人型の別の何かが降り立って、その背に持つロングライフルのようなものを構えて先端から閃光のようなものを噴出し、背後から迫ってきていた前面を分厚い装甲で覆われていた突撃級を容易く撃ち抜いて後続にも肉が焼かれる悪臭を上げさせた。
『へ! ざまあみたかBETA共!』
『ナチュラル達とは違ってここじゃあ好きにはさせないぜ!』
その様子を人型の内部にあるコクピットから見たパイロット達は不敵な笑みを浮かべていた。
『そんな直ぐ調子に乗ってへまを打つんじゃねえぞ野郎ども! さっきのだって光線級がまだなかったから初手がうまくいっただけだ! こいつは今まで理事国のお偉方にも隠して用意してきたものだからそんな数はまだねぇから大破なんてさせるなよ!!』
『『『『『はい!!』』』』』
そうした周りの調子づいた意見を、人型の何かに混じる角突きの指揮官機型と思わしいもののコクピットから怒鳴りつけて気を引き締め直させたのは、今回のプラント小銀河における初の対BETA戦で緊急の指揮官に任命された、強面の巨漢ドズル・ザビであった。
そして、これこそがこの世界では公式上初の
○帝国暦949年4月11日夕刻
『…先週におけるプラント小銀河のユニウス・セブンに対する
この世界におけるプラントを襲ったBETAによる侵攻の結果に一部触れつつ、今現在の国際情勢について放映しているそのニュースを、ドゥリュースは小難しそうな顔で見守っていた。
「…とりあえずー、世界初の
「…この状況でも慰めとか励ましの反対を丁寧に言えるとは流石…」
そのニュース画面を同じく見守っていたレイカが苦笑いを浮かべつつも持ってきた
「…今回の件でプラントとその理事国はどっちも大騒ぎだなー。理事国の方は今まで首輪を繋げて飼い殺しにしようとしていた連中がこっそり食い扶持と腕っぷしの方でも自立の準備を進めようとしていたことに気づいて激怒して、援軍及び復興支援という名目で艦隊を派遣したが、現場の混乱がまだ付いていないという名目でその艦隊の入国を拒んでにらみ合いという状況らしい…」
二人がいるのは伽藍の堂の仕事部屋で、それなりに広いが家主が集めてきた物品でごった返しており、それらの一角に腰掛けた状態で家主である橙子が気怠そうな顔で同じニュースを見守っていた。
『…今現在判明している情報によれば、現地惑星でBETAを撃破してその着陸物体を制圧したプラント側義勇自衛部隊の指揮官の名はドズル・ザビという名で…』
(…まさかこの世界でも宇宙世紀キャラの名を聞くなんてなぁ…しかも、知り合いの仲だし…)
その中でドゥリュースはその耳にした人名で複雑な懐かしさを覚え、彼の意識は幼き頃の懐かしき日々の記憶に引き寄せられ始めた。
『敢えて言おう! 我々コーディネイターにとって銀河連合などもはやカスであると!!』
「…………」
そうした矢先に、別のアナザー機動戦士系ネタも交えたこの世界におけるチョビヒゲ某総統のしっぽ的な人物の姿がその言葉と共に脳裏をよぎり、表情も気分も微妙になったりしたが、それもあってドゥリュースの意識は幼き時の良き思い出も探そうと意識はより深く過去の記憶へ沈んでいった。
次回、主人公の過去回想に入る予定ですが、何処かの下町風味漫画で見たようなネタも混じる予定です。