星界の輪廻   作:oosima

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今回、ガンダム種でも社会の裏側を描いたパートがこの世界の要素を足した(というか書き変えられた)状態で中心になりつつ、次の大きなイベントへの道のりも加速し始めます。


091 利害と利害と敵意の交わり

 〇C.E(コズミック・イラ)71年2月20日昼(帝国暦952年2月20日昼)現地時間夕刻 銀河連合 旧人民主権星系連合体大星域 銀河中心領域付近 シュリア星域 パルミュラ王国 第一パルミュラ星系 第二惑星アンティオキア 首都セレウキア バナディーヤ地区 某地下倉庫街○

 

「…くしゅん」

「え? 何か風邪?」

「…かなあ? ここって砂漠の例にもれず、昼と夜の気温差が激しいし…」

 

 レイカ及び古くの知人が華やかな舞台に表向きは見える地に乗り込んでいた頃、リュール達は帝国の租界に近い区域にある、広大な地下都市区画へ入っていた。

 

「…材質や構造からして、第二次大戦期においてこの地を占領したドクツ・ゲルマニクスが築いた地下要塞か?」

「ご明察だ姉ちゃん、今じゃーその跡取りも含めた訳あり連中相手の裏取引に使う」

 

 その古びているが元々の構造の強固さと収納力の高そうな地下空間を眺めるナタルの周囲で動くのは、この地下都市を縄張りとしてアンティオキアにおける表向きは最大の不動産会社をしている、人類社会に暮らす妖怪狸達の一グループであった。

 

「…先日にザフトに場所が知られて襲われたのはこっちも知っている。だが、そこにいるアーヴの坊主の力があったとはいえ、生き残ったのはさすがだな」

「お前さんも相変わらず器用なふてぶてしさじゃな」

 

 そして、その地下都市でとりわけ警備が厳重な区画で、中年太りしているがスーツを着て貫録を感じさせ、この地下都市区域の元締めをしている妖怪狸である青左衛門と、レジスタンス狸の幹部の一人である赤い着物を着たおろく婆が対峙した。

 

「…ふん、天港(あまみなと)*1に使える地脈と水脈を備えた土地が縄張りであるおかげで相変わらずの羽振りだな青左衛門」

「少しは狸寝入りな器用さを身につけろ権太。どうわめこうと世の中の大半が人間やそれにかぶれた他の種族で動いてる以上、森も海もこれ以上減らされるのを防いだり、取り戻したりすんのにも必要なのはまず金よ。心配すんな。前渡しの最初の品はもう準備してある。下を見ろ」

 

 妖怪狸の代表達は地下都市にあるひときわ高い巨大クレーンだった上層階に居り、そこの窓から見下ろせる眼下では巨大なコンテナが無数に並べて積まれており、今も車両で運ばれているが、その中にノイマンらアークエンジェルの大人組の姿に混じってリュール達の姿もあった。

 

「…で、バルバトスの思考結晶用の代替電子パーツ…うげ、これものほんの帝国の最新ものですよ」

「呆れたものだな…こちらの前線では摩耗して交換すべきものまで使いまわしてどうにかBETAの侵攻を遅らせているというのに…」

「馬鹿言うんじゃねえよ、あんたがまだ見てないだけで銀連にもギリギリ必要な分は回されているぜ」

 

 その中でノイマンとナタルは引きつった表情や物憂げな顔を見せるが、周囲で働く妖怪狸達はそれを小馬鹿にする。

 

「何だと?」

「かー、銀河中がBETAやら異夷(ゼビーシュ)とかと呼んでる化け物軍団によー。一番寿命も頭も弱い人間ですらあれこれ工夫して十何年以上も持ってるってのに、性格がいかれてるっつっても断然腕も頭もいいアーヴ共が、貴重な肉の壁を完全に切り捨てる真似なんてすると思うかー? うんにゃ、何処の星のどの種族だろうと口がきける連中なんてのは程度の差だけで一皮むけば欲の塊なんだよ」

「この国みたいなところで俺達みたいな連中を隠れ蓑にして、まだ潰れられたら困るところにはギリギリ守れて延命できる分くらいには横流しを黙認してんだよ」

「表向きは災害とかで喪失したってのを拾ってな」

「特にこの星は昔に結んだ条約のおかげで他所から無茶な理屈で急に攻められたりした場合を除けば、星界軍も警備隊以上の戦力は置けねえ」

「アーヴは少なくとも自分らから約束や契約を破ることはしねえからな。だから、身内が前の銀連軍の侵攻みたいなあほなことはしない限りは安心してここまで来て色々な商談をしてるわけよ。まあ前回のは姉ちゃんの身内のチクりで先にザフトがここの銀連嫌いなお偉いさんの要請という形で来たから、アーヴが派手に吹っ飛ばしに来るなんていかれた事態は避けられたが。ザフトも銀連軍が這う這うの体で逃げた後は協定に従って今はここの今の政権に貸し出された土地を守る地上部隊とそれを支える定期的な補給艦隊以外は基本いねーよ」

「…何処も裏でこそこそ動いているのは同じか…ん? 私の身内?」

「…あんたさぁ、名前からしてオルムス系のくせして知らねえのかぁ? ここに来る客の大半はぁ国籍こそ別々だがそのほとんどがオルム―――」

 

 その中でナタルがますます周囲の妖怪狸達に小馬鹿にされ始めたその時、幾つかのコンテナを挟んだ区画から怒号が割り込んできた。

 

「え? 何この急に自分の商売の儲け時を邪魔された商売人の怒りの声と、さっきまで人助けしたつもりなのにそれを全否定されて戸惑っている子の声は?」

「―――ス…っておい、あいつらはここにようやく慣れたばかりの水商売の女たちじゃねーか? あ、あの顔からしてお前らのところの黒い髪のねーちゃんがよく知りもせずにちょっかいを掛けたっぽいなー」

 

 別のコンテナの上で作業をしていたリュールがそれを見やると、白人系の格好からして水商売関係とわかる女性達が、アークエンジェル所属であるキルケを取り囲んでいた。

 

「…あ、あなた達どうしてそんな顔を…? 私はただあなた達をゲスの手から…」

「…守ろうとした…ってでも言うわけぇ?」

「いつもよねー♪ 始める時は人道とか人権やら民主主義やら耳障りのいい言葉を掛けながらずかずかとこっちの敷居の中に踏み込んでー♪」

「そんで都合が悪くなったら相手がまだ十分なレベルじゃないとかこの戦争に市民の血を出すべきじゃないって内向きに言い訳しながらやりっぱなしで逃げやが…!?」

 

 女性達がキルケを取り囲む輪を小さくしながら嘲りと、それで隠しきれない怒りや恨みによる苛立ちを見せながら凶器を懐から見せようとしたその時、リュールがドガンとした轟音同然の着地音を添えてその場に降りたった。

 

「…あーすみません。うちの世間知らずで屁理屈毒舌ばっか上手い可哀そうな子がなんか気に触るようなことをしましたかー…?」

「っ!? あ、あんた誰よ…ってアーヴ!?」

「どうしてこんなところに…ひぃ!?」

「何そのすごく怖そうなものを見る顔をしてー…?」

「…リュール、今の自分の状態を見てください…」

「…え…あ…」

 

 そこで穏やかにリュールは話しかけるが先ほどまで嫌そうな顔を浮かべていた女性達が一斉に驚き怯える表情を見せたことに戸惑うも、すぐに追いついてきた日光の微妙そうな注意でその理由に気付いた。

 

「…あああああああああああああ!? あああああぁんたあああああああああ!?」

 

 リュールがもめ事の場でも片手で軽く持ち上げた状態で携えていた武器弾薬満載のコンテナの影の中で、彼の着地の際に振り下ろされる形となったコンテナで大きなたん瘤を作られて涙目になってもだえ苦しんでいるキルケの姿を目にしたためだ。

 

「…×××…そういうわけで、今回のこの取引はこの情報で…」

「ああ、おふくろさんに似てまた商談が上手くなったな嬢ちゃん。だが、悪いがエンジンの修理に必要なパーツは他のものは期日中に出来るが、宇宙まで飛んで戻ったり平面宇宙へ入るために必要な“金剛銀(ミスリル)”は最初に言った通り…」

「…こんなにも日数が…いや、今の情勢からしてまだ早い方だけど…それでもまた砂漠の虎が来る可能性を考えれば…」

 

 一方、必要な物資の取引の方は、その場に集うアークエンジェルクルーのメンバーには理解できない言語でカガリが上手く進めていたが、ただ一つの名を出された一点がアークエンジェル側に大きな懸念となっていた。

 

「…悪いが金剛銀(ミスリル)は主要な産出地は帝国が抑えていて、他の銀連が抑えていたのはその多くがザフトのご活躍で独立運動が勢いを得た途上星系諸国にあるもんだからそれ相応に時間がかかる。どうしてもすぐに欲しいってんなら今この時期に開催されているあのレースで優勝してその賞金として手に入れるしかねーなー」

 

 それに青左衛門が他人事全開な感じで代案として出したのは、近日にて開催されるスピードリング大会と、アークエンジェルが必要とする量を優に賄える大会の優勝賞金である金剛銀(ミスリル)のインゴットの山であった。

 

「…スピードリングレース大会に勝てばって…無茶を言わないでよもー。大会参加資格以前にそもそもスピードリングだって持ってないのにさー…」

 

 数分後、夕日もだいぶ沈んで夜空が姿を見せてきた倉庫街の上にある繁華街のあるレストランのオープンカフェ席で、リュールがテーブルに突っ伏していた。

 

「そんな愚痴愚痴言うな。日数がわかっただけでも今後の防衛のめどは立つさ。さ、今日の締めにドネルケバブを頂こう」

「この料理って…?」

「古代地球起源の料理さ。大星災で地球からこの星へ流れてきた難民で伝えられたんだ。このチリソースをかけて食べるとー…あ、他にもー…」

 

 そのテーブルの上にはタッチパネル式でメニュー表が現れて各種の料理が表示され、カガリが周囲に説明しながらメニューを決めようとするが、何度かメニュー表が上下左右を行き来している間に別の人影が映し出された。

 

「…あいやストップ! そこの子達はせっかく初めてのケバブだろう! だったらチリソースだなんて邪道ではなくこちらのヨーグルトソースを使うべきだ!」

 

 そこでサングラスをかけた軽薄そうな男性が白いソース入りのボトルを片手に割り込んできた。

 

「…ああ!? あんた何を言ってるんだ! ケバブはこのチリソースが良いに決まっているだろ…!?」

 

 邪魔されたカガリは怪訝な顔を浮かべるが、男の顔を見て何かに気付いたような表情で身の動きが少し硬くなる。

 

「…リュ、リュール…ど、どうにかー…」

「リュールならメニュー表が動いている間にトイレ行くと言って離れましてー」

「ええ? そんなぁ…」

 

 間に挟まれる形になったキラはその普段の押しの弱さから助けを求めるも、日光からの通知にまた涙目になった。

 

「…あー、すっきりしたー。あ、チェリーパイもある。あれも良い香りするから食べよう」

 

 一方その頃、リュールはトイレから出たところで小さなキッチンカーを見て、それから好みの気配を感じたのでそこの分もさっそく購入しようとする。

 

「ねえお姉さん、ここのいい香りのするチェリーパイを一つー」

「おい姉ちゃん、ここの旨いのが色で分かるチェリーパイを二つー」

 

 だが、そこで3メートルを超す樽のような巨体で無精ひげを生やしていて欠けた歯が目立つ大男も同時に並んで同じメニューを注文した。

 

「え…?」

「ん…?」

 

 そこでリュールと大男は互いの存在に気付いて視線が合い、しばしの間その場を沈黙が支配する。

 

(…え? な、何々? リュ―にーどうしてあそこで固まって…? それに…あの隣り合っているあの()()()()()? 何か感じからしてやばい意味でただものじゃない気が―――?)

「お兄さん! 味の趣味が良いねー!」

「兄ちゃん! 味がわかってんな~!」

「―――あ…あれー??」

 

 それに別の買い出しから戻ってきたネーナは只ならぬ気配を特に大男から覚えて思わず身構えるが、何故か二人の男は妙な同調を見せて拍子抜けさせた。

 

「…ち! 異教徒の裏切り者どもめ…亜人やアーヴ共に尻尾を振りやがって!」

 

 一方その頃、繁華街のリュール達がいる広場を取り囲むビルの屋上より、キラとカガリの間にいるサングラスをかけた男を忌々しそうな顔で見下ろす不審者たちの姿があった。

 

「…本日の奴さん達、そろそろ動きそうですねー」

「報告ですー。他の班もいつから始まってもすぐ撮影とかでごまかせる準備は出来てるとー…」

「はい、わかりましたー」

 

 その不審者たちをより高いビルのカーテンに塞がれた窓の隙間より、アーヴが混じる人々が監視しておいたが、不審者達が憎悪や侮蔑などで強張っているのに比べて彼らは油断こそないが緊張とストレスを感じさせておらず、その中に特殊部隊の衣服に着替えているヨルの姿もあったが、彼女の瞳や髪の色を中心に光っていって別人のそれに代わっていった。

 

「すみません! ちょっと気になる報せがー!」

 

 その彼らの空気に強張りが加わったのは急に見た目相応に若いアーヴの少年のその言葉であった。

 

「…何だ? 慌てる馬鹿(オーニュ)は貰いが少ない。落ち着きなさい」

「それが王宮にいるカサンド氏からの報告で! ()()()()()が姿を消したとー」

「「「「「なぬ!!??」」」」」

 

 そこで室内の者たちの間に、ギャグ漫画にでも出てきそうな悲鳴も添えて緊張が生じた。

*1
この星の妖怪狸達の宇宙港や軌道エレベーターに対する呼び名




次回、またやんごとなき系の新キャラの登場も絡めてトラブルが起きます。
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