星界の輪廻   作:oosima

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今回、華やかさとその裏で知恵を持つ者たちの闇も姿を見せ始めます。


093 社交場で再び紡がれ始める縁

 ○C.E(コズミック・イラ)71年2月20日昼(帝国暦952年2月20日昼)現地時間夕刻 銀河連合 旧人民主権星系連合体大星域 銀河中心領域付近 シュリア星域 パルミュラ王国 第一パルミュラ星系 第二惑星アンティオキア 首都セレウキア バナディーヤ地区 繁華街 某路地裏○

 

「…キラ達が戻ってこない!?」

「は、はい! さっき大道芸騒ぎで何かザフトの関係者らしい人にキラ達は連れて行かれて…それで、リュールはその直前に紛れて起きた別の人攫いを追っていって…」

 

 帝国の秘密工作によって現地系ブルーコスモスシンパによるテロは大道芸として表向きは処理され、シンパは人知れず闇に連れ去られて数分後、その現場に近い路地裏の一角で、スメラギ達はその場にいたが人混みに邪魔されて見るしかできなかったフレイから話を聞いて驚いた。

 

「し! 声が大きいっすよ司令!」

「…そうね両津中尉、それでアルスター一等兵、あの子達が連れて行かれた場所は…?」

「確証はありませんけど…聞こえた話からして…おそらく…」

 

 その中でフレイが最も重苦しい表情で指さしたのは、広間に見えるカフェの窓に映し出されたニュース映像。

 

『本日、ここセレウキア王宮ではパルミュラ王国とアーヴ帝国の国交樹立○○○周年記式典が開かれています。会場には両国含めて各国の要人が集っており、他にも○日後に開催される本年度エンパイア・ワールド・コンビ・スピードリングレース関係者の姿も見えており…』

「「「「「………………」」」」」

 

 ニュースから流される情報にアークエンジェル側メンバーは、静まり返るが内心で憂鬱の度合いを深めていった。

 

 

 

 

 

 ○銀河連合 旧人民主権星系連合体大星域 銀河中心領域付近 シュリア星域 パルミュラ王国 第一パルミュラ星系 第二惑星アンティオキア 首都セレウキア 官庁街 迎賓館○

 

『…ノルド連合王国フレメヴィーラ星系より銀凰商会代表、日本皇国よりー…』

 

 アークエンジェルクルー達が理解不能な絶望に陥り始めていた頃、その場であるこの星で最大の迎賓館は表向き各国民間の政財界要人やスピードリング国際大会関係者が続々と集う社交の場となっていた。

 

「…このご時世にいつ周りを巻き込む火がついてもおかしくない星でパーティーを装った談合の場を設けるなんて…何処の国や星にも道楽を切り離せない人がいるものね…」

 

 そうして集いゆく社交の場に混じる、ボリュームと気品のある金髪と青紫色の瞳で深層の令嬢という言葉が似合う美少女が、周囲に冷めつつも自嘲も含めた感じで混じっていた。

 彼女の名はクーデリア・藍那・バーンスタイン。

 プラントのユニウス・セブンにある第二惑星クリュセに拠点を置く新興財閥の令嬢で、此度の式典に呼ばれた各国政財界要人子弟の一人である。

 

「…あのー…何で私達…こんな所に…?」

「…私に聞かれても…」

「二人とも落ち着け、そのままの調子でいると怪しまれるぞ」

 

 一方、迎賓館内部の着替え室の一つに中には、着替えが終わったキラ達の姿があった。

 カガリは別時間軸で着させられた薄黄緑色基調のドレスを着させられつつも慣れからきていると思われる落ち着いた素振りを見せ、反対にキラはその瞳の色と同じく紫色基調の背中が大きく見えて前も深い胸の谷間が見えるナイトドレスで恥ずかしがり、日光は白を基調として桜を思わせる意匠が縫われた着物で大人びた和風美少女で冷静ながらも困惑していた。

 

「あらあら、似合っているからもっと自信もって胸を張った方が嫌み無くていいわよ」

 

 その三人を今の格好にしたのは、彼女達をお詫びと称してこの迎賓館に連れ込んだアンドリュー・バルトフェルドの恋人、黒いロングヘアにオレンジ色のメッシュが似合う美女アイシャである。

 

「さあさあ行きましょ、あなた達の彼氏も待ってるし」

「…え!?」

「もしかしてリュールが…?」

「…とりあえずここで待っていてもどうにもならない。付き合うしかなさそうだな。二人とも、なるべく離れないようにしよう…!?」

 

 そこで彼女達のいる部屋の大型ドアの一つがそのアイシャの背後で開かれるが、そこから現れた人物はキラ達から言葉を奪うには十分過ぎた。

 

「……………」

 

 新たに部屋に入ってきたその少年は、外国の少女が絵本で見るアーヴのそれが現実になったような存在で、青黒いショートヘアをオールバックに固めて礼儀正しくも毅然という言葉が似合い、精悍な容姿と身を華麗さはないが秀麗な衣装が施された青紫基調の燕尾服型短衣(カフェル)で固め、初めてアーヴを見る女子ならば目の異常を少しばかり感じさせる調和された姿をしていた。

 

「…え? だ、誰だ―――?」

 

 カガリはその少年にどこか見覚えを感じつつも新鮮な感動を覚えて戸惑う。

 

「リュ、リュール!?」

「リュールですね」

「―――あっ…て、そうか。お前アーヴだったな」

「いや、何その反応?」

 

 だが、驚いて顔を赤らめたキラと冷静だが目をパチクリとさせている日光の反応でカガリが手をポンとすると、その静かな少年の美貌はいつもの微妙そうな気分になったリュールに戻った。

 

「…何故そのような格好でここに?」

「それがー日光…あのテロ…を装った大道芸の場でどさくさに紛れて誘拐事件が起きたから…それを解決したら…この方にお礼がしたいと…」

 

 そのリュールに続けてもう一人が部屋に入ってくるが、その人物で再びキラ達は声を失う。

 

「………………」

 

 リュールが道を譲ったその人物は、白を基調とするエキゾチック且つ古代オリエント風の意匠が施されたこの星の民族衣装ドレスで、褐色の長躯も美点に変える曲線美ある肢体を固め、空色の瞳を中心に怜悧な美貌を固めつつも長い銀髪を生やし、古代オリエントの女神が受肉したような美貌をした大人びた美少女であった。

 

「…ゼ、ゼノビア女王!?」

「え、ええー!?」

「……………!?」

 

 その人物の正体に気付いたカガリの齢相応な素っ頓狂とした声とその内容にキラは驚き、日光は声こそ出さなかったが大きく顔をひきつらせた。

 そう、リュールが助けたこの美少女こそがここパルミュラ王国の元首であるゼノビア・ベニサマヤドである。

 

(…何であの遭難事件の時に知り合って写真でも撮られたらパパラッチを大喜びさせそうな関係になった子の一人であるこの子とこんな時にこんな形で再会してしまったんだろう!?)

 

 一方、表情こそ普段の微妙そうな気分の顔のままだが、ある意味でリュール自身がこの場で最も胃が痛くなっていた。

 

「…わ、私達…何でこんなところに…!?」

「とにかく今はその泣きそうな顔は止めていつもの真顔を浮かべろ。怪しまれて捕まったら終わりだぞ!」

 

 数分後、めちゃくちゃ困惑と緊張の中にあるキラも交えた一行は、各国政財界の要人が大勢集う広大且つ華麗なパーティー会場の片隅にいた。

 

「…この星と帝国を始めとした中立各国の要人だけでなく、プラントやこの前攻め込んでいた銀連軍構成各国の関係者の姿も見えますね…」

「まあ、()()()()の加護があるからね」

 

 その中で皇族(アブリアル)時代に付いた免疫(面の皮の厚さ)でリュールは冷静な客人という体を装うことが出来たが、その彼を付き添いという形で招待したゼノビアは何処か訳知りそうな顔でその拡大解釈的に自然な単語を吐きつつ、この町の隣にある宇宙港に停泊している帝国軍の軍艦を指さした。

 

「…地上まであのような帝国の大型艦が自由に出入りするようになるとは…世も末だな…」

「ですが、例の“疑似星核技術”導入以降の我々人類*1が奴らに付けられている技術格差はますます広がってー…」

「だからこそ、今回のこの中立国主催のパーティーだろ。帝国と古くから交流のあるおかげで、あそこと我々の仲介貿易で生きてきたこの国は、寿命や身体の差のおかげで早く結果を出さんといかん我らと違ってあの帝国に信用されているからな…」

 

 その帝国の軍事力を脅威や恐怖とみなしている銀連圏関係者達は身内枠で固まって密談をしつつ、今回の場面でも実質的な主役と周囲から見なされている帝国側要人達を見やる。

 

「…パーティー会場で、礼装状態とはいえ軍衣(セリーヌ)を着たのは正解だったな。ああいう下手な言質を取られたくない者達に近寄られる可能性は減る…」

 

 帝国側要人には今回の寄稿してきている艦隊に属する訓練生(ケーニュ)の代表生徒たちもおり、それに混じるドゥヒールは銀連系出席者たちの先のような密談を普通に聞き取れて冷めた眼差しを隠さずにいた。

 

「もう少し愛想よくした方が良いわよ。ほら、あそこの今回のレースの銀連系代表選手の関係者という形で来ている、銀連(向こう)の若い子達がどう声を掛けたらいいのかわからないって顔をしているし。ほら、少年士官候補生含めて…」

 

 そのドゥヒールを注意しつつも、今回のレース大会の出場選手の一人であるリリアが指さしているのは、彼女達と同年代の他国の士官候補生達である。

 だが、帝国側と他国側の多くにはその雰囲気に大きな違いがあった。

 それは、帝国側には実戦経験やそれを目にしたもの特有の雰囲気があったが、他国の少年少女の多くにはそれがないので雰囲気からして帝国側に近寄りがたくなっていたのである。

 

「…だが、齢が近い者たちまで近づいてこないのは何か思惑がー…?」

(いやー、幼少のころからハイスペにものも言わせて戦争的意味込みで実戦経験を積んでる子が多いアーヴと違って、他国のこういうところに出るそれって基本は良い所のお坊ちゃんお嬢ちゃんばかりで、せいぜいが衛兵のついている指揮所から指揮を出してるくらいだから…。というかその好戦的少数派をアーヴは何百年もしてるから戦闘種族扱いされて今の状況もそのせいなんだけど…。まあ、一般的には煽るだけ煽って辞任以外は責任取らずに先祖代々の財産で悠々に隠居生活する連中よりかは、実戦経験も積んで自分もリスク負うのを覚悟している帝国の未来のエリートの方が、僕含めて好意抱けるけど…)

 

 そんな状況を奇妙がるドゥビュースの子声を、変装中のリュールは他国で暮らしていた経験も交えて微妙な苦笑いを浮かべていた。

 

「…何故だ!? 何故()()()を追ってここまで来た俺がこんな見世物みたいな大会に出なくてはいけなくなったの…もがぁ!?」

「まーそんな荒れてばっかいんなよ。かわいい子も多いしさ。ていうかややこしくなるから身元がばれるようなことは言うなよ」

(…あれ? 何で去年の地球でのあのカナジョー事件の時に知り合ったあのおかっぱ銀髪の子がいるわけ…?)

 

 更に今現在も自分の所属先が交戦中の(プラント)の知人の姿まで見て、ますます微妙な気分になった。

 

「…ところでまさか帝国(こっち)のレース代表選手の一人にあんたが出るなんてねー…リングレーサーだけでなく…各種機械競争競技で壊し屋(クラッシャー)のあだ名をつけられ、観客には人気強固だけど整備士から泣かせ要員番付首位の一人のあんたで大丈夫?」

「チッチッチ、わかってねーなーリリアはー、その壊し屋(クラッシャー)が乗ってもあまり壊れずに完走して優勝した姿を()()()()()()()()()()で見せりゃあ良い供養にー…………」

「「「「「……………………」」」」」

「………あ…」

 

 一方、帝国側に視点を戻すとそこの少年少女たちは今回のレースで使う機体を立体映像で出して意気揚々としだすが、その関係者の名を口にすると極めて微妙な沈黙に陥り、それを偶々聞いていたリュール本人も非常に気まずい表情になる。

 

「「「「「…ああ…うん、遺作…」」」」」

(…いや、名とは変わっていますけど生きています…すみません)

 

 それから数秒の沈黙を置いてそう暗い様子で紡がれた同胞(カルサール)たちのその言葉に、リュールは心の中で謝罪した。

 

「…………………」

 

 その見るべきものが見ればリュールの小さく感じられる背中に、この場では別の名義でプラント関係者として出ていたアンドリュー・バルトフェルドは興味深い眼差しを向けていた。

*1
この場合は地球起源の人間族。特に銀河連合圏内の自然人間(ナチュラル)を意味する




次回、今回のパーティーで集う各国要人達の思惑や様子、それに影響を与える作中世界の歴史が中心になります。
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