星界の輪廻   作:oosima

94 / 97
今回、この作品における世界での情勢に関するやり取りが歴史も絡めて中心になります。


094 現状と引きずり合う歴史

 ○C.E(コズミック・イラ)71年2月20日昼(帝国暦952年2月20日昼)現地時間夕刻 銀河連合 旧人民主権星系連合体大星域 銀河中心領域付近 シュリア星域 パルミュラ王国 第一パルミュラ星系 第二惑星アンティオキア 首都セレウキア 官庁街 迎賓館○

 

「…それで帝国の経済制裁緩和はー…?」

「また駄目になったな。オーブが独断でヘリオポリスを介して銀連軍に軍事技術を流したことで帝オ防衛技術協定違反と保守派がー…」

 

 銀河各国からの要人が集うその会場内部では幾つかの人だかりで密談が生じていたが、それらの話には帝国(アーヴ)が必ずと言って絡んだりしていた。

 

「…そのためにはまずは若い連中を介して絡めていくのが大事なんだがー…」

「いかんせん、格好だけでなく中身がもうなぁ…」

 

 その中で銀連軍参加国系の要人達が意識を向けているのは、帝国側の参加している要人の若い子弟達だが、見た目通りの少年少女が大半を占めている彼らは礼装ながら軍衣(セリーヌ)を纏っており、仲間内での談笑をしている姿は齢相応だがその身に纏う雰囲気の異質さで、こういう場に出ることが多いためそういうものの目利きが肥えている銀連軍参加国要人子弟の少年少女たちに避けられていた。

 

「…そちらの娘は今回の場でヴァダム宗家ご長男と上手く談笑出来ていたとのことですが…?」

「ああ、向こうも正体は()()にしては礼節と理性のある小僧のようだが…いかんせん身に纏う雰囲気で気分が悪くされたようでー…」

「例の魔力を扱えるかどうかの違いで生じる雰囲気の変化というやつか?」

「あと○日でやるスピードリング大会で()()の一人として出るスポール宗家令嬢の方はどうだ?」

「儂の孫含めて男子が何人も声をかけてやったが、言葉遣いは丁寧だが慇懃無礼に無下にしおって…」

「だが、どちらも帝国(銀河の半分)では皇族(アブリアル)に次ぐ名門だ。軍だけでなく政財界でも影響力はー…」

「それもあの化け物中の化け物な力を戦場で武功に変えてきた結果だろう。高貴なるものの義務(ノブレス・オブリージュ)なんぞ形だけにしてくれればこちらとしても付き合いやすいのにねぇ…」

「その辺は直接こちらとやり合ったりでもせんかぎりはBETA(別の化け物)への盾として大きく役立つんだけどさぁ…」

「それを使いやすくしようと関係を結んであげても、戦場で突然逝くのが上下問わずあるのがアーヴだからさぁ…歴代皇帝の内の五人が戦死というのは歴史の偉人としてはご立派だがぁ…」

 

 それを後者の親も含めた銀連軍参加国要人の保護者サイドは嘆息混じりに話していたが、その内容をゼノビアのお付きとしてこの場に参加していたリュールは聞き取って冷めた眼差しを向けていた。

 

(戦争になるのも無理ないないぁ。それを決めるお偉いさんたちの意識が帝国(こっち)銀連(向こう)じゃこんなにも違うんじゃあ…だけど、どっちも相手から見ればその在り方が異常としか言えないわけでー…)

 

 一方で、アブリアルの生まれを秘して今は銀連(帝国の外)のものとして暮らしているリュールは、その本来なら関係改善の糸口の芽となるはずの同世代の同胞(カルサール)にも危うさを確かに覚えた眼差しを向けていた。

 その中には、自分が帝国にいた頃の友人ゼツィ―リュと、嘗ての想人(ヨーフ)であるレイカの姿があった。

 

「…そちらはどう?」

「駄目だな。こちらからも何人か話しかけて会話自体は初め親しくなるんだが…ほとんどで必ず向こう側から気分が悪くなったなどで話を終えられる…。そういう終わりにならずに済んでいるのは…系統は違うが魔術を習っている何人かだな…」

「…リュース君がいたら、何かああした魂が繊細過ぎる人たちとの仲人をしてくれたり、彼らへの雰囲気の手加減とかを教えてもらえただろうけど…」

「いや、生きていたとしても難しいと思うよー。何せ彼が将来継ぐ地盤だったはずのスュルグゼーデ王国(フェーク・スュルグゼーデル)はその経済規模の大きさと位置関係から、亡国難民が多く流れてきていたけどー、元々保守派が多いあそこは難民問題で領民(ソス)やそれと関係の深い人たちの増えている不満で、領主(ファビュート)達も突き上げを喰らって今じゃー無理やり流れ込んできた難民で問題を起こしてる人たちをー…」

(…何か、歴史の勉強で習った地球時代の先進国でそこへ流れ込んでくる移民や難民で悩まされたって話を思い出すなー…)

 

 その二人を中心とする同胞(カルサール)の話をリュールは情報収集もかねて聞いていたが、そこで今の姿と名になる前の自分が関わり、今もある一人を除いて自分が最も造詣が深いと自他ともに認めるある分野が取り上げられる。

 

「…それで“疑似星核技術”の方は?」

「今も銀連、特に銀連軍参加国は技術開放を要求しているな。連中は第二次大戦で起きた“ドクツ収奪先駆者(シャウケガニュ)*1遺産問題”に絡めて、自分達にもその利用権があると、特にサマリア派オルムス人社会が強い力を持つ大星洋連邦が…」

(…ああ、またあれかぁ。こっちで新技術が出る度に何でもかんでも先駆者(フォアランナー)に絡めていちゃもんつけるなぁ…)

 

 この世界では自分が先駆けとなった、記憶喪失前の彼が別時間軸で太陽炉と通称されていた“疑似星核技術”にも銀河技術格差利害問題が絡んできていることに、リュールは何度目になるかわからない辟易を覚えた。

 今現在、この銀河系では帝国(アーヴ)とそれ以外の各国の大半は平均して最低十年以上の技術格差があり、前者が軍事と経済において有利で、それはBETA大戦や第四次大戦が勃発する前とさほど変わっていない。

 その始まりといえば確保している先駆者遺物(フォアランナー・オーパーツ)の数と、それらへの研究の深い進み具合にあったが、次の要因は帝国外の諸国、特に今現在の銀連の主要大国の多くがそれらを長らく否定、最悪として排斥してきた歴史も関係していた。

 帝国外の主要国の多くは、数百年前に起きて帝国も巻き込まれた“ゴッドバレー・マリージョア会戦”で中枢がほぼ壊滅し、残党もその数年後滅亡か解体した“旧世界政府”に長らく属していたことで、先駆者遺物(フォアランナー・オーパーツ)を“世界を滅ぼす古代兵器復活の危険性”があるとして、排斥してきた歴史が長いこと、解放された後も主要な宗教である地球起源唯一神教の教義を大きく否定する存在として排斥政策を長く引き継いでいた歴史があった。

 その後、吸収併合したコヴナント系の宗教観において神聖視されていたこと、ネイ=ステリナ系種族においては興味深い研究対象であったこと、何より帝国の母体となったアーヴにとっては遺伝的な先祖で元から自分達の文明の基盤であったことで、保護や研究に躊躇が無かった帝国が大きな差を見せてきたことで、他の列国も徐々に先駆者(フォアランナー)研究が始まって進んだが、いかんせんそれまで積んできた偏見や恐怖で差は中々縮まらなかった。

 そのため、銀連各国は自由貿易や人権保護などと絡めながら、帝国に対して先端技術とそれで得た資本の解放を求め続けていたのである。

 そうした行動の中で最も使われているのが、“ドクツ収奪先駆者(シャウケガニュ)遺産問題”である。

 第二次大戦で滅亡したドクツ・ゲルマニクスは、レヒリオン教圏主要国の通例に外れて先駆者(フォアランナー)研究を大きく進めたが、その過程で侵略して占領下においた各国から先駆者遺物(フォアランナー・オーパーツ)を略奪してまわったのである。

 そうした遺物の多くは帝国参戦によって勝利した銀連前身組織である連合国によって元から保護していた国々に返還されたが、いかんせん激しい戦いの影響で紛失するか、行方不明になったものがいくらかあった。

 そして戦後、帝国に脅威を覚えた銀連各国ではそうした遺物を帝国が戦火に紛れて接収し、それを解析して得た技術で経済成長を遂げたという説が広まったのである。

 故に、銀連の反アーヴ派は帝国の技術や経済力は自分達の財産によって得たものであるから、それを帝国は返還、要するに開放すべきだという主張が強まったのだ。

 皇族(ドゥリュース)であった頃にリューナクトという偽名で疑似星核技術を確立したリュールからすれば、今は忘れているが前世由来の知識や理論を(この世界の技術を用いてはいるが)実用化させただけなので、結局は“お前らばかり儲けたり進んだり、というか神の現身(人間、というか白人)よりも栄えているのは妬ましかったり怖いからその力を寄こせ”という本音が目に見えていた。

 

「…盗人猛々しいとはこのことでしょうねぇ。まあ、散々こき使われて搾り取られ続けてきたとはいってもプラントごと独立と称して持ち逃げした私達は言い辛いけど、リューナクト博士として開発に携わった君としては呆れるといったところかしら?」

「!?」

 

 故に、変装した状態で今回のパーティーに参加しているアイシャがそう囁いてきた瞬間、リュールは声こそ出さなかったが表情を少しひきつらせた。

 

「…その反応、君はやっぱり見た目通りの齢でまだわかりやすいねぇ。何だったらここから少し離れた席で、今の人類同士の戦争…徳のその根っこについて語らないかい? “我々は…人類(ヒト)はどこまで行けるのか”について…」

「…………」

 

 そして、アイシャと並び合う形で同じく変装して背後からにこやかに寄り添ってきたバルトフェルドのその言葉に、リュールは今その場では言葉を返すことが出来なかった。

*1
先駆者(フォアランナー)のこの世界におけるアーヴ側の呼称(綴りはshaukeganyu)。語源は先駆け(sakigage)




次回、砂漠の虎さんが種原作で最も渋くてシリアスになった場面のこの世界での同位体が中心になる予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。