星界の輪廻   作:oosima

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今回、本作主人公の某ジャンプ軍師系(?)プレイが久々に見られます。
いや、あの中国史軍師系主人公なあのキャラも、こんなプレイはしないかも…(…多分)。


099 荒ぶらされる海と競い合う乗り手たち

 ○C.E(コズミック・イラ)71年2月23日朝(帝国暦952年2月20日朝)現地時間正午前 銀河連合 旧人民主権星系連合体大星域 銀河中心領域付近 シュリア星域 パルミュラ王国 第一パルミュラ星系 第二惑星アンティオキア 熱帯海岸地帯 レース可能領域内○

 

『…さあ! ヤマタノサソリの群れによる待ち伏せを括り抜けたレーサー達! 次の難関シーギャング・グランリーフでーす!!』

「…あのヤマタノサソリにあんだけ出くわされて落ちたのはあれだけか。地上基準やけどやっぱ戦時が長く続くと若い衆から粒ぞろいが多く出てくるのー…だが、一番気になるのはー…」

 

 ヨルがレースコース付近で何やら怪しげな動きをしている連中の元へ送られてから数時間後、現地で最も日が高くなりつつあったその時間帯にて、レーサーをサポートするためのメンテナンスフライングカーから、今回は整備スタッフの一人として雇われたアツシ・アザゼルは上空から各レーサー達に目を見張っていたが、やがて際立って真剣な眼差しを向け始める。

 

「はい♪ メロウコーラでーす♪」

「薔薇柿スムージーでしたらこちらのキグ・ヤーオオミウツボ白身バーガーが…」

「その選手やそれを応援しとる観客たちを支えとるレースクイーン達やのー! 特に帝国の子はアーヴと地上系どっちも細やかな動作にも誠意と色っぽさがさりげなく出ておるのがいいわ…あべし!?」

「アザゼルさん! こんな大会じゃいつマシンが壊されてもおかしくないのだからしっかりあの子達を見てちょうだい!」

 

 それはリリアやレイカと言ったアーヴの若いレースクイーン達であったが、アザゼルが彼女達にその犬面の鼻の下を伸ばそうとしたところで、フレイにその後頭部をチョップされてしまう。

 

「…そ、そうやな! 何とかヤマタノサソリエリアを7割くらいのレーサーが突破し、その中に二人とも混じれたのは良いことやが…今度のグランリーフはその()()()からもっと厄介や。良くて4割くらいが抜けられればいい所やろうな…」

「…歴史柄?」

 

 フレイの突っ込みで戦況分析に戻ったアザゼルは真剣な眼差しでリュール達に視線を戻して無線機を手に取り、その時に混じっていたその単語にフレイは良からぬ予感を覚える。

 但し、アザゼルは先ほどフレイのチョップのせいで床に鼻を叩きつけてしまったダメージの証である鼻血を噴出し、先ほどまでレースクイーン達に盛っていたパートもあって他にその真剣さと懸念に同調してもらえるものはあまりいなかった。

 

「…うわぁ、私の地元の星の南国の島みたいでいて…それよりも遥かに巨大なサンゴ礁がこんなにも…」

 

 一方その頃、その巨大なサンゴ礁が何千キロと東西南北に広がり、カラフルな珊瑚がコバルトブルーの極めて透明度が高い海を通して見え、その上をまるで豊かな森の上を小鳥となっているような心地でミッカ(日光)は進んでおり、彼女はレースに取り組みつつもその光景に魅入られてもいた。

 

「…しかし、何やら巨大な捨てものが…目立ちますね。それにー…やけにサイズも大きいようなー…?」

 

 一方で、リーフの各所には巨大な剣が墓標のように突き刺さっていたり、巨大な銃火器や壺にケースが海底に沈んでいたりなど、環境を心配させるものも散らばっているのがミッカ(日光)を顰めさせていた。

 

「ああ、この辺は大戦期に雇われた本場エルディアの巨人族の傭兵部隊の主戦場になったから、その時の装備品が結構残されたままになってるって。処分するのが大変だったのを放っておいたら良い漁礁になったから今のところは」

「…このような場所も戦争とは無関係ではいられなかったんですね…。でもー…なんだか砂漠地帯に比べて生き物の襲撃がー…それにー、他の皆さんも砂漠までしていた妨害行為が嘘のように静まっているというか…、事前に教えてもらったここの生物がそれほどー…脅威と皆が思っているのでしょうかー…!?」

 

 その絶景にも混じる過去の戦争の残滓に対する哀愁を覚えつつ、スピードリングの爆音以外には静かな状況に戸惑っていると、ミッカ(日光)の眼前を金色の派手な例のマシンが水しぶきを上げながら通り過ぎる。

 

「…ふ! ようやくこのコースまで来たな! やれ! アクション仮面乃助!」

「は! アクションビーム!」

 

 それは今回の大会でも色々と悪目立ちしているデカぶりオで、彼は先頭に躍り出るとその部下に謎の怪光線を発射させ、それは海面に当たると広範囲にわたって水蒸気爆発を巻き起こした。

 

「うわぁあ!?」

「と、止めろぉ!?」

「ぶげぇ!?」

「あんの糞豚ぁ! ここで何てことをぉ!?」

 

 その爆発の衝撃にマシンが破壊されるもの、中には視界不良となって水面から突き出ている巨大珊瑚にぶち当たるもの、多くのものが脱落していってしまう。

 

「あ、あの豚型の人…! 何と大胆というか愚かというか―――!?」

「! ミッカ(日光)! 右斜め前!」

「―――あっつぅ!」

 

 そのじゅわーっと高熱を伴って広がる水蒸気の中でも、幾らかの選手は魔術を駆使して通っていき、その中にリュッカ(リュール)は空識覚(フロクラシュ)も含めた全感覚を総動員して防ぎきれない珊瑚を回避していき、避けきれない小さなものはミッカ(日光)のが魔力を具現化して形作った刀で打ち叩き、その反動で回避するなどしていた。

 

「…ふ! あの場で脱落していればまだ負けの言い訳は出来たものを…!」

「いや、社長…十分に卑怯すぎるというか…もう各方面からブーイングが出ている状況なのですが…!?」

「弱者や敗者の負け惜しみに感化されおって…まぁいい! さあ、止めを刺してくれるわー…!?」

 

 それを嘲るようにデカぶりオは腰から刀型金太郎あめを取り出すが、その直後に彼らを巨大な影が覆ってきた。

 

「…あ? 何だこの影は―――!?」

「ギいいじゃアアアアァアアアァアアアアアァ!!」

 

 デカぶりオがそれに怪訝な顔となって前方を見やると、そこにはマシンを丸呑みできるくらいに巨大なウツボの大口を開いた姿があった。

 

「―――あってっブヒいいいいいいいいいいいいいいい!!??」

「あーーーーーーー!?」

 

 当然、サイズおよびそれからくる戦闘力の差からマシンはあっという間にかみ砕かれ、デカぶりオとアクション仮面乃助はあっという間に海へ投げ飛ばされた。

 

「なにこれでけーーーーー!?」

『おおっとー! 二度の大戦の影響で巨大化してしまったここアンティオキアの海洋系の頂点に立つ超巨大ウツボ達がデカぶりオ選手の大胆な策で目覚めて暴れ出すーーー!!』

 

 驚くレヴィの前で他にも続々と、巨人傭兵たちが残していった海中に沈んでいる壺やコンクリートブロック、巨大珊瑚の隙間などより、毒々しい赤、イエロー、水玉模様など様々な色合いを持ちつつもまるで東洋龍を思わせる超巨大ウツボ達が水面を突き破りながら現れ、平穏を乱されただろうが故の怒りの咆哮を上げながら、驚くレーサー達やそのマシンに襲い掛かりだす。

 

「うわぁ! デ、デカあぁい!」

「そ、それに速いしぃ!」

「尾に吹き飛ばされたー!」

「…うわー、各選手たちに掛けられている結界のおかけで選手達は外傷こそ追ってないけど、すさまじい衝撃波でマシンごと吹き飛ばされて次々と目を回し始めてるよー・…あ、飲み込まれそうになった子は大会の支援スタッフの魔術救助でウツボに吐き出されて事なきを得てるー」

「そんな呑気なことを言っている場合ではありません! 今はここを離れて急いでと回りしないとー…!?」

 

 当然、多くの選手たちが悲鳴と轟音を上げながらリタイアしていき、その光景とそれでも母国のしっかり機能しているサポートにリュッカ(リュール)は感心しつつ、動揺を隠せなくて安全策を提示しようとするミッカ(日光)を手で制する。

 

「皆がそう考えて遠回りしだしている今こそここを突っ切って距離を大きく話すチャンスでしょ。さ、操縦を代わって」

「え…ちょ…ま…ああーーーーー!?」

 

 そのまるで泣きじゃくる子供を静かに窘める大人のような微笑みで、リュッカ(リュール)はアクセルを全開にしながらウツボの群れの中へ突っ込んでいき、ミッカ(日光)に操縦を代わらせた。

 

「な!? リュー…ではなくリュッカ選手よ止まれ! 今現在の状況で使える魔術等ではそいつらは倒せんぞ―――」

「大丈夫ですよ。あの二人―…特にリュッカ(リュール)君はそっちが考えているよりも卑怯だから♪」

「…は? 卑怯?」

 

 それにナタルは思わず本名を呼びそうになりつつも止めようとするが、それは落ち着いている様子のセレーナに制されてマリューは戸惑う。

 

「…この辺りのマシンを壊されたりして救助を待っている人はーー…いた!」

 

 そんなアークエンジェル整備チームの視線に構うことなく、リュッカ(リュール)は周囲の海水を魔術で集めて縄のようにし、近場に浮かんでいる()()()()に引っ掛けて手繰り寄せる。

 

「おお! 良くぞやったぁアーヴの愚民小僧! 私をこのままゴールまで連れていって優勝を献上すれば特大の褒美を―――!?」

 

 その引っかけられたものは自分を海面から引き上げたリュッカ(リュール)に尊大な顔で懐柔しようとするが、その次にリュッカ(リュール)が取った手は周囲の予想の斜め上を行くものだった。

 

 

「対ウツボさん献上スローイングウウぅぅううぅ!!」

「―――おっぶっひいいいいいいいいいいいいい!?」

 

 リュッカ(リュール)が思いっきり砲丸投げの要領で水の縄をぶん投げ、その先に括り付けられていたデカぶりオの情けない悲鳴が周囲の大気を震わせた。

 

「「「「「…あ…」」」」」

 

 それを見せつけられた周囲で、同じマシンに乗るミッカ(日光)を含めたリュッカ(リュール)と親しい面々は久々に見たという感じのハッとした顔を浮かべた。

 

「「「「「ギジャアアァアアアアァアアアァアアアアアァ!!!!!」」」」」

「ぶびいいいいいいいいいいいいいぃ!!??」

「へい! おっ先ーー!!」

「「「「「んなぁアアアアアア!!??」」」」」

「…は…ははは…」

 

 当然、そうなれば大量の超巨大ウツボ達は投げ込まれてきたデカぶりオに群がって喰いつきだし、帝国(最大手スポンサー)の技術及び安全措置もあってその身は傷こそつけられていないがあまりの恐怖でデカぶりオはチビって泣き出し、その下をリュッカは通り過ぎてアークエンジェルクルー整備チームの多くを唖然とさせ、同じマシンに乗って操縦しているミッカ(日光)は胃が痛そうな乾いた笑みをこぼしてしまっていた。

 その様子はカメラを通して各所にも見られていた。

 

「何だあのアーヴ小僧は!!?」

「フェアにやれー!」

「だがきたねーけどすげーテクだ!」

「…いやぁ…でも相手があの豚やろうじゃなぁ…」

「…え、えーーっと……あの子ー…あなたの()()()()()()()()()()()()()()()()に似てると思ったけどー…」

「…………」

 

 周囲の観客から歓声とブーイングに同調が上がる中、スタート地点観客席でレースクイーンをしている一人のリリアは困惑と半信半疑が混ざった顔をして静かに問うが、レイカは目を大きく見開かせて画面に見えるリュッカ(リュール)を見つめ続けていた。

 

「…おい、今さっきのあの戦い方…」

「傍から見れば卑怯だがその実は臨機応変且つ冷静で効果的な戦法…」

「姑息だけど却って新鮮で楽しそうな戦い方…うちの愚娘と交差していたあの物好き殿下みたいだけどー…?」

 

 一方、貴賓室から見ている帝国側要人でもとりわけ大物の大公爵三名は懐かしそうな顔で、何かに気付き始めた様子で先ほどまで激務の合間の遊興と思っていた試合を改めて注視し始めた。




次回、久々にヨルさんの活躍(した事後)が見られつつ、またきな臭い陰謀が表に出始めます。
ちなみに、今回登場したウツボ達の参考にしたものはこちら(https://x.com/kaioosima/status/2068184331592626617)に載っています。
怖そうですけど味方次第で可愛く(?)見えたりもします。
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