ウチのウララがえらいのチームに連れてきた   作:鹿頭

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アオハル杯プレシーズン第1戦 ②

 ───少し、遡る。

 

 「テイエムオペラオーとオルフェーヴルのレースってアオハル杯でやっていいんですかね……?」

 

 ふと、トレーナーの誰かがそんな事を言い出した。

 

 いや、まあ…確かに……

 

 それはその場にいた全員が思っていた事だった。

 トレーナー達はアオハル杯は非公式な上、生徒のお祭り騒ぎのような雰囲気にあてられて、ちょっとしたレクリエーション気分でいたのだが。

 蓋を開けてみれば世紀末覇王と黄金の暴君のタイトルマッチが今まさに繰り広げられようとしている。

 

 そんなレースが、アオハル杯に参加しているウマ娘達とトレーナーの間だけで消費されようとしているのだ。

 

 世間に露呈しようものなら大炎上は避けられないだろう。

 その事はトレーナー達も容易に理解に思い至る。 

 

「じゃあ配信しますか? 機材ならメジロさんのがありますよね?」

 

 とあるトレーナーが言う。

 

「……流石にレース配信はURAとかと調整しなきゃいけないのでは?」

 

 またあるトレーナーが慎重な意見を出す。

 

「でも、学内でのレースはいいんじゃないの?ほら、ツインターボの」

 

「あれは、あくまでテレビ放送されているターボさんのレース映像を中継していたので、この場合には当たらないでしょう」

 

「理事長代理は〈ファースト〉の試合の上、アオハル杯も妥協の上の結論だからな、首を縦に振るとは思えないよ」

 

 中堅トレーナーが首を横に振った。

 

「とりあえず撮影だけでもしときましょうよ、万が一露呈した際に動画すらありませんの方がマズイですし」

 

「ですね」

 

 それを聞いたメジロ家のトレーナーは撮影の準備に取り掛かっていった。

 

 ちなみにこの一件はもちろん大炎上するのだが、それはまた別の話。

 

 

 ───時間を戻す。

 

 距離2500m右回り───アオハル杯プレシーズン第1戦長距離部門。

 今、ゲートが開いた。

 

 両者共に順調なスタートを切ってから直ぐにオルフェーヴルはオペラオーの背後にピッタリと張り付くように陣取った。

 

(ボクを風除けにしつつ、といったところか)

 

 テイエムオペラオーの脚質は先行-差し。

 オルフェーヴルの脚質は差し-追い込み。

 

 追うものと、追われるものに別れるのはそう難くない判断であると言える。

 

(やはり凡百のとは違う走り…と言ったところよな)

 

 背後から覇王の背を虎視眈々と狙う暴君。

 その()()()()()に喜悦を浮かべる。

 

「いいとも! 背後から追われるのは王者の宿命だからね!」

 

「────貴様」

 

 オペラオーの挑発に、オルフェーヴルが釣られる。

 

「ははっ! かかってきたまえ!()()()()()()()()()!」

 

 第3コーナー回って第4コーナー。

 オペラオーはペースを上げていく。

 

「───吠えたなッ!オペラオー!!」

 

 オルフェーヴルもその持ち前の力で地面を踏み砕き、足音を轟かせながら上がっていく。

 

 二バのボルテージも極限まで高まっていく。

 

 いよいよレースも佳境。

 固唾を飲んで見守るのは、ウマ娘達に、トレーナー達。

 

 そして、ハルウララだ。

 

「オペちゃん…」

 

 ハルウララは、楽しいから、走っている。

 一着をとると、きっともっと楽しい。

 

 何回も、何回も、何回も。

 はしって、走って、走り続けて。 

 

 目指している。

 その先に、わくわくが待っていると信じて。

 

 だからハルウララは常にチャレンジャーだ。

 

 だけど、あの芦毛のウマ娘は。

 

 ───オグリキャップは。

 

『私が捩じ伏せてみせる。この、脚で』

 

 ハルウララはあの日初めて、《チャンピオン》としての立場に立った。

 

 一度も、勝った事のないままに。

 

 ハルウララは、戦いを挑まれたのだ。

 

(見てるかい、ウララ君)

 

 オペラオーはウララの悩みを察していた。

 

 ハルウララとオグリキャップが有記念に出るというのは学園ではそれなりのウマ娘なら誰もが知っている事実。

 

 その際に何があったのかも、公にこそは出ていないが、一部を中心にそれとなく広まっているし、テイエムオペラオーもまた事情を知っていた。

 

(ボクには、負けても悔しくない気持ちはわからない)

 

 負ければ悔しいのは当然の事。

 でも必ず立ち上がって、その先にある勝利を掴んだのがテイエムオペラオーだ。

 

(何回、何十回負けても平気な気持ちも想像できない)

 

 ハルウララは、負けても負けても何度でも健気に走り続ける。

 その姿が、国民的ウマドルとして、時代の頂点まで彼女を押し上げた。

 

(ボクだって誰も知らない景色は知っている……けど)

 

(ただ一度の勝利もなく、頂点に君臨する──なんて)

 

 ───恐ろしいんだろう。

 

 そんな気持ちがわかるウマ娘は、この国には存在しない。

 

 誰にもわからないだろう。

 

(それにはボクは寄り添えない。だけど、ボクにしか示せないものがある───!)

 

 ───最後の直線。

 

 差し掛かったテイエムオペラオーが叫ぶ。

 ただ一人の観客へと向けて。

 

「勝者とは!」

 

 オペラオーは叫ぶ。

 

「優美であれ!」

 

 覇王は吼える。

 

「気高くあれ!」

 

 覇王が、笑う。

 

「常に───」

 

 世紀末覇王が、拳を天に突き出す。

 

「誇り高くあれ!」

 

 ───勝者、テイエムオペラオー。

 

 これが、観客溢れるレース場なら、万雷の喝采を持って迎えられただろう。

 だが、これはアオハル杯。

 

 トレーナーやウマ娘達の感嘆の溜息が、代わりに勝者を讃えた。

 

「…………」

 

 敗れ去った暴君はその長い髪を翻し、ターフを後にした。

 

「………さて」

 

 オペラオーは、勝利の余韻もそこそこに、その脚でウララへ歩み寄る。

 

「見てたかい、ウララ君」

 

「うん!見てたよ!すっごくかっこよかったよ!」

 

「はーっはっは!そうだろうそうだとも!」

 

 オペラオーはひとりしきり哄笑してから、ウララをじっと見据えた。

 

「あの日、有記念の事。覚えてるかい?」

 

「え? う、うん…」

 

「オグリ先輩はね、君に挑戦状を叩きつけたんだ」

 

「ちょうせんじょう…?でも、わたしまだ一着とってないよ?」

 

「それでも、君はチャンピオンなんだ」

 

「え」

 

「ウララ君がどう思っているのかに関係なく、君は確かにこの時代に君臨しているんだ」

 

 ───悔しいけどね。

 オペラオーは、それは言葉にはしなかった。

 それは今言うことでもないし、覇王のする事ではない。

 

「だから君は、チャンピオンとして、有に挑まなければいけないんだ」

 

「そんな───」

 

「ボクを見ろ!ハルウララ!!!」

 

 テイエムオペラオーは叫んだ。

 ウララの抱える不安、恐怖。

 それを全て吹き飛ばすかのように。

 

「ボクは走って走って走り続けて! 全てのウマ娘を敵に回してこの手に天を掴んだ!」

 

 頂点に立つ恐怖。

 頂点である事を求められる苦痛。

 大なり小なり、それは勝ち続けた者が味わう試練だ。

 その事をオペラオーはよく知っている。

 

 だからこそ、今のウララに伝えなければならない。

 示さねばならない。

 オペラオーは、そう思った。

 

「君に自覚は確かにないかもしれない!だけどそれでも君は時代の頂点に君臨している!」

 

「で、でも…わたし、どうすればいいか──」

 

「そんなの簡単だ! いつも君が目指している事だろう!?」

 

 導を求めて彷徨う幼子のような()()に、覇王は堂々と指し示した。

 

「勝つんだよ!有記念の舞台で!」

 

オグリキャップ(時代)に!」

 

「────」

 

「一着は、君がいつも目指していた事だろう?」

 

「オペ、ちゃん……」

 

「それとも、ウララ君はボクの知らない間に諦めるようになったのかい?」

 

「ううん、ちがうよ!そんなことない!」

 

「それは──良かった」

 

 オペラオーは屈託のない笑みを浮かべた。

 

 ───ところでここに、一部始終をすぐそばで見ていたウマ娘が、一人いる。

 

「エル、この空気でウララちゃんと走るんデスか……?」

 

 エルコンドルパサーだった。

 

 

 





 新時代の扉を開けた影響と単純に秒数だけ見るとテイエムオペラオー(5)が2:34.1でオルフェーヴル(3)が2:36.0だったから採用。
シニア期オルフェなら勝ってた。


オルフェーヴルのヒミツ
この後ターフの上でふて寝したらしい

シリウスシンボリのヒミツ
ウララの壊滅的な成績になぜ中央に入れたのか。
疑問を覚えたシリウスは面接一本で入ったとウララから聞いてルドルフを締め上げた……!

メジロラモーヌのヒミツ
ウララとオペラオーの一件を笑顔で眺めていたらしい

ジェンティルドンナのヒミツ
最近ようやく担当契約を結ばせたらしい 
交渉の際に犠牲になった机はトレーナーが自腹を切ったらしい

トレーナーのヒミツ
実はトレーナー不要論者らしい
強いウマ娘は誰がどうしようとも強いと最初の担当に脳を焼かれたまんま
有馬チャレンジは不要論を否定したい己のエゴではないのか?と眠れない夜もあるらしい

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