ウチのウララがえらいのチームに連れてきた   作:鹿頭

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ハルウララは 至宝を つれてきた!

 

「トレーナー!チームにはいってくれる子を連れてきたよ!」

 

「はやっ」

 

 そんな時間も経っていないと言うのに、もうウララが新たなメンバー候補を連れて戻ってきた。

 

 あまりにも早い勧誘、さてはライスシャワーだな?

『ふ、ふぇぇ…ウララちゃん、アオハル杯、だね。うん。ちょうど、ライスも探してたんだ…』とかそんな感じだろう!たぶん。

 

 トレーナーは甘く考えた。

 

 彼女は生粋のステイヤーだ。

 ウララには持っていないスタミナをもっている。

 きっとウララにも良い影響を及ぼすだろう。

 

 オルフェーヴルとかいう癖ウマがいるが、下バ評と違って存外に面倒見が良いウマ娘みたいだし、きっとライスシャワーでもなんとかなるだろう。

 

 トレーナーはまたまた甘く考えた。

 

「入って! ラモーヌちゃん!」

 

「ひょ?」

 

 一歩、一歩と靴の音が聞こえる度に増大していく、暴力的とすら思える気品。

 

 あの名門メジロのウマ娘にして、誰もが目を奪われる程の魅力と、それすら引き立て役と言わんばかりの、強さ。

 メジロの至宝。魔性の青鹿毛。

 

 ───メジロラモーヌ、その人だった。

 

「あら。面白いコが居るのね」

 

 至宝が暴君を見つめ、笑みを湛える。

 

「貴様が来ようとはな。メジロラモーヌ」

 

 暴君は至宝を前に口角が上がる。

 

「これで二人目だね、トレーナー!」

 

 ウララは二人を前に大きく喜んでいる。

 お前のトレーナーは今すぐここから立ち去りたい。

 

「───それで」

 

 暴君より視線を外したラモーヌが、俺を見つめた。

 

「貴方がウララちゃんのトレーナー?」

 

 ハルウララのコミュ力はGI級だった。

 

 高等部に見えないウマ娘ランキング(非公式)でライスシャワーと首位争いを繰り広げている彼女がウララをちゃん付けで呼ぶとは。

 

 よくウマ娘をパドックだけで判断してはならないと言うが……こういう時の事を指すのだろう。たぶん。

 

「そうですが……いや、そもそも何故、ウチに?」

 

 数々のトレーナーを切って捨ててきたと言われる彼女だが……どうしてウララの誘いに乗ったのだろう。

 だとしてもあのメジロの至宝だ。

 

 中央未勝利トレーナーのチームに来て良い器ではない。

 いくら流動的かつ非公式なアオハル杯とはいえ、明日から他のトレーナーの目線が面倒くさくなりそうだな、と考えると煩わしい。

 

「貴方は何故、ウララちゃんのトレーナーをしているのかしら」

 

「え? 何故って……」

 

 初めてハルウララの走りを見た日は、足の速さ云々よりフォームがガタガタ。

 

 全てが酷いものだった。

 

 ───何故あんな子が中央に?

 ───何かの間違いじゃないのか?

 

 そんなざわめきも余所に、ハルウララは実に楽しそうに笑っていた。

 

 ウララはレースが好きだ。それは間違いない。

 だからこそ、何回も何回も負けても()()()()()でいられる。

 それは長く走り続けるにあたっては長所なのだろう───けど。

 

『フォームが滅茶苦茶過ぎるが……わざとか?』と。気がついたら、声をかけていた。

 

 そんな基本的な事すらここでは誰も指摘しないのか?

 そんな怒りとも侮蔑ともつかない感情から。

 

 ちなみにその時『ふぉおむ?』と言ってのけたハルウララに戦慄したのは言うまでもない。

 どうやって日本の中央に入れたんだ。

 面接一本で理事長が通したんだった。

 

 とはいえ、再びトレーナーとして歩む事になった。

 ありふれてはいないだろうけど、珍しくもない話。きっかけはそんなものだ。

 

「フォームが滅茶苦茶だったから、かな」

 

「───そう」

 

「それで? どうしてこのチームに?」

 

 矢継ぎ早に話を変えたのは、笑みとも怒りともとれない曖昧な表情を浮かべる彼女にそれ以上喋らせると良くない、と感じたからだった。

 

「ウララちゃんに誘われたからよ。それで十分ではなくって?」

 

 ハルウララのコミュ力は三冠級だった。

 メジロラモーヌともあれば、何か別に理由もありそうな気が勝手にしていたのだが。

 単にウララがすごいだけなのだろう。

 

「………チームという扱いだけど、トレーニングを見る必要は?」

 

「無いわ」

 

 メジロラモーヌの事を思えば、当然の回答だった。

 どこまでもストイックに、貪欲にレースを愛し続ける彼女に、トレーナーなんかの助言など必要ない。

 圧倒的な才能の前には ()()()()()()()()なのだ。

 

「えー!いっしょにトレーニングしないの!?」

 

「王たる余では不足か?」

 

 今まで沈黙を保っていたオルフェーヴルが口を開いた。

 ラモーヌの眉が僅かに下がった。

 部屋の温度も微妙に下がった気がした。

 

「だって、みんなでやれば楽しいよ? トレーニングも、レースも!」

 

「………そうね」

 

 また目を閉じ、思案する顔のラモーヌ。

 

「時間があればね。ウララちゃん」

 

 そういって、柔らかく微笑んだ。

 

「ほんと!? やろやろ!」

 

 本当に彼女が参加するかは判らないが。

 一応データは取っておく事にしよう。

 

「存外に強欲よな」

 

 喜び跳ねるウララに、口角を吊り上げるオルフェーヴル。

 

「それで、ウララちゃん。あと二人は必要でなくって?」

 

「あ! そうだった!じゃあ探してくるね!」

 

「ええ」

 

「よく励めよ」

 

「いってらっしゃい」

 

 走り去ってくウララを見送ると、トレーナー室に残るのは黄金の暴君に、メジロの至宝。あと未勝利トレーナー。

 

(こんどこそふつうのウマ娘を連れてきてくれないかな)

 

 その願いが散るまで、後数分。

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