ウチのウララがえらいのチームに連れてきた   作:鹿頭

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チームのちょっとした日常

 

 有記念を勝たせる。

 口でいうのは簡単だが、飽き性のウララにトレーニングを積ませるのはなかなか難しい。

 

 ウララが飽きないようなトレーニングを考えなければいけないからだ。

 

 アオハル杯のおかげで非公式とはいえチーム体制になったため、チームメンバーと一緒に頑張ってくれる(友情トレーニング)様になってくれた。

 アオハル杯サマサマであるとトレーナーもニッコリ。

 

 トレーナーが一番嬉しかったのはなんと言ってもウララの勉強だ。

 今まではウララの勉強も補習回避の為に見てやる事もあったが、今は頼んでもないのにシリウスシンボリが青筋浮かべながら見てくれている。

 おかげでその間をトレーニングを考えたり、日々の書類、スポンサーやマスコミ対応などに時間を費やす事ができるのだ。

 

「なんでー!?なんで点Pさんはうごくの!?」

 

「ンなもん考えるな……もう解き方だけ覚えてろッ……」

 

 なんとも微笑ましい光景だ。

 広報用のSNSに上げるのもいいかもしれないね、とトレーナーもニッコリである。

 

 その横でジェンティルドンナがひたすら鉄球をパチンコ玉に変えているのは見ない様にしていた。

 その事について誰も彼女に触れるものはいなかった。

 みな命が惜しいのである。

 

 オルフェーヴルはここには居ない。

 唯我独尊……気ままな彼女の事だからどこかの芝生に転がっているのかもしれない。

 

 ───それに、良いことばかりでもない。

 

 例えばメジロラモーヌだ。

 

『……アルダンね?』

 

 紅茶が欲しいと言われたが、トレーナーには紅茶が良くわからない。

 

 なのでラモーヌの妹であるメジロアルダンに相談したら『そんな…本当に、姉様がチームに……』と、妙な反応を見せていたが〈にんじんぷりん〉のトレーナーは他所様のウマ娘の機微に触れる事はせずに紅茶のアドバイスだけ貰って帰って行った。

 

 そうして自腹を切り手に入れた紅茶を出したら、仕入れ先を速攻で見破られたのだ。

 

『次は別のにして頂戴?』

 

『後、もっと練習なさい』

 

 この時買った茶葉はアグネスタキオンに渡された。

 彼女の研究データはウララの為にも有用だからだ。光らせられる代わりに紅茶で手打ちにしようという訳だった。

 

 ついでに紅茶のアドバイスを貰ったら『フゥン、紅茶か。私のオススメはサバラガムワとキーマンだねぇ。アッサムも悪くない。それに砂糖を加えてだね───』

 

『この人、砂糖の塊に直接紅茶を注ぐ様なヒトですよ』

 

『失敬な! これはれっきとしたエナジードリンクであってだねぇ───』と、余り役に立たなかった。

 

 紅茶を嗜むウマ娘で有名なのは残りはシンボリやサトノのウマ娘だ。

 だがこの辺から推薦された茶葉とか出したところで全部見破られるだろう。

 

 考えたトレーナーはヒシミラクルが紅茶を飲むと風の噂で聞いたので彼女に聞いていた。

『えぇ…?なぜに私に…?』と困惑していたが。

 

 そうして今日も紅茶の品評が始まったのだった。

 ふとその時トレーナーはどうしてこんな事をしているのかと疑問を覚えたが深くは考えなかった。

 

「…………」

 

 紅茶に口をつけたラモーヌがなんとも微妙そうな顔をした。

 

「………前のに戻して頂戴」

 

 トレーナーは勝利した。

 

 お礼にウララが商店街から貰ったにんじんをヒシミラクルに差し入れ、無事太り気味にさせることに成功し、ヒシミラクルのトレーナーに怒られたのだった。

 

 後々シリウスにどういう事だと思うかと尋ね、一口紅茶を飲んだシリウスは『不味くはねぇ、不味くはねぇが……美味いって訳でもねぇ……なんだコレ』と困惑していた。

 

 

「ひょえ〜やっとおわったぁ…」

 

「やっと終わった……」

 

 ウララが問題集を解き終わったらしい。

 シリウスが項垂れる様に頭を抱えている。

 

「ふふ」

 

 その様子をラモーヌが微笑ましそうに見つめていた。

 

「ようやく……終ったのね」

 

 ジェンティルドンナが待ちかねたとばかりに最後の鉄球を握りつぶした。

 

 学園の備品を全て圧縮したジェンティルドンナはトレーナーに始末書の嵐を巻き起こす。

 

 後でトレーナーは駿川たづなに泣きついた。

 しかし効果はなかった。

 

「それで、トレーナー。今日のトレーニングはどうするつもり?」

 

「………?」

 

 ジェンティルドンナの発言に引っかかるものを覚えたシリウス。

 

「ジェンティルお前……」

 

 まるで担当ウマ娘みてぇだな?

 

 軽く貶してみようとしたが、あたりに転がった鉄球だった物がどうしても目に飛び込んでくる。

 

「何かしら?」

 

 そんな事をシリウスが考えているとは知らない貴婦人。

 パチンコ玉と化した鉄球をさらに一つの鉄塊へと纏めてゆく。

 

「………イヤ、なんでもねぇ」

 

 流石のシリウスシンボリとて揶揄う相手は選んでいた。

 トレーナーはなんと始末書を書こうかと心の中で泣いた。

 

「はぁ……」

 

「スピードを鍛えたいからね……走り幅跳びか、普通にコースで走るって所かな。そろそろアオハル杯初戦に…ウララのレースもあるし」

 

「あら、そうなのウララちゃん」

 

 ラモーヌが片眉を上げた。

 

「うん! みててね!今度こそ一着とれる気がするんだ!」

 

「ええ」

 

「……ん? オイ、ちょっと前も走って───」

 

「その為には正しくトレーニングをする事ですわ、ウララさん。こないだみたいに蝶を追いかけてはいけません」

 

「もっちろん! ちゃんとはんせいしてるよ!」

 

 ウララのその言葉に、本当に反省しているのか?とジェンティルドンナは訝しんだ。

 もっと綺麗な蝶だったら追いかけそうだよね、とトレーナーは心の中で思った。

 

「…………」

 

 シリウスは、話を遮った事に目に見えて苛立っている。

 

「ふふ」

 

 その様子を、面白そうに眺めるラモーヌ。

 シリウスの苛立ちが若干増す。

 

「……やっぱりショットガンタッチにしようか。ボール用意しとくから先に行っててくれ。アップで走るなら芝にしてくれ」

 

 その事を理解したトレーナーは、少し時間を作る事にした。

 

「ええ、わかりました。ほら、ウララさん。行くわよ」

 

「はーい!はやくきてね、トレーナー!」

 

「ほいほい」

 

 ジェンティルがウララを引き連れて部屋を後にしたのを見届けると、苛立つ天狼星と向き合った。

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 練習場に出た二人はアップの為に芝を走ろうと柔軟を行なっていた。

 

「柔軟は念入りにすること。いくら貴女が丈夫な脚を持つとは言え、怠ってはいけませんわ」

 

「はーい!」

 

 ジェンティルドンナがチームに入る前の自分が見たら『嘘でしょ…』と言わんばかりの光景。

 それに慣れつつある自分を感じつつも、自らの掲げる勝利のため、と言い聞かせていた。

 

「さて、そろそろ───」

 

 走りましょうか、と言おうとした、その時。

 

「───ウララさん!」

 

 ハルウララに呼びかける者あり。

 すわ何事かと思うジェンティルドンナが声の主を見やる。

 

「あ!キングちゃん!」

 

「あら、貴女は」

 

 ハルウララの同室のキングヘイロー。

 トレーナー曰く、ウララの寮での生活の面倒を一手に引き受けていたらしいウマ娘だった。

 

「ごきげんよう」

 

 キングヘイローが挨拶をする。

 

「ええ、ごきげんよう」

 

 ジェンティルドンナが、挨拶を返す。

 

「これからトレーニングするのね?」

 

「うん! そうだよ!」

 

 キングヘイローの問いにウララが答えた。

 

 実を言うとジェンティルドンナはキングヘイローにどう接していいのか決めあぐねていた。

 

 どこかアタリの強い彼女の態度に、最初は敵か、と昂る気持ちを抑えられずにいたら、なにやらどうも違う。

 

 それとなく自分のトレーナーに聞いてみるとどうだろう。

 彼女はハルウララと同室だと聞かされた。

 

 加えてなにやら私生活の隅々に至るまで面倒を見ていたというではないか。

 

(なるほど。ウララさんがとられた気分、と)

 

 とはいえジェンティルドンナはウララをとった覚えはない。

 あの日真にトレーナーと呼ぶ事を決めた日以来、ハルウララには振り回されっぱなし。

 

 蝶を追いかけてたかと思えば川魚のヌシと追いかけっこを繰り広げてみたりするハルウララに、騙されたのでは?と思う事もあった。

 

 むしろ私生活まで面倒は見れる訳がない。

 

 トレーナーからキングヘイローが面倒を見ていると聞いて『ウララさんの私生活を見る…?相当なお人好しがいたものですわね…』といってしまったくらいだ。

 

 あの《黄金世代》の一角たるキングヘイローが敵愾心を燃やしかかってくる分には構わない。

 ウマ娘たるものレースで下せばいい。

 

 しかしその理由が理由ともあって、扱いに決めあぐねているのが実情だった。

 

「それでキングヘイローさんは、どうなさったのかしら」

 

 ひとまずの牽制球。

 

「キングのルームメイトのウララさんに挨拶しに来ただけよ?」

 

「あら、寂しんぼですのね」

 

 お可愛いらしいこと、捻り潰してから考えるとしましょう。

 そう思った貴婦人は、決闘の手袋を投げつけた。

 

「────ッ!」

 

「えー!キングちゃんさみしいの!?」

 

 決闘の手袋はウララが勝手に拾った。

 

「う、ウララさん…?このキングが…寂しい訳ないじゃない!?」

 

「そうなの?」

 

「そうよ!」

 

(……喧嘩の売り方を間違えた。これは"力"ある者のやり方ではない。挑まれる側の傲慢として受け入れましょう)

 

 ジェンティルドンナは一人反省した。

 

「キングヘイローさん。私達のトレーナーが来るまで軽く走る予定なのだけれど、宜しければご一緒いかが?」

 

「いっしょにやらない?キングちゃん!」

 

「ぐ、ぐぬぬ…」

 

(ぐぬぬ?)

 

「いいえ!一流には一流のトレーニング方法があるの! ウララさんには悪いけど、これで失礼するわ!」

 

「じゃあねキングちゃん!またね!」

 

(本当、慣れない事はするものではないわ)

 

 この後トレーナーが来るまで、芝生をしばらく走っていた……!





オルフェーヴル「余は?」

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