物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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4章 信じ続ける誓い
109話 次なる目標


 大きな事件が終わって、今は一息ついている状態だ。俺の問題である、親しい人を完全に信用できていないこと。それを解決することが、今後の課題になるだろうな。

 

 だから、まずは行動していく必要がある。まずは形から入るだけでも、心は動いてくれるかもしれないからな。

 

 その一歩目が、セルフィに悩みの内容を話すことになるだろう。流石に、ミュスカを疑っているとは言えないのだが。これは信用の問題ではなく、ミュスカを傷つける行為だからだ。

 

 いくらなんでも、親しいと言っていい相手の悪評を吹き込むのは、信頼からの行動とは言えないだろう。アイクの件に関してなら、もう終わった話だからな。

 

 とはいえ、証拠があるのなら、話は別だろうが。悪人だと確信できるのなら、伝えないのは信頼していないが故だろう。本当に、バランスの難しい問題だ。だが、挑む価値があるし、取り組むべきなんだ。

 

 俺自身だって、急に誰かを信頼しようとしても、無理だろう。心というのは、急には変わらない。だからこそ、確かな努力が必要なんだ。信じるために、一歩踏み出すべきなんだ。

 

「セルフィ、ここに居たか。少し、話がある」

「もちろん、良いよ。何か、悩みでもあるのかな?」

「バカ弟、まさかとは思うけど、セルフィを口説いたりしないでしょうね?」

 

 なんというか、セルフィとカミラは一緒にいることが多いな。やはり、学園生活で仲を深めたのだろうか。俺の知らないところでも、人間関係ができている。当たり前だが、大事な話だよな。

 

 俺以外の人にも、自分の人生があるんだ。俺の思い通りにするべき人形じゃない。そんなの、考えるまでもないはずなのだが。ただ、俺は一歩手前か、あるいは線を踏んでいるくらいには居たかもしれない。

 

 やはり、反省すべきことが多いな。だからといって、俺がネガティブになることは、注意してきたカミラですら望んでいないだろう。そこを履き違えてはいけない。

 

 俺のやるべきことは、相手を信頼するために、ちゃんと相手と向き合うことのはずだ。何ができて、何ができないのか。それを印象だけでなく、事実として理解することのはずだ。

 

 というか、俺は女好きみたいに思われ過ぎだろう。そんなに、おかしなことをしているだろうか。

 

「あはは、愛の告白なら、まだ早いかな? なんてね。君なら、本気で考えちゃうかもね」

「バカなことを言うんじゃない。一応、説明しておくべきだと思っただけだ」

「君の悩みが、解決した話だよね? もちろん、歓迎だよ」

 

 やはり、顔に出ていただろうか。悩みの大きな部分は、解決したんだよな。結局のところ、俺ひとりですべてを解決しようとするのは、間違っていた。それが理解できただけで、大きく心持ちは変わったからな。

 

「結局、セルフィのやつは役に立たなかったんじゃないの?」

「私としては、レックス君が元気になるなら、誰の手柄でも良いかな」

 

 セルフィは、良い人としか言いようがない。本当に、人格的には、疑う理由がないくらいの人だ。今まで、視界が曇っていたのがよく分かる。この人を、軽く扱っていたのだからな。

 

「話をそらすな。本題に戻るが、俺はアイクを疑っていてな。結局、やつは事件を起こしたんだが」

「ああ、それで悩んでいたんだね。確かに、疑わしい人が居るって言っていたからね」

「そんなことを、話すかどうかで悩んでいたの? ほんと、あんたはバカ弟なんだから」

「お前達に話したところで、証拠がなかったからな。である以上、判断を歪めるのはどうかと思っただけだ」

 

 実際、証拠を出せと言われても出せなかった。そう考えると、どうやって言葉にしたものか悩ましい。そう思っていたのも、事実だったはずだ。

 

 まあ、俺が転生者であることや、原作知識を持っていることを話せないというのもあったのだが。流石に、そこまでは言えない。

 

「やっぱり、レックス君は優しいんだね。アイク先生が悪人じゃないって、信じたかったんだよね」

「というか、あんたが疑っているだけで、あたしは全部信じたりしないわよ」

「あはは、確かにね。いや、レックス君を信じたい気持ちはあるよ? でも、誤解とか、騙されているとか、その可能性もあるからね」

 

 ああ、それもあるな。なら、疑っていることくらい、言ってしまっても良かったのかもな。俺が疑っているのなら、合っている。そう判断する人の方が、おかしいくらいなのだから。なにせ、証拠はないのだから。

 

「いや、それで正しい。俺の言うことだからと全部信じられたら、むしろ気味が悪い。特に、セルフィはな」

「まあ、出会ってすぐだもんね。それで全面的に信じたら、ちょっと変な人だよね」

「バカ弟につきまとっていた変人が、何を言うのよ」

「実はレックス君は迷惑に思っていたなら、大問題だよね。ストーカーか何かかな?」

 

 まあ、捉え方によっては、そう思ってもおかしくないのか? 自分で言葉にするのは、ビックリするが。ただ、セルフィは本気で心配してくれていただけなのだろう。それくらいは分かる。

 

 なにか、よこしまな考えを持って、俺に接近した訳じゃない。その程度の信用は、前からあったんだ。

 

「妙なやつだと思いはしたが、迷惑だとは思っていない。お前の好きにすれば良い」

「ありがとう。やっぱり、レックス君は信じて良い人だよ。そして、私が支えたい人なんだ。改めて、確信できたよ」

 

 やはり、セルフィは優しい。俺の言動を見て、俺ならどう考えるだろうか。そう思うと、彼女の考えがどれほど素晴らしいかなんて、言うまでもないよな。

 

「まったく、男の趣味の悪いものね。ま、セルフィだものね」

「カミラさん、ひどいよ。でも、そんな軽口を言ってくれると思えば、嬉しいかな」

 

 お互い、ある程度の信頼関係があるのだろうな。2人とも、笑顔だし。こうして、原作の敵キャラと味方キャラが仲良くしている姿がある。だから、ミュスカとだって未来を生きられるかもしれない。そんな希望を持つのは、愚かだろうか。

 

「奇特な趣味なことだ。だが、俺は受け入れてやろう」

「バカ弟も、本気でバカよね。ま、良いわ。あたしがしっかりする。それだけのことよ」

「そんな事を言って、レックス君に貰ったもの、ずっと大切にしているじゃないか」

 

 本当に、ありがたいことだ。カミラの言葉や表情だけでは、俺をどう思っているかを判断できない。というか、嫌われていると考える方が普通だろう。

 

 俺が大事に思われていると信じられるのは、贈り物を大切にしてくれているから。その事実が、何よりも雄弁に、カミラの感情を語ってくれていると思えるんだ。

 

「うるさいわね。あんたなんかに、何が分かるのよ」

「努力家なこと。レックス君が大切なこと。優しい心を持っていること。いろいろ、かな」

「はいはい。もう好きにしなさい。まったく、面倒なやつに目をつけられたものね。あたしも、バカ弟も」

 

 そんな事を言いながら、カミラの顔は優しい気がする。うん。この調子で、みんなで仲良くする未来を掴み取る。今日の告白は、その一歩目なんだ。

 

 原作で正義だったとか悪だったとか、関係なく。俺の大切な人たちが幸せでいる未来。それを掴むためにも、みんなには協力してほしい。

 

 だからこそ、自分から信頼していくんだ。それが、素晴らしい未来に繋がると願って。

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