物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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118話 最初の一歩目

 カミラとフェリシアの関係は、とても気になるところだ。だが、俺の方から何かをしようとしても、逆効果になりかねない。結局、俺がきっかけっぽいからな。その俺に和解しろと言われたら、余計に頑なになる気がする。

 

 そう考えると、できることは、時間が解決することを祈るだけか? 本音としては、どうにか仲を取り持ちたいのだが。ただ、手段が思い浮かばない。策がないまま動けば、状況が悪化することは容易に想像できる。

 

 だから、少なくとも何かが思いつくまでは、静観の構えで居ることが無難か? とてもではないが、最善の行動とは思えない。それでも、もっと良い手段が無い。最低でも、俺の頭の中には。

 

 本当に、難しい問題だ。だからといって、安易な行動は避けるべき。それだけは分かる。根が深そうだから、ひとつひとつ解きほぐしていくのが、理想ではあるのだろうが。

 

 ただ、俺の態度でやるのは難しいよな。いちいち皮肉を言いながら相手の感情を解きほぐすとか、どう考えても無理だろう。やはり、状況が変わるのを待つしか無いか。

 

 歯がゆいな。何もできないという事実は。それでも、慌てて何かをしようとするほど、短絡的にもなれない。こういう時ばかりは、俺の理性が邪魔だと感じる。感情のままに動ければ、どれほど楽だろうな。

 

 まあ、俺のために行動するより、みんなのために行動するべきだ。そこは、間違えてはいけない。どうしても困ってしまえば、他の人に頼るのも、大事なことだよな。

 

 ただ、状況が状況だからな。友達が女の人くらいしか居ないから、修羅場になりかねない。本当に、悩ましい。

 

 結論は、変わらないか。自分から積極的に行動はできない。なら、いつも通りに過ごすしかないな。

 

 ということで、授業に集中することに決めた。できることがないのなら、他のことに集中すべきだからな。

 

「……課題。今回は、こちらで指定した組み合わせで、用意したモンスターと戦ってもらう」

「いわゆる、ダンジョンだな。簡単なものではあるが、最悪の場合は死ぬから、気をつけておけ」

 

 ああ、そういえば、ダンジョンみたいなもの、あったな。授業やレベル上げに使うやつだ。今まで見かけなくて、無いのだと納得していたのだが。なにか、問題が解決でもしたか?

 

 まあ、理由が分からなくても、フィリスが居るのなら、きっと大丈夫だろう。俺に分からない問題でも、彼女なら分かるだろうから。

 

「……段階。実力が噛み合わない人間どうしが組むことは、今回は避ける」

「ということで、メンバーを発表していくぞ。レックス、ミーア様、リーナ様がまず一組。ジュリア、ミュスカ、ラナで一組、後は……」

 

 前に言われていたように、ある程度の実力で、組み合わせを決めるようになったのか。正直、ありがたい。親しい人が相手なら、気が楽だからな。それに、全力を出しても、恐れられないだろうし。

 

 せっかくだから、連携の練習をしたいところではあるが。魔物を始めとする困難も、みんなになら任せられる。それが分かったんだから、できるだけ上手にやりたい。

 

 その一歩として、王女姉妹はちょうど良いんじゃないだろうか。お互い、いい感じに強いからな。

 

「今回は、私達と一緒ね! レックス君、楽しみましょうね」

「一応、魔物が相手ではあるんですよ。気を抜かないでくださいね、姉さん」

「でも、私達が負けるなんて、想像できないじゃない」

 

 まあ、魔力をまとっているだけでも、ケガをすることすら無いと思う。それでも、想定していないトラブルが起こる可能性だってある。それでミーアやリーナが傷ついたら、後悔してもしきれない。だから、ちゃんと気を張っていてもらいたいものだ。もちろん、俺自身も楽観はできない。

 

「ミーア。あまり油断して、足をすくわれるなよ」

「同感ですね、姉さん。実際、弱い魔物ではあるでしょうけど。姉さんがケガをするのは、ごめんです」

「リーナちゃん、私を気づかってくれたのね! レックス君も、ありがとう!」

 

 やはり、ミーアが太陽みたいな人って印象は、変わらないな。今も、俺の言葉をポジティブに解釈してくれているし。まあ、意図通りではあるのだが。

 

 こうして組んでいると、やはりワクワクしてしまう。とても楽しい時間を過ごせそうだというのは、同感なんだ。最悪の事態は、避けるべきだろうが。

 

「それよりも、さっさと現場に向かうぞ。あまり時間をかけるのも、バカバカしいだろう」

「私達が組めば、誰にも負けたりしないわ! それは絶対よね!」

「油断しないのなら、なんでも良いですけどね。楽ができるのなら、その方がありがたいですし」

 

 ということで、魔法陣に入っていく。その先に、なぜか存在する魔物の巣窟。今回は、洞窟みたいな場所だ。ダンジョンの存在も、移動も、理屈は原作では説明されていなかったんだよな。というか、この技術があるのなら、俺の代わりに転移の道具を作ってくれないだろうか。

 

 気軽に転移できるようになれば、知り合いに会いやすくなる。アストラ学園を卒業しても、時々顔を見に行ったりできるだろう。そうなれば、最高だよな。移動に手間がかかるのは、地味に疲れる。

 

「来たわよ! さっそく、魔物たちと戦っていきましょう!」

「とりあえず、動くか。闇の衣(グラトニーウェア)! ほら、お前達も」

 

 ミーア達にも防御の魔法を使えば、よほどのことがない限り大丈夫だろう。まあ、大抵の状況は、魔法を込めたアクセサリーを贈ってしまえば、どうとでもできるだろうが。

 

 そういえば、ルースやハンナ、ミュスカにも渡しておきたいな。まあ、いま考えるべきことじゃないか。目の前の敵を、どうするかだよな。

 

 まあ、見た感じ、特筆すべきところもない、ただのザコばかりなのだが。とはいえ、油断は禁物だ。誰も傷つかなくて良いように、ちゃんとしないとな。

 

 とはいえ、王女姉妹だけでも、乗り切れる敵ではあるだろう。そこを、どうサポートするかだ。

 

「ありがとうございます、レックスさん。やはり、心強いですね。この防御があれば、安心できます」

「レックス君の魔法、とっても強いものね! でも、私達だって強いのよ! ねえ、リーナちゃん」

「せっかくですから、全力を出してみましょうか。失墜する星(コールメテオ)!」

「私も続くわ! 神の裁き(ホーリージャッジメント)!」

 

 ということで、リーナはどこから現れたのかよく分からない隕石を、ミーアは光の奔流を、それぞれ放っていく。それだけで、ほとんどの敵は消えていった。まあ、何度でも魔物は湧いてくるのだが。

 

 一応、最奥まで進んで、ボスを倒せば脱出できる様子だ。原作と同じだな。設定通りだと、学園の側で管理しているはずだ。

 

「なら、討ち漏らしを仕留めてやる。音無し(サイレントキル)!」

 

 まあ、俺の役割は単純だ。王女姉妹を、最低限サポートする。ということで、剣技で敵を仕留める。そうすることで、順調に敵は倒れていった。

 

 特に苦戦もしないまま、ボスを含む全ての敵を倒すことに成功した。まあ、当たり前だよな。原作でも終盤の敵を倒せる人が、ただの課題で苦戦するはずもない。

 

「終わったな。まあ、楽な仕事だったな」

「もう、レックス君! せっかくの機会なんだから、みんなで全力を出しましょうよ!」

「そうですね。結局、私達だけで、ほとんど全部の敵を倒しちゃいましたよ」

 

 ミーアもリーナも、どこか不満そうだ。言葉から察するに、俺も活躍しろということなのだろうが。まあ、言っていることは分かる。せっかく組んでいるのなら、俺だって仕事をするべきだろう。

 

「俺だって、討ち漏らしを仕留めたんだがな」

「そんなの、他の人でもできるもの! 私達なんだから、もっとすごいことができるはずよ!」

「姉さんの言い方は曖昧ですけど、同感です。レックスさんは、窮屈そうでしたからね」

 

 なら、次はもっと俺が役立てるように、考えてみるか。どうも、王女姉妹は物足りない様子だし。

 

「ふむ。一理あるか。俺は攻撃魔法を使っていないからな」

「そうよ! これなら、リーナちゃんの2人と、あまり変わらないわ!」

「難しいことを言っているのは分かります。でも、戦力の無駄使いですからね」

 

 ああ、少し手を抜きすぎたか? 王女姉妹だけで十分だと思っていたが、仕事を押し付けているようなものだものな。それに、3人で2人分の動きをするのなら、組んでいる意味はない。

 

 連携というのは、難しいものだな。だが、挑みがいのある課題だ。これから先、もっと頑張っていこう。そうすれば、きっと素晴らしい光景を見られるだろうから。その瞬間が、楽しみだ。

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