物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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125話 信頼への道は

 フィリスの手によって、俺は知り合いばかりと組んで課題に挑むことになっている。最善を目指すのならば、他の人とも協力する努力をするべきなのだろうが。

 

 俺が人間関係を広げて、多くの人と仲良くする。それが理想ではあるだろう。ただ、現実的には、相当難しいよな。

 

 そもそも、相手の側には悪い印象がある。その上で、俺は口が悪いし態度も良くない。演技だと説明するのは論外だ。そんな状況で、どうやって好意を持ってもらうというのか。

 

 ハッキリ言ってしまえば、仲良くしてくれるみんなが、おかしいだけなんだよな。いや、ありがたいのは確かだが。

 

 だから、いま親しい相手には、しっかりと感謝しないとな。そして、関係が途切れないようにしないと。それは、当然の義務でもあり、俺がやりたいことでもある。

 

 なんだかんだで、ミュスカの存在もありがたいんだよな。内心がどうであれ、表面上は親しくしてくれている。それは、今では素晴らしいことだと理解できる。

 

 やはり、信じられるようになりたいものだ。ミュスカだって、信じられること自体は嬉しいはずなのだから。

 

「今回は、私達がペアだね。なんだか、嬉しいな」

 

 本当に嬉しそうに笑うミュスカは、可愛らしいものだ。実際、今みたいな顔を作れるようになるまで、どれほど努力したのだろうな。そこは、素直に尊敬できる。俺が同じことをしろと言われても、できないだろう。

 

 だから、ちゃんと2人の関係を大事にしないとな。努力できる人は、好きなのだから。

 

「そうか。物好きなことだ」

「レックス君は、自分が好かれるって考えていないんだよね。だから、そんな言葉が出るんだね」

 

 まあ、当たっている。的確に相手の感情を読めるのも、すごいよな。あるいは、良いように解釈した言葉を言い続けているのかもしれないが。

 

 どちらにせよ、並大抵の努力では無理なことだ。本人の前で褒めたら大問題だが、感心すべきことなんだよな。

 

「好きに考えていろ。お前がどう思ったところで、俺は変わらない」

「うん、そうさせてもらうね。好きに、レックス君を支えるからね」

 

 ということで、ダンジョンへ向かう。転移の魔法陣に入って、別の空間に移動する。今回は、洞窟みたいな場所だ。

 

 どういう仕組みなのか、とても気になる。だが、俺が解明するのは難しいだろうな。そこまで、魔法理論には詳しくないし。

 

 フィリスなら解き明かせそうだから、いずれは聞いてみたいところだ。そうすれば、俺はまた一段階強くなれるだろう。

 

 洞窟は様々な方向に枝分かれしていて、とても複雑な構造だ。魔物の数も多く、それなりに面倒でもある。ただ、少しくらいは厄介じゃないと、いい加減、伸びなくなるだろうからな。

 

「ちょっとは強い敵になってきたね。少しは段階を踏めってことなのかな」

「さあな。どんな敵であろうと、片付けるだけだ」

 

 というか、倒さないと終わらないからな。もし仮に、俺達がやらかしてピンチに陥ったら、どうなるのだろうか。いや、別に知りたくはないが。

 

「そうだね。レックス君、好きに戦ってね。私が合わせるから」

「なら、さっさとやるか。闇の刃(フェイタルブレイド)!」

「残りは、私が! 魔力奪取(ブラックシーフ)!」

 

 俺が魔力の刃を爆発させると、ミュスカは余剰魔力を回収しつつ、残りの敵に攻撃していく。うまい連携と言って良い。こうして一緒に戦うと、優れたパートナーだと思える。

 

 何度でも考えることだが、ミュスカを信頼して、本当の意味で仲間になれたらな。そうできれば、きっと素晴らしい未来が待っているだろう。

 

「やるじゃないか。おかげで、だいぶ楽ができた」

「レックス君を支えるって、言ったでしょ? 私に任せてよ!」

 

 朗らかに笑うミュスカを見ていると、ほだされそうになっている自分が分かる。いや、疑うことが正しい訳ではないのだが。

 

「なら、合わせろ。簡単に勝たせてやるさ」

「もちろんだよ。2人なら、どんな敵も楽勝だよね」

「油断して無様をさらさないことだ。その時は、笑ってやるさ」

「そんな事にはならないよ。レックス君を心配させちゃうからね」

 

 言葉からは、良い人という印象しか持てない。原作知識がなかったら、とっくに信頼していただろうな。それは良かったのか、悪かったのか。

 

「だったら、すぐに終わらせるぞ。面倒だからな」

「ふたりっきりの時間がすぐに終わると、寂しいな。せっかくの機会なのに」

「うるさいやつだ。まあ良い。たまには、お前の戯れに付き合ってやろう」

「ありがとう、レックス君。ちゃんと、活躍するからね」

「まったく。敵が現れるかもしれないというのに」

「私を心配してくれているんだよね。嬉しいな」

 

 にっこりと微笑む姿を見ていると、信じられているような気がする。俺が居れば、安心なのだと。ただ、演技できる人でもあるからな。そう疑うのは、良くないことなのだろうが。

 

「さあ、行くぞ。闇の刃(フェイタルブレイド)!」

「レックス君の邪魔はさせないよ。魔力奪取(ブラックシーフ)!」

「もっと行くぞ! 無音の闇刃(サイレントブレイド)!」

「好きに動いてね! もう1回、魔力奪取(ブラックシーフ)!」

 

 遠距離から敵に攻撃しても、敵に突っ込んでも、うまくサポートしてくれる。特に、俺を巻き込まないように、俺の邪魔になりそうな敵を排除してくれているのがうまい。

 

 安心して、近くにいる敵を切り刻める。やはり、信じたい相手だよな。この連携を繰り返せるのなら、心強い味方だろうに。

 

「この調子なら、ボスまでは楽に進めそうだね。やっぱり、レックス君は強いね」

「当然だろう。俺は天才なんだからな」

「私も、負けていられないね。レックス君の力になるためにも」

 

 胸のあたりで拳を握りつつ、柔らかい顔をしている。頑張り屋って印象を持てるな。実際、努力家であることは疑う理由はないのだが。方向性はどうあれ、どれだけ訓練して、我慢を繰り返したのかは、容易に想像できる。

 

 やっぱり、仲良くしたい相手だと言える。相手からどう思われているのかは、分からない。それでも。

 

「そう簡単に追いつけるのなら、才能になんて何の意味もないだろうさ」

「かもね。でも、私だって努力を続けるよ。ひとりだと、寂しいでしょ?」

「知らんな。俺が持つような感情ではないのだから」

「そんな事ないよ。レックス君だって、人間なんだもん。だから、友達になりたいんだ」

「人間なら、そこら中に転がっているだろうに」

「別に、誰でも良い訳じゃないよ。前にも言ったかもしれないけれど。レックス君は、特別なんだ」

 

 その言葉は、誘惑なのかどうなのか。ほんの少し、騙されても良いかもしれないと考える俺も居る。それは、計算通りなのかもしれないが。

 

 自分から信じない人間が、どうやって信頼されるのか。そう思うからこそ、邪推は捨てたいんだがな。

 

「そうか。まあ、好きにしろ」

「うん。そうさせてもらうね。じゃあ、次にいこっか。今度は、私が前に……」

 

 そう言いながら歩くミュスカが、突然消えた。

 

「ミュスカ!? この感じ、ダンジョンに入った時と同じ? つまり、転移の類か!?」

 

 つまり、彼女は何かしらの罠にハマったことになる。もしかしたら、命に関わるレベルの何かに。急いで、助けに向かわないと!

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