物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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142話 それは諦めか

 今日は放課後の空き時間に、ルースに呼び出されていた。とはいえ、悪いことではないだろう。敵意は感じなかったし。

 

 最近は、連携に関してはかなり進んでいるので、だいぶ余裕がある。なので、話でも何でも構わない気分だ。

 

 というか、友達に誘われたのなら、それこそ犯罪でもない限りは受けたいが。親しい人との時間は楽しいからな。

 

 呼び出された空き教室に向かうと、そこにはハンナとミュスカも居た。ある程度は関係ができている人の集まりだな。何の要件だろうか。

 

「ハンナさん、ミュスカさん、あたくし達で、魔法について語りましてよ。ちょうど、目の上のたんこぶが居る仲間ですもの」

 

 ルースとハンナにとっては、誰なのだろうか。ミュスカにとっては、俺なのだろうが。同じ闇魔法使いは、俺だけなのだから。

 

 まあ、言い方はともかく、対策は必要だよな。自分より強い相手に何もできませんでは、この世界では生き延びられない。

 

「なら、どうして俺まで呼ばれたんだ? お前達にとっては、目の上のたんこぶそのものだろうに」

「では、わたくしめから。フィリス様のお弟子の意見も、聞いてみたかったのですよ」

 

 ああ、納得できる話ではあるな。フィリスの魔法に対する見識は、素晴らしいどころではない。別の師匠を持っていたならば、俺は今より弱かっただろう。

 

 ただ、俺に良い意見が言えるかどうかは怪しいな。闇魔法以外には、そこまで詳しくない。

 

 原作の知識もあるとはいえ、どんな技を覚えるとか、技をどう使うとか、その程度だ。だから、3人の望む回答ができるかは、な。

 

「それに、レックス君は友達だからね。ライバルだけど、敵じゃないんだよ」

「あたくし達は、レックスさんに勝ちたいのであって、殺したいのではないですもの」

 

 まあ、俺だって、ルース達の役に立てるのなら嬉しいが。自分だけで技術を独占したいとか、俺だけが強ければ良いとか、そんな感情はない。

 

 そもそも、俺が強くなりたいのは、みんなとの未来をつかみ取るためなのだから。

 

「なら、好きにすればいいが。俺に聞かれて、対策を取られるとは思わないのか?」

「そんな小さな事を気にしていては、もっと大きなものにつまずきますから。それに、貴殿は、わたくしめの成長を、喜んでくださりますからね」

 

 確かに、一番大事なのはルース達自身が強くなることか。そこをおろそかにしては、正しい道とは言えないだろう。

 

 なら、できることはやりたいところだ。まあ、俺の発想は、そこまで優秀な訳では無いが。

 

「では、本日の議題は、どうやって属性の壁を超えるかでしてよ」

「なら、私は別なんじゃないかな? いや、大事な話だとは思うけれどね」

 

 ミュスカの言う事は分かる。ただ、話の流れとして必要だから言っただけにも見えるな。表情を見る限り、嫌そうでもないし退屈そうでもない。

 

 どちらかというと、楽しそうに見える。友達との時間が楽しいみたいな考えなら、嬉しいのだが。

 

「闇魔法を持つものは、属性に優れた側。それは事実でしてよ。ですが、だからこその視点もありましてよ」

「じゃあ、頑張っていくね。でも、答えは単純じゃない?」

「それが問題でありますな。結局のところ、同じ努力を重ねる天才には、勝てないのです」

「だからといって、諦めるのは論外でしてよ。何か手段を探すのは、当然の努力よ」

 

 ルースの姿勢は、尊敬できるものだよな。とはいえ、以前のような無茶はしてほしくないが。いくらなんでも、自分が傷つくほどの努力は良くない。

 

 ただ、目標に対して真剣なのは、強く伝わってくる。決意を秘めた目をしていることもあって。

 

 とはいえ、答えが単純だというミュスカの意見は正しいだろう。奇抜なことをしたところで、結果には繋がらない。そして、才能というのは時に残酷なまでの差を生む。

 

 ただ、だから諦めろと言うつもりはない。それは失礼だし、何よりもルースもハンナも諦めないだろう。だったら、少しでも道に近づけるように、協力するだけだ。

 

「カミラとフェリシアに共通しているのは、魔力量が多いことだ。つまりは、魔力を使い続けるだけだな」

「いえ、魔法の精度もありますな。わたくしめも、そこを伸ばさなければ」

「それでは、これまでと同じでしてよ。新しい解には、ならないわ」

 

 特にルースは、並大抵ではない努力を重ねてきたからな。それこそ、壊れそうになるくらいに。だから、別の道を探すというのも分かるのだが。

 

 とはいえ、属性の壁を超える手段があるのなら、何か資料くらいはあるだろう。フィリスが言い出さないあたり、特別な回答はないと思える。

 

「ただ、地道な努力は大切じゃないかな? そこを捨てちゃったら、ダメだと思うな」

「同感だな。学問に王道なし。それと同じことだろう」

 

 仕方のない現実だ。コツコツ積み重ねる以外に、優れた答えはない。もちろん、効率の良い手段はあるが。

 

 運動で言うならば、正しいスポーツ理論通りに自分を鍛える。勉強で言うならば、解ける問題にばかり時間を使わず、できない問題を潰していくこと。

 

 ただ、みんなが分かっていないとは思えないんだよな。はっきり言って、基礎中の基礎だし。

 

「わたくしめ達でも、レックス殿に勝てる手段はあると思います」

「分かるよ。私達3人で、協力するんだよね」

 

 それは、確かに重要だよな。俺だって抱えていた問題だ。自分ひとりで全部をこなそうとすれば、無理が出る。

 

 だからこそ、他者との協力は大切なんだ。俺だって、どこまで理解できているのかは疑問だが。

 

「それでは、何も変わりはしないわ。結局は、個人としては勝てない」

 

 ルースの気持ちは、すごく分かる気がする。妥協のように思えるのだろう。自分の出した成果だとは思えないのだろう。

 

 とはいえ、少しは立ち止まってほしいところだ。特にルースは、一度危ない目にあっているのだから。

 

「別に良いんじゃないかな。私達は仲間なんだから。手を取り合うって、素敵だよ」

「同感でありますな。レックス殿は、憎むべき敵ではない。だから、すべてで勝つ必要はないのです」

「レックスさんは、あたくし達のような普通の魔法は使えない。それを、勝ちとしろと?」

 

 ルースと同じことを言われて、同じ立場なら。俺は納得しただろうか。そう考えると、嫌そうな顔をするのは分かる。

 

 ただ、俺にとっても重要な何かだと思う。俺には他の人に負けている部分がある。その事実を受け入れるのは、必要なことのはずだ。

 

「ちょっと違うかな。私達みんなで、勝っていれば良いんだよ」

「誰もが違うからこそ、協力する価値がある。そういうことでありますな」

「……納得はできないけれど、理解はできるわ。そうね。今は、それで良いわ」

 

 ルースは憑き物が落ちたような顔をしていた。やはり、追い詰められている部分はあったのだろう。今回の会話が、良い方向へ進むきっかけになってくれれば良い。

 

 俺も、みんなとの会話の中で、何かをつかめそうな感覚を手にしていた。まだ、具体的な形はない何かを。

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