物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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161話 本番に向けて

 俺は再び、王宮に呼び出されていた。ミーアから、話が伝わったのだろう。つまりは、俺が父を殺すための、本格的な計画の段階に入ったことになる。

 

 今回は、他の人達も一緒だ。カミラにフェリシア、ラナとジュリアも呼ばれている。当然、王女姉妹も居る。

 

 ジュリア以外は、理由は分かる。カミラは言うまでもないし、フェリシアもラナも、ブラック家と関係のある家だからな。

 

 まあ、ジュリアも、学校もどきはブラック家の運営であるということはあるのだが。それなら、シュテルやサラが呼ばれていない理由に説明がつかないからな。

 

 いずれにせよ、今回の計画にかかわりのあるメンバーが呼ばれているのだろう。状況が進んでいると、嫌でも実感できる。

 

 俺達は国王の私室に呼び出され、案内役の人にまとめて着いて行った。そして、国王の前に立つ。

 

 国王の傍には、王女姉妹も居る。3人とも座っていて、ちょっとピリついた空気が漂っている。まあ、当然だよな。やることがやることなんだから。

 

「皆のもの、よく集まってくれた。今回実行する計画について、お前達に説明しよう」

「みんな、楽にしてね。私は王族だけど、みんなの友達のつもりだから」

「姉さんは相変わらずですね。まあ、今回は良いんじゃないですか。他の人もいないですし」

 

 これで国王の身に何かあれば、疑われるのは俺達なんだよな。正直に言って、不用心だと思える。まあ、俺なら、護衛もろとも殺すのも、実力的には簡単だろうが。

 

 ああ、もはや警戒してどうにかなるメンバーではない。なら、信頼を示すという形で状況を利用した方が、効率がいいのか。

 

 いや、国王の考えていることが正確に分かる訳じゃないが。ただ、俺なら今みたいな思考をするだろうな。

 

「それで? あたしたちをわざわざ呼び出すほどの用って何よ?」

「わたくしも、気になりますわね。どうも、レックスさんが関わっていそうですし?」

「レックス様が……。あたしも、気合を入れる必要がありますね」

「僕も頑張らないとね。レックス様に、恩返しする機会かもしれないし」

 

 俺のために頑張ってくれるのは、ありがたいのだが。とはいえ、今回ばかりはな。俺の手で決着をつけるべきことだろう。

 

 変に他の人に協力させると、甘えてしまいそうだ。でも、殺しなんて罪を、他人に押し付けるのはあり得ない。だから、ひとりの方が楽というか、覚悟が決まりそうだ。

 

「レックスよ、慕われているではないか。結構なことだな」

「ありがたきお言葉です」

「では、説明していこう。この計画の要は、レックスだ。お前の転移を利用して、即座に事を決める」

 

 まあ、妥当だな。転移の力があれば、簡単に侵入できる。その力を利用しない理由がない。なぜ国王が俺の能力を知っているのか。まあ、ミーアから説明を受けたのだろう。俺は、王女姉妹の前で転移を使ったからな。以前、兄が起こした事件の際に。

 

 それに、弱い人間を連れていけば、その人たちの安全に気を配る必要があるからな。ヘタに軍勢が一緒になるより、よほど楽だ。

 

 他にも、大勢を動かせば、どうしても兆候は起きるだろう。それを父が察知しないと考えるのは、楽観が過ぎる。結果的には、多くの犠牲が出るだろうな。

 

 総合的に考えて、いま説明された戦術が、効率がいいはずだ。俺としても、納得できる。

 

「かしこまりました。必ずや、成功させてみせます」

「なぜ他の人間を集めたのかも、必要な情報であるな。今回は、ブラック家の当主、ジェームズを討つためのものだ」

 

 やはり、そうか。みんなを集めたのは、今の説明のためだよな。

 

 それにしても、よく話す気になったな。誰かが裏切れば、大変な状況になるだろうに。みんなも、信用されているのか?

 

 納得のいく理由は思いつかない。まあ、何の説明をせずに計画が実行されても、みんなは不審に思うか。

 

「あっそ。どうでもいいわ。あの家に、思い入れなんてないもの」

 

 カミラは本気でどうでもよさそうだ。声からは何の感情も伝わってこない。メアリのことくらいは、気にしてくれると嬉しいのだが。

 

 まあ、ふたりが話している姿は、ほとんど見たことがない。それなら、大した情はないのも当たり前か。これから、俺が動くべきなのだろうな。

 

「では、カミラは問題ないな。ラナとフェリシアは、混乱する家の様子を、確認したいだろうと考えたのだ」

「確かに、大事ですわね。ブラック家とヴァイオレット家は、近しいですから」

「あたしのインディゴ家も、ブラック家には借りがありますからね……」

 

 フェリシアは、どう考えているのだろうな。俺の味方でいようとしてくれているのは、伝わるが。どうにも、感情を隠すのがうまい人だからな。少なくとも、俺はフェリシアが隠したいことには気付けないだろう。

 

 ラナの方は、俺の父に恨みはあるだろう。なにせ、人質としてブラック家に送られたのだから。それなら、今回の件はどう思うのだろう。

 

「うむ。良ければ、お前達もレックスを支えてやってくれ」

「言われるまでもないことですわ。わたくしは、レックスさんのパートナーですから」

「そうですね。レックス様に迷惑をかけないよう、注意したいです」

 

 ふたりがウソをついていないのなら、俺を支えるつもりではあるのだろう。いや、信じるつもりではあるのだが。

 

 ただ、状況が状況だからな。内心になにか抱えていても、おかしくないとは思う。それでも、俺の敵になるとまでは思わない。なら、ふたりに負担がかからないように、気をつけておけば良いか。

 

「ちょっと待ってよ! レックス様が、お父さんを殺すってこと!? なんで!?」

「父の罪を息子が償う。必要なことなのだ。ジュリア、お前には、レックスがとどめを刺したことを確認してもらいたい。証人として」

「そんな! 僕は反対だよ!」

 

 ジュリアの気持ちは、とても嬉しい。だが、いまさら引き返せないんだ。それなら、今は反対してほしくない。できるだけ、国王の心象を良くしてほしい。

 

 俺のせいで国王に嫌われでもしたら、責任を取ることすらできないからな。

 

 ただ、国王の案については、気になるところだ。どうして、ジュリアなのだろう。ミーアやリーナでは、ダメだったのだろうか。

 

 いや、俺は戦いに向かうんだから、王女姉妹にとっては危険な場所だ。それを避けさせるのは、親としては当然か。なら、おかしくはないのだろう。

 

「やめておけ、ジュリア。今の状況で王に反発して、得することは何も無い」

「レックス様、でも!」

「それよりも、お前は俺の足を引っ張るなよ。それにだけ、気をつけておけ」

「……分かったよ。レックス様。ちゃんと、王様に報告するね」

 

 顔を見るに、納得はできていないのだろう。まあ、立場が逆なら、俺も納得しない。それでも、俺の言葉に従ってくれる。その信頼に、応えなくてはな。

 

「バカ弟、こんなつまらないこと、さっさと終わらせなさい」

「わたくしも、わたくしの仕事をする必要がありそうですわね」

「あたしもです。ちょっと、確認することができましたから」

「話はまとまったようだな。では、計画を実行するまで、普段通りに過ごしておくことだ」

 

 そうだな。前兆が出るような行動をすれば、父に疑われかねない。なら、今の言葉通りにするのが筋か。

 

 いよいよ、俺が父を殺す日が迫っている。それが実感できて、ため息を吐きたい気分だった。

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