物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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188話 必要なもの

 ブラック家に戻ってきたところで、今後の方針を決める必要がある。当主として、そこだけはこなす必要があるだろう。他のことは、できる人間に任せるのが理想だ。俺が何もかもをこなそうとするのは、絶対に破綻するという意味で問題だ。

 

 とにかく、俺に家を運営する能力はない。努力を続ければ、伸びるのかもしれないが。ただ、いま必要なのは、長い目で見た先の話ではない。今すぐにどうにか対処をすることなんだ。

 

「当面の課題としては、俺がアストラ学園に戻れる体制づくりだろうか」

 

 これが正しい方向性かは分からない。もっと優先するべきことがあるのかもしれない。ただ、明確な目標があるかないかで全然違うのは、経験則で分かる。

 

 とりあえず、俺がいちいち確認しなくても動くようになっているのは、学生という身分からしても都合が良い。

 

 どうしても、アストラ学園というか、原作の事件に関わる必要はあるからな。まったく同じ事件にはならないだろうが、それでも。

 

 ということで、方針として示してみた。ジャンとミルラの顔には、そこまで違和感がない。つまり、論外な発言をしている訳ではないのだろう。

 

「そのためには、誰かが兄さんの代理をこなす必要があります」

「できれば、それはジャンに任せたい。お前なら、信じられる」

 

 というか、他にいない。能力的には、ミルラでも良いかもしれない。ただ、ブラック家の血族ではないからな。どこまで周囲が従うのかが問題と言える。

 

 今のところは、ジャンが家をまとめている様子なのだから、引き続き任せるのは合理的なはずだ。そうだよな。

 

「ありがとうございます。期待に応えられるように、精進しますね」

「私は、レックス様のお側にいる必要がございますからね」

「そういうことだ、ミルラ。気を悪くしないでくれよ」

「ええ、もちろんでございます」

「それは良いけど、どうやって状況を改善させるつもりよ?」

 

 カミラの言葉は、重要なことだ。今のブラック家は、当主が死んだばかりで混乱している。だから、立て直しのための動きが必要だ。その具体的な行動は、どんなものだろうか。

 

「本当にな。とりあえず、動かせる人がどれだけ居るかが問題だよな。流石に、この場にいる人間だけでは、どうにもならない」

「私の知り合いには、あまり期待できそうにないですね。他の方面なら、といったところでしょうか」

 

 事務仕事ができるかどうか、周囲との交渉ができるかどうか。そのあたりが、必要な能力のはずだ。なら、文官を集めるのが課題か?

 

 とはいえ、ブラック家に恨みを抱えている人間も多いだろう。周囲を守るためにも、力は必要だ。まあ、個人の能力では、メアリがいたら事足りる気はする。ただ、あまり戦いに巻き込みたい相手ではない。そうなると、どうするのが正解だろうな。

 

 あまり強い人間を抱え込んだら、裏切られるのも想定できる。そうなると、選定が大事になってくるよな。

 

「ご主人さま、わたしにできる事はありますかっ?」

「メイドとして俺を支えてくれれば、十分だ。ありがとうな、ウェス」

「メアリ、魔法くらいしかできないの。お兄様、ごめんなさい」

「謝ることはない。それだって、大事な力なんだから」

「僕も動いていますが、手が足りないのが実情ですね。すでに離反というか、去っていった人も多いですから」

 

 まあ、そうだよな。今のブラック家は、周囲から見て良い環境ではないだろう。そこをどうするかが、目下の課題か?

 

「そうなると、人を集めるしかないだろうか。だが、どうやって集める? 重要な仕事を任せられる人材に、心当たりはあるか?」

「アカデミーの卒業生に声をかけるのも、ひとつの手段ではございます。ただ、期待薄と言わざるを得ません」

 

 なるほどな。俺には無かった発想だ。期待薄なのは、どこから人材を集めようとしても同じことだろう。それなら、今すぐとは言わずとも、いずれは手を回したい。

 

 実際、アカデミーの人間が求める条件というのは、どんなものなのだろうな。それさえ分かれば、方向性を決められるのだが。

 

「まあ、ブラック家の評判は悪いし、今しがた当主が死んだばかりだ。泥舟と感じても、おかしくはないよな」

「そこが問題でございます。優秀な人を集めるための道筋が……」

 

 ミルラとジャンが居るだけ、救われているよな。この2人が居なければ、とっくに終わっていたと思う。だからこそ、この状況を乗り越えて、ちゃんとした報酬を渡したい。そうできなければ、誰よりも俺が納得できないのだから。

 

「とはいえ、物理的に手が足りないのも事実です。とにかく、集める方向性で進みましょう。告知をおこなう必要があるでしょうね」

 

 ジャンの判断は、当然のものだろう。とにかく、今この場を乗り切らないことには、先のことなど考えられない。自転車操業に近い考えではあるが、背に腹は代えられないからな。

 

「まあ、そうだよな。問題は予算だ。できれば、良い待遇で迎えたい。流石に、報酬が低いと優秀な人間は集まらないだろう」

「私個人の資金で良ければ、どうぞお使いください。レックス様のお役に立つのが、私の役割でございます」

 

 ミルラの気持ちは嬉しい。でも、どうしたものか。自分の金は、自分のために使ってほしいものだが。ただ、助かるのも事実。

 

 そうだな。まだ、必要かどうかは決まりきっていない。今すぐ受け取ることはないだろう。

 

「とりあえずは、ブラック家の資金で考える。どうしても必要なら、頼らせてもらうよ」

「それが賢明でしょうね。ミルラさんの資金だって、無限ではありませんから。頼る前提では、崩壊します」

「かしこまりました。その方向性で、準備を進めさせていただきます」

 

 とりあえず、方針は決まった。人を集めるために告知を出して、その人間を選定して、仕事をこなしてもらう。即戦力がありがたいが、どうだろうな。

 

 まあ、足を引っ張る人ではない限り、いてくれた方が良い。今は、とにかく手が足りない様子なのだから。

 

「あたし達をいやらしい目で見るやつは、叩き出してやればいいのよ」

「メアリも、協力するね。お兄様の邪魔をする人は、許さないもん」

 

 確かにな。カミラやメアリ、他の仲間を傷つけようとする人は、お断りだ。ただ、心配しすぎてもダメだ。難しい問題だが、前に進むしかない。

 

 不安でいっぱいだが、まずは一歩、足を踏み出そう。

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