物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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196話 妥協点を探して

 フェリシアがやってきたことで、お互いの家が連携を進めていくということの確認ができた。最悪の場合、家の都合で敵対する可能性もあり得たからな。まずは一安心といったところだ。

 

 とはいえ、まだ課題は山積している。ヴァイオレット家から、手を借りられないだろうかという考えもよぎるくらいには。

 

 ただ、急ぎすぎても結果はついてこない。フェリシアに寄りかかった結果として共倒れするのは、絶対に避けるべきだろう。

 

 そうなると、何ができるだろうか。悩ましいところだな。ただ、フェリシアはしばらく滞在するつもりのようだ。その間に、ふたつの家の方針をまとめておきたいところ。

 

 とりあえずは、2つの家の関係を表立って宣言するのもいいかもな。これからも協力していくと。そうすれば、流れに着いてくる家もあるかもしれない。

 

 そんな事を考えていると、ジャンとミルラが俺の部屋にやってきた。

 

「兄さん、こちらに任されていた人材採用のことなんですが……」

 

 その件か。できるだけ急ぎつつも、慎重に進めたいという話をしていたところだ。いきなり大勢を集めようとしても、確実に失敗する。だから、数人だけ採用するという方針で、第一回の試験を行う手はずになっていた。

 

「何か問題でもあったのか?」

「ハッキリと問題が発生したということは、ございません。ですが、良い成果とも言えませんね」

 

 それは、良い報告なのか悪い報告なのか。まあ、もう少し詳しく聞いてから判断すべきところか。

 

「つまり、優秀な人材は集められなかったと?」

「そういうことですね。とりあえず、最悪の場合には僕が処分できる人を選びました」

「言わずともお分かりでしょうが、誰も採用しなければ、次に繋がりませんから」

 

 最悪の場合とは、つまり俺達に反逆するということ。あるいは、何か大きな事件を起こすということ。いずれにせよ、簡単に殺すデメリットを説明するまでもないよな。ジャンもミルラも、当然のように理解していることのはずだ。

 

 それでも殺す必要のある状況なら、仕方のないことだ。人の命が失われずに済むのなら、その方が良い。だが、大切な誰かが危険にさらされるのなら、話は別だ。

 

 まあ、そんな状況になる可能性は、相当低いだろうが。今回採用されたのは、俺の贈ったアクセサリーの防御を突破できる人間ではないだろうからな。

 

「そうか。なら、紹介してもらえるか? フェリシアとカミラも呼ぶか」

「かしこまりました、レックス様。では、そのように」

 

 ということで、面談をおこなっていく。2人居て、片方はぶっきらぼうに、片方はにこやかに、こちらを見ている。印象としては、どちらも微妙だ。俺は、ミルラやジャンの言葉に影響を受けているのだろうか。あるいは、直感が働いたのだろうか。

 

 いずれにせよ、慎重に確認していきたい。俺達の今後に関わるんだからな。

 

「グレンだ。俺を従えたいと思うのなら、相応の力を示すことだな」

 

 さっそく、問題のありそうな発言を。名字がないあたり、平民なのだろうか。それで対応が変わるということはないが、少し気になる。

 

 グレンは、力を信じているといった様子に見える。ふてぶてしい印象もあり、不良っぽい感じだな。ぱっと見は、高校生から大学生くらいに見える。

 

「とか言って、ただのザコじゃない。バカ弟どころか、アストラ学園の底辺にすら勝てないわよ」

「そうですわね。わたくしから見ても、弱々しい魔力ですこと」

 

 まあ、俺から見ても弱いだろうとは思うが。だからといって、本人の目の前で言うことか? それとも、圧迫面接で適性を測るみたいなやつだろうか。こういうところを見ると、カミラやフェリシアは原作では悪役なんだと実感できてしまう。

 

 とはいえ、気持ちは分かる。グレンは礼儀知らずに見えるからな。それだけで、良い印象を持つことは難しい。世間知らずなのか、単に愚かなのかは分からないが。

 

「……なんだと? 舐めた口を利いてんじゃ……」

 

 身を乗り出しそうになったグレンに対し、カミラは魔力を放出する。それを見ただけで、グレンは一歩下がっていた。そして、カミラに目を合わせようとしなくなる。

 

「ほら、この程度の魔力で怯える。話にならないのよ、その程度じゃ」

「姉さん、あまり弱いものいじめをしてやるな」

「俺が弱いだと!? ふざけやがって……」

 

 今の状況で、自分の弱さを認められないのか。それは、評価が一段階下がってしまうな。グレンを採用するあたり、本気で良い人が集まってこなかったのは分かるが。

 

「僕は、ダルトン・バール・パープル。よろしくお願いしますよ」

 

 グレンをちらりと見た後、そう語りだすダルトン。見た感じだと、30前後といったところか?

 

 さっきまでの流れを見ていながら、笑顔をキープできる。その事実は、評価したいところだ。それと同時に、どこか胡散臭さも感じる。さて、どう判断するべきかな。

 

「ああ、よろしく頼む。お前の働き次第で、今後が決まるだろう」

「ふーん、冴えない男ね。こんなやつが、使えるのかしら?」

「虫には虫なりの使い所があるものですわよ、カミラさん」

 

 カミラもフェリシアも、口が悪いな。まあ、今の言葉にも耐えられないようなら、ふたりの相手は難しいだろう。そういう意味では、足切りとしては効率が良いのか?

 

 この辺、いずれは注意した方が良いのだろうな。グレンやダルトンの前で注意するのは、いろいろと問題が出てくるだろうが。

 

「人を虫呼ばわりとは、ずいぶん偉いもんなんだなあ?」

「まあまあ。僕達が優秀であると、存分に見せて差し上げればよいのですよ」

 

 グレンの印象は、完全に不良で固定されたな。ダルトンは、まあ悪くない。内心はどうあれ、俺達とダルトン達の立場を理解している。それが分かるからな。

 

 ただ、少し嫌な予感がする部分もある。念の為に、釘を差しておくか。

 

「先に言っておくが、指示に従わない人間は評価しないからな」

「勝手に動く手足なんて、捨てるべきものですわよ」

「そうね。そういう人間に限って、自分が優秀だと勘違いしているものよ」

 

 カミラは直情的に見えるが、意外と考えているっぽいんだよな。少し前、父の残した書類の内容をすぐに理解したこともあったし。だから、いま態度が悪いのも、単に機嫌が悪いというような理由ではないのだろう。

 

「……僕なら、あなた方の期待に応えてみせますよ」

「ちっ、仕方ねえな。逆らったら殺すんだろ? 分かってるよ」

 

 ダルトンの言葉、少し間があったな。さては、図星だったか? それが正しいとすると、あまり信用できない相手ということになるが。手柄のために先走る人間は、居ても邪魔なだけだからな。ミルラやジャンから見て優秀ではないのなら、なおさらだ。

 

「あたし達が手を下すほどの価値が、あんた達にあるのかしらね」

「ふふっ、適当な雑兵に、処分を任せますか?」

 

 本当に軽く、人を殺す話をしている。そこだけは、分かり合えないところだろうな。だが、それでいい。実際に殺すのでなければ、どれほど人の命を軽く見ていようが、問題ではないのだから。

 

 そして、カミラやフェリシアは、安易に人を殺すような人間ではないだろう。それなら、何も問題はない。まあ、少しは態度に気を使ってほしいが。

 

「とまあ、このような有り様で。レックス様のお役に立てず、申し訳ございません」

「兄さんにふさわしいとは言えませんが、これ以上も居なかったんですよ」

 

 ジャンやミルラですら、本人の前で言葉にしてしまう。それはつまり、忠誠を誓わせるつもりはないのだろうか。何も期待していないのだろうか。それなら、今の発言にも納得できるのだが。

 

 ちょっと、気をつける必要があるだろうな。今後については、よく考えないといけない。

 

「お前達で無理なら、それが限界だったんだろうさ。仕方のないことだ」

「レックス・ダリア・ブラック。お前は、いずれ俺に跪かせてみせる」

「僕は、あなた方に逆らったりしませんよ。グレンさんとは違ってね」

「そうか。せいぜい、己の実力を示すことだ」

 

 さて、これからどうなっていくだろうな。悪い方向に進まないことを、祈るばかりだ。

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