物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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209話 独断専行の罪

 ジュリアと話し合ったことで、お互いに理解を深められたと思う。俺達の願いは、同じところにある。出力が違っていただけで。

 

 結局のところ、大切な人と一緒に居たい。それだけのことなんだよな。俺達にとって必要なのは、親しい相手だけなんだ。

 

 だからこそ、周囲を軽んじるのは避けるべきなんだが。敵を増やしてしまえば、平穏は遠のくし、大切な人まで傷つきかねない。

 

 ジュリアなら、きっと分かってくれると思う。そこは、信じていいはずだ。

 

 とにかく、お互いに一歩進めたということで、その後は和やかに会話できていた。

 

 そんな時、ドアが開かれる。そちらを見ると、ダルトンがグレンを拘束していた。グレンの頬にはアザがあり、腕も折れている様子だ。これは、無理矢理捕まえたのだろう。

 

「レックス様、僕は犯人を捕まえることに成功しましたよ」

 

 ああ、犯人が分かったということか。いや、正しい保証はどこにもないが。それにしても、独断専行は避けるように忠告したのだがな。本当に、ろくでもないやつだ。

 

 ただ、ストリガが殺された件については、完全に忘れていた。ジュリアのことで頭がいっぱいだったからな。そういう意味では、助かったと言える。

 

「それで、ダルトン。そいつが犯人だという証拠は?」

「本人が自白したんですよ。何よりの証拠でしょう?」

 

 自信満々に言っているが、どうなんだろうな。どうも、自白するような人間には見えないが。というか、拘束しているあたり、暴力を振るって自白させた可能性もあるよな。

 

 なんにせよ、仮に犯人が正しかったとして、偶然当たっているだけだろうな。あれだ。クイズ番組で、戦国武将という情報だけしかないのに、織田信長と答えるやつだ。それで正解するのは、単なる無知の証明なんだよな。

 

 ということで、ダルトンを評価することはありえない。とはいえ、どう説明したものかな。まずは、犯人と言われている奴らに確かめてみるか。

 

「そういうことらしいが、どうなんだ? グレン」

「バカにするなよ! 本当に犯人だとして、自白なんてするとでも!?」

 

 まあ、そうなるよな。力ずくで連れてきたのは確かなようだが。グレンの心は折れていないようだ。さて、どうするか。

 

「とのことだが? ダルトン、これはどう説明する?」

「僕の推理を疑うとでも? 確かに、グレンが犯人なんですよ」

「仮に自白したとして、お前が痛めつけて言わせた可能性は、否定できない。それを理解することだな」

「もういい! こんなガキを頼りにした僕がバカだった! 三重反発陣(トライマジック)!」

 

 突然、ダルトンはグレンに魔法を放つ。あまりにも訳の分からない行動に、つい反応が遅れてしまった。そのままグレンは倒れてしまう。これは、失敗したな。

 

 とはいえ、急に発狂して魔法を放つ人間を想定するのは、普通はできないだろう。いや、言い訳でしかないか。これで親しい人を攻撃されていたのなら、もっと大きな問題だった。

 

「グレン! ……息はないか。これ以上暴れられたら、面倒だな」

「僕がやろうか?」

「いや、何をするか分からない相手なら、俺の能力の方が対応しやすい」

「お前だって犯人なんでしょう! おとなしくしていればいいものを!」

 

 ダルトンに攻撃を仕掛けると決めると、その直後にノックがされて、ドアが開く。

 

「ご主人さま、お飲み物はいかがですかっ?」

 

 ウェスが部屋に入ってきた。さっきの魔法を見る限りでは、俺の贈ったアクセサリーの防御は抜けない。だが、念の為にウェスを守るか。そう決めて、魔法を使う。そうしていると、ウェスの方にダルトンが駆け寄っていく。

 

「メイド、ちょうど良いところに! お前を人質にしてやる!」

「……つまり、ご主人さまの敵ですね。……さようなら」

 

 ウェスは、普段の様子からは考えられないほど冷たい声を出して、黒曜(ブラックバレット)をダルトンの方へ向ける。

 

「何を妙なことを……ぐはっ」

 

 そのまま、ウェスはダルトンの頭を撃ち抜いた。失敗だったな。ウェスの安全を優先したつもりだったが。ウェスに人を殺させるくらいなら、さっさと攻撃魔法を使っておけば良かった。急なことで、俺は混乱していたのだろうな。だが、次はもっと冷静に判断しないと。

 

 今回は、グレンという、どちらかというと嫌いな相手の犠牲で済んだ。いや、殺された事自体は悲しむべきだろうが。仮に犯人だったとしても、あんな殺され方は良くないのだし。

 

 とはいえ、俺が考えるべきことは、ダルトンのような異常者が相手だとしても、大切な人を守れるようにすることだ。となると、常在戦場の心構えが大事になるのだろうな。本当に、大変だ。

 

 だが、みんなを守るためなんだ。全力で、頑張らないとな。

 

「ウェス、大丈夫だったか? ダルトンは、死んだようだな」

「もちろん、大丈夫ですよっ。今度こそ、足を引っ張りたくなかったですからっ」

 

 ああ、以前、俺の兄がウェスを連れ去ったことがあったものな。その時のことを言っているのだろう。ウェスに責任はなくて、悪いのは犯人なのだが。いや、それで納得するような人なら、足を引っ張りたくないだなんて言わないか。

 

 不甲斐ないな。判断を遅らせたばかりに、ウェスに余計なことを考えさせてしまった。

 

「そうか。お前に手を汚させる前に、さっさと殺しておけば良かったな」

「いえ、お気になさらずっ。ご主人さまの敵は、わたしの敵なんですからっ」

「だとしても、殺さずに済む方が、心の負担が少ないからな」

「それなら、ご主人さまが殺したら、あなたが苦しいんですよね? なら、わたしが殺しますっ」

「うん。僕だって、レックス様に危害を加えようとする人相手には、迷わないよ」

 

 ウェスの言葉は事実ではあるのだが、そう捉えられてはまずい。俺は、ウェスに苦しんでほしくない。そのためなら、殺しの罪を背負うくらいのこと、どうということはないんだ。

 

 ウェスは決意を秘めた目をしている。だからこそ、止めたい。俺のせいで、つらい道を歩んでほしくないんだ。

 

「いや、無理はしないでくれ。お前が傷つくことが嫌なだけなんだ」

「分かりましたっ。でも、相手から攻撃してきたら、止めないでくださいねっ」

「わざわざ挑発したり、敵意を向けさせたりしないと約束してくれるのならな」

「もちろんですっ。ご主人さまの敵を増やしたって、良いことはないですからねっ」

「僕も、そのあたりを反省した方がいいんだろうね。やっぱり、失敗だったな」

 

 その言葉があるのなら、安心だ。自分の身を守ることまで、止めようとは思わない。そのための黒曜(ブラックバレット)なのだから。ウェスの安全を守るために贈ったのだから。

 

「それにしても、みんな死んでしまったな。結局、犯人は誰だったのやら」

「さあ? ですが、きっともう大丈夫ですよっ。怪しい人は、みんな死んじゃいましたからっ」

「シモンも、僕が殺しちゃったからね。もう、厄介な人は居ないんじゃない?」

 

 それは事実ではあるんだよな。一応、ジェルドは生き残っているとはいえ。できれば信じたい相手だからな。ただ、これからどうするかを、色々と考えないとな。

 

 シモンとストリガが死んだから、チャコール家についても考えなくてはならない。王家への対応も必要だ。今後やるべきことは、たくさんある。

 

「それもそうだな。悲しくはあるが、良い方向に考えようか」

「同感ですっ。これで、ご主人さまの邪魔をする人は、居なくなりましたよねっ」

「とはいえ、ちゃんと調査をしておくか。一応、隠れた真実が見つかる可能性もある」

「分かりましたっ。では、ジャンさまとミルラさまを呼んできますねっ」

 

 さて、今回の事件の真実は、どこにあるのだろうな。もはや気を使うべき相手は居ないので、全力で調査ができるだろう。ちゃんと、明らかにしないとな。

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