物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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258話 今ある問題

 問題を解決するためには、まずは課題をはっきりさせる必要がある。ということで、ラナに話をしてもらうことになった。

 

 いつまでもブラック家に居るわけにもいかないし、計画を練るばかりに時間を使っていられないのもある。ラナがインディゴ家から離れる時間も、最低限にしたいところだ。俺はジャンやミルラを信頼できるが、ラナが同じとは限らないからな。

 

 そんなことを考えていると、ラナに呼び出された。ジュリア達も一緒だ。ということで、今後の話をするのだろう。

 

 ラナは一人前に出て、ゆっくりと話し始める。

 

「さて、今回の件について、情報をまとめましょうか」

「そうだな。まずは目的をはっきりさせるのが大事だろう」

 

 敵が誰になるのか、どうやって対応するのか、最後の目標は何なのか。そのあたりを決めておかないと、行動方針にブレが出るだろう。そのためにも、ちゃんと聞いておかないとな。

 

 単に敵を倒して解決する状況なら、ありがたいのだが。それが一番楽だからな。なんて、この世界に染まり過ぎか。安易に人を攻撃するのは、やめた方が良いだろう。

 

「撫で撫でのために、手柄を立てる」

「もう、気を抜かないようにね、サラ」

 

 割と困ったセリフを言っているが、サラの目は真剣だ。だから、言うほど欲望にまみれていないのだろう。実際、真面目にもできる子だからな。彼女なりの親愛表現だと思えば、可愛らしいだけだよな。

 

 とはいえ、実際に気を抜かないのは大事なことだ。相手は犯罪をする集団なのだから、人を傷つけるのは珍しくないことだろう。

 

 一番気をつけないといけないのは、俺かもな。なまじっか強い自覚があるから、余計にだ。簡単に勝てると思ってしまえば、妙な失敗をしかねない。

 

「では、話を続けましょう。大きく分けて、三つの悪事があります。状況から考えて、それぞれ別の組織が手引きしているようですね」

「ふむ。連携を取られたりしたら、厄介そうだな」

「そうならないように、分断の策も必要に応じて実行します。まあ、お互い商売敵なので、あまり気にしなくても良いでしょう」

 

 まあ、確かにな。悪党なら、普通は自分の利益を奪われるのは許せないだろう。どちらが上かで揉めるイメージもある。

 

 ただ、最悪の事態は想定しておこう。とはいえ、力で押し切ることになりそうだが。

 

「僕達みたいに協力できれば良かったのにね。レックス様を奪い合ったりしないでしょ?」

 

 ジュリアは真面目な顔で言うものだから、つい吹き出しそうになってしまった。俺を奪い合うみたいな事態は、まあ経験がない訳ではないが。カミラとメアリ、フェリシアあたりが。

 

 とはいえ、冗談だろう。基本的には、こちらの気を軽くするためか、あるいはみんなで協力する意思を示しているはずだ。

 

「そんな修羅場は、勘弁してほしいものだな」

「もちろんです。私達は、レックス様に余計な手間をかけさせたりしません」

 

 まっすぐな目で語るシュテルからは、強い意志を感じる。尊敬してくれるのは嬉しいのだが、迷惑をかけてくれても良いのだがな。それが、仲間というものだろうに。

 

 とはいえ、俺にも立場があるからな。ブラック家全体に関わる迷惑だと、困ってしまうところだ。バランスが難しいんだよな。まあ、ここに居るメンバーは、メチャクチャな迷惑はかけてこないだろうが。

 

「ですね。それで、まずは誘拐と人身売買です」

「レックス様が売ってたら、絶対に買う。買って、私だけのものにする」

「奪い合ったりしないって話をしてたじゃないの……」

 

 サラが淡々と語り、シュテルは頭に手を当てている。というか、地味に怖い発想だな。俺を自分のものにしたいというのは。まあ、現実に実行するとは思えないし、そんな機会もないか。

 

 誘拐と人身売買は、まあ繋がっているのだろうな。さらった人間をどこかに売りさばいて、金にする。そんなところだろう。やはり、治安が悪い。できるだけ早く、止めたいものだ。

 

「というか、レックス様を誘拐できるのなら、もう何でもできるよね」

「まあ、フィリスよりは強くないと、難しいのか? あるいは、人質とかだろうか」

 

 少なくとも、力づくでは無理と言って良いのは確かだ。そんな事ができる力があれば、もっと効率的な手段なんていくらでもある。結論としては、俺が誘拐されることはあり得ないだろうな。

 

 ただ、魔法を使えば民間人を誘拐するのは簡単そうだ。それなら、対策は難しいかもしれない。正確には、下手人を倒しても、また次の誰かが現れかねないというところだな。そこまでやるのなら、警備体制などを見直す必要があるだろう。

 

「あたし達は、そう簡単に足を引っ張りませんよ。それで、次は麻薬の流通ですね」

「レックス様がいらっしゃるのなら、そんなまがい物の幸せは必要ありませんよ。いつだって、シュテルは幸福なんです!」

「それって、レックス様が麻薬よりも危険ってこと? 実力的には、そうかもね」

 

 まがい物の幸せなのはそうだが、意志の力で抵抗できるものでもない。まあ、闇魔法なら治療はできる気がするが。そうだよな。麻薬に関する啓蒙なんて、そう広まるものではないよな。

 

 麻薬の危険性については、しっかりと伝えた方が良いのかもしれない。脳を破壊するという話もあるくらいなのだから。

 

「確かに、撫で撫では至福。抱っこも至高。麻薬よりも良いに決まっている」

「そうなると、レックス様の魅力が伝わりさえすれば、麻薬など必要なくなるのではないでしょうか」

 

 真剣な目で言うシュテルは、狂信者にすら見える。まあ、自分の意志を失うような人ではないだろう。だから、そこまで心配していない。とはいえ、自分を追い込みがちな人でもある。目を離すのは、少し怖いな。

 

 ただ、周りにはジュリアもサラも居る。だから、無理をしたら止めてくれるはずだ。それに、シュテルが苦しいと俺が苦しいというのは、伝えたはずだからな。きっと、俺の意思は大事にしてくれるはずだ。

 

「おいおい、すべての民と顔を合わせるのは、物理的に不可能だぞ」

「そうですね。あたし達との時間も、奪われたくありませんし。それで最後ですが、商会を襲撃する事件ですね」

「レックス様にもらったものを奪われそうなら、絶対に許さない」

「確かに……。そんな人、地獄に落とした程度じゃ足りませんよね」

 

 想像しているだけなのに、相当厳しい顔をしている。俺の贈ったものを大切にしてくれていると思えば、嬉しいが。

 

 まあ、ありがちな盗賊だよな。そうなると、身なりの良い人が危険だったりするのだろうか。俺あたりがおとり捜査をするのも、悪くないかもしれないな。

 

「それよりも、奪おうとする前に倒した方が早くないかな」

「俺の贈ったものなら、魔力を通して場所を探れるんだがな。他だと、自分のものという証明すら難しいか」

「一点ものって、そう多くはないですからね。以上が、現状の課題ですね」

 

 とにかく、どれも弱い民衆こそが被害を受けている。許しがたい悪ではあるよな。ただ、どうやっても根絶できないだろうとも思う。

 

 結局のところ、主要な集団を打ち破って、インディゴ領の周辺は危険だと認識させるのが限度だろう。その分他領で発生する可能性はあるが、そこまで面倒を見きれない。ただ、ブラック領とヴァイオレット領には、気を配らないとな。

 

「ふむ。どれも厄介な問題だな。なら、なんとかしないとな」

「レックス様、みなさん。あたしに、力を貸してください」

 

 そう言って、ラナは頭を下げた。もちろん、俺はうなづいた。ジュリア達も、賛成のようだ。さあ、ラナの力になってやらないとな。

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