物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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259話 ジュリアの殺意

 僕は、レックス様に確かに救われた。いろんな物をもらったからね。温かい食事と寝床、色々な知識と技術、やりがいのある仕事と給料。そして何より、暖かい真心を。

 

 大切な人間として僕を愛してくれる人なんて、シュテルだけだと思っていたよ。でも、違ったんだ。出会ったばかりの頃から、レックス様はずっと僕を大事にしてくれた。

 

 それなのに、レックス様のお父さんに絡まった陰謀から、助け出すことができなかった。その事実は、ずっと後悔し続けるんだろうね。でも、もう迷わないよ。僕にとって一番大事なことは、もう決まりきっているから。

 

 きっと、それは僕だけじゃない。だからこそ、僕だけの形を見つけないといけないんだ。そのためには、無属性の魔法を活かすのが良いと思う。つまり、戦いだね。

 

 学校もどきの生徒の中では、僕が一番強いと思う。やり方次第では、フィリス先生にだって勝てる気がする。僕の魔法は、特別なんだから。レックス様を助けるための力はね。

 

「久しぶりに、レックス様のお役に立てる機会がやって来たね」

 

 きっかけを持ってきたのは、ラナ様。どうにも、色々な問題が起きているみたいだね。人々が苦しんでいるのは、悲しくはある。でも、優先順位は低いかな。

 

 今回は、僕がレックス様を支えるための人員として選ばれた。だから、その役割を達成することが最優先。そして、ラナ様の手助けをするのが次かな。

 

 もちろん、仲間たちを守ることだって大事だよ。でも、それだけかな。他のことには、あまり興味がないんだ。

 

「今度こそ、レックス様を傷つける人は殺さないとね」

 

 迷う意味なんて無い。レックス様と仲間以外の相手なら、誰だって犠牲にしていいよ。なんて、わざわざ犠牲者を増やすつもりはないけどね。けれど、レックス様の敵なら別だよ。どこに逃げようと、必ず殺す。それだけだよ。

 

「僕はもう、見ているだけなんて嫌だから。絶対に、やってやるんだ」

 

 人を殺すのが悪だとか、そんな理屈は知ったことじゃないよ。僕の大切な人を傷つける存在こそが、許されざる存在なんだから。

 

 それに何より、レックス様の優しさを失わせたくない。あの人は、僕達のためなら非情になれる。なれてしまうんだよ。そのたびに、自分を削りながら。心の中の嘆きを、隠しながら。

 

 でも、そんな未来なんて許せるはずないよね。だから、僕がやるんだ。人殺しなんかで傷つかない、僕がね。

 

「それに、相手は悪人だからね。きっと、レックス様も喜んでくれるよ」

 

 傷付く人が減るのなら、嬉しいと感じる人だからね。人を傷つける存在は、レックス様にとっての悪だから。それなら、遠慮はいらないよね。嫌われる未来なんて、あり得ないんだし。

 

 もちろん、嫌われる覚悟はしているよ。レックス様を守れるのなら、それでいいとね。だとしても、嫌われないで済むのなら、そっちの方が良いよ。レックス様と過ごす時間は、確かに幸せなんだから。

 

 僕のもらった幸福を返したい。その気持ちは本物だよ。でも、レックス様と一緒にいられる喜びがほしいという気持ちも、確実にあるんだ。

 

 どっちみち、レックス様の敵は邪魔だよね。だから、排除するのが正しいんだよ。

 

「ラナ様だって困ってるみたいなんだから、ちょうど良いよね」

 

 レックス様のためになることが、ラナ様の利益にも繋がる。素敵なことだよね。ラナ様のことは、僕もレックス様も大切に想っている。だから、一石二鳥って言って良いかもね。

 

 それに、とてもうまく言ったなら、レックス様に褒めてもらえると思うから。それって、とっても素晴らしいよ。ほんの少しくらいは、敵に感謝しても良いって思えるくらいには。

 

 どうせ死ぬんだから、慈悲の心くらいはあってもいいよね。あの世での幸福を祈るくらいは、してあげてもいいよ。

 

「僕もシュテルもサラも、きっとみんな同じ気持ちだよ」

 

 レックス様の敵を、許したりしない。そんなの、当たり前のことだからね。僕達みんな、レックス様に感謝しているし、大好きなんだ。取る手段は違うだろうけれど、同じ目的を抱えている。そんな仲間なんだよ。

 

 シュテルが何か計画しているのは知っている。サラがレックス様の評判を高めているのも知っている。それぞれがそれぞれの形で、レックス様のために頑張っているんだよ。

 

 だから、僕だって、ね。敵を葬り去るのが、僕の形かな。

 

「うん、頑張るよ! 僕の力は、そのためにあるんだからね」

 

 誰一人として、逃がしたりしないよ。どんな力を持っていても、何人いてもね。僕がどんな存在か、この世界に刻みつけてあげるんだ。レックス様の敵が、どんな末路をたどるのかをね。

 

 それこそが、きっとレックス様のためになるって信じるよ。わざわざ敵対する愚か者が減るって。

 

「レックス様が見出してくれた力、絶対に無駄にはしないよ」

 

 僕こそが、レックス様の剣だよ。彼の敵を、残さず摘み取るためのね。誰にだって、否定はさせない。レックス様以外の、誰にもね。

 

 レックス様の邪魔をする存在なんて、この世界には必要ない。そう証明するだけだよ。

 

「だから、早く戦いたいよね。そうすれば、レックス様に負担をかけなくて済むから」

 

 レックス様が頭を悩ませる時間なんて、少ない方が良い。物騒なことを考える時間もね。

 

 だから、僕が必要なんだ。きっと、そのために生まれてきたんだと思うよ。レックス様と出会うために。レックス様を守るために。

 

「本当は人を傷つけたくない人だなんてこと、みんな分かっているんだからね」

 

 だから、クロノを殺す時ですら悲しんでしまった。お父さんを殺す時なんて、泣いてしまった。きっと、これから先も、殺すたびに傷つくんだろうな。今回の事件でだって。

 

「ほんと、邪魔な人たちだよね。さっさと消えてほしいよ」

 

 そうすれば、もっと良い時間を過ごせるのにね。レックス様だって、余計なことを考えなくて済むのにね。

 

 だから、効率こそが大事だよね。褒めてもらうことよりも、もっとずっと。

 

「良いところを見せたいなんて気持ちより、大事なことがあるんだから」

 

 そう。レックス様が傷つかないこと。僕が荷物を背負ってあげること。レックス様の重荷が、消えて無くなるように。

 

「レックス様が傷つかなくて良いように、代わりに殺すだけ。簡単だよね」

 

 本当に、簡単だよ。敵を探して、始末するだけ。それだけで、レックス様の幸せを守れるんだから。ただ力を叩きつけるだけで良いんだから。

 

「どんな敵だろうと、どんな事情だろうと、関係ないよ」

 

 貴族だろうと、平民だろうと。人間だろうと、異種族だろうと。親を人質に取られていようと、病気の子供が居ようと、ね。

 

 そんなの、レックス様を傷つける罪の前では、とても小さなことなんだから。

 

「レックス様を苦しめようとする人は、みんな死ね」

 

 できれば、自害してくれると楽なんだけどな。でも、そんな愚かな人たちには、できっこないよね。なら、僕が殺してあげるだけだよ。単純な話だよね。

 

「何度も助けられて、そのままで居る。そんな恩知らずじゃないよ、僕は」

 

 だから、レックス様のためになるのなら、何だってやる。どんな障害だって、はねのけるだけ。それこそが、恩返しなんだからね。

 

「今度こそ、本当の意味でレックス様を守るんだから」

 

 ただ死なせないだけじゃない。ただ敵を打ち破るだけじゃない。レックス様が安らかな心で過ごせるように。

 

 みんなみんな殺すから、待っていてよね。

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