物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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270話 やってほしいこと

 次に挑む問題として、人さらいと人身売買をターゲットにした。この2つは間違いなく繋がっているから、同時に解決しなければ、再発して終わりだろうな。

 

 ということで、根っこを断ち切らなければならない。単なる手駒を潰したところで、実行者が入れ替わるだけだろう。だからこそ、難しいのだが。少なくとも、俺ひとりでは無理だろうな。状況が複雑すぎて、どうやって対処すれば良いのか分からない。

 

 いや、ある程度は想像がつくんだ。人さらいは利益になるから行われる。つまり、人を買う奴らを潰すのが大事なのだろう。とはいえ、娼館が無くなってしまえば、それはそれで別の問題が発生する。この世界で性欲に対処できなければ、悲惨な事件が起きるだけだろう。

 

 つまりは、どこで妥協するかの問題だ。娼館の存在自体は許容すべきだし、娼婦の存在も必要だろう。だからといって、さらってきた相手に無理やり働かせるのは許せない。つまり、公営の娼館あたりが妥協点ではないかと思う。必要な人に必要な働き口を与える。そういう観点でも。

 

 話し合いをする中で、もっと良い解決策があれば、それを採用したい。ただ、俺には思いつかないんだよな。ということで、まずは意見を出すところからだ。

 

「さて、人身売買の問題を解決するには、まずどういう経路で人が売られているのかを確かめないとな」

「そうですね。ただ……」

 

 ラナは何か思案している様子だ。少しうつむいているように見えるし、気がかりなことでもあるのだろう。まあ、娼館に売られるというシチュエーションに嫌悪感を抱くのは、普通のことだとは思う。男の俺でも、怒りを抱いているくらいなんだ。同性なら、余計にだよな。

 

「レックス様が娼館に向かうのならば、断固反対させていただきます!」

「そうだね。僕も、賛成はできないかな……」

「同感。レックス様の気持ちも分かるけど、流石に嫌」

「あたしも、同じ気持ちですね。そこまでしたくないのが本音です」

 

 全員反対している。とはいえ、俺が向かうのが手っ取り早いと思うんだよな。取れる手段の多さが違う。最終的に暴力を行使することもできるし。他にも、闇魔法で色々なことができる。

 

 ただ、全員が嫌がるのなら、相応の理由はあるのだろう。とはいえ、心配なんだよな。みんなが変なものを見ることも、不愉快な目に合うことも。あり得ないと思うが、娼館で働かされでもしたらと考えてしまう。

 

 みんな、娼婦として生きることを望むようには見えないんだよな。自分から選んだ道なら、応援しても良いのだが。

 

「だが、ならどうやって解決する? お前達が向かえば、余計に危険じゃないか?」

「僕達は強いから、そう簡単に危険な目には合わないよ」

「それに、レックス様に私達の状態を確認していただければと思います。それなら、安心できますよね?」

 

 まあ、みんなには俺の魔力を侵食させている。だから、何をしているかは簡単に分かるんだよな。悪用しようと思えば、いくらでもできそうだ。とはいえ、みんなの信頼を裏切るようなことはしたくないが。

 

 実際、折衷案としては悪くないんじゃないだろうか。俺が娼館にいかずとも、それで問題を解決できるのならば十分なのだから。

 

「レックス様になら、いつ見られても良い」

「まあ、他の女を見られるよりは……。あたしも賛成です」

 

 ああ、そういう心配か。娼館に行く目的が目的だから、誰かと関係を持つ余裕なんて無いのだが。いや、あるいは娼婦を買って情報を得た方が効率が良いのか?

 

 いずれにせよ、理由が分かったのだから、気をつけるべきことは単純だ。それなら、参加しても悪くない気はするのだが。まあ、嫌がるところを無理に押すほどでもないだろう。俺の贈ったアクセサリーがあるのなら、最悪の事態は避けられるだろうし。

 

「なら、いつでも転移できるようにしておくからな。お前達に何かあったら、すぐに向かう」

「それなら、失敗できませんね……。レックス様に、娼館になど触れてほしくありませんから」

「レックス様が誘われたら、大変だもんね。それに、誰かの裸を見られるのも嫌だし」

「流石に、誰かを抱く心配はしていないけど」

 

 まあ、俺は上の立場の人間なんだから、女にだらしないと嫌だよな。ジュリア達に、無理やり手を出すと思われかねない。俺の内心がどうあれ、心配になるのは仕方のないことだ。

 

 とはいえ、あまり深刻に返すと、それこそ不安にさせかねない。ここは軽く返すくらいでちょうど良いか。

 

「おいおい、俺を何だと思っているんだよ。ちゃんと問題を解決するつもりだよ」

「だからこそ、厄介なんですよね。悲惨な環境の人が救われるとどうなるのかは、私が実例ですから」

「僕も同類だよね。そう思うと、やっぱり困るよね」

「ただ、レックス様の評判は上げてもいい。そこは別問題」

 

 ああ、確かにおかしい話ではない。とはいえ、ジュリア達ほど恩を感じる人って、実は少ないと思うんだよな。だから、あまり気にする必要はないと思うが。まあ、いま言っても言い訳だと思われるだけか。黙っているのが正解だよな。

 

「そうですね。あたし達が心配しているのは、レックス様のことですから」

「まあ、これ以上に誰かを抱え込む余裕はない。だから、普通に接するつもりだぞ」

「普通に接することの価値を、理解していただきたいです。だから、私達はレックス様に仕えているんですよ」

「そうですね。ですから、今回はあたし達だけで向かいます。安心してください。ちゃんと、証拠を掴んできますから」

 

 ということで、みんなは娼館へと向かっていった。一応闇魔法で状況を確認していたが、特に問題がおきた様子はなかったな。

 

 そのままみんなが帰ってきて、報告を受ける。

 

「レックス様、調査の結果が出ました。娼館に潜入した甲斐がありましたね」

「そうか。なら良かった。一応確認しておくが、妙なことは無かったんだよな?」

「ええ、私達は大丈夫でしたよ。というか、レックス様も闇魔法で確認していたでしょう?」

 

 まあ、見えないところで困っていた可能性だって否定できない。だが、顔を見る限りでは本当に何もなかった様子だ。みんな平然としているからな。

 

「まあ、娼婦と間違えられたこともあったけど。ちょっと睨んだら、逃げて行っちゃったよ」

「魔力も出していた。ラナ様なんて、魔法を撃とうとした」

「おいおい、潜入じゃなかったのか?」

「も、もう。サラってば。ですが、あたし達はちゃんと調べたので、大丈夫ですよ。これから、報告しますね」

 

 さて、どういう流れで人が売られていたのか、しっかりと確認しないとな。それからは、今後の予定を立てていかなくては。

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