物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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271話 成長のために

 ラナ達は娼館に向かって、どういう経路で女の人を手に入れるのか調べていた。その結果を報告してもらっている。やはり、俺が調べれば良かったのではないかという気もする。見て気分の良いものではないだろうからな。

 

 とはいえ、俺が召喚に向かうのが嫌という意思も、尊重するべきではあった。まあ、当人たちは成果を出したのだから、これで良いのかもしれない。

 

 実際、あらゆる意味で完璧な対処なんて存在しない。どこで妥協するかが全てだよな。今回は、悪くないラインだったのだろう。どうにも、俺が娼館に向かうことは、よほど避けたかったらしいからな。それで問題なく成果を得られたのなら、十分だろう。

 

 ただ、まだ解決したわけじゃない。人さらいから購入しているという事実が分かっただけだ。根本的な対処としては、娼館か人さらいのどちらかは潰さないと、話にならない。まあ、人さらいが妥当なところか。

 

 娼館そのものは、無くす訳にはいかないだろうし。下手したら暴動が起きるし、そうでなくても治安の悪化が懸念される。

 

 ということで、人さらいについて詳しく聞いていくことにした。

 

「娼館では、人さらいから直接女の人を購入しているようですね」

「なら、帰りを追跡すれば良いのか。拠点の捜索は終わったのか?」

「ううん。でも、どこで会っているのかとか、顔とかはしっかり確認しておいたよ」

 

 ふむ。なら、その人達にマーキングしておけば、後はどうとでもなりそうだ。単純なことだが、それでいいだろう。

 

 アジトが分かったなら、後は襲撃するだけだな。それで、背後関係を洗えば良い。おそらくは盗賊だろうから、遠慮は不要だ。

 

「なら、後は俺の出番になりそうだな。合図してくれたら、転移できるぞ」

「じゃあ、娼館から少し追跡したところでお願いします」

 

 シュテルは、どうしても俺を娼館に近づかせたくないらしい。まあ、4人で居るのなら、大抵の脅威はどうにでもなるだろう。だから、あまり心配していないのだが。別に問題のない提案ではある。

 

 ただ、変に自分の過去を思い出したりしないかは気になる。もしもの自分として、娼館に売られた姿を想像していたらしいし。まあ、平然とした態度だし、そこまで気にしていないのだろう。なら、別に良いか。

 

「そこまで引き離そうとしなくてもいい。少なくとも、私は」

「なら、追跡を始める段階で呼びますね。合図は、魔力の動かし方で良いですか?」

「分かった。なら、待機している」

 

 しばらくして、合図を確認できたので、そこに向けて転移する。ラナ達は木の裏に隠れている様子だった。ということで、俺も隠れて話をしていく。遠くまで音が届かないように、遮断しておいて。

 

「どうだ? 誰を追跡すれば良いんだ?」

「あの人です。レックス様、お願いします」

 

 そうして指差された相手をマーキングして、見失っても追跡できるようにしておく。後は、しばらく待っていれば良いな。転移しても良いし、このまま追いかけても良い。

 

 どちらにせよ、相手の動きは常に分かる。とりあえずは、情報を共有しておくか。

 

「分かった。とりあえず闇の魔力を侵食させておいたから、後はどこにいるのか分かる」

「了解。なら、もう離れても大丈夫」

「流石はレックス様です。私では、遠く及ばないですね」

 

 シュテルは少しうつむいている。魔法という分野では、まあシュテルには勝っていると言っていい。だからといって、卑下する必要はないとは思う。まあ、本人が納得できるかどうかが全てではあるのだが。

 

 とはいえ、フォローは入れておいた方が良いだろう。あまり気に病まれたら、困ってしまうからな。

 

「いや、得意分野の違いだよ。さて、どこに向かうのだろうな」

「単純に盗賊が集まっているのか、あるいは裏があるのかは確定させたいですね」

「普通に考えれば、大きな組織が裏で手を引いていそうなものだけれど」

「同感。でも、尻尾を出すかは怪しい」

 

 この調子なら、俺が居なくても問題は解決されていたのかもしれない。なら、余計なことだっただろうか。まあ、来てしまったものは仕方ない。今の状況を最大限に利用して、できる限りの成果を出すだけだ。

 

「だからこそ、闇魔法だな。どう動くのか監視してしまえば、根っこをつかみやすいだろう」

「いずれは、あたし達も頼らずに済むようにしたいですね」

「悔しいけど、今は無理だね。そこは、現実を受け入れるよ」

「私なんて、全部レックス様にもらっただけですから。でも、必ず成果を出してみせます」

 

 みんな、あまり自信を持てていない様子だ。こういうのは、成功体験でしか解決しないだろうな。なら、仕事の任せ方を考えないとな。

 

 まあ、俺というか、レックスの才能は化け物のそれだからな。目の前に居たら、仕方のない部分はあるのだろう。だからといって、みんなの実力が足りないとは思わないのだが。俺が言ったところでな。

 

 とはいえ、何も言わないのも違う気がする。それっぽいことを言っておくか。本音ではあるが。

 

「焦りは禁物だぞ。俺が言うのも何だが、急激な成長は難しいものだ」

「はい、分かりました。私が足を引っ張るわけには行きませんからね」

「むしろ、失敗できる局面のうちに失敗した方が良いぞ。わざと失敗しろという意味ではないが」

「確かにね! 食料の狩りだって、誘導を間違えても生き残った人が強かったもんね!」

「それなら、頼らせてもらいますね。レックス様のご厚意、無駄にはしません」

 

 納得してくれたみたいで、一安心だ。ということで、それからは落ち着いて追跡できた。大きな建物の中に入っていくのを確認したので、様子をうかがう。

 

 すると、盗賊らしき存在が巡回しており、その中で何かしらの話をしているようだった。

 

「ふむ。ここが拠点か。とりあえず、制圧しておくか?」

「取引中みたいですね。なら、ちょうど良いです」

 

 適当に襲撃すると、簡単に全員を捕らえられた。殺すこともできたのだが、まあ捕らえた方が良いよな。いろいろな意味で、使い道があるだろうし。

 

「まあ、こんなものか。とりあえず、牢にでも叩き込んでおくか」

「そうですね。最低限の情報を吐き出させるまでは、殺せませんから」

 

 物騒なことを言うものだ。まあ、必要なことだよな。誰が何をしているのか、しっかりと理解しないといけないのだから。

 

「ラナ様に任せる? それとも、僕達も手伝った方が良い?」

 

 ということで、捕らえた相手を運んでいると、道端で人に出会った。その人は、こちらを見て不審そうにしている。盗賊のアジトの近くに、よくやって来たものだな。もしかして、仲間だったりするのだろうか。

 

「そこのお方。どうして領主様を捕らえておいでなのです?」

 

 なるほど、そういうことか。なら、説明をしておくか。相手がどう判断するかで、今後が変わるだろう。

 

「簡単に言えば、ここは人さらいの拠点だ。関係者は全員捕らえただけだな」

「……それは、皆に伝えなければなりませんね。ありがとうございました」

 

 頭を下げて、去っていく。その姿を見ながら、捕らえた領主をどう扱うかを考え始めた。さて、どうしたものか。

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