物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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280話 求める答え

 ラナが暗殺者に襲われたので、意図的に隙を作り出して釣り出す計画を立てた。ラナがひとりでうろつき、そこを狙わせるという寸法だ。何もなければ、それでいい。一回失敗したから諦めてくれるようなら、楽だと言える。

 

 とはいえ、現実的には期待は薄いだろうな。単なる警告だとも考えづらいし。

 

 後は、やはり心配ではある。よほどのことがない限り、まず対処できるだろうが。それでも、命が狙われているんだからな。万が一は、いつだって起こり得る。

 

 まあ、心配しすぎたところで、どうにかなる問題ではないのだが。結局のところ、根本的な原因に対処するしか無い。つまり、黒幕を探すのは必須だと言える。そうじゃなきゃ、いつ襲われるのかも分からないままなのだから。

 

 ということで、ラナはこれからひとりになる。その前の、最後の打ち合わせというか、顔合わせをしていた。

 

「さて、ラナ。俺だって警戒しているが、お前だって注意してくれよ。しつこいようだがな」

「分かっていますよ。それだけ、あたしのことを好きで居てくれるんですよね。嬉しいですよ、御主人様」

 

 ちょっと声が弾んでいる。冗談を言う余裕があるのは、悪くない。あまり怯えすぎても、冷静な対応ができないだろうからな。それに、心の傷を感じないのも安心できる要素だ。

 

 とりあえずは、最悪の状況ではない。ラナも肝が座っているというか。俺なら、もっと恐れていただろうに。

 

 それにしても、御主人様か。以前の関係を思えば、否定はできないが。借金のカタに売られたようなものだったからな。とはいえ、今はお互いに貴族の当主だ。完全に対等ではないにしろ、昔とは違う。それに何より、ラナは大切な仲間だからな。それは譲れない。

 

「今となっては、そんな上下関係など無いだろうに。まあ、お前がブラック家に来なければ、出会えなかっただろうが」

「そういう意味では、両親に感謝しているんですけどね。今回の敵にも、感謝できるでしょうか」

 

 そう言いながらも、どこか冷たい目をしている。まあ、当たり前だ。自分を売った両親に感謝するのは難しいだろう。俺のように、情を捨てられない存在も居るには居るが。ラナがそうじゃないことは、良いことと言っていいよな。下手したら、トラウマになっていてもおかしくないのだから。

 

 俺のような苦しみを、ラナにまで味わってほしくない。まあ、自分の親を殺すなんてこと、そうはないだろうが。

 

「前向きなのは、悪いことではないが。俺は、感謝したくなど無いな」

「レックス様は、それで良いと思いますよ。あたしは違うだけなので」

 

 にこやかに告げられる。実際、俺とラナの感性が違うからこそ、仲良くする意味があるんだよな。自分にない考えを取り入れられるから。まあ、そんな難しいことよりも、単にラナ達が好きだからというのが最大の理由だが。

 

 いずれにせよ、価値観の違いは悪いことではない。俺達は、お互いを尊重しあう関係を築けているからな。まあ、ラナの敵に感謝する気は絶対にないが。

 

「まあ、そうだな。俺なら、ずっと恨んでいそうだ」

「ご自分のことなら許せそうなあたり、少し心配ではありますけれど。レックス様こそ、あたしが危険になったからといって、無茶はしないでくださいね」

 

 ラナは本気で心配そうだ。まあ、そこまで善人ではないぞ。俺だって、敵意を向けられたら敵意を返す普通の人間だ。実際、これまでも何度も敵を排除してきたからな。

 

 とはいえ、無茶をしないのは大事なことだ。そうしなければ生き延びられない状況ならともかく、不必要な負担はかけないに越したことはない。

 

「そうだな。お互いに生き延びなきゃ、何の意味もない。そのつもりでいくよ」

「では、行ってきますね。大丈夫です。あたしだって、それなりに強いので。これでも、三属性(トリキロ)程度になら勝てるんですからね」

「ああ、任せた。まあ、できるだけ先手を打つつもりではあるが」

 

 ということで、ラナは去っていく。それからしばらく待機していると、何か動きを感じた。なので、周囲の感覚を調べていく。

 

「魔力を練っているやつがいるな。じゃあ、後ろから襲撃するか」

 

 敵らしき存在の後ろに転移して、そのまま闇の魔法で捕らえていった。完全に不意をつけた様子で、相手は一切の抵抗もできていなかった。

 

 そこで、ラナに顔を見せていく。一応、冤罪でなさそうか確認するために。

 

「どうだ、ラナ? こいつは、知り合いか?」

「顔を見たことは、無いですね。あたしを慕ってにしては、持っているものがおかしいですね」

 

 実際、刃物なんかも持っている。それも、人を刺すためのものに見える。ラナを見かけた領民とは、考えにくい。

 

 となると、犯人であると考えて良さそうだな。黒なら、遠慮は必要ない。というか、むしろ配慮してはいけないかもしれない。それで情報を引き出せないのなら、何の意味もないからな。

 

「さて、どうする? 情報を引き出すのなら、脳を覗くこともできるが」

「いえ、大丈夫です。あたしに任せてください。ねえ、あなたは誰の指示で、あたしを狙ったんですか?」

「そんな事を言うと思うか。口を自由にしたのなら、自害するま……」

 

 犯人の顔を、水が覆っていく。つまり、ラナの魔法だ。そのまま敵はもがき、窒息しそうなタイミングでだけわずかに解放していた。

 

「残念でしたね。そんな自由は、与えませんよ。何度溺れれば、限界になるんでしょうね?」

 

 ラナは感情を見せない顔で、敵を何度も何度も沈めていく。そのたびに、敵の目は濁っていった。最終的には、土下座までしていた。

 

「分かった。言う。言うから、楽にしてくれ……。依頼主は、アズール家だ。それ以上は知らない!」

「ありがとうございます。では、ゆっくり休んでくださいね。……さようなら」

 

 そうして、ラナは完全に敵を溺れさせていった。まあ、楽にするという約束は守ったと言える。もう少し、情報を引っ張り出す可能性もあったとは思うが。

 

 まあ、あの状況で黙っている情報なら、言わせるのは難しいか。変に拷問し続けて、でたらめな情報を渡されても困るのだし。

 

「とりあえず、嘘でなければ犯人は分かったことになるな。だが、どうやって追求する?」

「そこはおいおい考えましょう。思いつかなければ、潰すまでです」

 

 薄く笑いながら、ラナは語る。アズール家は、確かラナの領と隣接していたよな。そうなると、疑わしいのは確かだ。真実である可能性は、相応に高いだろうな。

 

 とはいえ、貴族を安易に潰せば、また敵を増やすだけだろう。できる限り、真っ当な道で追い詰めたいものだ。

 

「分かった。次が来る可能性はあるから、まだ油断しないでくれよ?」

「もちろんですよ。あっ、どうせなら、成功したって報告をさせても良かったですね」

 

 少し楽しそうに、そんな事を言う。まあ、偽情報を流すという発想はありだと思う。ただ、成功したという報告をさせたとして、わずかな時間を稼ぐくらいしかできない気がするんだよな。

 

「ラナの立場上、生きていることは簡単に伝わるんじゃないか?」

「それはそうなんですけどね。まあ、殺しちゃいましたし、今後のことはゆっくりと考えましょう」

 

 軽くため息をついて、ラナはこちらに手を伸ばした。それをつかみ、インディゴ家の屋敷へと転移していく。

 

 さて、アズール家とやらが真犯人なのか、他の誰かがごまかそうとしているのか。できるだけ早く、答えにたどり着きたいものだ。

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