物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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293話 行動の価値

 俺の首に懸賞金がかけられているということで、その対策が必要だ。とはいえ、まっすぐ襲われたくらいなら、俺を殺せるとは思えない。無論、油断は禁物だ。相手が命を狙ってくるのだから、何があってもおかしくないとは思うべきだよな。

 

 ただ、俺よりもむしろブラック家の仲間の安全が気にかかる。人質にしようと思われたり、巻き込んでも良いと思われたりしたら大変だ。

 

 ということで、何らかの対策は必要だろう。それもあり、まずはブラック家に帰る。そして、頼れる相手に相談していくことにした。弟のジャンと、秘書のミルラだ。

 

 ふたりはブラック家の運営に関わっているし、そこに伝えるのが最初であるべきだよな。まずは、2人に顔合わせをしていく。

 

「ミルラ、ジャン。ミーアから、俺の首に懸賞金をかけた貴族がいるとの話を聞いた。何か、こちらで打つべき対策はあるか?」

「僕としては、もう少し詳細が知りたいですね。ミーアさんからは、どの程度の情報を受け取れましたか?」

 

 真面目な顔で、そう言われる。まあ、当然の疑問ではある。俺だって、情報はあればあるだけ良いとは思う。処理しきれないレベルになると、話は別だが。

 

 ただ、ミーアも調査中みたいなんだよな。本気で大事なことなら、もう伝えられているだろうし。だから、いま言った以上の有用な情報は無いと思う。

 

 とはいえ、思い込みは危険だからな。一度、しっかりと確認しておくのも大事だろう。後は、今回の成果も共有しないと。

 

「現状は、いま言ったことが全部なんだよな。とはいえ、お互いに気軽に連絡を取れる手段は用意したんだが」

「流石はレックス様でございます。それで、気軽というのは、どの程度でしょうか。それによって、策は変わってきます」

 

 落ち着いたトーンで話しているな。その辺が、頼れるところだよな。正しい判断か、それに近い選択をしてくれると信じられる。まあ、自信だけの相手に騙されるのも同じ理論ではあるから、気をつける必要はあるだろうが。

 

 なんて、ミルラが優秀なのは、今までの時間で思い知っている。依存するのは論外にしても、信頼するのは当然のことだよな。

 

 とりあえずは、情報をハッキリさせるか。ミーアに連絡するのは、かなり良い。ミーアが持っている情報も、通信の精度も同時に伝えられるからな。早速、やるか。まあ、ミーアがいそがしかったら、また連絡し直す必要があるが。

 

「じゃあ、とりあえず試してみるか。……ミーア、今は大丈夫か?」

「レックス君、何があったの? 困ったことがあったら、いつでも言ってね」

 

 明るい声で、そう告げられる。顔が見られないのは寂しいが、電話みたいに声が聞けるだけでも、ありがたいよな。

 

 さて、本題に入っていこう。ミーアに俺の現状を伝えるのも、大事なことだよな。

 

「いや、俺ひとりでは十分な策が練れないから、相談していたんだ。その過程で、情報共有がしたくてな」

「誰に相談しているの? できれば、紹介してほしいわ!」

 

 そう言えば、ちゃんと紹介したことはなかったな。なら、誰か分からなくてもおかしくはない。ちょうど良い機会だし、お互いが話せるようにしておくか。音を送るだけなら、そう難しくはない。もともと、お互いの声は送れているんだからな。

 

「じゃあ、声をつなげるよ。ミルラは、会ったことがあるかもな。後は、弟のジャンだ」

「レックス様の秘書を務めております。ミルラと申します」

「兄さんの右腕、と言って良いんですかね。一応、色々と任せてもらっています。よろしくおねがいしますね、ミーア王女」

 

 顔以外は、これで十分伝わったと思う。ある程度は、人となりも分かるんじゃないだろうか。ミルラが穏やかな感じで、ジャンが冷静なところとか。

 

 まあ、これから連絡する機会も増えるだろうからな。そのうち、仲良くなってくれるはずだ。

 

「私はミーアよ! レックス君の友達だわ! それで、何が聞きたいの?」

「今のところは、どの程度情報を集められているかですね」

 

 それがハッキリすれば、方針を立てやすいのだろうな。俺だって聞きたいことかもしれない。ただ、期待薄ではある。知っているのなら、もう話してくれているはずだからな。わざわざ隠し事をする理由は、何も無いのだから。

 

「ごめんなさい。あんまり有益な情報は持っていないのよ。分かるのは、大規模な動きは確認できていないことくらいね」

「少なくとも、今すぐに軍勢が攻めてくることは想定しなくて良い様子でございますね」

 

 なるほどな。情報が無いなりに、分かることもあるのか。やはり、ミルラは優秀だよな。話を繋いだのは、正解だっただろう。

 

 実際、軍勢レベルの人数を動かして、何の兆候もないなんてことは考えづらい。それなら、まずは方針を絞れるだろう。

 

「ええ、そうね。ただ、もう動いている個人が居てもおかしくはないと思うわ。賞金の額が額だから」

「その額というのは、聞いても良いですか?」

「情報がブレている部分もあるんだけど、人ひとりが一生の間生活に困らない程度よ」

 

 ふむ。貴族基準でも、結構な大金に思える。前世換算なら、数億円くらいはあってもおかしくないだろう。そんな額を出すのなら、命を懸ける相手も居るか。

 

 しかし、よくもまあそこまで。心当たりはないが、よほど俺が憎いらしい。まあ、会ったことのない相手でも、恨まれる理由は思いつくのが悲しいところだ。

 

 父は明白に悪人だったしな。それに、そもそも貴族というものは敵対派閥を潰そうとするものだ。なら、知らないところで狙われていても、まあおかしくはない。

 

 後は、単純に力で危険視されている可能性もある。少なくとも、闇魔法を持っているという事実は知られているからな。

 

 まあ、今の段階で理由を特定するのは不可能だ。そっちを考えるよりも、今後の対策に頭を使おう。

 

「人ひとり殺しただけでそれなら、確かに釣られてもおかしくはないか。とはいえ、個人ではどうあがいても無理だとは思うが。俺が単なる凡人だとしても不可能だろう」

「ですね。ブラック家だって、兵力を持ち合わせているんですから。その警備を突破するのが、まず課題ですよね」

「とはいえ、対策を打たないのは問題でございます。となると、方針は二つです」

「ブラック家の防備を固めることと、レックス君の動きを決めることね」

 

 まあ、そうなるか。前者は誰が相手でも説明不要だよな。後者は、俺を狙う相手をどう誘導するかということだろう。つまり、俺の動きで敵を制御する。俺にとって有利な戦場で、敵と戦う。そんなところだ。

 

 なら、その情報も伝えるのが鉄則だよな。俺が狙いやすい状況だと思ってくれれば、それが良いのだから。

 

「ああ、なるほどな。俺が個人でうろついているという情報があれば、そこを狙うやつが居るか。なら、それでいこう」

「なら、こっちでも噂を流しておくわね。2人も、手伝ってくれる?」

「もちろんでございます。レックス様の意思は、全てに優先しますから」

 

 やはり、みんな優秀だよな。俺の考えを、すぐに理解してくれる。その上で、さらなる案を出してくれる。なら、俺も相応の行動をしないとな。ただ助けられる存在ではないのだと、証明してみせる。

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