物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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300話 優しい心

 ブラック家の防衛計画として、俺の魔力を侵食させておいて、そこから魔法を発動させるというものが議題に上がった。

 

 ということで、色々な意味で専門家であるふたりに意見を聞こうと思う。魔法の師匠であるフィリスと、剣の師匠であるエリナだ。

 

 ふたりに会いに行くと、たまたま一緒にいる様子だった。何かを話している様子だな。ふたりはすぐにこちらを向いて、エリナは狼の耳をピンと張りながら笑って、フィリスは薄く微笑んだ。

 

 さて、どんな意見をもらえるだろうか。できるだけ早く結論を出したいから、まずは本題から入るか。

 

「フィリス、エリナ、久しぶりだな。顔を合わせてすぐで悪いんだが、意見を聞かせてほしい」

「……当然。レックスの成長に繋がるのなら、それでいい」

「旧交を温めるのも悪くないが、私達はお前の師匠だからな。気にするな」

 

 話が早いのは、本当にありがたい。ふたりとも穏やかな顔をしてくれているのもあって、かなり安心できる。

 

 やはり、頼りになる師匠だよな。他の人なら、こうは行かなかったと思う。俺が成長できたのは、間違いなくふたりのおかげだからな。とても感謝している。

 

 今回だって、きっと役に立つ意見をもらえるのだろうな。フィリスは魔法の専門家として、エリナは傭兵として、それぞれの視点で考えてくれるだろう。ふたりが師匠だからこそ、だな。片方だけでは、もう少し違う今があっただろう。

 

「なら、早速話をするか。というのも、俺の魔力の侵食を利用して、防衛のための罠を仕掛けたいんだ」

「……理解。なら、単純な罠を複数設置すると良い。大掛かりなものは、手間の割に効果が薄い」

 

 極端な話をすると、カラクリじかけはダメだということだろうな。よく分かる話だ。そうなると、ちょっとした魔法を発動させる罠を地面や壁に仕込んでおくのが基本になるだろうな。

 

 まあ、当然か。ややこしい魔法は、使いこなすのが難しい。その割に、かなり手順が多いからな。それを考えると、止めた方が良いか。

 

 俺が常に操作できるのならまだしも、誰かに管理を任せるのだから。その観点でも、理解が難しいとか、運用が複雑だとか、そんなのは不便が多いだろう。この意見が聞けただけでも、相談した甲斐があるな。

 

「なるほどな。確かにそうだな。トゲを発生させるとか、爆発させるとか、そんなのが良いか」

「……同感。条件も効果も、単純なほど有効。人が発動させるとしても、自動だとしても」

 

 上に乗ったらトゲが出るとか、そんな感じだよな。間違えて踏んだ時の処理が怖くはあるが。とはいえ、複数人が武器を持って上に乗ったら発動、なら個人には対応できないし、仕込み武器にも対応できるか怪しい。

 

 やはり、単純な方が良いというのは間違いないだろうな。その上で、運用で工夫するのが正解だろう。

 

「自動なら、間違えて発動させるのが怖いが。まあ、今回は人力だからな」

「……提案。なら、複数箇所に発動できるものを用意すると良い」

「私としては、侵入経路を限定するのが良いと思うぞ。特定の場所に集めて、一網打尽のように」

 

 なるほどな。例えば、本陣に近づけないようにするとか、裏口から侵入できないようにするとか、そんな感じか。

 

 正面からしか乗り込んでこれないのなら、そこに戦力を配置すれば良い。確かに、有効な戦術に思える。

 

 そうなると、相手を誘導するのが大事かもな。例えば、東と西と南に罠を設置しておいて、北に来るように仕向けるとか。そこを一網打尽なら、かなり強そうだ。

 

「設置箇所にも、気を配るべきか。まあ当然といえば当然だよな。隠れやすい場所には、侵入しづらくするべきか」

「……方針。侵入されたくない場所に、厄介な罠を設置するのが良い」

「そこが重要だと知らせることにもなるから、注意も必要だが。おおむね賛成だな」

 

 ふたつの意見は、とても大事なことだ。実際、頭の回るやつなら、こっちの意図を読んでくるだろうな。そういう意味では、適度にフェイクを混ぜることも必要かもしれない。だが、基本的にはフィリスの方針でいいだろう。

 

 多くの人間は、罠を避けて動こうとする。それを前提に、頭の回るやつが本命を読めないように気を配る。そのあたりが目標になるはずだ。

 

「なら、非戦闘員がいる場所には侵入させづらくしないとな。後は、警報もあるといいかもな」

「……同意。異常事態があると知らせるのは、とても大事なこと。敵の位置が分かるのが、理想」

「私なら、通信を利用するな。アクセサリーを持った者同士で連絡できれば、便利だろう」

 

 そうか。アクセサリーふたつで通信もできる。3人で話せるということは、そういうことだ。なら、アクセサリーと罠の闇魔法を連動させれば、俺が知覚している情報も送れるはずだ。

 

 闇の魔力の上や近くに人が居る。それが判断できるだけでも、とても有用だろうからな。仕組みだけ用意してミルラやジャンに渡せば、俺が思うより上手に運用してくれるはずだ。

 

「ありがとう、ふたりとも。これで、だいぶ方針が固まったよ。闇魔法の探知も、組み込むとするよ」

「……成長。昔のレックスなら、その仕組みは考えられなかった。感慨深い」

「魔法については詳しくないが。それでも、以前より難しいことができているのは分かる。流石だよ、レックス」

 

 ふたりとも、優しい目でこちらを見てくれている。成長を喜んでくれるのは、本当に嬉しいな。尊敬していて大切に思っている師匠だからこそ、心に染み渡る。

 

 いずれ、ふたりを完全な形で超えるのが恩返しではあるのだろう。それこそが、ふたりの望みなのだから。それでも、他にも何か返したいものだよな。

 

「ふたりが居たからだよ。また、しっかりお礼をしたいものだな」

「……不要。レックスが成長するのが、私の最大の喜び」

「せっかくだから、私は貰っておこうか。レックスが何を用意するのか、楽しみにしておこう」

 

 フィリスの言葉も嬉しくはあるが、エリナのフォローがありがたい。こういうのは、俺の満足もあるからな。ふたりが喜んでくれるのが一番とはいえ。

 

 ふたりの笑顔が見られるのなら、手間や金銭をかけるだけの価値がある。それは、疑いようのないところだからな。

 

「そうだぞ、フィリス。俺としては、お前に何かを贈りたい気持ちもあるんだ。それを尊重してくれ」

「……納得。レックスがそうしたいのなら、そうすればいい。否定する理由はない」

 

 わずかに微笑みながら、そう言ってくれる。フィリスは、もちろんエリナも、俺の意思を尊重してくれる。ふたりの実力もさることながら、今みたいなところが尊敬できるところだよな。

 

 ずっと、俺を大事に育ててくれていた。その感謝は、どんな未来であっても変わらないはずだ。心の底から、そう思える。

 

「ありがとう、フィリス。それにエリナも。また時間を作って、話をしたいものだな」

「……同意。レックスとの時間は、とても大切」

「そうだな。私は、ただ剣だけの師匠のつもりはない。お前は、もっと大事な存在だからな」

 

 ふたりの気持ちに報いられるように、もっと努力を続けないとな。なんだかんだで、俺の成長こそが一番の喜びだろうから。

 

 とはいえ、もっとふたりとの時間も作りたいものだ。そのためにも、ブラック家の問題なんてさっさと解決してしまわないとな。

 

 その後に、穏やかな時間が待っている。そう思うと、自然と体に力が入るのが実感できた。

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