物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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302話 怒りの行き先

 フェリシアやラナ、そしてカミラの力を借りて、様々な魔法を罠として組み込む準備ができた。それをもとに、ミルラとジャンが草案を練って、俺が領地の各所に闇魔法を侵食させていくという流れだな。

 

 ブラック家の屋敷のみならず、学校もどきやその他の活動地域、他にも隠れて魔力を侵食させられるあらゆる場所に侵食させていった。

 

 ということで、そもそもブラック家の敷地に踏み込むことすら難しいとは思う。まあ、ミルラとジャンの容量を超えるだけの敵が同時に複数襲いかかってきたら怪しいが。ただ、そこまで大人数に攻められるのなら、当然兆候はある。

 

 つまりは、急に襲撃される時点で、ある程度は人数が制限されるんだよな。当然、ミルラとジャンで対応できる範囲で収まる確率が高い。

 

 なので、それなりに安心して日々を過ごすことができていた。そんな中、ミーアから連絡が届く。

 

「レックス君、聞こえているかしら? あなたのところを狙っている傭兵団の動きをつかんだの!」

 

 ということは、こちらに向かってくるということだろうな。なら、準備が必要になってくるだろう。わざわざミーアが報告してくるあたり、それなりに大掛かりなのだろうから。

 

 要するに、ミーアが兆候をつかめるほどに大きく動いているという証だものな。警戒しておかなくてはならないだろう。まさか、10人やそこらの動きが分かるとは思えないからな。

 

「ありがとう、伝えてくれて。こちらでも、調べてみるよ」

「お願いね! 今すぐではないでしょうけど、近いうちに戦うことになると思うわ!」

 

 ということで、その情報は共有していく。まずは、ジャンとミルラだ。

 

「ミルラ、ジャン。ミーアから、こちらに向けて動いている傭兵団が居るという情報をもらった。お前達の方では、何かつかんでいるか?」

「怪しげな動きとして注目しているところは、いくつかございます。それらを中心に、確実に発見してまいります」

「兄さんの作った罠があれば、兄さんが居なくても大丈夫だと思いますよ。それこそ、情報がつかめなかったとしても」

 

 まあ、大抵の状況には対応できるように罠を設置したからな。それこそ、道を使えば罠が飛び出てくるレベルではある。誤爆にさえ気をつければ、相当な効果を発揮してくれるだろうな。

 

 アクセサリーを通じて、俺が普段知覚しているようなものも伝わる。つまり、武装しているかどうかくらいは簡単にわかる。まあ、普通は大きな部隊が移動するのなら、何かしら手続きをするものだ。それが無いだけでも、大きな判断材料にはなるだろうな。

 

 総じて、任せておけば大丈夫だろう。積極的に民草を殺すような人ではないのだから。その不合理は、ふたりとも理解しているのだからな。

 

「お前たちがそう言うのなら、安心だな。だが、何かあったら言ってくれ」

 

 ふたりは頷いて、また仕事に戻っていった。俺も、警戒しつつも普段通りの生活を送る。そんな中、ジャンとミルラによって、俺とカミラ、メアリが呼び出されていた。つまり、話の内容は言うまでもないだろう。

 

 みんなが集まると、まずはジャンが話し始める。

 

「兄さん、予定通りに、こちらに攻め込もうとする集団の動きを確認しました。どうしますか?」

「できるだけ、こちらの内部に入られる前に仕留めたいところだが……。メアリ、待て! ジャン、ミルラ、そっちは任せた!」

 

 対応について考えていると、急にメアリが駆け出していった。本当に突然のことだったし、予想外ではある。とはいえ、追いかけるしかない。ということで、こちらはメアリの様子を見ることにする。

 

 何かあれば、ジャンとミルラが呼び出してくるだろう。対応に困ったような場合とかは。なので、それなりに落ち着いてメアリのことに集中できるはずだ。

 

「かしこまりました。誓って、ブラック家の財産や人員に被害は出させません」

 

 ミルラの声を聞きながら、メアリとそれを追いかける俺は部屋から飛び出していった。気づけば、カミラも着いてきている。

 

「メアリ、そんなに急がないでくれ! 準備してから対応しても、勝てるはずだ!」

「そんなの、知らない! お兄様の敵は、みんなやっつけるんだから!」

 

 普段なら、俺の言葉で止まってくれるだろうに。よほど、何か感情を抱えているのだろう。その正体までは分からないが。

 

「あーあ、頭に血が上っちゃってるわね。我慢させすぎたんじゃないの、バカ弟?」

 

 カミラは、こちらに軽く視線を送ってきている。まあ、おそらくは言う通りなのだろうな。これまで、メアリの出番はなかった。そして、今回はジャンとミルラがどうにかするだろう。

 

 その2つが重なって、活躍できないフラストレーションが爆発した。そんなところではないだろうか。メアリは素直な良い子だと思っていたが、それに甘えすぎていたのかもしれない。

 

「なら、こっちで守らないとな! メアリ、自分の安全にだけは気を付けてくれよ!」

「分かってるの! メアリの邪魔をする人なんて、居なくなっちゃえ!」

 

 分かっているようなセリフではないし、まるで足を止めようとしない。いっそのこと、危険のない範囲で失敗すれば良いのではないか。そんな考えすら浮かんだので、頭を振って振り払う。

 

 とにかく、怪我させないことを第一に、そう考えて、メアリを追いかけていく。そして開けた土地に出た頃、武装した人間たちに囲まれていた。

 

「来たぞ、レックスだ! 周りの奴らごと、仕留めちまえ!」

「うるさいの! 早く消えて! 雷炎岩竜巻(フェイタルストーム)!」

 

 敵がこちらに何かしてくる前に、メアリが魔法を放つ。竜巻の中で岩が暴れ狂い、更に雷と炎も吹き荒れている。

 

 その竜巻が、多くの敵を巻き込んでいく。敵は抵抗することすらできず、一部は潰れ、一部は黒焦げになり、一部は吹き飛んで地面に叩きつけられていた。

 

「これは、まさか五属性の……ぐわあーっ!」

「ただのボンボンを殺すって話じゃねえか! 聞いてねえぞ、こんな……ぎゃーっ!」

 

 敵の言葉を聞く限りでは、俺が強いという情報すら知らないやつも居るらしい。これは、騙して集めたのだろうか。そんな疑問を抱いていると、また別の声が届く。

 

「レックスだけは、何としても殺してやる……!」

 

 怨嗟が詰まったような声で、そんな事を言っている女がいた。どこか、見覚えのある顔の気もする。ということで、軽く問答を仕掛けることに決めた。万が一にもメアリやカミラが傷つかないように、魔法を撃てる準備をしながら。

 

「ずいぶんと、俺が憎いらしいな。金に釣られた訳じゃないのか?」

「お前は、ブラッドを殺した! 自分で依頼をしておいて! 邪魔だからと! あいつは、もっと生きて居るべき人だったのに……!」

 

 その言葉を聞いて、相手が誰かを理解した。原作キャラのひとり、カリンだ。ブラッドとは、仲が良かったよな。かつて、兄がフェリシアを殺すために雇った傭兵。それも、俺の名前を出して。結局、俺はブラッドの所属する傭兵団を皆殺しにしたんだったな。

 

 原作キャラを殺すという葛藤こそあったものの、結局は敵だったからな。だが、それを恨んでいるやつが居た。まあ、当然といえば当然か。

 

 なら、言い訳をしたところで無駄だろうな。残念ではあるが、ここで見逃してしまえば、何度でも俺を殺そうとするだろう。それなら、ここで息の根を止めるしか無い。そうだよな。

 

「そうか、お前は……。だが、それで死んでやる訳にはいかないな!」

「お兄様の敵なんて、みんな死んじゃえばいいの! 雷炎岩竜巻(フェイタルストーム)!」

 

 俺が何かをする前に、メアリは敵に魔法を放つ。相手は抵抗しているようだったが、そのまま竜巻に押しつぶされていった。

 

「くそっ、レックスに剣を向けることすら、叶わないのか……」

 

 そんな事を言いながら、カリンは果てていく。心のどこかで、虚しさを感じているような気がした。うまく立ち回っていれば、仲良くできた相手なのかもしれない。少なくとも、原作では主人公の味方だったはずだからな。

 

 だが、もう終わったことだ。俺がやるべきことは、みんなの心配をすることだよな。まず、周囲に敵の気配がしないかを探っていく。

 

「とりあえず、気配は消えたか。……ジャン、そちらはどうだ?」

「一通り、邪魔者は片付けられましたよ」

 

 ジャンの方でも、敵が襲ってきていたようだ。カリンは、複数の経路から攻撃することを企んでいたのかもな。あるいは、別々の目的で協力していたか。

 

 いずれにせよ、今回の件は終わったと言っていいだろう。なら、まずは後始末をしないとな。

 

「そうか。メアリ、大丈夫か? どこか怪我していたりしないか?」

「ううん、へっちゃら! 終わったから、今から遊ぼう?」

 

 無邪気な目で、こちらを見てくる。勝手な行動をしたことを、叱れば良いのだろうか。だが、どこか晴れやかな顔をしている。今回暴れまわるのは、メアリにとっては必要なことだったのかもな。

 

 とりあえずは、少し様子をうかがってみるか。その姿を見て、今後について判断しよう。

 

「まあ、少しくらいなら良いか。ほら、メアリ。まずは、家に帰ろう」

 

 そう言うと、メアリは笑顔で頷いた。先程までの怒りや暴走のようなものは感じられない。なら、メアリの怒りを再燃させない方が良いのかもな。そう考えて、手を差し出す。すると、満面の笑みで繋がれる。

 

 この笑顔を失わなくて良いように、今後も色々と考えていかないとな。そんな決意をさせられる事件だった。

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