物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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315話 いくつかの策

 セルフィと久しぶりに会って、確かに元気をもらえたと思う。俺を大切に思ってくれる人は、何人も居る。その事実を確認できたからな。

 

 俺は、やはり親しい人と生きるために頑張っているのだろう。それ以外のことは、あくまで立場上必要だからこなすだけ。あくまで、俺の芯は大切な人なんだ。

 

 貴族である以上、領民のために働く必要はある。だが、それだって大切な人との時間を大事にするために力を尽くすだけなのだろう。俺という人間は、近くにいる人のためにしか動けないのだろうな。

 

 正直に言えば、貴族としての資質には欠けていると思う。とはいえ、俺に任された役割だからな。王族であるミーアやリーナのためにも、近くの貴族であるフェリシアやラナのためにも、ブラック家で働いている仲間のためにも、しっかりとこなすべきだ。

 

 そんな事を考えていると、また通話が来た。実際、かなり便利だよな。前世では当たり前の道具だったが、今となっては価値を実感できる。

 

「レックス君、ごめんなさい。まだ、十分な情報を集められていないの」

 

 ミーアからだ。本当に申し訳無さそうな声だ。残念ではあるのだが、俺はほとんど何もしていないからな。責めるのも違うだろう。

 

 まあ、犠牲者がいないからこそ言えることではあるのだろうが。だから、今後もしっかりと勝っておかないとな。それだけは、絶対に譲るべきではない。

 

 ジャンやミルラも動いていて、それで成果が出ていないんだ。なら、俺が変わったところで無理だろうな。

 

 それに、十分な情報を集められていないと言っているだけだ。何も成果が出ていないことは意味していない。おそらくは、決め手に欠けるのだろう。冤罪をかけてしまえば、大変なことだからな。

 

「まあ、仕方のないことだ。それを前提に対策するしかないだろうな」

「あなたには申し訳ない提案があるんだけど、言っても良いかしら?」

 

 さて、どんなものだろうか。ミーアが申し訳ないと言ってくるあたり、こちらに負担があることなのだろうが。

 

 まあ、聞くだけなら何も問題はない。まさか、俺に死ねというレベルの案を出すはずもないのだから。

 

「断るかどうかを決めて良いのなら、何でも言ってくれ」

「ありがとう! それでね、こっちでレックス君に関する偽情報を送って、敵の動きを見るのはどうかしら?」

 

 ふむ、偽情報か。分かる話ではある。それに騙された人が黒ということだよな。いくつかの情報を別々の人に渡して、引っかかった情報の種類と数で人を特定するとか、定番だよな。

 

 それを通して、黒幕が誰かを探していくのだろう。俺も、有用性は理解できる。良いんじゃないだろうか。

 

「その情報を伝えた相手の中に、黒幕が居るかどうかを確かめるんだな?」

「ええ、そういうことよ。そのために、もう一度戦ってもらいたいの。良いかしら?」

 

 とりあえず、襲ってくる敵がどう動くかを確認したいのだろう。それ次第で、黒幕を特定する。偽情報で敵の動きを想定できるのなら、急に襲われるよりよほどマシだ。

 

 全体的には、賛成ではある。とはいえ、ブラック家の関わる話だ。俺が勝手に決めるのは問題だろうな。

 

「とりあえず、相談してみるよ。その上で、返事をしようと思う」

「分かったわ! なら、待っているわね!」

 

 ということで、ミルラとジャンに相談していく。まずは、前提を伝えるところからだ。

 

「ミルラ、ジャン。ミーアに提案されたんだが、俺に関する偽情報をミーアに流してもらうというのはどうだ? それで、黒幕を探るんだとか」

「兄さんなら勝てるでしょうし、悪くないんじゃないですか? 他の人なら、反対していますけど」

「勝算が十分になければ、かなりの賭けでしょうね。ただ、私もジャン様と同感でございます」

 

 ふむ。偽情報でどう敵が動こうとも、それに対策する戦力は必要だものな。相手から攻められない前提の情報操作なら、できることに大きな制限がかかるだろうし。

 

 そうなると、やはり戦力を集めて殴るのが一番強いんだな。俺が闇魔法を持っているという事実は、相当大きい。

 

 最強格の魔法使いであるフィリス・アクエリアスに匹敵あるいは凌駕する存在が居れば、それは便利に決まっている。

 

「ああ、なるほどな。敵が引っかかったとしても、見抜いたとしても、俺に対策を取ってくるわけだからな」

「はい。それに、僕達とミーアさんの協力関係に気づかれる可能性もあります。確実に始末できなければ、逆効果なんですよ」

「他には、レックス様の転移がなければ、どこに行くのかの情報を偽っても無意味でございますから」

 

 そうだな。相手の動きに対応したという体でもなければ、情報が持ち帰られた時点で負けか。とはいえ、俺とミーアはある程度親しいというのは知られていてもおかしくないとは思うが。まあ、表向き親しいだけで、実際には対立している貴族も居るだろう。そういう想定なのだろうな。

 

 後は、俺が対応できない場所に襲撃されることか。前回のように出向く場所の情報を与えたとして、空振りで帰らせたら偽情報だとバレるだけだ。転移で抹殺できないのなら、成果が出ない。

 

「ああ、確かにそうだ。単に騙しただけで終わったら、何の意味もないのか」

「そういうことですね。兄さんの力があるのなら、良い策です。そうでなければ、下策ですね」

「無論、ミーア様はレックス様のお力をご存知でございます。総合的には、賛成ですね」

 

 まあ、俺が居れば大抵の状況には対応できる。というか、闇魔法のアクセサリーを応用すれば大体どうにかできるだろう。特に、ミルラとジャンなら。

 

 それなら、まあ受けておいて問題なさそうだな。ミーアには、良い報告ができそうだ。

 

「なら、お前たちが考えた情報をミーアに渡せば良いのか?」

「そうですね。ブラック家の防衛計画に関して、ある程度の情報を渡そうかと。その中に、偽りを混ぜます」

 

 それで、敵の攻め方を見ると。まあ、悪くはなさそうに聞こえる。ダメだったところで、そこまで大きなデメリットはなさそうだ。

 

 なら、その方針で行けばいいな。あまり気にすることはない。

 

「つまり、その弱点が流れた経路から、黒幕を探れるんだな。どの兵が弱点を着いてくるかで」

「もちろん、そこは死に場所になるんですけどね。当然、罠を張っていますので」

「レックス様の転移もございますから。どうとでも料理できますでしょう」

 

 後手に回ったとしても、俺の魔法があればひっくり返せる局面は多い。あらためて考えても、闇魔法は反則だな。やはり、強すぎるくらいだ。

 

 とはいえ、敵だって対策を取ってくるだろう。何度も負けて、無策のはずがない。強ければ別の手段でどうにかしようとするのが、人間というものだ。

 

 まあ、毒にはすでに対策しているのだが。主にブラック家というか、父に盛られる危険性を心配していたからな。

 

「なら、任せる。こちらから、ミーアに話しておくよ」

「お願いします、兄さん」

「それまでの間に、計画を固めておく所存でございます」

「ああ、頼む。お前たちなら、うまくやってくれるだろうさ」

 

 さて、これで黒幕が分かれば良いのだが。そうしたら、後はそいつをどうにかするだけだ。早く終わらせて、少しでもみんなとの時間を増やしたいものだよな。

 

 そのためにも、まずはしっかり勝たないとな。

 

 ただ、ミーアはどうやって偽情報を敵に渡すのだろうか。そんな疑問が、頭の片隅に浮かんだ。

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