物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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10章 一歩のその先
327話 堂々とした関係を


 俺に懸賞金がかけられるという問題が解決し、俺は久しぶりの平穏を楽しんでいた。家族やメイド、仲間たちとの時間を過ごし、落ち着いた心地になることができていた。

 

 そんな時間の中、ときおり通話をすることで、遠くにいる相手とも交流できていた。特に、フィリスやエリナと会話することで、いろいろな技術を伝えてもらっている。成長を実感できるところでもあるな。

 

 今は、また誰かからの通話が来たところだ。すぐに、声を受け取る。

 

「レックスさん、あたくしの家に来る気は、ありまして?」

 

 ルースから、いきなり妙な質問をされた。まあ、なにか用があるのだろうが。察するに、手伝ってほしいことがあるんじゃないだろうか。

 

 俺としては、ジャンやミルラが許可をするのであれば、手を貸したいところだが。わざわざ俺に声をかけてくるあたり、困ったことがあるのだろうし。

 

 良い報告という可能性だって、あるにはある。だが、まあ無いだろうな。とりあえずは、確認しておくか。

 

「構わないが……。顔を合わせたい理由でもあるのか?」

「理由がなくても会うのが、友人というものではなくて? いえ、目的はあるのだけれども」

 

 まあ、そうなるよな。気軽に会えるのなら、それが一番ではあるのだが。お互いの家の距離があるから、帰り道に寄るくらいの感覚は難しい。そもそも、お互いが貴族の当主である以上、どうしても家どうしの関係がつきまとってしまう。

 

 結局、何も考えずに遊びに行くのは、難しいだろうな。ただ友人に挨拶に行くだけでも、何かしらの利益を見込みたくなってしまう。悲しいものだ。

 

「家に呼ばれるあたり、当主としての話か?」

「そのようなところね。あたくし達が友人だと、家中に宣言するのよ」

 

 つまり、ホワイト家とブラック家も積極的に関わっていくという宣言だろう。ハッキリ言って、かなり距離がある家だからな。いきなり宣言しても、混乱が大きそうだが。

 

 まあ、ルースが急に当主になった時点で、混乱は起きているだろう。なら、ルースの後ろ盾が俺であることを示すのは、悪くないのかもしれない。まあ、対等な友人としての発想ではないが。ルースは嫌いそうだよな。

 

「良いのか? その、問題が発生したりしないか?」

「レックスさんを敵視するようなら、いずれあたくしの敵になるわ。今のうちに知っておくのも、悪くなくてよ」

 

 分からない話ではないな。変に期待を持つより、最初から敵だと思っておいた方が楽なことはある。まあ、ルースの方針にあまり口出しするのもな。俺はジャンやミルラのような優秀な仲間が居たから良いが、ルースが同じとは限らないのだから。

 

 とはいえ、周囲に敵が多いようなら、心配になってしまうのだが。妙な事態にならなければ良いが。

 

「なるほどな。分かった。じゃあ、いつから行けば良い? 転移できるから、割といつでも良いぞ」

「では、今日来ていただきましょうか。もう、ジャンさん達にはミーア殿下を通して話を伝えていてよ」

 

 つまり、もう根回しは済んでいるということか? 恐ろしい話だな。まあ、ルースは信じられる相手だからな。大きな問題はない。

 

 とはいえ、勝手に予定が決まっているのにはビックリする。心の準備もあるのだが。

 

「おいおい、こっちの意思も聞かずに……。まあ良いが。じゃあ、今から行くぞ」

 

 とりあえずジャンとミルラに報告だけして、ルースの家であるホワイト家に転移する。そして、ルースの私室に出た。すぐに、白い髪が目に入る。そのままルースは振り返って、不敵な感じで笑った。

 

 ルースは笑顔で出迎えてくれたが、転移を悪用すれば大変なことになりそうだよな。その気になれば、覗きとかできるんじゃないだろうか。

 

 やはり、転移には慎重な扱いが必要だ。俺が理性を保っていなければ、どれほどの悪事でも実行できるのは間違いないからな。

 

「ようこそ、ホワイト家へ。今回は、客人として歓迎してよ」

「まあ、前はコソコソしたものだったからな……。堂々とできるのは、ありがたいよ」

「そうね。友人でいることを隠すなど、バカげているわ。そんな環境は、間違っていてよ」

 

 うんざりした様子で、そう告げる。まあ、俺も同じ気持ちではある。どうせなら、普通に仲良くしたい。とはいえ、難しい部分はあるだろう。貴族である以上、どうしても周囲との関係はつきまとうからな。

 

「とはいえ、急ぎすぎても大変だろうけどな。あまり敵を増やそうとするなよ」

「ええ。まあ、あたくしに元々反感を持っているものも多いでしょうが」

「そういえば、ホワイト家に居た俺の敵を殺したんだったよな」

「ええ、父を殺したわ。あたくしの力を甘く見る愚か者をね」

 

 冷たい目と声で語っていた。何か、恨みでもあったのだろう。とはいえ、父殺しか。俺もやることになってしまったし、何か悪いものでも憑いているんじゃないだろうか。そんな考えまで浮かんでしまう。

 

 まあ、ルースの顔を見る限りでは、そこまで傷ついている様子ではないのだが。そこは、救いではある。ただ、表情を隠している可能性もあるからな。

 

「俺のせいで、無茶をさせていたりしないか? そこまでさせたくは……」

「気にすることはなくてよ。これは、あたくしの意思。あたくしのために殺したのだもの」

 

 まっすぐに俺の目を見ながら、そう言っていた。ルースが決めたことなら、あまり口出ししたくはない。いや、人を殺しているのだが。とはいえ、俺を殺そうとしていたという話だからな。あんまり責める気にはならない。

 

 ルースが父と仲良くできたのなら、そちらの方が良かったのではあろうが。もう終わったことだからな。どうしようもないことだ。

 

「なら、良いのか? いや、父殺しを良いこととは言いたくないが……」

「あたくし達の関係にとっては、間違いなく良いことよ。その一歩が、ここから始まるのよ。さ、こちらよ」

 

 そう言って、ルースは俺の手を引く。そして少し準備をして、俺達は多くの人の前に立った。ルースの隣に立つ俺は、どこか不審そうに見られている。そんな様子を気にした様子もなく、ルースは堂々と語っていく。

 

「さて、皆さん。今日は、あたくしの友人を紹介しましょう。レックス・ダリア・ブラックよ」

「紹介された通りだ。ルースの友人として、仲良くやっていきたいところだな」

「あれが、ブラック家の……」

「どうして、わざわざ外から……」

 

 そんな声が聞こえたような気がして、ルースはどこか冷徹さを覚える雰囲気で大勢を見ていた。そのまま俺の紹介は終わり、俺達はルースの私室に戻った。

 

 ルースは薄く微笑みながら、俺に軽く頭を下げる。

 

「ありがとう、レックスさん。おかげで、敵味方の区別がつけやすくなったわ」

「それは良いが。周りに敵が多いと、困らないか?」

「だからこそ、敵と味方をしっかりと切り分ける必要があるのよ。要所を抑えるためにもね」

 

 日和見していると言うか、空気に流されているだけの人も居るだろうからな。本気でルースの方針に反対している中核を抑えられれば、少なくとも当面は落ち着くだろう。それが、要所を抑えるということだろうな。

 

 ルースの計画は、うまくいってほしいものだが。さて、どうなることやら。

 

「手伝えることがあったら、言ってくれよ」

「ええ、もちろん。便利に使わせてもらってよ。覚悟することね、レックスさん」

 

 そんな事を言いながらも、ルースは俺の方を優しい目で見ていた。さて、ルースの期待に応えられるように、しっかりと手伝うとするか。

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