物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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414話 動き出すために

 アカデミーから人材がやってくるまで、まだ少し時間がある。ということで、その間に今後の方針をもっと固めておきたい。

 

 最終的な目標は、工場のようなもので魔力バッテリーを作ることではある。だからといって、いきなり工場を建てようとしてもうまくいかないだろう。

 

 そのあたりを現実的な過程に落とし込むためには、俺の頭だけでは足りないだろうな。技術的視点、教育的視点、経営的視点などの多角的な視点が必要になるはずだ。

 

 現状、ブラック家でそのあたりの視点を持っているのはミルラとジャン、マリンだと思う。ということで、ひとまず集まって相談していく。

 

「とりあえず、いきなり大規模な動きをすることは避けるべきだと思う。どうだ?」

「妥当でしょうね。混乱が起きることが目に見えていますよ」

「私も賛成するです。大勢に教えるのも難しいですし」

「ひとまずは、アカデミーからの少数と学校もどきの生徒を少数で試してみるべきでしょう」

 

 三者三様に、俺と同じような意見を出してくる。まあ、そうなるよな。急に新しい仕事を全員に教えるのは現実的に無理だろうし、いきなり大勢を集めて統制を取るのも難しいだろう。

 

 そうなると、慣れた相手と知識を持った人材でまとめるのは正しい判断に思える。ひとまず、小規模な動きから始めるというのは確定でいいだろうな。

 

「外部から人を集める段階ではないということだな。まあ、そうなるか」

「はいです。裏切りを避けるためにも、大事になってくるはずなのです」

「アカデミーの生徒や教授ならば、まだ身元や人格の査定も十分に済んでいると申せますが……」

「ブラック家でもいい人間となると、いい人材を集めにくいのは事実ですからね……」

 

 実際、以前に裏切りを経験しているからな。ミルラやジャンが面談したという前提があってもだ。やはり、短期間でしっかりと人柄を見抜くのは難しい。となると、すでに評価されている人材をあてがうのが基本になってくるはずだ。

 

 アカデミーの人材というのは、本当に悪くない。マリンやミルラが評判を知っているだろうし、実力は保証されているようなもの。学校もどきの生徒も、人となりや能力はよく知っている。それに、ブラック家の評判の悪さが影響しない相手でもある。

 

 とにかく、チンピラみたいな相手を集めたところでどうにもならない。まずはしっかりと足場を固めないとな。

 

 ただ、いずれ規模を拡大する予定ではある。その時のための備えはしておきたいものだが。

 

「やっぱり、そこが問題か。ラナやフェリシアあたりに紹介してもらうのはどうだろうか」

「お二方も、人材が余っているとまでは言えないと存じます。厳しいと言わせていただきます」

 

 まあ、そうか。ラナもフェリシアも、周囲の家を取り込んだばかり。仕事なんていくらでもあるだろう。その状況でよその家に人材を派遣できるだけの余裕があるかと言えば、怪しいな。

 

 ラナやフェリシアの紹介なら、かなり信用できそうだとは思えたのだが。まあ、負担をかけるのも本意ではない。今回は、諦めよう。

 

「となると、まずは実績を出してからということになるな。分かった。それで行こう」

「アカデミーからの人材ですが、サラさんのご友人も検討されているとのことでございます」

 

 あのふたりという事になるのだろうか。他の誰かだろうか。あのふたりなら、仲良くなれそうな気がする。せっかくだから、取り込みたいところだ。

 

 俺の身内を大事に思ってくれるような相手こそ、引き入れたい存在だと言えるからな。能力が伴っていなければ厳しいが。

 

「ふむ。あまりひいきはしたくないが、多少は考えても良いかもな」

「僕も賛成しますよ。情と利の両方で縛るのは、効率的ですから」

 

 俺がジャンに言っていた事そのままだな。効率を考えると、結果的には相手の感情を意識した方が良いというか。相手を尊重するという考えが、結果的に効率的だというか。

 

 そこまで計算して言っていたわけでは無いが、ジャンに言われて納得した。

 

「確かにな。どちらも揃っているのなら、そうは裏切らないだろう。自分で言っておいてなんだが、良いかもな」

「私のようにレックス様を慕う存在が居れば、広がりも期待できると存じます」

「ミルラさんの紹介で、私がつながったようにです。私も、知り合いを誘うです」

 

 そうなんだよな。アカデミー経由で評判を広めていきたいというのも、俺たちの狙いだ。だからこそ、大事に扱うのは重要なことだ。

 

 まず隗より始めよではないが、とにかく良い待遇で働けると思わせれば強いはずだ。優秀な人材が集まる流れにつながってもらいたい。

 

 とはいえ、最初は大規模に生産することはできない。そうなると、魔力バッテリーをどう扱うかも問題になってくるな。分解されて再現されると怖いが、だからといって広めないというのも論外だ。

 

 だからこそ、ブラック家の名とともに魔力バッテリーが伝わっていくような売り込み方も必要になってくるだろう。まあ、売れる相手は限られるだろうが。敵対派閥に売ろうとしたら、それこそ模倣の良い餌になるか、あるいは魔力バッテリーの評判を落とされるはず。

 

「これで、ひとまずは方針が固まったな。後は、どこに売り込むかだな……」

「候補は、兄さんの知り合いだけでいいと思います。良くも悪くも、大きく広がりませんし」

「まあ、そうだな。手柄を奪われる心配もないからな。とはいえ、あまり差をつけたくない相手もいるな」

「ラナ様とフェリシア様、ならびにハンナ様やルース様とミュスカ様のような相手でございますね」

 

 ミルラの言う通りだ。俺との距離が近い相手だからこそ、平等に近い扱いをしたい。ラナとフェリシアのどちらかを優先してしまえば、もう片方へのメッセージとなりかねない。そんなところだ。

 

 そして、現状の生産量でも十分に扱えるだけの規模で済ませる必要もある。となると、相手は決まったようなものか。

 

「ああ。まずは、ラナとフェリシアを経由するか。その次が、ミーアとリーナでどうだ?」

「どれも一長一短ですから、僕は兄さんに従います。それで行きましょうか」

「私はレックス様に任せるのです。研究以外については、詳しくないですから」

 

 こちらに任せてきたのだから、俺が決めるべきだな。ここでジャンやミルラに投げるのは、責任の放棄と言って良い。

 

 俺はブラック家の当主として、方針を決める役割がある。そして、その結果を受け止める義務がある。逃げ出すわけには、いかないよな。

 

「じゃあ、決まりだな。3人とも、任せたぞ」

「もちろんでございます。最善の成果を出してみせましょう」

 

 三人とも、気合いが入っている様子だ。俺としても、最大限の努力はしたい。まあ、知恵を絞ってもジャンやミルラには勝てないだろうし、マリンの発明をサポートすることもできない。

 

 そうなると、俺の仕事は堂々としていることくらいだろうか。闇魔法を使うというのも、忘れてはならない。

 

「兄さんには、できるだけ新人と仲良くなってもらいましょうか」

「ああ、分かった。できる限りのことはさせてもらおう」

 

 ジャンの提案を受けて、新人たちと話していくことを決めた。情の方向性から攻めるということだろう。俺と親しくなって、離れがたいと思ってもらう。

 

 とても難題ではあるが、重要な仕事だ。武者震いをするのを、強く感じていた。

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