物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

416 / 622
415話 つながっていく出会い

 アカデミーから人材がやってきて、ジャンやミルラ、マリンが面接をしている。俺は最後の段階で合否を決める立場にある。とはいえ、実質的には素通しみたいなものになる予定だ。基本的には、よほどやらかさない限りは採用だな。

 

 そんな中で、面談に来た人を見て驚いた。前にアカデミーで話したサラの友人だったからだ。卒業まではアカデミーにいるみたいなことを言っていたし、来ないと思っていた。

 

 ふたりとも同時に入ってきて、こちらに明るく手を振っている。親しみを感じさせて、少し微笑ましくなった。

 

 おそらくは、ミルラあたりが気を使ってくれたな。俺が知り合いだと、知っていたのだろう。

 

 俺は心からの笑顔を浮かべながら、ふたりと向き合った。

 

「レックス様、私たちも来ちゃったー」

「サラちゃんは、ここにはいないみたいだね。ちょっと、残念かも」

 

 楽しげに、ふたりとも話している。一度会っただけではあるが、かなり打ち解けられているかもしれない。サラとも仲良くしていたし、社交性が高いのだろう。

 

 とはいえ、少しだけ残念そうに見えるのも確かだ。本当に、サラを気に入ってくれたのだろうな。ありがたいことだ。俺が好かれるよりも嬉しいくらいかもしれない。

 

 せっかくだから、交流を深めてほしいところだな。サラとしても、親しくなった相手と会えたら嬉しいはずだ。

 

「別の仕事を任せてはいるが、会う機会もあるはずだ。ブラック家から集めた人たちの上役みたいなものだからな」

「そんなに偉いんだ……。サラちゃん、すごい……」

「可愛いのに、アストラ学園に通えるんだもんね。すごいのは、そうか」

 

 感心したように、ふたりは口を開けたり頷いたりしていた。なんというか、感情豊かだなと思える。見ていて心地いいというか。

 

 こんな感じなら、能力が低くても仕事場を明るくしてくれることに期待できそうだ。面接官が認めたこともあるし、相当良い人がやってきてくれたな。できる限り、仲良くしたいところだ。

 

「アカデミーに通えるお前たちも、十分すごいんだからな? あまり気後れする必要はない」

「レックス様と比べたら、私だってただの平民みたいなものなんだけどねー」

 

 跡取りになれない貴族の娘みたいなものだろうか。それなら、平民とあまり変わらないという自己認識も頷ける。まあ、大学みたいな場所に通える時点で、本当の意味での平民ではないのだろうが。

 

 少なくとも、この世界で学校に通える余裕のある子供はそう多くない。奨学金みたいな制度があるかも怪しいからな。だから、ある程度は裕福なのだろう。

 

 とはいえ、貴族として成り上がることも難しい立場ではあるはずだ。少なくともこの国では、魔法の実力が重要視されるのだから。

 

「そういえば、自己紹介をしてなかったかも。私は、ソニア・ミーリア・ブロンドっていうんだ」

「私は、クリス・エイン・メイズだよー。よろしくね、レックス様」

 

 ソニアはおしとやかな感じで、クリスは元気な感じだな。ふたりとも、いわゆる女子学生のイメージに近い。前世にいたとしたら、学生にモテモテだっただろう。

 

 今の世界だと、少なくとも貴族からはモテないのだろうな。残念ではあるが、都合がよくもある。親しみやすくて勉強もできるとなれば、どれだけいても困らない人材だろう。

 

「ああ、よろしく頼む。困ったことがあったら、気軽に言ってくれ」

「やっぱり、ラナちゃんが懐くだけのことはあるんだねー」

「うんうん。思っていたより、ずっと優しいかも……」

 

 かなりこちらを持ち上げてくる。本心に見えるのだから、こちらも気分が良くなってきそうだ。仮に演技だとしても、それができるだけで評価は高い。人間関係の潤滑油になってくれそうだからな。

 

 本当に、サラも良い相手を友達にしてくれたものだ。心から感謝したい。

 

「とはいえ、人目があるところでは気をつけてくれよ。一応、雇い主というていなんだから」

「分かりましたー。レックス様に、頑張って仕えますねー」

「誠心誠意、ご奉仕させていただきます……」

 

 クリスの言い方は普通だが、ソニアの言葉はちょっといかがわしく聞こえてしまう部分もある。とはいえ、ちゃんと態度を変えてくれる意志はあるみたいだし、まあ十分だろう。

 

 仕事ぶりを見てみないことには確信できないとはいえ、かなりの拾い物に思える。俺も、少しくらいひいきしても良いかもな。ブラック家に定着してくれるのなら、良い戦力になってくれるんじゃないだろうか。

 

「その調子なら、うまくやっていけそうだな。あまり窮屈をさせないようにしたいところだ」

「大丈夫だよー。研究もちゃんとやってるし、ちょっとは分かるつもりだからー」

「そうだね。むしろ、アカデミーよりも楽しそうかも……」

 

 クリスもソニアもかなり乗り気に見える。ちょっと前のめりになっているくらいだ。姿勢が軽く崩れているあたり、本気っぽい。

 

 やる気があるのなら、こちらでも手助けしていこうか。サラの友達ということを抜きにしても、優先度合いは高くなりそうな相手だからな。

 

「なら、何よりだ。ひとまず、お前たちには魔力バッテリーの作り方を覚えてもらう。良いか?」

「うん、話は聞いているよー。魔力をためておいて、他の道具で使うんだよねー?」

「使い道についても、考えてみたいな……。せっかく、研究をしているんだからね」

 

 仕事の内容についても、しっかりと理解しているようだ。本当に、感心させられる。ただ言われた仕事をこなすだけではないという意志まで感じて、とてもありがたい。

 

 このレベルの人材が多く集まってくるのなら、最高なんだけどな。まあ、ふたりが優秀なだけだとは思う。期待しすぎても、困るだけだろうな。

 

「確約はできないが、お前たちの望む仕事ができるように努力はするよ。とはいえ、成果を出してくれないと厳しいが」

「うん、大丈夫だよー。いっぱい気を使ってもらって、ありがとうねー」

「こんな感じだけど、私たち、本当に感謝しているんだ。ちゃんと、私たちを見てくれるから……」

 

 少し熱っぽい目をこちらに向けてきている。言葉が本心からのものなら、苦労がうかがえてしまう。俺のやった程度のことで、本当に感謝しているだなんて言わせてしまうのだから。魔法を使えないという色眼鏡で見られてきた可能性が高い。

 

 いや、演技だとしても苦労しているのだろうな。そうやって相手の機嫌を取ってこなければ、うまく生きてこられなかったという証なのだから。ここでは、良い生活を送ってもらいたいものだ。

 

「おいおい、まだ仕事も始まっていないぞ。気が早いな、ふたりとも」

「ふふふ、始まっていないうちから、分かっちゃうんだよ」

「うんうん。もう明らかに、他の人とは違うよねー」

 

 にこやかに、こちらに向けて好意的な視線を向けてくる。この調子で打ち解けていって、しっかり仕事をこなしてもらいたい。

 

 サラと会えるくらいの立場になってくれれば、俺としても頼れるだろう。みんなにとって、良い未来のはずだ。

 

「なら、良いが。これから、よろしく頼むぞ。どうかその力で、俺を支えてくれ」

「分かったよー。私たちに任せちゃってー」

「そうだね。レックス様のところなら、頑張れそうだと思うかな」

 

 そう言って、ふたりは笑顔を見せてきた。クリスとソニアという新しい出会いは、明るい未来に繋いでくれる。そんな予感とともに、俺も笑顔で返した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。