物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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418話 今後への備え

 これから事業を拡大していくためには、様々な準備が必要になる。とにかく人手が必要になってくるのは、間違いない。そして、その人手に余計な相手が入ってくる可能性だってある。

 

 対策として、闇魔法を施設に埋め込んで監視できるようにするという構想はある。だからといって、四六時中見守るのは難しい。監視員を雇うとしても、俺の闇魔法に関する情報が漏れる懸念がある。

 

 総じて、考えるべきことはとても多い。そして、俺ひとりで考え続けても良い案は出ないだろう。

 

 結局のところ、マリンに言ったようにジャンやミルラと相談するのが基本になってくる。この体制も、ジャンやミルラにもしものことがあれば崩壊してしまう。今のブラック家は、薄氷の上に立っていると言って良い。

 

 とはいえ、今は個人の才覚に頼った運営をするしかない。いきなりジャンやミルラの仕事を他の人に回してしまえば、それこそ終わりになるだろうからな。

 

 今のところは、これまで通りの体制を続けることになるだろう。ということで、ジャンとミルラに相談していく。

 

「ジャン、ミルラ、これから魔力バッテリーの生産を拡大する上で気をつけるべきことは何だ?」

「人員の確保、土地の購入、設備の製造が大きな課題になると存じます」

「もっと言えば、窃盗や手抜き、情報を奪おうとすることへの対処でしょうか」

 

 人員の確保は言うまでもない。土地の購入や設備の製造は、工場を作ると考えれば当然のことだ。どの土地を使うか、周辺との関係をどうするか。立ち退きが必要な場合、どうやって交渉するか。様々な課題がある。

 

 そして設備の製造も、とても大事なことだ。まずは設備を作るための設備が必要になってくるだろう。外に行くための服を買いに行くみたいなことを言っているが、まあ似たようなものだ。大掛かりな設備は、手作業で作るにも限度がある。そういうことだな。

 

 何より問題となるのが、人員の勤務態度だ。作られた魔力バッテリーを盗んで売ろうとするとか、雑な仕事をして問題のある製品を作って事故を起こすとか、せっかく作った発明を他の貴族に奪おうとされるとか、想定できる問題は色々とある。

 

 とにかく、そう簡単に信用できる人員を確保なんてできはしない。それもあって、まずは小規模に動き始めたんだから。

 

「ふむ、俺も同じような意見だ。最大の課題は、人員の確保で間違いないか?」

「そうですね。僕から見て信用できるだけの人員は、そう集められません」

「学校もどきやアカデミーからの人員にも、限度がございます。そうなると……」

「やはり、外部からの人間をどう扱うかが問題になってきそうだな」

「兄さんの手で監視体制を築いてもらうにしても、どうしても穴はできます」

 

 魔法を使って監視するにしたって、どういう場所を監視するか、どの時間に監視するかなんかの問題は避けて通れない。監視しているという事実を伝えることも、まあ難しいだろう。

 

 そうなると、どうしても対応が後手に回らざるをえない。まあ、後手に回るからこそできることもあるのだが。言ってしまえば、見せしめとか。良い手段とは言いたくないが、今の状況なら必要なことになってくるな。

 

「まあ、そうだろうな。逆に、穴がないほど厳しく監視すれば、それはそれで問題になるはずだ」

「そうでございますね。腕輪のようなものをつけるのが、妥当だと存じます」

 

 個人個人を監視するという意味では、腕輪というのは悪くない。特定の条件に反応して音を出すとかすれば、監視の手間が大きく省けるのではないだろうか。

 

 メチャクチャなディストピアみたいな発想だが、それくらい問題のある人員が集まってきかねないのも事実なんだよな。そうなると、必要性は理解できてしまう。悲しいことではあるが。

 

「なるほどな。それに必要な機能を集約しておくと。現場自体にも、魔力の侵食は必要だよな?」

「僕たちからの提案としては、生体反応を監視できる仕組みを作ってくれると嬉しいです」

「妙に心拍数が高かったり、明らかにおかしい動きをしていたら分かるようにだな」

「その通りでございます。ジェルドさんのような人に監視できる程度だとよろしいかと」

 

 さっき考えた特定の条件への反応を含めて、仕組みを作ること自体はそう難しくはない。転移の方がよほど難題なのは間違いないからな。

 

 ジェルドは工業化関連の中心人物になるわけだし、楽に監視させるというのも良いと思う。

 

 ただ、作れるのはせいぜい百単位くらいだろう。それを超えてしまえば、現実的ではなくなる。俺が腕輪作成を本業とするのなら話は別だが。それこそ本末転倒としか言いようがない。

 

「まあ、可能ではあるだろうな。とはいえ、大勢を雇うようになると、生産が課題になる」

「ある程度拡大してしまえば、先行者としての利益が固まっているでしょう。土台を固めるまでの処置だと考えています」

 

 魔力バッテリーと言えばブラック家という評判が広がっていれば、類似品が出ても優位が取れる。それは確かにあるだろう。

 

 その場合でもうまくいかない可能性は、まあ思いつく。ブラック家の悪評を利用する道筋なんかが、特に。だが、あらゆる場面に対応するだけの手札は持っていない。妥協点としては、かなり良い感じのところだと思う。

 

「なら、妥当か。安全面への対処も必要ではあるか。うっかり襲撃でもされたら、困るからな」

「そうでございますね。私たちには、警戒すべき相手が多いのが現状でございますゆえ」

「父さんの代で敵を作りすぎましたし、兄さんの才能も脅威だと判断されているんですよね」

「まあ、俺が暴走すればひとつの家くらい簡単に滅ぶからな。ある程度は仕方ない」

「ですから、妨害は事前に潰せるのが理想ではあります。どうですか?」

 

 まあ、当然だな。工場への襲撃、重要人物の誘拐や暗殺。備えなければならないことはとても多い。

 

 人員に被害が出てしまえば、工場で働きたいという人は確実に減る。そもそも、技術や才能を持ち合わせた人というのは、そう簡単には代替できない。

 

 個人的な情を抜きにしても、俺の仲間たちは絶対に守り切るべきだな。そこは間違いない。

 

 今のところは、俺の目が届く範囲で動いてくれている。だが、そうなる前に対策すべきなのは確実と言えるだろう。

 

「俺としては、賛成だな。お前たちに贈ったようなアクセサリーは、少なくともマリンやクリス、ソニアには渡しておく」

「安全も考えられているようで、何よりでございます。できるだけ多く生産していただければと」

「個人への襲撃が起こる可能性も、否定できないからだな」

 

 魔力バッテリーの生産に関わる人間、販売する人間、様々なところに危険はある。だからこそ、打てる手は打っておきたい。

 

 臆病だと笑うやつがいたら、笑わせておけば良い。そんなことよりも、とにかく俺は大事なものを守るために全力を尽くす。それで良い。

 

「はい。魔力バッテリーの価値が広まれば広まるほど、危険も大きくなるでしょう」

「味方への被害は、できるだけ減らしたいものな。よし、分かった」

 

 ひとまず、俺の時間は周囲の人間を守るための体制づくりに使うことになるだろう。それだけの価値は、間違いなくある。仮に何も事件が起きなかったとしても、構わない。決して、時間が無駄になったと思うことはない。

 

 なら、後は突き進むだけだよな。そんな決意を込めて、俺はふたりに強く頷いた。

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